ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ウェーベルン:パッサカリア by メータ&ウィーンフィル(2009/9/11)

2009-12-31 | CDの試聴記
今年も残すところあと5時間あまり。
振り返るといろいろなことがあったが、公私ともに総じて充実した1年だったと思う。
この時代に、思い通りの仕事をさせてもらえるなんて、まずもって奇跡に近い。
そのうえ、私にとって健康の源である「素晴らしい音楽」にも数多く出会えたし、音楽を愛する人たちと酒を酌み交わしながら本音で語り合い、音楽の素晴らしさを共有することもできた。
本当にありがたいことだと思う。
この幸運には、ただただ感謝あるのみだ。

今年は、政権交代に代表されるように、ドラマのタイトルではないが「Change」の年だった。
しかし、今年の「Change」はあくまでも「Change」の兆しがでてきただけであって、本当の「change」は来年以降もっともっと顕著になるはずだ。
それも色が変わる「change」ではなく、形そのものが変わっていくような予感がする。
こんなときは、冷静さと大胆さを併せ持たないとあっという間に流れを見失ってしまう。
過去に培ってきた経験だけに頼っていては、大やけどしそうだ。
ましてや、スタンドプレーなんて何の効果もない。
この矛盾する難しいテーマを実現するためには、次のようなことが大切だと自分に言い聞かせている。
①まず視野を拡げること(=カメラの位置をふらふらと動かさない)
②判断を誤らせないために、常に柔らかな感性をもつこと
③勝負どころでは大胆に行動できるように、日々の努力を怠らないこと

ここまで書いてきて、ふと思った。
「この話は、音楽でも同じじゃないか」と。
思わせぶりな演奏・奇をてらった演奏は、聴いた瞬間凄いと思っても、長く人の心にとどまることはない。
やはり「誠実さ」「真摯に見つめる眼」が何よりも大切だと思う。
嬉しいことに、ヒラリー・ハーンや庄司紗矢香さん、ピアニストのガブリリュクやフェルナーあたりは、齢は若いがすでにこの路線を進んでくれている。
来年も、彼らの素晴らしい演奏に出会えますように・・・。

さて、いま聴いているのは、大好きなウェーベルンのパッサカリア。
爆演堂でゲットした、メータ&ウィーンフィルのロンドンライブだ。
メータ~ウィーンフィル~ウェーベルンときいて、ピンとくる人がいらっしゃるかもしれない。
ピンポーン!
この録音は、今年9月11日のロンドン公演のもの。
ということは、サントリーホールで涙しながら聴いた、あの来日公演の僅か10日前の演奏じゃないか・・・。
さすがにサントリーホールで体感した「あの空気」は感じられない。
しかし、このディスクを聴くと、あの日の記憶・感動が鮮明に甦ってくる。
ブラームスの4番も素晴らしい。
こんな貴重な演奏がディスクを通して聴けるとは思わなかった。
あの日のコンサートを聴いた人にとっては「夢よ、もう一度」だし、聴けなかった人には「神様からの貴重な贈り物」になるはずだ。
私はもちろん前者だけど、本当に素敵な年の瀬のプレゼントをいただいた。
またまた、感謝・感謝です。

<曲目>
■ウェーベルン:パッサカリア
■R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」
■ブラームス:交響曲第4番    
<演奏>
■ズビン・メータ指揮
■ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
■ヴァルガ(Vc)
■フローン(Va)
<録音>2009.9.11 ロンドン(ライブ)
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2009年 私の聴いたコンサート ベスト10

2009-12-30 | コンサートの感想
今日は浜松から息子が帰省してきた。
そして、まだ婚約というわけではないが、これから一緒に暮らすという彼女を紹介してくれた。
笑顔が素敵な女性で、息子には正直もったいないくらい(笑)
このまま仲良くゴールインしてくれたら、親としてこんなに嬉しいことはないなぁ。

さて年末ということで、この1年間に通ったコンサートを振り返ってみる。
全部で60回くらいになるが、今年も素敵なコンサートにたくさん出会うことができた。
その中でベストテンを選ぶなんて、どだい無理な話。
だいたいオペラが一つも入ってないじゃないか。
スカラ座の「ドン・カルロ」も「ワルキューレ」も「リナルド」も、それぞれ感動を与えてくれたのに・・・。。
またプティボンもツィメルマンも小菅優さんも、そしてバイエルン放送響もゲヴァントハウスも入れられなかった。

まあ、今日の気分で「えいや!」で決めたと思ってください。
明日になったら、また変わるかもしれないし・・・。
それでは、とりあえず日付順に。

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☆ヒラリー・ハーン ヴァイオリンリサイタル
<日時>2009年1月7日(水),1月15日(木)
<会場>東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
■バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番イ短調
■イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第4~6番 ほか

いま私が最も好きなヴァイオリニストであるヒラリー・ハーン。
新年早々、1/7のジョシュ・リッターとのコラボレートコンサート、1/15のヴァイオリンリサイタルと、2回も彼女の演奏を聴くことができた。
ヒラリーは、どの曲に対してもきわめて自然に音楽と対峙していた。
そして驚くほどの透明感を保ちながら、冷やかな感触はまるでないという奇跡のような演奏を聴かせてくれた。
イザイも良かったが、とくにバッハの無伴奏ソナタは、私がいままで聴いたバッハ演奏の中でも飛びきりの名演。
新年最初から、こんなヒラリーの名演奏を聴けるとは、本当に幸運としかいいようがない。
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☆ブリュッヘン&新日本フィル ハイドン:交響曲第93番ほか
<日時>2009年2月11日(水)
<会場>すみだトリフォニーホール
<曲目>
ハイドン作曲
■交響曲第96番ニ長調「奇蹟」Hob.I-96
■交響曲第95番ハ短調Hob.I-95
■交響曲第93番ニ長調Hob.I-93
<演奏>
■フランス・ブリュッヘン(指揮)
■新日本フィルハーモニー交響楽団

ちっとも悲しくない音楽なのに、何故か涙が止まらなかった93番。
ブリュッヘンの孤高の音楽が、どれほどの高みに達していたかを思い知らされた。
新日本フィルの演奏も信じられないくらいピュア。
ハイドンイヤーにふさわしい名演奏だった。
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☆ケフェレック バッハコンサート
<日時>2009年5月4日(祝)
<会場>東京国際フォーラム ホールG409
<曲目>
J.S.バッハ
■コラール前奏曲「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」BWV639(ブゾーニ編)
■カンタータ BWV147よりコラール「主よ、人の望みの喜びよ」(ヘス編)
■「イギリス組曲 第3番 ト短調 BWV808」よりサラバンド
■「フルートソナタ 変ホ長調 BWV1031」よりシチリアーナ(ケンプ編)
■コラール前奏曲「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV659(ブゾーニ編)ほか
<演奏>アンヌ・ケフェレック(ピアノ)

もう涙なしには聴けない。
あの夜、ケフェレックの聴かせてくれた真摯なバッハは、その演奏姿とともに今も鮮明に思い出すことができる。
彼女のコンサートで期待を裏切られたことは一度もないが、やはりバッハとモーツァルトは別格だ。
来年は、どんなショパンを聴かせてくれるのだろう。
ラ・フォル・ジュルネが待ち遠しい。
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☆コルボ バッハ:「マタイ受難曲」
<日時>2009年5月5日(祝)
<会場>東京国際フォーラム ホールA
<歌手>
■シャルロット・ミュラー=ペリエ(ソプラノ)
■ヴァレリー・ボナール(アルト)
■ダニエル・ヨハンセン(テノール)
■ファブリス・エヨーズ(バリトン)
■クリスティアン・イムラー(バリトン)
<演奏>
■ミシェル・コルボ(指揮)
■ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル

人生で初めて生で聴いたマタイ。
もう声も出ない。あまりの感動に涙も出ない。
それほどまでに素晴らしかった。
最初のマタイがコルボのマタイでよかったと、今でもそう信じている。
あえて順番をつけるなら、やはりこのマタイが今年のベストだ。
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☆ガブリリュク ピアノリサイタル
<日時>2009年7月8日(水)
<会場> 東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
■ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番「悲愴」
■ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの3楽章
■ビゼー~ホロヴィッツ: カルメン変奏曲
<演奏>アレクサンダー・ガヴリリュク

今年も圧倒的な演奏を聴かせてくれた。
もう完成されたピアニストといっても過言ではない。
もし彼に不足しているものがあるとすれば、それはカリスマ性だけか・・・。
でも、そのカリスマ性と引き換えに「誠実さ」が失われるようなことがあっては断じてならない。
その意味では、機が熟すのを待つことも一法だろう。
いつの日か、ガブリリュクが世界を席巻する日がくると信じている。
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☆小澤征爾&サイトウキネン ブリテン:「戦争レクイエム」
<日時>2009年8月27日(木)
<会場>長野県松本文化会館
<演奏>
■ソプラノ:クリスティン・ゴーキー
■テノール:アンソニー・ディーン・グリフィー
■バリトン:ジェイムズ・ウェストマン
■合 唱:東京オペラシンガーズほか
■小澤征爾(指揮)
■サイトウ・キネン・オーケストラ

初の松本、初の生サイトウキネン、初の生「戦争レクイエム」だったが、このコンサートはただただ感動的だった。
ブリテンからのメッセージが、本当にダイレクトに伝わってきたから。
音楽の持つ凄さを思い知らされた。
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☆メータ&ウィーンフィル 来日公演
<日時>2009年9月20日(日)
<会場>サントリーホール
<曲目>
■ウェーベルン:パッサカリア op. 1
■ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 op. 98 ほか
<演奏>
■ズービン・メータ(指揮)
■ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

我が愛するウィーンフィル。
今年も恋人を待つような気持ちで、コンサート会場へ出向いた。
ブラームスの4番の第一楽章冒頭を聴いただけで、もう胸がいっぱいになってしまうのだから、冷静な評価なんてできるわけもない。
でも彼らの音楽・サウンドは、それほどまでに私を惹きつけてやまないのだ。
今回は、初の女性コンミスであるダナイローヴァも頑張っていたし、若い奏者も増えていた。伝統の芳醇なサウンドはそのままに、ウィーンフィルも徐々に変化しようとしている。
来年の来日公演は11月になるが、果たしてどんな音楽を聴かせてくれるのだろう。
タクトを握る小澤さんへの期待とともに、いまからワクワクしている。
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☆ジョン・ウィリアムス ギターコンサート
<日時>2009年10月31日(土)
<会場>すみだトリフォニーホール
<曲目>
■アルベニス:アストゥリアス/マジョルカ
■ドメニコーニ:コユンババ ほか

何をいまさらと言われそうだけど、やはり名実ともに世界一のギタリストだ。
存在感が桁違い!
スペイン物もよかったけど、とくにコユンババが感動的だった。
「心のギターの師」に、あらためて脱帽。
次回は是非バッハも聴かせてください。
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☆水戸室内管弦楽団 定期演奏会
<日時>2009年11月26日(木)
<会場>水戸芸術館コンサートホールATM
<曲目>
■ハイドン:協奏交響曲 変ロ長調 Hob.I-105 作品84
■モーツァルト:ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K.447
■モーツァルト:交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
<演奏>
■小澤征爾(指揮)
■水戸室内管弦楽団

こんな幸せなコンサートを聴けて、本当に良かった。
水戸まで行った甲斐があった。
演奏者も聴衆も、全員が同じ時間・同じ空間の中で「音楽に浸る喜び」を共有できたのだから。
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☆レ・ヴァン・フランセ
<日時>2009年12月8日(火)
<会場>東京オペラシティ
<曲目>
■ライネッケ:オーボエ、ホルン、ピアノのための三重奏曲 op.188
■プーランク:六重奏曲 ほか
<演奏>
レ・ヴァン・フランセ
(パユ,ルルー,メイエ,ヴラトコヴィチ,オダン,ル・サージュ)

名人たちのアンサンブルは、まさに至福の時を与えてくれた。
震えるような感動に涙するコンサートもいいけど、聴き手をこんなにハッピーな気持ちにしてくれる「レ・ヴァン・フランセ」も、これまた素晴らしい。
次回も絶対聴きたい!
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新国立劇場のオペラもろもろ(備忘録)

2009-12-29 | オペラの感想
今年聴いた新国立劇場のオペラのうち、書きもれたものを備忘録として。

◎ワーグナー:「ワルキューレ」
<日時>2009年4月12日(日)14:00開演
<歌手>
■ジークムント:エンドリック・ヴォトリッヒ
■フンディング:クルト・リドル
■ジークリンデ:マルティーナ・セラフィン
■ヴォータン:ユッカ・ラジライネン
■ブリュンヒルデ:ユディット・ネーメット
■フリッカ:エレナ・ツィトコーワ ほか
<演奏>
■指 揮:ダン・エッティンガー
■管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
<演出他>
■演 出:キース・ウォーナー
⇒「ラインの黄金」も良かったが、この「ワルキューレ」はさらに良かった。
第3幕はもう泣けて泣けて・・・。
すっかりワルキューレ症候群に罹ってしまい、出張の新幹線の車中でもずっと第3幕を聴いていたら、体内のセンシティヴゲージが振り切れんばかりに全開!
その結果、肝心のセミナーでは、テンションが全然上がらないという由々しき事態に・・・。
大きな教訓をもらった。


◎ショスタコーヴィチ:「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
<日時>2009年5月10日(日)14:00開演
<歌手>
■ボリス:ワレリー・アレクセイエフ
■ジノーヴィー:内山 信吾
■カテリーナ:ステファニー・フリーデ
■セルゲイ:ヴィクトール・ルトシュク
■アクシーニャ:出来田 三智子
■ボロ服の男:高橋 淳
■番頭:山下 浩司
■屋敷番:今尾 滋
■司祭:妻屋 秀和
■ソニェートカ:森山 京子 ほか
<演奏>
■指 揮:ミハイル・シンケヴィチ
■管弦楽:東京交響楽団
<演出他>
■演 出:リチャード・ジョーンズ
⇒ボリスの存在感と、カテリーナ役のフリーデが抜群。
初めてみるオペラだったが、大いに引き込まれた。
でも、やっぱり若杉さんの指揮でみたかったなぁ。


◎ロッシーニ:「チェネレントラ」
<日時>2009年6月14日(日)14:00開演
<歌手>
■ドン・ラミーロ:アントニーノ・シラグーザ
■ダンディーニ:ロベルト・デ・カンディア
■ドン・マニフィコ:ブルーノ・デ・シモーネ
■アンジェリーナ(チェネレントラ):ヴェッセリーナ・カサロヴァ
■アリドーロ:ギュンター・グロイスベック
■クロリンダ:幸田浩子
■ティーズベ:清水華澄
<演奏>
■指 揮:デイヴィッド・サイラス
■管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
■合 唱:新国立劇場合唱団
<演出他>
■演出・美術・衣装:ジャン=ピエール・ポネル
■再演演出・演技指導:グリシャ・アサガロフ
⇒最高の配役で定評のあるポネルの演出。何も言うことがないくらいの出来。
カサロヴァは、チューリッヒオペラの「ばらの騎士」以来だったが、さすがとしか言いようがない。
すっかり堪能させてもらった。


◎清水脩:「修禅寺物語」
<日時>2009年6月28日(日)14:00開演
<歌手>
■源左金吾頼家:村上敏明
■夜叉王:黒田博
■かつら:小濱妙美
■かえで:薗田真木子
■春彦:経種廉彦 ほか
<演奏>
■指 揮:外山 雄三
■管弦楽:東京交響楽団
<演出他>
■演 出:坂田 藤十郎
⇒この公演の前日、思わぬアクシデントに遭遇して、心待ちにしていた小菅さんのコンチェルトもキャンセルしたくらい。
そして心配ごとが解決しないうちにみた公演だったので、正直あまり記憶がない。
ただ、とても透明感のある美しいオペラだったことはよく覚えている。
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ヴァンスカ&読響 ベートーヴェン「第九」(12/23) @東京芸術劇場

2009-12-26 | コンサートの感想
 

今年最後のコンサート、そして今年最後の出張が終わった。
これで、ようやく一息つけそうだ。
23日は読響の第九を聴いたあと、翌日に備えてそのまま大阪へ。
画像は、泊まったホテルのロビーで私を出迎えてくれた大きなクリスマスツリー。
イルミネーションが何とも鮮やかで、見入っているうちに気持ちもすっかりリフレッシュすることができた。
その甲斐あって、翌日のセミナーは盛況のうちに終了。
最後の出張を無事終えることができて、本当に良かった。

それでは、23日に聴いた第九の感想を。
今年のマエストロはオスモ・ヴァンスカだ。
読響とは、ベートーヴェンのシンフォニーで数々の名演奏を残してきたヴァンスカだけに、大いに期待して芸劇へ向かった。

<日時>2009年12月23日(水・祝) 14:00開演
<会場>東京芸術劇場
<曲目>ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調op125〈合唱つき〉
<演奏>
■ソプラノ:林正子
■メゾ・ソプラノ:林美智子
■テノール:中鉢 聡
■バリトン:宮本益光
■指揮:オスモ・ヴァンスカ
■読売日本交響楽団
■新国立劇場合唱団

オーケストラは、予想通り両翼対抗配置。
古典派のシンフォニーについては、私は両翼配置が好きだ。
第1楽章が始まった。
小細工なしの悠然とした雰囲気がいい。これでこそベートーヴェンの音楽は活きると思う。
あえて難を言えば、ときに音の密度が薄くなるように感じられたことだろうか。
これは毎日のように大曲を演奏し続ける弊害かもしれない。
商業ベースには乗らないが、一期一会の第九を聴いてみたいものだ。
続く第2楽章は力感あふれる演奏。
ティンパニが8度音程でリズミックに大暴れする箇所では、4回フォルテでたたいて5回目は少し落とす演奏が多いが、ヴァンスカは5回ともフォルテで叩かせていた。スコアには5回目もピアノではなくdim.としか書かれていないので、この解釈もありだと思う。
温かな響きで満たされた第3楽章アダージョを経て、アタッカではつながず少し間をおいてフィナーレへ。
バリトンが歌いだすまでで興味深かったのは、何度か登場するレチタティーヴォの部分。
徹底したインテンポで絶対粘らせない。そっけないくらいの冷たい表情だ。
一方で歓喜の歌のテーマが登場すると、ふわっと柔らかな暖色系の表情に変わる。
このコントラストが実に面白かった。

歌手陣は、全体的に少し疲れているかなと感じる箇所もあったが、やはり上手い。
なかでも、テノールの中鉢さんが、声の威力に頼らず精緻に表現しようとしている姿勢に心うたれた。
そして特筆大書したいのが新国立劇場の合唱団。
もう圧倒的に素晴らしい。
高い技術は勿論のこと、何よりも気持ちの入った歌唱が、ベートーヴェンの書いた「第九」という特別の音楽の価値をさらに高めてくれた。
星空のかなたに~二重フーガのあたりにくると、私はもう涙を抑えることができなかった。

それから、終演後に挨拶のためにステージに登場したソリストをみて驚いたのは、メゾソプラノの林美智子さん。
何となくお腹がふっくらとしていたし、お腹を庇っているようにも見えたから。
後で彼女のブログをのぞいてみると、やはりおめでたで妊娠6カ月だとか。
3月まで仕事をされるそうだけど、体を大切にして可愛い赤ちゃんを産んでください。
そんなこんなで、この日のヴァンスカの第九は、今まで聴いた読響の第九の中でも私にとって特に想い出深いものになった。
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パナマ・ゲイシャ

2009-12-23 | その他
今年も残すところあと1週間あまり。
しかし、私自身、「師走だ師走だ」と言っている割には、不思議なくらい年末が近いという実感がない。
やはり予定がぎっしり入っているせいだろう。
今週も月曜からセミナーのため大阪へ。
そして昨日は、午前中大阪で会議があって、その後東京へ戻ってまた別の会議という過密スケジュール。
こんな状況が続くと、「インプットの時間」「じっくり情報を整理してビジョンを考える時間」がなくなってくるので、仕事の質という意味からは非常に危ない兆候だ。
今までの蓄積・経験があるので、一見何ともないようにみえる。
しかし、それこそが最大の落とし穴で、私が一番恐れる「コンテンツの陳腐化」が静かに忍び寄ってくるのだ。
新幹線の往復の時間等を有効に使わなくちゃ。
でもなかなかこれが難しいのです・・・

そんな中、癒しを求めて、昨日南千住にある大好きな珈琲ショップに行ってきた。
以前ブログでも紹介した「カフェ バッハ」というお店で、最高に美味しい珈琲を淹れてくれる素敵なお店だ。
今回のエントリーの表題「・・・ゲイシャ」ってなんだ?
音楽ブログのはずなのに、いよいよ頭がおかしくなってきたか?
と思われた方もいらっしゃるかもしれない。
でも、ご安心を。

「パナマ ゲイシャ」というのは、パナマ産の珈琲豆の名前で、決してパナマ人の芸者さんという意味ではありません。
この豆は知る人ぞ知る伝説の珈琲で、100gあたり3500円で取り引きされた実績があるらしい。
私が昨日飲ませてもらったのは、ママカタ農園のゲイシャ。
美味しい。もう最高に美味しい。
花のような香り、そして口に含むと最上の酸味とどこか自然な甘みも感じられる。
至福の味とはこういう味を指すんだろう。
いままでカフェ・バッハでは、エスメラルダ農園のゲイシャ、ドンパチ農園のゲイシャを飲ませてもらったが、このママカタ農園のゲイシャも負けてない。
それにしても、ドンパチ~ママカタ~ゲイシャ・・・
なんと親しみやすい名前だろう。
最高の珈琲を堪能させてもらって、疲れも一瞬にしてどこかへ飛んでいってしまった。

さあ、これから読響の第九を聴きに行って、その足でまた大阪へ。
明日は大阪でセミナーだ。
素敵なクリスマスイヴになってくれるといいんだけど。
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若杉弘&シュターツカペレ・ドレスデン ワーグナー:管弦楽曲集

2009-12-20 | CDの試聴記
前回「あらためて師走だ」と書いたばかりだけど、先週も状況は全く変わらない。
広島・東京等でテーマを変えてセミナーをこなしつつ、先月突如舞い込んできた大きなプロジェクトの仕事もやっているので、さすがに目が回りそうだ。
そういえば、年のせいか疲れのせいか分からないが、最近本当にめまいがする時があって、こっちのほうは仕事が一段落したら医者に診てもらわなくちゃ。
さて、そんな状況を精神的に救ってくれているのが、やはり大好きな音楽。
そして、先週聴いたCDの中で大きな感動を与えてくれたのが、この若杉さんのワーグナーだった。

ワーグナー作曲
■『さまよえるオランダ人』序曲
■『タンホイザー』序曲
■『リエンツィ』序曲
■『ローエングリン』第1幕への前奏曲
■『ローエングリン』第3幕への前奏曲
<演奏>
■若杉宏(指揮)
■シュターツカペレ・ドレスデン
<録音>1984年12月 ドレスデン、ルカ教会

このワーグナーの序曲集は、今年7月に惜しくも亡くなった若杉さんが、1980年代に手兵シュターツカペレ・ドレスデンと遺した3枚組のアルバムの中の1枚だ。
1月ほど前に届いていたのだが、先週ようやく聴くことができた。

素晴らしい。素晴らしすぎる。
これほど自然にそしてヒューマンで暖かい感性をもって描かれたワーグナーは、滅多に聴けない。
「上質の」という言葉がこれほどぴったりくる演奏も少ないだろう。
冒頭のオランダ人序曲から、その真摯で包み込むような音楽は、聴く者を捉えて離さない。
恣意性がないというか、妙な小細工をしないので、音楽のもつ本来の魅力が、シュターツカペレ・ドレスデンの美しい響きとともにストレートに出てくる。
どの曲も本当に素晴らしいが、とくに感銘を受けたのがリエンチ序曲。
正直に告白するが、この曲を聴いて、いままで感動したことがほとんどなかった。
しかし、若杉さんたちの演奏からは、自然に体の中から湧き出した熱い情念のようなものが、ひしひしと迫ってきた。
後半の行進曲風の箇所(アレグロ・エネルジコ)でも、やたら明るく元気な、しかし何とも軽薄な演奏が多い中、そこには心躍るような自然な躍動感があった。
だから、ラストの高揚感もこけおどしにならない。
そして、その余韻に浸っていると、続いてあのローエングリンの前奏曲が、神秘的な弱音で入ってくる。
選曲や曲の配置もとてもよく考えられていると思った。

若杉さんは、40代ですでにこんな見事な音楽を聴かせていたんだ。
新国立劇場で、そしていろいろなオーケストラとともに、彼の音楽をもっともっと聴かせてもらいたかった。
本当に残念だ。
あらためて惜しい人を亡くしたと思う。
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デュトワ&NHK交響楽団 C定期(12/12) グラゴル・ミサほか @NHKホール

2009-12-13 | コンサートの感想
先週はコンサート、セミナー、会食と連日予定がびっしりで、あらためて師走だと実感。
でも、私の元気の源は「素敵な音楽」「美味しいお酒」「香り高い珈琲」なので、体はともかくメンタルな面ではむしろプラスになったかもしれない。
そんな中、昨日はNHK交響楽団の定期演奏会を聴いてきた。

<日時>2009年12月12日(土)15:00開演
<会場>NHKホール
<曲目>
■チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
(アンコール)
■クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース
■ヤナーチェク:グラゴル・ミサ
<演奏>
■ヴァイオリン:アラベラ・美歩・シュタインバッハー
■ソプラノ:メラニー・ディーナー
■アルト:ヤナ・シーコロヴァー
■テノール:サイモン・オニール
■バス:ミハイル・ペトレンコ
■指 揮:シャルル・デュトワ
■管弦楽:NHK交響楽団
■合 唱:東京混声合唱団


前半は、アラベラ・美歩・シュタインバッハーをソリストに迎えてのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。
シュタインバッハーのコンチェルトは、10月のゲヴァントハウスとの協演でモーツァルトの3番を聴いて以来だ。
彼女は非常に丁寧に音を紡いでいく。激情に駆られて自分を見失うようなことは決してない。
もっとドラマティックに演奏するタイプだと思っていたが、中低音をたっぷり響かせながら堂々と奏でていた。むしろデュトワのほうが音楽を動かしたがっているような箇所もあって、それはそれで駆け引きが面白かった。
その意味で彼女の持ち味が最高に発揮されていたのが第2楽章。
非常に密度の濃い演奏だった。
余談になるが、このカンツォネッタのテーマは、どこかカタロニア民謡の「鳥の歌」に似ている。来年春に閉館が決まっているカザルスホールのことも思い出しながら、なんとも言いようのない寂しさを感じた。
アンコールは、10月の時と同様にクライスラーのレチタティーヴォとスケルツォ・カプリース。
きっと彼女の得意の曲なんだろう。華麗でかつ大胆、聴きごたえ十分の素晴らしい演奏だった。このアプローチでチャイコフスキーもやってくれたら、わたし的にはもっとよかったのに・・・。
しかし、クライスラーの難曲を自家薬籠中のもののように演奏した彼女の実力を目の当たりにすると、今後ますますシュタインバッハーから目が離せないと実感した次第。

後半はヤナーチェク晩年の傑作グラゴル・ミサ。
以前読響マチネ-でこのミサを聴いたときに、常任指揮者だったアルブレヒトが、「ヤナーチェクの音楽は、ビター味のチョコレートのようなものです」という解説をしてくれて、文字通り「目から鱗がおちる」ような思いをしたことが懐かしく思い出される。
グラゴル・ミサは、ラテン語の典礼文ではなく古代スラヴ語(グラゴル文字)に訳された典礼文が用いられているところが大きな特徴。
この日の独唱者4人は、舞台下手からアルト・ソプラノ・テノール・バスと並んでいた。
つまり指揮者の両側にソプラノ、テノールがくることになり、一瞬戸惑ったが、これはこのミサにおけるソプラノとテノールの重要性を考えると当然かもしれない。
プログラムによると、作曲者自ら「独唱テノールからは司祭の声が、独唱ソプラノからは天使の声が、そして合唱からは民衆の声が聞こえてきた」と言ったそうだ。
この日の演奏では、アニュス・デイ以降の深い表現に私は大きな感銘を受けた。
独唱者はもとより、合唱もオルガンも本当に素晴らしい出来だったと思う。
そして、全体を束ねるデュトワの懐の深さには、いつもながら感服するばかり。
全体を見据えたうえで音楽そのものに息を吹き込むことが指揮者の最大の仕事だとすると、デュトワはやはり現代の偉大なマエストロのひとりだろう。
あまり演奏される機会が多いとは言えないグラゴル・ミサだけど、この作品はやはり実演できくべきだ。
2回も生で聴くことができた幸運に感謝しなければ・・・。
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レ・ヴァン・フランセ(12/8) @東京オペラシティ

2009-12-09 | コンサートの感想
『赤星引退!』
夕刊紙の見出しでみつけて、「でたらめ書いたらあかんで」と思いながら、赤星選手のブログをみると悲しいことに事実だった。
残念だ。本当に残念だ。
あの小柄な身体で一流選手として活躍し続けるためには、きっと想像を絶する節制と努力を日々重ねてきたことだと思う。
また、彼は毎年自分の盗塁数と同じだけの車椅子を寄付するような心の優しい男だったが、「今度痛めたら半身不随、場合によったら命の危険もある」と医師から警告されて引退を決めたという。
そして何よりも故障のために思い切ったプレーができないことを、プロフェッショナルとして赤星選手はよしとしなかったんだろう。
心から「ご苦労様でした」と言ってあげたい。

そんな赤星選手を支えていたのは、その強烈なプロ意識。
こじつけるわけではないけど、昨夜聴いたレ・ヴァン・フランセのコンサートも、まさに強烈なプロ意識をもった名人たちの協演だった。
どの曲もどの曲も、呆れかえるくらい上手い。
パユ、メイエ、ルルーたちは勿論のこと、あの難しい楽器であるはずのホルンが、そしてなかなか聴く機会がないバソンまでもが、完璧な音程と多彩な音色で私たちを魅了してくれた。
加えて、そこには「これぞアンサンブル!」といいたくなるような自由な精神の羽ばたきが感じられた。
鍛え上げた技量を駆使して、まず自分たちが心から愉しむ。そしてそれを聴衆にもメッセージとして伝えきる。
これは簡単そうでいて、本物のプロでないとできないことだ。
レ・ヴァン・フランセの名手たちは、それをいとも簡単にやってのけた。
こんな素晴らしい演奏を前に、この曲は…、あの曲は…、なんてコメントはまったく不要だろう。
名人たちの至芸に酔いしれ、最高にハッピーな時間をプレゼントしてもらった。

<日時>2009年12月8日 19:00開演
<会場>東京オペラシティ
<曲目>
■マルティヌー:六重奏曲
■ラヴェル:クープランの墓
■カプレ:フルート、オーボエ、クラリネット、バソンとピアノのための五重奏曲
■ライネッケ:オーボエ、ホルン、ピアノのための三重奏曲 op.188
■サン=サーンス:フルート、クラリネット、ピアノのためのタランテラ op.6
■プーランク:六重奏曲
(アンコール)
■テュイレ:六重奏曲より「ガヴォット」
■イベール:3つの小品より第1曲
■マルティヌー:六重奏曲より第5楽章

<演奏>
レ・ヴァン・フランセ
■エマニュエル・パユ(Fl)
■フランソワ・ルルー(Ob)
■ポール・メイエ(Cl)
■ラドヴァン・ヴラトコヴィチ(Hr)
■ジルベール・オダン(バソン)
■エリック・ル・サージュ(Pf)
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バッハ・コレギウム・ジャパン ヘンデル:歌劇《リナルド》(12/6) @東京オペラシティ

2009-12-08 | オペラの感想
今年はヘンデルのメモリアルイヤー(没後250年)だというのに、どういうわけか殆ど聴く機会がなかった。
そんなこともあって、是非一つでいいからヘンデルの大きめの作品を聴いておきたいと思い、BCJの「リナルド」を聴きにオペラシティへ。

ヘンデル:歌劇《リナルド》HWV7a [演奏会形式]
<日時>2009年12月6日(日)15時開演
<会場>東京オペラシティ
<演奏>
■鈴木雅明(Cond)
■バッハ・コレギウム・ジャパン(管弦楽)
■リナルド:ティム・ミード(C-Ten)
■アルミレーナ:森 麻季(Sop)
■アルミーダ:レイチェル・ニコルズ(Sop)
■アルガンテ:萩原 潤(Bar)
■ゴッフレード:クリストファー・ラウリー(C-Ten)
■エウスタツィオ:ダミアン・ギヨン(C-Ten)
■マーゴ・クリスティアーノ:上杉清仁(C-Ten)ほか

この日の席は、1階7列目の中央ブロックという最高の席。
早めに席についてプログラムをめくっていると、オケのメンバー表の中に、若松夏美さん、鈴木秀美さんといったBCJおなじみの名前とともに、ティンパニ&パーカッション奏者として菅原淳さんの名前を見つけた。
菅原さんと言えば、惜しまれながら一昨年読響を定年退団された私の大好きなティンパニストだ。
これは懐かしいなぁ。
さて、どんな演奏を聴かせてくれるのだろう。
演奏会形式ということもあって、舞台下手側に3人のカウンターテナー(リナルド,ゴッフレード,エウスタツィオ)が座り、上手側には、アルミレーナ,アルミーダ,アルガンテの3名が座るという配置。
アルミレーナはゴッフレードの愛娘でリナルドの恋人でもあるのだから、本来十字軍側のヒロインのはず。でも彼女が下手側に来ると4:2になって視覚的にもバランスが悪いし、1幕の途中でアルミレーナはさらわれてエルサレム側に連れて行かれることを考えると、やむを得ない選択か。

第1幕では、まずアルガンテの対をなすアリアがいい。
萩原さんの歌は、強さと優しさを豊かな表情で歌い上げてくれて素晴らしかった。
そして、アルミレーナがさらわれた後、失意のリナルドが歌うアリアはもう絶品。
3人のカウンターテナーの中でも、リナルド役のティム・ミードの存在感はやはり1番だった。

第2幕は、第1幕よりもさらに密度の濃い音楽を聴かせてくれた。
有名な「私を泣くがままにさせてください」が、やはり前半のクライマックス。
決してストーリーの展開上重要なアリアではないのだけれど、この崇高なまでの美しさはこのオペラの最大の聴きどころだ。
もともと森麻季さん得意のアリアだけど、オペラの中で出てくると一味もふた味も違う。
とくに後半、上品な装飾を施して歌われる箇所が見事。
声量こそやや控えめではあるが、彼女のピュアな歌唱は、清楚で凛とした美しい舞台姿とともに、忘れがたい印象を与えてくれた。
続くアルミーダの変身の場面は、ヴェール1枚を使ってとても巧みに行われていた。
舞台上演でよくみられる自己主張の強い演出に辟易とさせられるよりも、演奏会形式でさりげなくこんな演出をしてくれるほうが遥かにいい。
そしてリナルドに振られた魔女アルミーダが歌う、レチタティーヴォとアリアも素晴らしかった。
このときレチタティーヴォで伴奏するオーボエが哀しいくらい美しい。
三澤寿喜さんがプログラムの中で書かれている次の言葉に、私は全面的に共感する。
「社会的弱者や忌み嫌われる者、哀れな者に人一倍、深い共感を寄せるヘンデル。アルミーダを描くときのヘンデルの音楽は豊かな霊感に満たされていて感動的である」
第2幕の最後はそのアルミーダのアリア。
レイチェル・ニコルズも抜群に上手いけど、ここでは何といってもチェンバロが光っていた。もうこれはチェンバロ協奏曲といっても過言ではない。
チェンバロ独奏は鈴木優人さんだったが、この人のチェンバロは本当に素晴らしい。
テクニックもさることながら、音楽を楽しく聴かせる術を知った人だ。
私は5月にラ・フォル・ジュルネで聴いたバッハのカンタータ78番の妙技を思い出していた。

第3幕は、第2幕までと明らかに違う。
それまで、前後左右に表現の幅を持たせていたヘンデルが、ここでは真っ直ぐ前に向かってエネルギーを解き放っている。
とくにリナルドがアルミーレーナと再会する以降の音楽は、「王宮の花火の音楽」あたりと同様に独特の華やかさをもっていて、楽しませてくれた。
BCJの演奏も見事。
最後はアルミーダとアルガンテがキリスト教に改宗して6重唱を歌いハッピーエンド。

この「リナルド」というオペラ、3枚組のCDを聴いてもなかなかピンとこなかったが、この日の上演を聴いてすっかり気に入ってしまった。
やっぱり生の演奏は素晴らしい。
終演後の長い長い聴衆の拍手が、演奏の素晴らしさを物語っていた。
来年は4月にさいたまの芸術劇場でBCJのマタイを聴く予定だ。
きっと感銘深いマタイになることだろう。
今から楽しみにしている。
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松山出張ほか

2009-12-06 | その他
先週の後半は、松山出張だった。
関西生まれの関西育ちのくせに、なんと初めての四国行。
飛行機に乗っているときから、私は子供の遠足のときのようにそわそわしていた。
でも迎えてくれた松山は本当に素敵な街で、温泉はもとより、人情味があって気候も温暖、おまけにで食も最高。
人口50万人の四国随一の都市でありながら、昔のロマンがそのまま残っていた。
ただ、今回の出張は、セミナーを含めて超ハードなスケジュール。
まったく人使いの荒い会社だなぁ(笑)
そんな厳しさを忘れさせてくれたのが、仕事の合間を見つけて見学した松山城。
美しく、威厳をもった名城だった。

そして、土曜日はお世話になっているyokochanさまにお誘いいただいてクラヲタ会へ参加させてもらった。
音楽好きな人は、何故かお酒好き、食通の方が多い。
食べるほどに飲むほどに話が盛り上がる。
気がつくと、あっという間に5時間が過ぎていた。
しかし、話をしてみると、みなさん実に「こだわり」が強い。
演奏家、作曲家、演奏スタイル等、人によって「こだわり」のテーマは違うけど、「こだわり」を持って音楽に接するから面白いのだ。
本当に楽しいひと時を過ごさせていただいた。
皆様ありがとうございました。

そして今日日曜日は、バッハ・コレギウム・ジャパンの「リナルド」を観てきた。
これがまた最高!
「私を泣かせてください」というアリアだけが飛び抜けて有名だけど、こんなに魅力的なオペラだったのだ。
詳しくは次回に。
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ゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管弦楽団来日公演(12/2) @サントリーホール 

2009-12-02 | コンサートの感想
ゲルギエフ率いるマリインスキー歌劇場管弦楽団の来日公演を聴いてきた。
今回サントリーホールでは4回公演があったが、今日が最終日。
ロシアの作曲家一人ずつにスポットを当てたプログラムで、
1日目がムソルグスキー、2日目がチャイコフスキー、3日目がショスタコーヴィチ、そして最終日の今夜がストラヴィンスキーといった内容。

今日のコンサートは、ジャパンアーツが年1回会員を招待してくれるチケットで聴くことができた。
席は1階5列目。S席相当の席をプレゼントしてくれたジャパンアーツに感謝。

≪オール ストラヴィンスキープログラム≫
<日時>2009年12月2日(水) 19時開演
<会場>サントリーホール
<曲目>
■バレエ音楽「カルタ遊び」
■ピアノと管弦楽のためのカプリッチョ
■バレエ音楽「春の祭典」
(アンコール)
■スカルラッティ:ソナタニ短調(ピアノ:トラーゼ)
■シチェドリン:お茶目なチャストゥーシェカ
<演奏>
■アレクサンドル・トラーゼ(ピアノ)
■ワレリー・ゲルギエフ指揮
■マリインスキー歌劇場管弦楽団

前半では、カプリチョがとても印象に残った。
こんなに素敵な曲だったんだ。
トラーゼのピアノも抜群。
そして大きな歓声に応えてアンコールで聴かせてくれたスカルラッティの、これまた何と素晴らしかったことか。
後半最弱音で奏でる表現が息をのむほど美しい。
最後の音が消えて行ったあとも、10秒いや20秒以上サントリーホールはまったくの静寂の世界。
感動を共有できた素晴らしい聴衆にもブラーヴォだ。

後半は、「春の祭典」。
先日、ブーレーズがクリーヴランドと協演したCBSの旧盤を久しぶりに取り出して聴いてみた。
そして、「これは、もう純音楽だ。理屈で音楽が成り立っているけど、ここまで徹底できたら本当に凄い!」と改めて感動した。
一方、今日のゲルギエフたちの演奏はまるで違った。
明らかにバレエのための音楽なのだ。
速い部分はものすごいテンポだし、遅い部分は徹底的に粘る。
しかし、どんな場合も、ダンサーのことを考えた音楽の作り方だった。
ダンサーがジャンプするだろうなと思う場面の直前には、必ず息を吸い込んで一瞬ためをつくるし、テンポにしても速い遅いというよりも何よりも踊れるためのテンポ設定なのだ。
重戦車のようなパワフルなサウンド、独特のヴィブラートを伴った炸裂するブラス、その間隙を縫って巧みに音を紡いでいく弦。
音楽を文字で表現するとそんな感じなのだが、そんな表現よりも、「踊りのための音楽」と言うほうがはるかに的を得ていると思う。
私は聴きながら、2008年のザンクトペテルブルク白夜祭のときの映像を思い浮かべていた。
こんな演奏を聴かされたら、次回もまた聴きたくなってしまうではないか・・・。
ブラーヴォ!ブラーヴォ!
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