ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

バリオス:パラグアイ舞曲 第1番 デヴィッド・ラッセル(ギター)

2010-06-27 | CDの試聴記
今夜聴いたフリューベック・デ・ブルゴスが読響を指揮したブラームス(1番&3番)は、まさに男のブラームスといった風情の演奏で、本当に素晴らしかった。
近日中に、もう少し詳しく感想を書くつもりです。

さて、最近の明るい話題と言えば勿論ワールドカップ。
明後日ベスト8をかけて対戦する相手は、南米のパラグアイ。
予選リーグと同様、とにかく気持ちのこもったプレーをしてくれたら、必ずや勝機が訪れるでしょう。
サムライブルーの勇者たちに幸いあれ!

パラグアイと聴いて私がすぐに連想するのは、大ギタリストにして偉大な作曲家であったアグスティン・バリオス=マンゴレ。
あのギターの神様アンドレス・セゴヴィアですらバリオスの凄さを恐れ、生涯彼の作品を一度も公には演奏しなかったと伝えられるほどの存在だった。
大学生の時に、バリオスが自作の作品を演奏したテープを聴かせてもらったが、そのときの衝撃は今も忘れられない。
古ぼけた音の中から伝わってくる、魔人のような圧倒的な技術、聴き手の心を捉えて離さない歌心。
まさに驚愕の演奏だった。
同じコンポーザー=ギタリストであったタレガやリョベートとも違う。同じ南米人のビラ=ロボスともこれまた微妙に違う。
ロマンティックで、詩的で、かつ大胆。
バリオスの作品をまだお聴きになったことのない方がいらっしゃったら、是非だまされたと思って一度聴いてみてください。
敬虔な美しさに満ちた名作「大聖堂」、トレモロの魅力が最高に活かされた「森に夢見る」「最後のトレモロ」、ひょっとしてショパンのそれにも比肩するのではないかと秘かに思っているワルツ第3番・第4番、これぞバルカローレといいたくなる可憐な「フリア・フロリダ」、その他数多くの作品が残されているが、どれをとっても名曲・佳曲ばかり。
エントリーした「パラグアイ舞曲第1番」もそんな傑作のひとつだが、こちらは民族風のきわめて快活な音楽。
その底抜けの明るさは、バリオスのもうひとつの魅力であるとともに、パラグアイ人の気質だと思う。
29日の試合では、この舞曲に聴くパラグアイの人たちのタフネスさに負けないで、ひたすら自分を信じて前に向かって進んでほしい。

バリオスの曲のお勧めの演奏は、やはりバリオス再評価の最大の功労者でもあるジョン・ウィリアムズが録音した3枚のディスクに止めをさす。
ただ、「パラグアイ舞曲第1番」のジョンのCDがどうしても見つからなかったので、私のもう一枚のお気に入りであるラッセルのディスクをご紹介させていただくことにした。
レゴンディやメルツ、コストといったロマン派のギター曲を弾かせたら、現在この人の右に出る人はいないだろう。
そんな名手ラッセルは、やはりバリオスを弾かせても超一流だった。
このディスクに収録されているすべての曲が名演といっても差し支えない。
お勧めです!


☆バリオス作品集
<曲目>
■森に夢みる
■ガヴォット・マドリガル
■パラグアイ舞曲 第1番
■パラグアイ舞曲 第2番 ≪おお、わが故郷≫
■パラグアイ舞曲 第3番 ≪ロンドン・カラペ≫
■フリア・フロリーダ
■ワルツ ニ短調 作品8の3
■春のワルツ
■熱帯風ワルツ
■ワルツ ト長調 作品8の4
■蜜蜂
■ファビニアーナ
■マズルカ・アパッショナータ
■扇の国
■クエカ
■大聖堂
■わが母に
■カアサパー
■最後のトレモロ (神様のご愛情に免じてどうか施しを)
<演奏>デヴィッド・ラッセル(ギター)
<録音>1994年2月,3月 カリフォルニア
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小菅優の現在vol.2 アンサンブルの愉しみ(6/11) @彩の国さいたま芸術劇場

2010-06-14 | コンサートの感想
さすがに少々テンパってきた。
本当のところを言うと、「少々」という言葉も要らないくらいだ。
でも周りにはなかなか信じてもらえないみたいで、会社の公開予定表で「今日は一切予定を入れない」と宣言していても、結果的に殆んど自分の時間がとれない状態。

しかし、先週の金曜日だけは別。
大好きな小菅さんのコンサートがある日だったから。
午後に出張先で3つの会議がセットされていたが、それぞれを半ば強引に(いやコンパクトにと言っておこう)終わらせ、作りかけのセミナーの原稿をUSBメモリーに移し替えるや否や、鞄を抱えて一目散に駅へ。
電車の中でも走りに走った(?)が、やっぱり開演時間には間に合わなかった。
ホールに到着したのは、1曲目のシャコンヌの途中。
ちょうど、中間部のニ長調に転調したあたりだった。
この日のシャコンヌは、ヴァイオリンとピアノのためにシューマンが編曲した珍しいバージョン。
華麗というよりは可憐、「憂愁のシャコンヌ」と呼びたくなるようなアレンジで、なかなか魅力的だった。

次のピアノ四重奏曲からは、会場の客席で聴いた。
この曲は何度か書いてきたように私の大好きな作品で、先月もラ・フォル・ジュルネで聴いたばかり。
そのときはライプツィヒ・カルテット達の演奏だったが、この日の小菅さんたちの演奏はさらに上を行っていた。
やはりピアニストの差が大きい。
ラ・フォル・ジュルネのときにピアノを弾いていたダヴィッド・カドュシュは、いかにも若かった。
それに比べて、小菅さんのピアノはまさに大人のピアノ。
弦楽器の音の隙間を素晴らしい音色とリズム感で見事に埋めながら、要所要所ではリーダーシップを発揮して、常にアンサンブル全体を引き締めていた。
第3楽章の悲しいくらい美しいアンダンテ・カンタービレから躍動感に溢れたフィナーレが、とりわけ魅力的だったなぁ。

また、この日の共演者たちは文字通りの豪華版。
全員がソリストというと、ときに大味になる惧れもあるが、この日のメンバーに限っては全くの杞憂だった。
樫本大進さんの強力なリーダーシップもあって、アンサンブルは緊密。
全員がそれぞれのメンバーを信頼していることがビンビン伝わってくるのが、なによりも嬉しいじゃないですか。
とくに「静から動」「動から静」の表現が絶妙で、シューマン特有の憂いの表現にもまったく不足しない。
きわめて上質なシューマンを聴かせてもらったと、心から感謝した次第。

実は、小菅さんの体調が最近あまりよくないと聞いていたので心配していたが、この日の演奏を聴く限り大丈夫そう。
でも、決して無理はしないでくださいね。
次回のコンサートを楽しみにしています。

<日時>2010年6月11日(金) 開演19:00
<会場>彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
<曲目>
■バッハ(シューマン編曲): 《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番》BWV1004より「シャコンヌ」(ヴァイオリンとピアノのための編曲版)
■シューマン: ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47
■シューマン(ドビュッシー編曲):ペダル・ピアノのための6つのカノン風小品 作品56
(2台ピアノのための編曲版)
■シューマン: ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44
(アンコール)
■シューマン:「子供の情景」より終曲(小菅優)
<演奏>
■樫本大進、佐藤俊介(ヴァイオリン)
■川本嘉子(ヴィオラ)
■趙 静(チェロ)、
■小菅 優、居福健太郎(ピアノ)





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河村尚子&ルイージ/ウィーン響 ベートーヴェン:「皇帝」ほか(6/1)@サントリーホール

2010-06-06 | コンサートの感想
総理大臣が変わるという激動の一週間だったが、私が望むのは、管さんが民主党のトップとしてではなく、どんな場合でも日本のリーダーとして志を高く持ってくれることだけだ。
まずはイニング限定の登板。
クローザーの役割は期待しないが、少なくともセットアッパーとしてゲームを立て直してほしい。
この半年間、あまりに大局感のない政策・対応が多すぎた。
アンチ民主党の私だが、日本が沈没しないように、ここは新首相に期待したいと思う。
大変だと思うけど、頑張ってください。

さて、そんな中、6月1日にウィーン交響楽団の来日公演を聴いたので、その感想を。
追加公演と銘打たれたこのコンサート、当初行く予定ではなかった。
しかし、ソリストが河村尚子さんと知って、あわててチケットを購入した次第。
クラシカジャパンの紹介番組やBSで見た河村さんのシューマンの演奏がとても素晴らしかったので、是非一度生で聴いてみたいと思っていた。

この日の「皇帝」を聴いて、まず感じたのは音色の美しさ。
単音でもアルペッジョでも、とにかく音の粒が揃っていて、聴いていて心地よい。
その音色の美しさが、彼女の瑞々しい感性と相まって鮮烈な印象を与えてくれる。
その意味でも、第2楽章がとくに素晴らしかった。
それから、河村さんのもうひとつの大きな特徴は、知的なコントロール能力。
感情の趣くままに弾いて、音楽のバランスが崩れたりするようなことは皆無だ。
また、オケのアンサンブルが乱れたり表情が少しでも変化すると、瞬時にそれを感じ取ってピタリと合わせてくる。
思わず「お見事!」と言いたくなる場面が何度もあった。
昨年共演したフェドセーエフが激賞していただけのことはある。
終演後、購入したCDにサインをしてもらったが、素顔の彼女もこれまたチャーミングだった。
また、追っかけてみたいピアニストである。
それにしても贔屓のアーティストがどんどん増えてきた・・・。あ~どうしよう(泣)

というわけで、河村さんのピアノには大きな感銘を受けたのだけど、「皇帝」のバックをつとめたウィーン響には少なからず不満が残っていた。
今回の来日公演の中で「皇帝」が唯一のプログラムであったことも原因かもしれないが、とにかく粗い。
とくに第1楽章にそれが顕著で、どこか気乗りがしないような印象すら感じられた。
第2楽章以降は、それでもかなり良くなってきたが・・・。
もしこれでコンサートが終わっていたら、きっと「ルイージもウィーン響も、大したことかった」という結論だっただろう。
しかし、後半の「運命」で、このオケは一変する。
素晴らしいテンポで第一楽章が始まった。
そこには、何の気負いも強引さもない。
にもかかわらず、緊張感や力強さが自然に音となって滲み出てくる。
響きも、前半の「皇帝」の時とはまるで違う。
ウィーンのオケらしく、豊かで弾力性を持ったサウンドになっていたのである。
気がつくと、圧倒的な高揚感の中でフィナーレを迎えていた。
ブラーヴォ!ブラーヴォ!

これだけ格調高い「運命」を生で聴いたのは、ジュリーニ&ロスフィルの来日公演以来かもしれない。
この日の名演は、もちろんオーケストラの美質あってのことだが、何よりもルイージの功績が大きい。
マエストロ、さすがです。脱帽でした。
アンコールの3曲も、ホール全体がノリノリになるような快演。
最後まで聴けて本当によかった。

<日時>2010年6月1日(火) 19時開演
<会場> サントリーホール
<曲目>
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 「皇帝」
■ベートーヴェン:交響曲第5番 「運命」
(アンコール)
■R・シュトラウス:孤独な泉のそばで(河村尚子)
■J.シュトラウス:ウィーン気質
■J.シュトラウス:雷鳴と稲妻
■J.シュトラウス:ピッツィカート・ポルカ
(演奏)
■河村尚子(ピアノ)
■ファビオ・ルイジ(指揮)
■ウィーン交響楽団
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