ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

読響マチネ 《梅田俊明 スペイン・プログラム》

2008-03-23 | コンサートの感想
仕事の関係もあって、少しブログをサボってしまいました。
肩の具合も徐々に快方に向かっているようで、あとは日にち薬かと思います。
そんな中、20日に観た新国立の「アイーダ」の感想がまだ書けていないのですが、先に今日聴いた読響マチネのコメントを。

<日時>2008年3月23日(日)午後2時開演
<会場>東京芸術劇場
<曲目>
《スペイン・プログラム》
■ シャブリエ:狂詩曲〈スペイン〉
■ ラロ:スペイン交響曲
■ ファリャ:バレエ音楽 〈三角帽子〉(全曲)
(アンコール)
■バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番から アンダンテ
<演奏>
■ヴァイオリン:ジェラール・プーレ
■メゾ・ソプラノ:小川明子
■指 揮:梅田俊明
■管弦楽:読売日本交響楽団

今シーズン最後のマチネープログラムは、「スペイン・プログラム」と題して、スペインゆかりの音楽が並べられていました。
マエストロは梅田俊明さん。



シャブリエの最初の部分を聴いただけで感じたのは、梅田さんのリズム感のよさ。
踊って見せるのとは対極のタクトさばきで、とにかく、棒の動きが小さくて的確なのです。
それでいて、オーケストラから多彩な音色と圧倒的なパワーを引き出すのですから恐れ入ります。
指揮者としての基本スキルが高いのでしょうね。これは期待がもてます。

2曲目は、ジェラール・プーレをソリストに招いて、ラロの「スペイン交響曲」でした。
ドビュッシーの信頼も厚かった名ヴァイオリニスト、ガストン・プーレを父に持つジェラールは、奏者としてだけではなく、名教師としても著名な人です。
今日コンチェルトを弾くプーレを初めて見ましたが、活動域?(立っているポジションのことです)の広さに、まず大きな衝撃。
コンチェルトのソリストが立つ標準的なポジションから、ほぼ180度半円を描いた範囲を動き回るのです。
そして、ときに、オケのほうを向いて「君達、調子はどうだい?」と言いたげな感じで弾いてみたり、指揮者のほうにどんどん近寄っていき、「こんな感じでいいかい?」「おっと、そう来るのか。じゃ、こんな感じで返させてもらうよ」なんてヴァイオリンで語りかけてみたり、とにかく表情豊か。
アクションの大きな指揮者だったら、2拍目の図形を描いた時にぶつかってしまうのではないかしら・・・。
さて、視覚的なことはそのくらいにして、演奏は非常に情熱的でした。
「フランス風のエレガントな・・・」なんて考えていると、ぶっ飛ばされそうです。
しかし、ゲルマン風じゃないし、ロシア風でもイギリス風でもない。
ちょっとしたフレーズにみせる小粋な表情、リズム感を聴くと、やはりまぎれもなくフランスのスタイルなのです。
しかし、本人はきっと「いや違うよ。スパニッシュスタイルに決まっているじゃないか」と言うかなぁ。(笑)

また、アンコールでは、バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番からアンダンテを聴かせてくれました。
この演奏を、技術的な点からいろいろ指摘することは簡単でしょう。
しかし、プーレの意図は、私にはっきりと伝わってきました。
8分音符のリズムをこれ程感じさせてくれる演奏には、なかなか出会えません。
どこかエネスコの無伴奏を想わせるところがありました。

後半は、ファリャの「三角帽子」。
リズムの切れ味、色彩感、迫力ともに胸のすくような快演でした。
加えて、ときどきはっとするような美しい響きも感じられたし、メゾ・ソプラノの小川明子さんの凛とした歌唱も印象に残りました。

今日のコンサート、明日からの出張の準備もあったので、実は行くか行くまいか迷っていました。
でも、行って正解。
さあ、明日から出張だ。頑張ろう!
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グルダ&シュタインのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番『皇帝』

2008-03-09 | CDの試聴記
先週水曜日から出張で大阪方面に行っておりましたが、仕事の合間に中学時代の友人と久しぶりに再会しました。
ほぼ10年ぶりでしたが、お互い同じペースで齢を重ねているせいか、あまり変化に気づきません。
「全然変わらんなぁ。元気そうやねぇ。」と言う挨拶で会話は始まったのですが、彼には大きな変化があったのです。
5年前に右目が見えにくくなり検査してもらったところ、脳に腫瘍が見つかり手術したのだそうです。
手術は成功したものの、不運なことに腫瘍のできた場所が右耳の聴神経のすぐ近くだったため、やむなく聴神経を含めて部位全体を切除することに・・・。。
結果的に、右の聴力を完全に失うことになりました。
彼は子供の頃から左耳が少し聴こえ難く、右耳でカヴァーしている状態でしたから、手術の日以来、その十分ではない左耳だけに頼って生活していることになります。
「障害者手帳も持っているよ。でもまったく聴こえないわけじゃないし。」と笑顔で話してくれた時は、さすがに胸がつまりました。

私の知人・友人の中でも、昔から飛びぬけて純朴で誠実な男でしたが、それは今も全く変わりません。
もう、特別天然記念物に指定したいくらい・・・。(笑)
しかも驚いたのは、大変な病魔に襲われたにもかかわらず、彼はとにかく明るいのです。
そんな彼の表情に私は救われた思いがしましたが、同時に、ネガティブに考えないで、まっすぐ前をみる勇気を教わった気がしました。

そんな彼から、突然「ベートーヴェンの皇帝で、何かいいCDある?」と聞かれました。
もともと筋金入りの読書家・映画好きで、音楽にも鋭い感性を持っていた彼のことですから、果たしてどんなディスクを推薦したものかと、しばし考えて回答したのがこのグルダの演奏。
バックハウスもブレンデルも勿論素晴らしいし、個人的に大好きなラローチャ盤やギレリスがルートヴィヒと組んだ盤にしようか迷った挙句、結局グルダ盤を推薦することにしました。
幸いグルダのディスクは持っていなかったようで、早速ショップに買いに行くとの由。
気に入ってくれるといいのですが・・・。

推薦した手前、私も久しぶりにじっくり聴いてみようと思い、ディスクを取り出して聴きはじめました。
第1楽章冒頭のカデンツァから魅力十分。
「変ホ長調の音楽というのは、こんな色で鳴ってほしい」という、まさに理想型。
明るく堂々としていて、しかも流れがスムーズ。湧き出てくる音楽の中に、常に弾力性が感じられます。
さすがグルダ!
そして、シュタイン率いるウィーンフィルも、豪快な中に、「ああ、ウィーンフィル!」と感じさせる素敵な音色と豊かな表情で、グルダを盛り立てています。
また、第2楽章で聴かせる弱音の美しさと、しなやかな表現力も特筆もの。
弱音でも、リズムの拍動が常に感じられるので、決して音楽が沈み込むことがありません。
あらためて、実に素晴らしい演奏だと感じ入りました。

このディスクを推薦してよかった。
少しだけ、ほっとしています。(笑)

<曲目>
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73『皇帝』
<演奏>
■フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
■ホルスト・シュタイン(指揮)
■ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<録音>1970年

 

コメント (4)
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