ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

2014年に聴いたコンサート&オペラ

2014-12-31 | コンサートの感想

今年も、残すところ6時間弱。
ブログの更新については、本当にサボりまくってしまった。大いに反省しています(汗)
せめて大晦日くらいは記事を書かなければと思い、備忘録の意味も兼ねて、今年(2014年)聴いたコンサートをまとめてアップすることにしました。
感想は、Twitterで呟いたものをベースに、思いつくまま簡単に書いています。
来年が、皆さまにとって素晴らしい年になりますように。

■ツィメルマン ピアノリサイタル 1/20 @サントリーホール
<曲目>ベートーヴェン:ピアノソナタ№30~№32
演奏会は、「アバドに捧げます」というツィメルマンの衝撃の言葉で始まった。
その時点で私はまだアバドが亡くなったことを知らなかった。
演奏は、ライブでないと絶対聴けない壮絶なベートーヴェンだった。とくに後半の32番はちょっと言葉が見つからないくらい感動的な演奏。魂を鷲掴みにされるとは、まさにこんな演奏だと思う。ライブのツィメルマンはいつも凄いけど、今夜は特別だった。第二楽章の長く切ないトリルを聴きながら、私は心の中で偉大なアバドを見送っていた。

■ナタリー・デッセイ ソプラノリサイタル 4/14 @サントリーホール
<演奏>デッセイ(S)、カサール(P)
<曲目>
・クララ・シューマン~ブラームス~デュパルク~R.シュトラウス
・フォーレ~ プーランク~ドビュッシー
至近距離で見るからかもしれないが、体調本当に悪そう。それだけに逆に鬼気迫るものがあった。ブラームスが秀逸。あれだけ劣悪なコンディションの中、よくぞ最後まで歌ってくれた。あなたは紛れもなく現代最高のディーヴァです。曲の合間で何度も咳込んでいる姿が痛々しかったが、あなたの歌はやはり説得力が違う。アンコールは3曲。
2列目センターで聴かせてもらったこの日のコンサート、絶対忘れない。

■BCJの「マタイ受難曲」 4/19 @さいたま芸術劇場
<演奏>鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン
・エヴァンゲリスト(福音史家):ゲルト・テュルク(テノール)
・イエス:ペーター・コーイ(バス)
・ハンナ・モリソン、松井亜希(ソプラノ)
・クリント・ファン・デア・リンデ、青木洋也(アルト)
・櫻田 亮(テノール)、浦野智行(バス)
絶大な安心感とピュアな響きは、この日も健在。歌手もみんな素晴らしいが、中でもバスのコーイが抜群だった。これほど感動的なマタイを日本で聴けるなんて、本当に幸せだ。
BCJのピュアでしなやかな美質はそのままに、この日のマタイはさらに豊かな情感に溢れていた。しかも一音たりとも緩んだ音はない。BCJのマタイはCD・実演含め何度も聴かせてもらったが、今回が最高。

■ケフェレックの室内楽 5/3 inラ・フォル・ジュルネ
<演奏>ケフェレック、パスキエ 、東条慧、ドマルケット
<曲目>
・ハイドン:ピアノソナタ ホ短調 Hob.ⅩⅥ-34
・モーツァルト:ピアノ四重奏曲第2番 変ホ長調 K.493
聴き手を幸せにしてくれる演奏だった。冒頭のハイドンのホ短調のピアノソナタが、まず持って絶品。CDでも素晴らしかったが、生は一層ニュアンスに富んだ名演だった。あの魔法のようなタッチと色彩豊かな音色は今年も健在。

■コルポの「フォーレ:レクイエム」 5/3  inラ・フォル・ジュルネ
<演奏>
・ヴェルメイユ (ソプラノ)、エヨーズ (バリトン)、ジャンニーニ (オルガン)
・ローザンヌ声楽アンサンブル、シンフォニア・ヴァルソヴィア
ミシェル・コルボ (指揮)心から感動した。それにしても、フォーレの音楽ってなんて素晴らしいんだろう。そしてコルポのピュアで暖かい演奏が、フォーレの魅力を余すことなく伝えてくれる。
毎年当たり前のようにコルポの名演を聴かせてもらっているが、日本に住んでいる幸運に心から感謝。

■ケフェレック ピアノリサイタル 5/4 inラ・フォル・ジュルネ
<曲目>
・モーツァルト:ピアノソナタ第12番 ヘ長調 K.332
・ショパン:ノクターン 嬰ハ短調(遺作)
・ショパン:子守歌、幻想即興曲、舟歌
モーツァルトは12番のヘ長調ソナタ。昔アンヌさんがLFJでモーツァルトのソナタをまとめて聴かせてくれたが、その時の魅力的な演奏は今でも鮮明に覚えている。
今日のヘ長調ソナタもまさに絶品。流麗な中に陰影に富んだ表現はまさにアンヌさんの独壇場だった。ショパンもひたすら魅力的。

■小菅優 ピアノリサイタル 5/4  inラ・フォル・ジュルネ
<曲目>
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第19番、第20番、第21番「ワルトシュタイン」
凄いワルトシュタインを聴いてしまった。小菅さんのライブを聴くのは一年半ぶりだが、一回りも二回りも大きなピアニストになっていた。極めてスケールの大きなベートーヴェンだけど、デモーニッシュというのは当たらない。だって真摯な生気に満ち溢れていたのだから。

■ゲルネの「白鳥の歌」 5/15 @紀尾井ホール
<演奏>ゲルネ(Br)、アレクサンダー・シュマルツ(p)
ただただ感動。もうため息しか出ない。リートって、こんなに生々しく巨大なものだったのか。生ゲルネはウィーンフィルを本気にさせたマーラー以来だったが、当代随一のバリトンだと改めて実感。いただいた招待券も後方ながらS席だったし、幸運に感謝。
今夜ゲルネの白鳥の歌、プログラム通りDer Doppelgängerで終わらず、予定通り「鳩の使い」のアンコールで締めくくられて良かった。Der Doppelgängerが終曲だと、あまりの鬼気迫る歌唱に圧倒されて今夜は眠れなくなりそうだった‥

■ムーティの「シモン・ボッカネグラ」 5/27 @東京文化会館
<演奏>
・指 揮: リッカルド・ムーティ
・管弦楽: ローマ歌劇場管弦楽団、同合唱団
・演 出: エイドリアン・ノーブル
・シモン・ボッカネグラ: ジョルジョ・ペテアン(バリトン)
・マリア(アメーリア): エレオノーラ・ブラット(ソプラノ)
・ガブリエーレ: フランチェスコ・メーリ(テノール)
・フィエスコ: ドミトリー・ベロセルスキー(バス)
・パオロ: マルコ・カリア(バリトン)
第一幕まで聴き終った。やはりフリットリの穴は埋まらない。でも、でも、でも、素晴らしい。最高のシモンだ。マエストロのタクトが一閃すると、みるみる音楽に生気が宿る。ムーティの指揮ぶりを斜め後ろから見れる幸運に感謝。歌手では、フィエスコ役の存在感が群を抜いている。
素晴らしい音楽にして素晴らしい演奏だった。終演後の聴衆の笑顔が全てを物語っている。それにしても、今までムーティでハズレだったことは一度もない。特にオペラはコジ・フィガロ・シモンと圧倒的な名演ばかり。私にとってやはり最高のマエストロだ。

■ムーティの「ナブッコ」 5/30 @NHKホール
<演奏>
・指 揮: リッカルド・ムーティ
・管弦楽: ローマ歌劇場管弦楽団、同合唱団
・演 出: ジャン=ポール・スカルピッタ
・ナブッコ:ルカ・サルシ
・イズマエーレ:アントニオ・ポーリ
・ザッカーリア:ドミトリー・ベロセルスキー
・アビガイッレ:ラッファエッラ・アンジェレッティ
・フェネーナ:ソニア・ガナッシ
第一幕、相変わらず、聴き手をドキドキさせるムーティマジックは健在。セルジャンの降板は残念だけど、アンジェレッティも頑張っていた。
第二幕、ますます好調。ベロセルスキーの存在感が圧倒的だ。フィエスコもザッカーリアも凛とした中に力強さを持った名唱で魅了してくれる。それから弦が物凄く綺麗。驚いた。
第三幕以降も本当に素晴らしかった。タイトルロールのサルシも第一幕は今ひとつだったけど、途中から本領発揮。声の威力に頼らず、あれだけ情感豊かに歌われると、涙腺が緩むやないですか。それから何と言ってもあの合唱。オペラの中で聴くと感動の大きさが違います。
ナブッコの金色の翼、ムーティは一切ドライブをかけないで、民衆の中から自然に湧き出てくるような音楽として聴かせてくれた。
アンコールはなかったが、聴衆の心の中に深く刻まれたことだろう。
ムーティの手にかかると、スコアに書かれている全ての音符に命が与えられて、音符たちが生き生きと踊り出す。
どれほど感動的なイタリアオペラを体験した後でも、「素晴らしかった。でも指揮者がムーティだったらどうなっただろう」と私はいつも夢想していた。今回はその贅沢な夢から解放された。

■セガン&フィラデルフィア管弦楽団 with諏訪内晶子 6/2 @サントリーホール
<曲目>
・チャイコフスキー:ヴェイオリン協奏曲 ニ長調Op.35
・チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調Op.74「悲愴」
メリハリ感とエネルギーの迸りが強烈。しかし、この音楽は、ほんとにセガンが求めているものなのだろうか。デリカシー、ドライブ、ダイナミクス、それぞれの要素が、それぞれの器の中で表現されているように感じる。パーツパーツをとれば文句なしなのだけど。

■フリットリ ソプラノリサイタル 6/4 @東京オペラシティ
<演奏>フリットリ(S) ヴィティエッロ指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
<曲目>
・ドニゼッティ:ラ・ファヴォリータ序曲
・デュパルク:「旅へのいざない」「悲しき歌」
・ベルリオーズ歌曲集「夏の歌」より「ヴィラネル」「知られざる島」
・マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲
・トスティ:アマランタの四つの歌
・モーツァルト:≪皇帝ティートの慈悲≫
「おおヴィッテリア、今こそ~今はもう美しい花のかすがいを」
・マスネ:タイスの瞑想曲
・マスネ:≪マノン≫より「さよなら、小さなテーブルよ」
・ヴェルディ:≪アイーダ≫より「勝ちて帰れ」
・プッチーニ:マノン・レスコー間奏曲
・プッチーニ:≪トスカ≫より「歌に生き、恋に生き」
(アンコール)
・チレア:≪アドリアーナ・ルクヴルール≫より
「哀れな花よ」、「私は創造の神の卑しい僕」
・マスカーニ:≪友人フリッツ≫より 「この僅かな花を」
最前列中央という、信じられない席で聴かせてもらった。
感想なんて言えないほど素晴らしい。全ての曲が超一流だった。
特に最後のトスティは感涙もの。間違いなく、いま世界一のプリマだと思う。
フリットリ終演。まだ夢の中にいるようだ。そして、夢なら覚めないでくれと祈りたくなるような素敵なコンサートだった。
シルキーなソットヴォーチェから、強靭なフォルテシモまで、聴き手を一瞬で虜にする歌唱は今夜も健在。そして優しさとユーモアも忘れない。やはりあなたは、最高のディーバです。
フリットリ様
こんなに素晴らしいあなただから思うのですが、マエストロ ムーティと組んだあなたのアメーリアが、何としても聴きたかった。
でも、後半の最後に聴かせてくれたトスカのアリアを聴きながら、トリノの来日公演の悔しさを思い出すとともに、今宵それが聴けた幸せを噛み締めている。

■ウィーンの音楽 8/22 in草津音楽祭
<演奏>
・ヒンク(Vn)、遠山 慶子(Pf)、オクセンホファー(Va)、ベッチャー(Vc)、シュトール(Cb)、山田 百子(Vn)、シュミードル(Cl)、岡崎 耕治(Fg)、木川博史(Hr)
<曲目>
・モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454
・モーツァルト:ピアノ・ソナタ ハ長調 K.545
・シューベルト:八重奏曲 ヘ長調 作品166 D.803
今年の夏も草津音楽祭に来た。いつもながらアルペンホルンも素晴らしい。
この日のプログラムは、モーツァルトとシューベルト。
事務局長の井阪さんのシューベルトに対する深い思い入れのお話を冒頭聴いて、私も改めてシューベルト愛に目覚めた(笑)
演奏も、偉大な作曲家に敬意を表しながら、名人たちがこれぞ室内楽というべき暖かな演奏を聴かせてくれた。しみじみ音楽っていいなぁと思う。

■小菅優 ピアノリサイタル 9/13 @さいたま芸術劇場
<曲目>
・J. S. バッハ:イタリア風のアリアと変奏 BWV 989
・ベートーヴェン:ソナタ第21番 ハ長調 作品53 「ワルトシュタイン」
・武満 徹:雨の樹 素描
・武満 徹:雨の樹 素描II -オリヴィエ・メシアンの追憶に-
・リスト:《巡礼の年 第3年》より 〈エステ荘の噴水〉
・リスト:バラード第2番 ロ短調
・ワーグナー(リスト編曲):イゾルデの愛の死
(アンコール)
・ショパン:24のプレリュード 作品28より
 第11番 ロ長調 、第15番 変ニ長調〈雨だれ〉
バッハ989の変奏曲、初めていい曲だと思った。小菅さん、静寂の表現が上手くなったなぁ。ワルトシュタインはLFJの時と、基本的なスタイルは変わらないが、今日の方が情念の迸りが強く感じられた。そして、この日の白眉は後半に置かれたリスト。
凄い表現力。やっぱり、この人は天才だ。

■ドゥダメル&ウィーンフィル 9/25 サントリーホール
世界一のオーケストラにして、我が最愛のオーケストラ。今日もその魅力を余すところなく披露してくれた。ドュダメルも凄い。単に早熟の音楽家じゃないのと少し偏見を持っていたが、どうしてどうして。この人、自然流の達人です。呼吸感も完璧!

■新国立劇場 「パルシファル」 10/8
<演奏>
・指 揮 飯守 泰次郎
・管弦楽 東京フィル
・合 唱 新国立劇場合唱団
・演 出 ハリー・クプファー
・アムフォルタス:エギルス・シリンス
・ティトゥレル:長谷川 顯
・グルネマンツ:ジョン・トムリンソン
・パルジファル:クリスティアン・フランツ
・クリングゾル:ロバート・ボーク
・クンドリー:エヴェリン・ヘルリツィウス
この感動をどう伝えたらいいのだろう。ライブ映像を含め、数多くの名演に触れてきたつもりだけど、初めて生で聴いた今日の公演は格別だ。とりわけトムリンソンの存在感は際立っていた。
それから、素晴らしい演出と舞台は、かくも作品の価値を高めるものなのか。

■パッパーノ&ローマ聖チェチーリア管 withブルネロ 11/7 @サントリーホール
<曲目>
・ヴェルディ: 歌劇「ルイザ・ミラー」序曲
・ドヴォルザーク: チェロ協奏曲 ロ短調 op.104 (チェロ: マリオ・ブルネロ)
・ブラームス: 交響曲第2番 ニ長調 op.73
大好きなブルネロのコンチェルトを聴きたくてチケットを取ったのだけど、ルイザミラーからアンコールまで、これほどワクワクするような昂揚感と音楽を聴く喜びに浸れたコンサートは稀だ。
それは、やはりパッパーノの存在なしには語れないだろう。彼の音楽からは、一期一会の覚悟のようなものが伝わってくる。その覚悟が、聴衆に大きな感動を与えてくれた。そして、オケがパッパーノに対して全幅の信頼を寄せていることがビンビン伝わってくるのも嬉しい。たとえば、ブラームスの終楽章でパッパーノは要所要所で楔を打ち込む。この楔があることを知っているので、オケは思う存分歌いエネルギーを爆発させることができる。その結果として、あの昂揚感が生まれるのだ。
このオケは決して冷めた演奏をしない。温度は常にやや高めだ。その特質を土台に伸びやかに弦が歌い、木管はぽっと空間に漂う。そして力強くブラスは咆哮し、全体を見事な存在感でティンパニが引き締めていた。とりわけ、名ティンパニ奏者のカリーニの存在感が圧倒的だった。
パッパーノとオケの印象があまりに強烈すぎて、後回しになったが、ブルネロのチェロは、最高。現役のチェリストの中で、やはり私はブルネロが一番好きだ。

■ヤンソンス& バイエルン放送響 withツィメルマン 11/24 @サントリーホール
<曲目>
・ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
・ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」
前半のブラームスのピアノ協奏曲第一番では、実演のツィメルマンの凄さをまざまざと思い知らされた。ヤンソンスとツィメルマン、そしてバイエルン響が互いに強い絆で結ばれていて、大きな感動を与えてくれた。後半の新世界は、一転してスタイリッシュな快演。
硬派の演奏にもかかわらず、終始暖かさを感じさせてくれるのは、やはりヤンソンスの凄さか。

■小泉和宏&東京都交響楽団 ベートーヴェン「合唱」 12/26 @サントリーホール
<演奏>リー・シューイン、中島郁子、オリヴァー・クック、青山 貴、二期会合唱団
私にとって今年最後のコンサート。テンポは少し速めだけど、いい意味で、昔からよく知っているスタイルの第九だった。目を引く演出も、わざとらしい仕掛けもない。最近流行りの研究成果とかもない。でも、このどこかレトロな味がする第九、私は大いに気に入った。それにしても、この曲、やっぱり桁外れ。ベートーヴェンは凄い。

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