昨日に引き続きバッハの「プレリュード、フーガとアレグロ」を。
今日は、ギター編です。
この曲は、かつて巨匠セゴヴィアによってアレグロ除きのプレリュードとフーガが編曲されショット社から出版されていたこともあり、昔からバッハを愛する数多くの名ギタリストにとって好個のレパートリーになっていました。
アレグロつきの全曲が広く弾かれるようになったのは、イギリスの名手ジュリアン・ブリームとジョン・ウィリアムスの演奏がLPで紹介されるようになってからだと思います。
なお、ギターではオリジナルの変ホ長調という調性が技術的にも響きの点でも問題が多いので、通常は半音低いニ長調で演奏されます。(少し詳しく書きますと、変ホ長調というのはフラットが3つあり、ギターの開放弦6本のうち4本が使えなくなるため、技術的な制約が非常に多いのです!)
では早速お勧め盤を。
まず、リュートの幽玄さとギターという楽器の高い性能の両方を兼ね備えた名演奏として、スウェーデンの名手セルシェル(G)の演奏があげられます。
セルシェルは、通常の6弦ギターとは異なる11弦のアルトギターを使用することで、素晴らしい効果をあげています。
この響きの奥深さと音色の美しさは、今なお格別の魅力を持っています。
ところでこのバッハの美しい曲は、セルシェルにとって、最も権威のあったパリ国際ギターコンクールで優勝した時の、思い出の曲でもあります。私も、当時彼のコンクールにおける演奏を初めてFMで聴き、あまりの美しさに愕然としたことを今なお鮮烈に覚えています。
さて、次にお勧めできるのは、バルエコ盤(EMI)です。
バルエコは一旦最も低い第6弦をD(レ)に下げた後、カポタスト(フラメンコでおなじみですよね。指板にがちっとはめこむことで調性をコントロールすることができます)を1フレットにセットすることで、何とオリジナルと同じ変ホ長調として演奏しています。音のバランス、音色の統一感ではこの演奏が一番です。
その他、装飾音符が見事な効果をあげているデビット・ラッセル、テクニックの素晴らしさで群を抜く山下和仁、ゆっくりしたテンポで銘器ハウザー1世を鳴らしきった田部井辰夫等素晴らしい演奏が目白押しです。
しかし、ギターによるベストの演奏というよりも、私がリュートや鍵盤楽器を含めた中でも最も好きな演奏は、ジョン・ウィリアムスの旧盤です。
美しく起伏にとんだプレリュード、ため息が出るような気品と緻密な構成力をみせるフーガ、圧倒的な技術の冴えをみせるアレグロ、全てに申し分ない演奏です。とくにフーガの中間部で最初のテーマに戻る直前のカンパネラの美しいこと!
やや冷ややかな感触をもちつつ妖しいまでに美しい音、この難曲をいとも簡単に弾ききってしまう圧倒的な技術は、いまなおまったく他の追従を許しません。
ところで、私が高校生の頃、セゴヴィアをきいてもイエペスをきいても凄い演奏だとは思いましたが、自分でこんな風に弾きたいとは思いませんでした。ところが、このジョン・ウィリアムスのバッハを初めてきいたとき、電流に打たれたような激しいショックを受けました。私が弾きたいと思っていたのはこんなバッハだ。また、私の理想の音色はこんな音だったんだと、心底感じさせてくれた演奏だったのです。以来、この演奏が、今日まで色々な面で私に大きな影響を与えてきました。
今日、改めて聴いてみて、想い出は確信に変わりました。
なお、ウィリアムスは、その後バッハのリュートのための作品集と題して新たにレコーディングしており、そのなかのこの「プレリュード、フーガとアレグロ」も文句なしの名演ですが、その瑞々しさと気品の高さという点で旧盤には及びません。
機会があれば、クラシックギターの最高の名演奏のひとつとして、是非この演奏を多くの人に聴いていただきたいと思います。
今日は、ギター編です。
この曲は、かつて巨匠セゴヴィアによってアレグロ除きのプレリュードとフーガが編曲されショット社から出版されていたこともあり、昔からバッハを愛する数多くの名ギタリストにとって好個のレパートリーになっていました。
アレグロつきの全曲が広く弾かれるようになったのは、イギリスの名手ジュリアン・ブリームとジョン・ウィリアムスの演奏がLPで紹介されるようになってからだと思います。
なお、ギターではオリジナルの変ホ長調という調性が技術的にも響きの点でも問題が多いので、通常は半音低いニ長調で演奏されます。(少し詳しく書きますと、変ホ長調というのはフラットが3つあり、ギターの開放弦6本のうち4本が使えなくなるため、技術的な制約が非常に多いのです!)
では早速お勧め盤を。
まず、リュートの幽玄さとギターという楽器の高い性能の両方を兼ね備えた名演奏として、スウェーデンの名手セルシェル(G)の演奏があげられます。
セルシェルは、通常の6弦ギターとは異なる11弦のアルトギターを使用することで、素晴らしい効果をあげています。
この響きの奥深さと音色の美しさは、今なお格別の魅力を持っています。
ところでこのバッハの美しい曲は、セルシェルにとって、最も権威のあったパリ国際ギターコンクールで優勝した時の、思い出の曲でもあります。私も、当時彼のコンクールにおける演奏を初めてFMで聴き、あまりの美しさに愕然としたことを今なお鮮烈に覚えています。
さて、次にお勧めできるのは、バルエコ盤(EMI)です。
バルエコは一旦最も低い第6弦をD(レ)に下げた後、カポタスト(フラメンコでおなじみですよね。指板にがちっとはめこむことで調性をコントロールすることができます)を1フレットにセットすることで、何とオリジナルと同じ変ホ長調として演奏しています。音のバランス、音色の統一感ではこの演奏が一番です。
その他、装飾音符が見事な効果をあげているデビット・ラッセル、テクニックの素晴らしさで群を抜く山下和仁、ゆっくりしたテンポで銘器ハウザー1世を鳴らしきった田部井辰夫等素晴らしい演奏が目白押しです。
しかし、ギターによるベストの演奏というよりも、私がリュートや鍵盤楽器を含めた中でも最も好きな演奏は、ジョン・ウィリアムスの旧盤です。
美しく起伏にとんだプレリュード、ため息が出るような気品と緻密な構成力をみせるフーガ、圧倒的な技術の冴えをみせるアレグロ、全てに申し分ない演奏です。とくにフーガの中間部で最初のテーマに戻る直前のカンパネラの美しいこと!
やや冷ややかな感触をもちつつ妖しいまでに美しい音、この難曲をいとも簡単に弾ききってしまう圧倒的な技術は、いまなおまったく他の追従を許しません。
ところで、私が高校生の頃、セゴヴィアをきいてもイエペスをきいても凄い演奏だとは思いましたが、自分でこんな風に弾きたいとは思いませんでした。ところが、このジョン・ウィリアムスのバッハを初めてきいたとき、電流に打たれたような激しいショックを受けました。私が弾きたいと思っていたのはこんなバッハだ。また、私の理想の音色はこんな音だったんだと、心底感じさせてくれた演奏だったのです。以来、この演奏が、今日まで色々な面で私に大きな影響を与えてきました。
今日、改めて聴いてみて、想い出は確信に変わりました。
なお、ウィリアムスは、その後バッハのリュートのための作品集と題して新たにレコーディングしており、そのなかのこの「プレリュード、フーガとアレグロ」も文句なしの名演ですが、その瑞々しさと気品の高さという点で旧盤には及びません。
機会があれば、クラシックギターの最高の名演奏のひとつとして、是非この演奏を多くの人に聴いていただきたいと思います。
1番最初に聴いたのがセゴビアだったので、あの『セゴビア・トーン』が耳について、彼と彼の系統であるホセ・ルイス・ゴンザレスなどを聴いておりました。
あと聴いたのはブリーム、イエペス、山下和仁、福田進一あたりをよく聴きました。
クラシック・ギターはいつ聴いてもイイですね~。(^。^)y-.。o○
こんばんは。ご訪問ありがとうございます。
やはりJannitaさまのきっかけは、セゴビアでしたか。
あんな音はセゴビアしか出せないですよね。
ジョン・ウィリアムスはご存知の通りセゴビアの一番弟子ですが、セゴビアの音のように麻薬的な魅力はありませんが、より透明で洗練された音のギタリストだと思います。言ってみれば、私のギター好きを決定付けてくれた大恩人なんです。できれば、特に若い頃の演奏を是非聴いていただきたいと思います。今後ともよろしくお願い致します。
ありがとうございます。
カラフさまもギターを弾いておられたのですね。
何かうれしいなぁ。ブリームは怪我を克服したあとの演奏ですか?モノラル時代の若かりし頃にも、ブリームはシャコンヌ等と一緒にこの曲を録音していました。自信に満ちた恰幅のいい演奏でしたが、彼自身編曲したアレグロがとてもユニークなものだったのでよく覚えています。(絶対他の人はやらないようなアレンジです)
ジョンの演奏では、カラフさまご推薦のリュート組曲第4番のプレリュードも、水際立った演奏でしたね。
バルエコの演奏も音色が均一で、素晴らしいバランスの名演奏でしたが、ジョンの演奏は、それに加えて生き生きとした瑞々しさを感じさせてくれました。
また、彼の実演を聴きたいものです。
ブリームはモノラルですよ。イエペスのアルヒーフ盤もよく聴きました(リュートでの演奏)。ところでセゴビアのモノラルのシャコンヌは、ヴァイオリン演奏も含めて、最高の演奏のひとつ、と今でも思っています。
こんにちは。仲間のようだと言っていただけると、本当に嬉しいです。私もギターを始めた頃は独学だったので、いろいろな楽譜を探しに奔走していました。今は廃版になっていると思いますが、確か全音から出版されていたH・D・ブルガー博士のバッハ:リュート作品全集の楽譜を宝物のように持ち歩いていました。
ところで、推薦されているセゴヴィアのシャコンヌは、新盤も王者のような風格を持った名演ですが、旧盤は使命感に燃えたような(=何かにとりつかれたような)ものすごい気迫を持った演奏ですよね。若きセゴヴィアの持っていた無類のパイオニア精神と、バッハのシャコンヌという当代随一の名曲が産み出した奇跡的な名演だと私も思います。
今後とも宜しくお願い致します。
最近仕事が落ち着いてきたので、学生時代に夢中になったクラシックギターを、30過ぎて改めて習い始めた下手の横好き野郎です。よろしくお願いします。
先月からBWV998の音取をしていて、曲の事を調べているうちにこのブログに辿り着きました。僕も実家にあったジョンのレコード(たしか当時フレタを使用していたとか)を聴いて、体に衝撃が走ったのを覚えています。ラッセルやセルシェルもいいですが、やっぱりこの曲においては、ジョンの演奏がズバ抜けていると感じます。
それにしても、このブログ本当に素敵ですね。romani様の音楽やギターに対する「愛」を感じます。
突然、失礼いたしました。
ようこそおいでくださいました。
弦さまもギターを弾かれるのですね。
このBWV998、本当に素晴らしい曲ですね。
ただ、こんなに美しいのに、何気に難しい!
だからこそ、チャレンジしたくなりますよね。
お互いがんばりましょう。
>実家にあったジョンのレコード(たしか当時フレタを使用していたとか)を聴いて、体に衝撃が走った・・・
おっ、LPですね。
「ジョン・ウィリアムス コンサート」ではないでしょうか。
ムダーラのファンタジーで始まって、トローバのラ・マンチャの歌で終わるのではなかったかしら。
本文にも書きましたが、あのLPが私の原点なんです。
あのLPには、気品溢れるロイスナーのパドゥアーナとか圧倒的なヴィラ=ロボスの4番・2番も入っていて、もう100のオーダーで聴きました。
なんだか、弦さまのコメントを拝見して、とても嬉しく思いました。
今後とも、どうぞよろしくお願い致します。
昔話をさせてもらえば、やはりセルシェルのパリコンの演奏、瑞々しくてよかったですね。独学の私には天上の音楽に聞こえました。
当時この曲は偽作の疑い有りとの指摘がありましたが、その後真作が証明されています。たぶん、それにはアレグロのバッハらしからぬ意外な展開があったと思います。今聞いても「あれっ」という新鮮さがあります。
また当時FMの「バロック音楽の楽しみ」で2週間にわたった、「リュート・ギター・マンドリンの音楽」特集で皆川達郎さんだったか、「バッハにリュートのこんな素敵な曲があったのか。初めて聞いたという方も多いのではないか。」という解説を今でも覚えています。
ようこそおいでくださいました。
お返事が遅くなってしまい、本当に申し訳ございません。
>やはりセルシェルのパリコンの演奏、瑞々しくてよかったですね。
同感です。あの11弦ギターの響きを初めてFMできいたときに、「どんな楽器で、どんな弾きかたをしたら、あんな響きになるんだろう。本当にパリコンの演奏?」とため息ばかりついていました。
あのときの2位が岩永さんで、たしかバウマンだったと思いますが、あの演奏も印象に残っています。
また、皆川達郎さんのお話、なんだか嬉しいですね。
とても懐かしく思いました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。