期初の出張が重なったこともあって、まだワルキューレの感想をアップできていない状態なのですが、今日、楽しみにしていたシュターツカペレ・ドレスデンのコンサートを聴きに行きました。
結論から言います。
良かった・・・。ものすごく良かった。
R・シュトラウスの素晴らしさを、余すところなく堪能させてもらいました。
というわけで、先にこちらの感想を。
<日時>2009年4月29日(木・祝)14時開演
<会場>サントリーホール
<曲目>
R・シュトラウス作曲
■交響詩『ドン・ファン』 op.20
■交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』 op.28
■交響詩『英雄の生涯』 op.40(原典版)
(アンコール)
■ウェーバー:『オベロン』序曲
<演奏>
■ファビオ ルイージ指揮
■ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
颯爽と始まったドン・ファンの冒頭を聴いただけで、「あー、リヒャルト・シュトラウス!」と思わず呟きそうになりました。
これしかないと感じさせる絶妙のテンポ、見事な呼吸感とともに内面から滲み出てくるような独特の美しいサウンド。
もう最初の10秒で私はこのオーケストラの、そしてルイージの虜になってしまいました。
ウィーンフィルを、4年前に初めてここサントリーホールで聴いた時と実によく似ています。
その時はモーツァルトとシューベルトだったけど、今日のシュターツカペレはR・シュトラウス。
これがまた良かったのでしょう。
しかし、今日聴いた音楽を、なんと表現すればいいんだろう。
伝統の力、木の香りのするような音、自発的なアンサンブル・・・。
いやいや、そんな言葉では全く足りない。私の貧困な語彙をいくら総動員してもとても語れそうにありませんが、とにかくすべての音・すべての表現に「上質の・・・」と付け加えたくなるようなサウンドだったのです。
サントリーホールは総じて音の良さで有名ですが、私の聴いた1階9列目中ほどの席では本当に極上の響きを楽しみながら、まるでオペラを見ているような錯覚を覚えました。
誰かに強制されて出てくるような音は皆無。
オーケストラのメンバー一人一人が、R・シュトラウスの音楽を熟知しているのでしょうね。どんなフレーズも歌いこまれていて、かつ終わり方がとにかく美しいのです。
それでいて自然な高揚感にもまったく不足しない。
体操選手がつま先まで神経を通わせて、惚れ惚れとするような美しいラインを作り出したかと思うと、次の瞬間豪快な大技で観衆を魅了することがありますよね。
まさにそんな印象でした。
その意味で、「英雄の生涯」の第3部~第4部は、この日の白眉だったと思います。第3部で伴侶役のヴァイオリンソロが聴かせた中低音の美しい音色と重音の響きの見事さ、第4部の最後で朗々とホールいっぱいに鳴り響く「英雄のテーマ」を聴いて、私は心から感動を覚えました。
それから、第6部のラストは通常の版とは異なり、静かに消えいるようなエンディングでした。
なんでも、もともとのエディションはこの形だったそうです。
聴いてみると、私もこの日の版のほうが自然な感じがしました。
鳴りやまない拍手にこたえて、アンコールはオベロン序曲。
この曲も、まさにこのオーケストラにうってつけの音楽なんでしょうね。
深い森、澄み切った空気といった音楽に込められた要素を、ものの見事に表現してくれました。
ルイージは、雰囲気的に「巨匠」から最も遠い感じの人ですが、その音楽はまぎれもなく王道を行っていると思います。
2年前にドレスデン国立歌劇場が来日したときに聴かせてくれた「ばらの騎士」や「サロメ」は本当に素晴らしかった。
(ただし、あのサロメの演出だけは、今もって大嫌い!)
カリスマ性を出そうとするとエキセントリックな表現になりがちですし、職人という部分に重心がかかると面白みに欠ける。
ルイージは、このバランスを実にうまく保ちながら、音楽の質を高めていっているように感じます。
いい意味での「中庸の美学」を最上の形で実践しているルイージだからこそ、私は大きな期待を寄せています。
10年後は、きっとウェルザー=メストやハーディングとともに、名実ともに彼らの時代になっていることでしょう。
この日ひとつだけ残念だったのは、特チケ等の格安チケットが出回っていたにも関わらず、少なからず空席があったこと。
演奏が素晴らしかっただけに、本当に残念です。
しかし、私にとっては、間違いなく生涯忘れられないコンサートになりました。
結論から言います。
良かった・・・。ものすごく良かった。
R・シュトラウスの素晴らしさを、余すところなく堪能させてもらいました。
というわけで、先にこちらの感想を。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/91/5771103e04d282bda45fd8badf7dcd69.jpg)
<会場>サントリーホール
<曲目>
R・シュトラウス作曲
■交響詩『ドン・ファン』 op.20
■交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』 op.28
■交響詩『英雄の生涯』 op.40(原典版)
(アンコール)
■ウェーバー:『オベロン』序曲
<演奏>
■ファビオ ルイージ指揮
■ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
颯爽と始まったドン・ファンの冒頭を聴いただけで、「あー、リヒャルト・シュトラウス!」と思わず呟きそうになりました。
これしかないと感じさせる絶妙のテンポ、見事な呼吸感とともに内面から滲み出てくるような独特の美しいサウンド。
もう最初の10秒で私はこのオーケストラの、そしてルイージの虜になってしまいました。
ウィーンフィルを、4年前に初めてここサントリーホールで聴いた時と実によく似ています。
その時はモーツァルトとシューベルトだったけど、今日のシュターツカペレはR・シュトラウス。
これがまた良かったのでしょう。
しかし、今日聴いた音楽を、なんと表現すればいいんだろう。
伝統の力、木の香りのするような音、自発的なアンサンブル・・・。
いやいや、そんな言葉では全く足りない。私の貧困な語彙をいくら総動員してもとても語れそうにありませんが、とにかくすべての音・すべての表現に「上質の・・・」と付け加えたくなるようなサウンドだったのです。
サントリーホールは総じて音の良さで有名ですが、私の聴いた1階9列目中ほどの席では本当に極上の響きを楽しみながら、まるでオペラを見ているような錯覚を覚えました。
誰かに強制されて出てくるような音は皆無。
オーケストラのメンバー一人一人が、R・シュトラウスの音楽を熟知しているのでしょうね。どんなフレーズも歌いこまれていて、かつ終わり方がとにかく美しいのです。
それでいて自然な高揚感にもまったく不足しない。
体操選手がつま先まで神経を通わせて、惚れ惚れとするような美しいラインを作り出したかと思うと、次の瞬間豪快な大技で観衆を魅了することがありますよね。
まさにそんな印象でした。
その意味で、「英雄の生涯」の第3部~第4部は、この日の白眉だったと思います。第3部で伴侶役のヴァイオリンソロが聴かせた中低音の美しい音色と重音の響きの見事さ、第4部の最後で朗々とホールいっぱいに鳴り響く「英雄のテーマ」を聴いて、私は心から感動を覚えました。
それから、第6部のラストは通常の版とは異なり、静かに消えいるようなエンディングでした。
なんでも、もともとのエディションはこの形だったそうです。
聴いてみると、私もこの日の版のほうが自然な感じがしました。
鳴りやまない拍手にこたえて、アンコールはオベロン序曲。
この曲も、まさにこのオーケストラにうってつけの音楽なんでしょうね。
深い森、澄み切った空気といった音楽に込められた要素を、ものの見事に表現してくれました。
ルイージは、雰囲気的に「巨匠」から最も遠い感じの人ですが、その音楽はまぎれもなく王道を行っていると思います。
2年前にドレスデン国立歌劇場が来日したときに聴かせてくれた「ばらの騎士」や「サロメ」は本当に素晴らしかった。
(ただし、あのサロメの演出だけは、今もって大嫌い!)
カリスマ性を出そうとするとエキセントリックな表現になりがちですし、職人という部分に重心がかかると面白みに欠ける。
ルイージは、このバランスを実にうまく保ちながら、音楽の質を高めていっているように感じます。
いい意味での「中庸の美学」を最上の形で実践しているルイージだからこそ、私は大きな期待を寄せています。
10年後は、きっとウェルザー=メストやハーディングとともに、名実ともに彼らの時代になっていることでしょう。
この日ひとつだけ残念だったのは、特チケ等の格安チケットが出回っていたにも関わらず、少なからず空席があったこと。
演奏が素晴らしかっただけに、本当に残念です。
しかし、私にとっては、間違いなく生涯忘れられないコンサートになりました。