ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

「我が魂の安息、おおバッハよ」鈴木雅明著 (音楽之友社) 

2005-02-22 | 書籍の感想
「我が魂の安息、おおバッハよ」は、
バッハ・コレギウム・ジャパンの創始者にして日本のバッハ演奏の第一人者である鈴木雅明氏が、マタイ受難曲やカンタータ等のバッハ音楽について書きしるしたものです。
昨年、リリングのバッハ大全集を購入して以来、バッハの新たな魅力にとりつかれてしまった私ですが、そんな中この素晴らしい名著と出会いました。
鈴木雅明氏率いるバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏は、CDやBS放送等で聴いてその誠実さ・純度の高さにずっと心惹かれておりましたが、この本を読んでその原点が分かったような気がします。
バッハの音楽について、学術的な観点から分析を行った本は相当数存在しますが、演奏家の立場で論じたものは、過去からあまりなかったと思います。
例えば、マタイ受難曲で、曲全体を貫く3重構造(エバンゲリスト、アリアの歌い手、コラール)について触れた後、それをどうやって実現していくか、何処が難しいのかを分かりやすく書かれています。大バッハの音楽に対し、選ばれた専門家がどうやって対峙していこうとしているのか、その秘密の一部が垣間見えるような気がしました。
実は、もったいなくてまだ最後まで読めていないのですが、完読した後も、きっと座右の書として何度でも読み返すことと思います。
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ラザレフ&読売日響のチャイコフスキー交響曲第4番他

2005-02-17 | コンサートの感想
2月の読響芸劇名曲コンサートに行ってきました。

<日時>平成17年2月17日(木)
<曲目>
ベルリオーズ 序曲〈海賊〉Op.21
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 Op.26
チャイコフスキー 交響曲 第4番 ヘ短調 Op.36
<演奏>
指 揮   :アレクサンドル・ラザレフ
ヴァイオリン: カトリーン・ショルツ

1月の芸劇マチネーが残念ながら仕事でいけなかったので、その振り替えとして久しぶりの名曲コンサートに行かせてもらいました。おかげで、2月のマチネーコンサートに続いて連続してラザレフのチャイコフスキーを聴くことができました。

まず1曲目のベルリオーズは、明るく快活な演奏で、オープニングにはぴったり。
続くブルッフの1番は、数あるヴァイオリン協奏曲の中でも私が最も好きな曲です。
ミーハーといわれようと何といわれようと、特に第二楽章からフィナーレの部分をきくと、いつも涙が出そうになります。
3年ほど前になりますが、諏訪内晶子さんと神尾真由子さんの演奏を中一日おいて聴いたことがあります。
どちらも素晴らしい名演でした。
諏訪内さんの演奏は、まさに凛とした演奏で、特に低音の意味深さはまるでヴィオラを聴いているような錯覚を覚えるほどのものでした。
一方神尾さんの演奏は、体当たり的な熱演で、気持ちがひしひしと聴き手に伝わってくるものでした。(この演奏は幸い、読売日響の年間会員向けの非売品CDとして配られており、私にとっても大切なアルバムの一つです)

さて、今日のショルツ。
やはりうまい。アンコールで聴かせてくれたバッハの無伴奏ソナタのプレストも含めて、素晴らしい集中力とテクニックです。
さすがに東京の国際コンクールで諏訪内さんを抑えて優勝しただけのことはあります。
ただし、コンチェルト全体としては、残念ながら先ほど書いた3年前の2つの演奏ほどの感動が得られませんでした。
伴奏しているラザレフ&読売日響が、少し荒っぽいのです。
あの美しい第二楽章や、続くフィナーレの中間部のクライマックス、
「もっと音を大事にしながら、深く大きく歌ってくださーい!」
「逆にその部分は、もっとピアノで緊張感を持って、デリケートに弾いて・・・」
と祈るような気持ちで聴いておりました。
その点が少し残念でした。
でも、演奏と直接関係なくて恐縮ですが、ショルツって横顔がとてもチャーミングですね。
(じゃ正面向いたら違うのかなんて聞かないでください。今日の席は、第一バイオリンの背中を見るような位置だったので、そのまま書いただけなんです。もちろん正面からみても美しい方ですよ)

メインプログラムのチャイコフスキーの4番。
これは素晴らしかった。前回の5番に続いて2打席連続ホームランという感じです。
ラザレフは、チャイコフスキーが絶対合ってます。
指揮姿や音楽の作り方が5番のときも感じましたが、やっぱりズビン・メータに似ています。
全体に結構芝居がかった表現なんですが、ほろっとする部分もはさみつつジーンとさせてくれるのです。
特にフィナーレはすごく速いテンポで演奏されましたが、オーケストラも素晴らしい熱演で応えてくれました。ちょっと語弊があるかもしれませんが、オケのメンバー全員が「本気でやってるぜ」という気持ちが、すごいエネルギーとなって聴き手にもびんびん伝わってきます。
「熱」ではないけど、蠣崎さんのメロウな響きのオーボエにも大感動でした。
計算された芝居のシナリオどおりだなあと思いながらも、すっかりラザレフの術中にはまっていく自分が情けなくも嬉しい今日のコンサートでした。








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カンテッリ&ブレイン(ワーグナー、ブラームス交響曲第1番)

2005-02-15 | CDの試聴記
オーケストラの中でデニス・ブレインのホルンソロが聴けるアルバムです。

<曲目>
ワーグナー:ジークフリートの角笛
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

<演奏>
デニス・ブレイン(ホルン)
カンテッリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
(TESTAMENT SBT1012  モノラル)

一昨日に続いて、デニスのホルンを聴きました。
前回は、室内楽でその妙技を聴かせてくれましたが、今日聴いたアルバムではオーケストラの中でのデニス・ブレインの素晴らしさが堪能できます。

冒頭のジークフリートの角笛では、珍しくデニスの無伴奏のソロが聴けます。
続くジークフリート牧歌は、文字通り牧歌的な伸びやかな演奏。
この曲にはクナッパーツブッシュらの素晴らしい名演もありますが、このデニスたちの演奏も愛妻コジマと長男ジークフリートに対するワーグナーの深い愛情が感じられる佳演です。
デニスのホルンって、作為や芝居っけがないというのでしょうか、一言で言ってしまうとすごく自然ですね。
ハイドンの協奏曲の評でも書きましたが、それでいながら気品が感じられるところがすごい。
なかなかこうはいかないものです。

デニスのことばかり書きましたが、カンテッリ指揮のオーケストラも素晴らしいできばえです。
そういえば、指揮者のカンテッリもデニスと非常に良く似たタイプだと思います。
残念なことに夭折の天才という点でも共通していますね。
カンテッリはよくトスカニーニと比べられますが、私から見るとまるで違う。
癇癪もちでメリハリが特徴のトスカニーニとは正反対の、「自然流の達人」だと思っています。

そのよさが出ているのが、次のブラームスです。
ブラームスの1番は先月の私のBlogでワルターとベームの素晴らしいアルバムのことを書きましたが、このカンテッリもまったくそん色ない名演です。
第一楽章からフィナーレまで、とにかく音楽の流れが自然です。
どこにも力んだところがなく、それでいて決して弛緩しないという離れ業を実現してくれています。
このカンテッリ盤を聴いてしまうと、ベームにしてもワルターにしても、また世評高いフルトベングラーでも、スタイルが全く異なるのでやむを得ないのですが、随分芝居っ気や力みがはいっているんだなあと感じます。
このブラームスの1番では何と言ってもフィナーレが素晴らしい。
ホルンの圧倒的な存在感には何度聴いても惚れ惚れしますし、弦楽で主題が始まる時のこれ以上ないくらいの自然な表情が印象的。よく聴いてみると微妙なデュナーミクが施されているのですが、小憎らしいくらい自然に決まっています。その後もちっとも力まないのに緊張感を持続しながらエンディングを迎えます。
決して手に汗を握るという演奏ではありませんが、これほど清々しい気分にさせてくれるブラームスも珍しいでしょう。

あえて、一つだけこのアルバムで残念だったことをあげると、多分録音のせいだと思うのですがオーボエの音が悪いこと。これではチャルメラの音みたいです。
でも、それは演奏全体の素晴らしさからみれば実に些細なこと。
いまさらながら、カンテッリ恐るべしです。



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デニス・ブレイン名演集(BBCレジェンド)

2005-02-14 | CDの試聴記
不世出のホルン奏者であるデニス・ブレインの室内楽を中心とするアルバムを聴きました。

<曲目>
ベートーヴェン:六重奏曲変ホ長調Op.81b
シューベルト:「流れを下る船上で」D.943
モーツァルト:ディヴェルティメント第14番 K270
ハイドン:ホルン協奏曲第1番ニ長調
クック:アリオーソとスケルツォーソ
イベール:3つの小品
ミヨー:組曲「ルネ王の炉辺」他

<演奏>
D.ブレイン(ホルン)、A.シヴィル(ホルン)
P.ピアーズ(テノール)、G.マルコム(ピアノ)
イギリス弦楽四重奏団、 ブレイン・アンサンブル、 BBCミッドランド管弦楽団ほか

最近、実はホルンの音楽にはまっています。
とりわけデニス・ブレインの素晴らしさはモーツァルトのホルン協奏曲の名演等で知っていましたが、室内楽を中心とする今回のアルバムを聴いてみて、やっぱりデニスは天才ですね。
私にとって初めて聴く曲も多かったのですが、あっという間の80分でした。

冒頭のベートーベンは同僚のシビルとの掛け合いが見事です。
続くシューベルトの歌曲では、ピアーズの柔らかな声に聞き惚れますが、伴奏であるデニスも本当に素晴らしいうたを聴かせてくれます。
でも、このアルバムの一番のききものはハイドンのホルン協奏曲ではないでしょうか。
天馬空を行くといった風情で自在に吹かれるホルンの何と素晴らしいこと。
それでいてどことなく気品を感じさせる演奏、それがデニスの凄いところですね。
あまり演奏される機会は少ない曲だと思いますが、即「私のお気に入り?」に入りました。

その他の曲も、みんな楽しめる演奏ばかりです。
中でも管楽五重奏で演奏されるイベールの3つの小品は、とても良い曲ですね。
でもこの演奏が亡くなる直前のものだと考えると、本当に辛いです。
また、最後のトラックにはデニス自身の解説と実演による「ホルンの進化?」が入っていて、これもとっても興味深いものです。

最後にどうしても触れておきたいことは、このCDの録音が素晴らしいことです。
モノラル録音なのですが、デニスのホルンはもちろん、クラリネット・オーボエ等の音も非常に良い音で録られています。
このような名演奏が良い音で残されたことは、本当に幸せです。
広く皆さんにも聴いていただきたいと思います。




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ジェヴィツキ(ピアノ)/ラザレフ&読響 ショパン:ピアノ協奏曲他

2005-02-12 | コンサートの感想
2月の芸劇マチネーコンサートに行ってきました。

<日時>平成17年2月11日(祝)
<曲目>
ショパン ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
チャイコフスキー 交響曲 第5番 ホ短調 Op.64

指 揮 :アレクサンドル・ラザレフ
ピアノ :スタニスラフ・ジェヴィツキ

1月の芸劇マチネーが残念ながら仕事でいけなかったので、
私にとっては今回が今年最初のマチネーコンサートということになります。
実は、発熱をともなう咽頭炎と診断されたばかりで今日も体調が優れなかったこともあり、正直不安一杯で聴きにいったコンサートでしたが、結果的には本当に行ってよかった。
想い出に残るコンサートでした。

●ショパン:ピアノ協奏曲第一番
ジェヴィツキは初めて聴きましたが、弱冠17歳のロシアのピアニストです。
お母さんがあのタチアナ・シェバノワで、お父さんもピアニストという音楽一家で育ったそうです。
(シェバノワは1980年のショパンコンクールで2位入賞者で、私は優勝したダンタイソンよりもシェバノワの瑞々しい演奏を今でもよく覚えています。余談ですが、このときはポゴレリッチ事件がありアルゲリッチが審査員を降りるという事態に発展したことで有名ですが、そのほかの参加者としてもエバ・ポブウォツカやアンジェラ・ヒューイットという現在の人気ピアニストの名もありましたね)
まず、ジェヴィツキの第一印象ですが、容姿はロシアの貴公子という感じで、はっきり言ってイケメンです。お辞儀の仕草なんかはまだぎこちない部分があるのですが、そのあたりはかえって初々しさを感じます。今後女性のファンがきっと増えるんだろうなあ。(そういえば、今日も、聴衆の中に女性の姿が普段より多かったかなあ・・・。)
肝心の演奏ですが、既にしっかりしたテクニックを持っており、シェバノワ譲りの大変瑞々しいスタイルで、かつとても17歳に思えないような落ち着きがありました。和音がとてもきれいに響くことも、このピアニストの特徴でしょう。
とても清潔なショパンを聴かせてもらいました。
コンチェルトのあととしては珍しく3曲もアンコールにこたえてくれました。
 ・ショパン:ワルツ第4番「華麗なる大円舞曲」
 ・リムスキーコルサコフ:熊蜂の飛行
 ・ショパン:軍隊ポロネーズ
将来がとても楽しみなピアニストだと思います。

●チャイコフスキー:交響曲第5番
ラザレフという指揮者、実は私のお気に入りで、タイプとしてはどこかズービン・メータをほうふつさせます。
とにかく、演奏のスタイルが濃いんです。
多少芝居がかったところもありますが、それがチャイコフスキーにぴったり。
第1楽章冒頭の、あのクラリネットのほの暗い語りかけから、「ああチャイコフスキーだ」と実感させてくれます。第2楽章の冒頭チェロとコントラバスで奏される部分、これは本当に素晴らしかった。真実の心の歌を聴かせてもらい感動しました。今日のハイライトと言っても過言ではありません。
また、今日感じたラザレフの演奏の特徴は、特に中低音で一定のリズムを刻ませる部分を重視していることです。その結果、ビオラ・チェロ・コントラバスの動きが明確になり、全体が濃厚な表情で演奏されているにもかかわらず、内声部の充実した非常に見通しの良い演奏になるのでしょう。
続くフィナーレの主部は大変速いテンポで始まり、どうなることかと思い聴いていましたが、腕自慢の読売日響のメンバーも必死についていきます。プロのオーケストラがこれだけ熱く演奏したら、聴衆も熱くなりますね。コーダではさらにテンポが加速され、私も「何とかついてきて」と祈るような気持ちで、手に汗を握りつつ最後のダダダダーンを迎えました。

指揮者・演奏者・聴衆が一体になった素晴らしいコンサートでした。
演奏後、盛大にブラボーの声がかっていたことは言うまでもありません。
昨年末に聴いたベートーベンの第9で、巷の評判(賞賛の声が多数でした)とはうらはらに私の心の中に残っていたもやもや感が、今日の熱演で完全に取り除くことができました。
ラザレフさん、読売日響のみなさんありがとう。

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