ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

浜松市楽器博物館

2006-08-30 | その他
昨日から、夏季休暇をとって、一泊二日で浜松へ行ってきました。
7月に浜松へ赴任した社会人一年生の息子とも話がしたかったし、久しぶりに家族4人でのんびり温泉旅行に行くのが目的です。

浜松に行くのは今回が初めて。
浜松駅に降り立って出口に向かって歩いていると、何と駅の中にピアノがあるじゃないですか。

          

さらに横をみると、11月の浜松国際ピアノコンクールのポスターが・・・。
さすがに音楽の盛んな町ですね。とってもいい雰囲気です。

そして息子・娘と合流し、食事(もちろん豪華?に「鰻」です)をしたあと、息子のアパートへ。
汚くしているんじゃないかと懸念していたのですが、思っていたより綺麗な部屋だったので、まずは一安心。
その後、息子の車で一路三ケ日温泉へ。
やっぱり温泉はいいですね。美味しい料理にいい湯。時間がゆっくり流れていきます。
湯船に浸かりながら話してみると、息子の方も初めての営業ということで色々苦労をしているようですが、何とか元気にやっているようです。
少し見ないうちに、ちょっとだけ頼もしくなったかなぁ。
先日の24時間テレビではありませんが、久しぶりの家族旅行を通して「家族の絆」が深まったような、そんな気がしています。

そして今日は、午前中に息子・娘と浜松駅で別れた後、妻と2人で立ち寄ったのが楽器博物館。
ここは、本当に面白いですね。
和楽器から世界各地の民族楽器、そして西洋楽器についても、鍵盤楽器から弦楽器・管楽器と、ありとあらゆる楽器が展示されています。
ずっと「お琴」と思っていた楽器が実は「筝」であり、本来の「琴」は1~3弦のまったく別のものの楽器であることや、尺八や鼓にも種類がいくつもあること等も初めて知りました。

また、西洋楽器についても、ヴァージナルやクラヴィーコード、ピッコロ・ヴァイオリン(しかも展示されていた2台はストラディヴァリとグァルネリです!)、ヴィオール族の楽器、ポストホルン、エオリアンハープ等、初めて実物を見るものが多数ありました。






そして単に楽器が展示されているだけではなく、たとえば鍵盤楽器であれば、それぞれのアクションの仕組み等を模型を使って詳しく説明してくれていました。
しかも、模型では、自分で実際にキーを叩いて音を出せるので、仕組みが実に良く分かります。
音楽好きには、なかなか堪えられない興味深い経験でした。

コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モーツァルト 歌劇「にせの花作り女」K196

2006-08-27 | BS、CS、DVDの視聴記
昨夜、NHKハイビジョンで「にせの花作り女」を観ました。
私が初めてこのオペラを知ったのは、LP時代に聴いたイッセルシュテットのドイツ語版。
たしかそのLPでは、「恋の花作り」というタイトルだったと思います。
なかなか魅力的な曲だとは思ったのですが、その後ほとんど聴く機会がありませんでした。

このオペラは、やはり音だけではなく映像付がいいですね。
非常に楽しめました。
アーノンクールを迎えたときのチューリヒオペラは、本当に水準が高いです。
実力をもつ歌手がそれぞれのアリアを素晴らしく歌うだけではなく、常に理想的なアンサンブルを披露してくれることが、何より素晴らしい。
そして、オケの響きも古楽器風の響きを感じさせつつ、決して「颯爽と速いテンポで・・・」という印象に終わらないところが、さすがにアーノンクール。
音楽が強く訴えかける箇所は、ことごとく見事にえぐってみせてくれます。
絶対単調な表現にはなりません。
一見シンプルにみえる箇所でも、「あー、こんな表現があったんだ」と感じさせてくれるのは、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートでもお馴染みですよね。

今回の「にせの花作り女」は、私があまり好まない所謂現代的な演出でしたが、あまり違和感はありませんでした。
歌手たちがみんな自分の役柄を活き活きと演じていたことが最も大きいとは思いますが、このオペラは、比較的そういったタイプの演出も受け入れてくれる作品なのかもしれません。
また第2幕で、セルペッタが歌っている最中、サンドリーナが誘拐されるシーンを映像を使って見せるあたりは、非常に効果的な演出だと思いました。

歌手で目立っていたのは、エヴァ・メイとイザベル・レイ。
ともに美人で舞台栄えすることに加え歌唱が立派で、演技もとても上手です。
ほとんど同じメンバーで演奏した「フィガロの結婚」の躍動感に溢れた名演を彷彿させます。
とくにエヴァ・メイは、私のお気に入りのソプラノのひとりなんですが、ヴィブラートの少ない美しくコントロールされた声は、いつ聴いても魅力的です。
彼女の歌を聴いていると、どこか器楽を聴いているような気持ちになります。
それも弦楽器ではなく管楽器のイメージ。
そういえば、エヴァ・メイは来月ローマ歌劇場の来日公演でジルダを歌うんですよね。
きっと繊細で心やさしい素敵なジルダなんだろうな・・・。


<配役>
■市長 ドン・アンキーゼ   : ルドルフ・シャシング
■サンドリーナ (花作り女) : エヴァ・メイ
■ベルフィオーレ伯爵 : クリストフ・シュトレール
■アルミンダ (市長のめい) : イザベル・レイ
■騎士ラミーロ : リリアーナ・ニキテアヌ
■セルペッタ : ユリア・クライター
■ナルド : ガブリエル・ベルムデス
<演奏>
■管弦楽 : チューリヒ歌劇場・シンティルラ管弦楽団
■指 揮 : ニコラウス・アーノンクール
■美 術 : ロルフ・グリッテンベルク
■演 出 : トビアス・モレッティ
<録音>
■ 2006年2月23/25日, チューリヒ歌劇場 (スイス)

《あらすじ》
伯爵令嬢ヴィオランテは、かつて恋人だったベルフィオーレ伯爵と仲違いし、彼に刺されてしまった。
伯爵からは死んだものと思われているが、実は生きていて、今はラゴネーロの市長の家に雇われ、 サンドリーナと名乗って女庭師の仕事をしている。
そこにベルフィオーレ伯爵が許婚者としてアルミンダを伴ってやってくる。 再会した二人はやがて再び愛し合うようになるが、サンドリーナを恋する市長や ベルフィオーレ伯爵をあきらめきれないアルミンダたちとの間で混乱と争いが起きる。
しかし最後には二人は結ばれ大団円を迎える。
(「NHKハイビジョン クラシック館」の解説記事より)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初めてのネットオークション

2006-08-25 | その他
初めてネットオークションを利用しました。

11月に来日するウィーンフィル、もしかしたら最後の来日になりそうな巨匠アーノンクールとのコンビだけに、何としても行きたかったのですが、プレオーダーも一般販売もあっけなく一蹴されてしまいました。
やはり今回は縁がないんだと諦めていたのですが、先日、何気なくネットオークションを覗くとチケットが出ているではないですか。

ちょっと首をかしげるような値段になっているものもありましたが、何種類か出品されているなかで私が注視していたのは、モーツァルト39番とベートーヴェン7番というプログラム。
サントリーホールA席(1階後ろから3列目)のチケットなのですが、最終日になってもほとんど定価だったのです。
何度かネットオークションを利用している妻からは、「終了直前に、きっと入札価格が跳ね上がるから」と言われていましたが、果たして、残り1時間を切った時点で定価を上回ってきました。
私自身は「定価の1割を超えたら絶対買わない!」と決めておりましたので、その範囲内で何度か入札したところ、幸運にも落札することができました。
初めてのネットオークションだったので、チケットが届くまでは正直不安だったのですが、出品者の方が大変迅速に手配していただいたおかげで、無事にチケットを手にすることができました。

イープラスのプレオーダーでもしっかり手数料をとられるんだから、まあこんなものでしょう。
送られてきたチケットを目の前にすると、じわーっと喜びが・・・。
サントリーホールの場合、後方の席であっても決して悪い音ではありません。
昨年ムーティのときの「前から2列目」というとんでもないロケーションではありませんが、かえってブレンドされたウィーンフィルのサウンドを楽しめるかもしれません。
本家ムジーク・フェラインとの比較も楽しみになってきました。

コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

91歳のチェリスト 青木十良さん

2006-08-23 | CDの試聴記
大阪・名古屋の3日間の出張から、つい先ほど帰ってきました。
あと1週間あまりで9月だというのに、昼間の残暑は、どちらも大変なもの!
いったい、どうなっているんだろう。

さて、そんな暑さを一瞬忘れさせてくれるような爽やかな記事を見つけました。
今朝の日本経済新聞に載った、チェリストの青木十良さんの記事です。
青木さんのことを初めて知ったのは、もう30年くらい前になるでしょうか、クラシックギターの専門誌である「現代ギター」の対談記事でした。
インタビュアーの名前は忘れてしまいましたが、確かお嬢さんでピアニストの紀子さんと一緒に登場されていて、その温かくユーモアを持った人柄が、今も印象に残っています。

もう91歳になられるのですね。しかも、現役として立派にチェロをお弾きになっている。
これは、本当に大変なことです。
私は心底驚くとともに、一面識もないにもかかわらず、何故かとても嬉しく思いました。

青木さんは、今朝の記事の中で、次のようにコメントされています。
「バッハの精神は、他の作曲家に類をみないほど多彩だ。神の心と、民衆の心の両方が描かれている。泥の中をのたうつ苦しみも、天に昇る救いもある。私は、ずいぶんと人間の暗い面を見てきた。幼い頃に醜く財産を奪い合う大人を見た。戦争で友人も失った。金や人間関係のトラブルも抱えた。うつ病に悩んだ時期もある。しかしある時期から、辛苦を通り抜けて楽天的になった。(以下略)」
長年に亘り、ひたすらバッハを真剣に弾き続けてこられた音楽家だけが語ることのできる、素晴らしい言葉だと思いました。

こんな話を聞いてしまうと、活字だけでは満足できません。
「何としても実際の演奏を聴いてみたい」と思い立って、出張の帰りにCDを買ってしまいました。

          

<曲目>
■J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番
■カタロニア民謡(P.カザルス編):「鳥の歌」
<演奏>
■チェロ:青木十良
■ピアノ:水野紀子
<録音>2006年3月6日~8日  浜離宮朝日ホール 


このディスクには、バッハの無伴奏チェロ組曲第5番と、鳥の歌が収録されていました。
まずバッハを聴いて感じたこと。
まったく頑固さや硬直性とは無縁な、自然体の音楽が、そこにありました。
さすがに技術的な衰えや、音程の不安定さは隠せません。
しかし、青木さんの言葉通り、
「泥の中をのたうつ苦しみも、天に昇る救いもあるバッハの音楽」に対し、真正面から力まずにたち向かっているひとりのチェリストの姿が、はっきり見えました。
とくに、サラバンドの高貴な表現は、何と表現したらいいんだろう。
また、この曲はバッハ自身の手によってリュート組曲としても作曲されてますが、青木さんは、撥弦楽器であるリュートの響き、リズム感というものを相当強く意識しているようです。ガボットやジーグの表現に、そのあたりの考え方が現われていました。

そして、ディスクの最後の曲である「鳥の歌」。
言うまでもなく、神様パブロ・カザルスの感動的な演奏で知られる名品ですが、青木さんの演奏も本当に素晴らしいものでした。
冒頭のピアノのフレーズは、まるでオルガンみたいな響きです。(ピアノはお嬢さんの紀子さん)
そして、チェロがあの美しいメロディをゆったりと奏で始めると、もうだめです。
思わず目をつぶって、最後まで聴き惚れてしまいました。
音楽は、やはり人間そのもの、人生そのものなんですね。
決して技術だけじゃない!

今も、感動の余韻が、身体中に残っています。
素晴らしい「鳥の歌」でした。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベートーヴェン クロイツェルソナタ (コーガン・エディションより)

2006-08-20 | CDの試聴記
今年の夏の甲子園は、例年になく面白い。
昼間は結果を確認するくらいしかできないので、帰宅後、食事をしながら「熱闘甲子園」で試合内容を楽しむのが、ここしばらくの日課になっています。

今日は、いよいよ決勝戦。
白熱した素晴らしいゲームでした。
大会屈指の好投手同士が、実力どおりのピッチングをすると、さすがに爆発力を秘めた両チームの打線であっても、そう打てるものではありません。
しかも、今日は両チームの守備も素晴らしく、ピーンと張り詰めた緊張感の中、稀に見る好ゲームだったと思います。
1対1の引き分け再試合というのは、きっと神様の配慮にちがいありません。
私なんかは絶対両校優勝でも良いような気がしますが、いかがでしょうか。

さて、最近通販で購入したコーガンの10枚組ボックスセット。
まだ2枚しか聴いていませんが、なかなか素晴らしいです。
とくに感銘を受けたのが、ベートーヴェンのクロイツェルソナタ。
とても1952年のモノラル録音とは思えないくらい、生々しい音が聴けます。
ややピアノが遠く感じますが、これは、ないものねだりというもの。

コーガンのヴァイオリンは、まさに緊張感溢れる鬼気迫るもの。
剣の達人が名刀を持って静かに構えただけで、あたりの空気が変わりますよね。そして、気合もろとも、真っすぐに正面から一気に打ち込んでくる。聴き手も真剣に受け止めないと大怪我をします。
しかもコーガンは、凄みだけではなく、美しい音を奏でる秘法も身につけている。
これは手ごわいです。とくに第1楽章にそれが顕著でした。

そして忘れてはならないのが、ピアノのギンズブルグの素晴らしさ。
このロシアの名ピアニストは、ある意味でコーガンとよく似ているのではないでしょうか。
大変なヴィルテュオーソでありながら、音楽の本質に真正面から切り込んでいく気概と、凛とした美しさを併せ持っています。
コーガンが楔のように打ち込む強烈なアクセントを、ことごとく見事に受け止め、圧倒的な技術の冴えとともに絶妙の表現で投げ返す。そして弱音部では、美しくも緊張感溢れる音楽を2人して奏でる。
本当に見事なベートーヴェンとしかいいようがありません。
「クロイツェルソナタ」という稀代の剛速球を投げつけたベートーヴェンも、きっと「天晴れ!」と褒めてくれることでしょう。

もう一枚のディスクでは、初めて聴くデニソフのパルティータが滅茶苦茶面白い。
バッハの無伴奏パルティータ第2番を下敷きにして、デニソフが自由に脚色したものですが、独奏ヴァイオリンは比較的原曲に近い音楽を奏でています。
しかし、バックが美しくハーモニーをつけているなぁと感じた瞬間、とんでもない不協和音に変わり、まったく心が休まる暇がありません。(笑)
もうこの段階で、まんまとデニソフの術中にはまっているのでしょうね。
続くショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲が、何とクラシカルな安らぎに満ちた音楽に感じたことか・・・。
こんなことは、初めてでした。
そんな曲の配列はともかく、このショスタコーヴィチも素晴らしい演奏でした。

このボックスセット、他にも珍しい作品が多く含まれているようなので、コーガンの名技とともに楽しみに聴いていきたいと思います。

        

<CD3>
■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番 Op.47『クロイツェル』
 1952年5月30日
 グリゴリー・ギンズブルグ(P)
■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番 Op.96
 1975年1月4日
 サミュエル・アルミアン(P)

<CD-2>
■デニソフ:ヴァイオリンと室内オーケストラのためのパルティータ
 1981年5月9日
 パーヴェル・コーガン(指揮)管弦楽団
■ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 Op.99
 1959年4月24日
 キリル・コンドラシン(指揮)モスクワ・フィル
■サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチョーソ
 1951年11月1日
 アレクサンドル・ガウク(指揮)大交響楽団
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パッヘルベルのカノン

2006-08-18 | CDの試聴記
今年は、モーツァルト、シューマン、ショスタコーヴィチといった大作曲家たちのメモリアルイヤーですが、実はヨハン・パッヘルベルの没後300年の年でもあるんです。
そう、あの「カノン」で有名なパッヘルベルです。

パッヘルベルは、17世紀にドイツのニュルンベルクに生まれ、同地で亡くなりました。
大バッハの父君とも親交があったようです。
彼はオルガニストとして活躍する傍ら、オルガン曲や室内楽(三重奏、合奏ソナタ、組曲等)の作品を遺しています。
しかし、何といっても桁違いに有名なのが、「パッヘルベルのカノン」として親しまれているこの「カノン」でしょう。
正式な名前は、「3本のヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」の中の第1曲。
今日ご紹介するディスクは、何と全編この「パッヘルベルのカノン」で埋め尽くそうという何とも大胆な企画?で作成されたものです。

■バウムガルトナー&ルツェルン祝祭弦楽合奏団
■J・ゴールウェイ
■カナディアン・ブラス
■ロックバーグ作曲:「弦楽四重奏曲 第6番」/コンコルド弦楽四重奏団
■クレオ・レーン(vo)&J・ゴールウェイ
■ハンプトン弦楽四重奏団
■富田勲
■バロック室内管弦楽団

       

次から次へと現われる「カノン」。
もともとカノンという形式そのものが、主題が次々と現われるいわゆる「輪唱」ですから、もう何百回となく同じ主題を聴くことになります。
でも、不思議と厭きることはありません。
単純だけど親しみやすい主題、演奏者のみならず聴き手にも何故か幸福感を与える和声の進行、このあたりがその要因なんでしょうね。

とくに素敵だと思ったのは、ゴールウェイと仲間がポップ風アレンジで自由に羽ばたく第2曲と第5曲、そして、このカノンを主題とする変奏楽章が印象的なロックバーク作の「弦楽四重奏曲 第6番」です。
半分ジョークのつもりで買ったアルバムですが、なかなか楽しませてくれました。

「もっと、真正面からパッヘルベルの作品を」と考えている方へのお勧めは、アルヒーフからリリースされている「ブクステフーデ&パッヘルベル 室内音楽集」。
ゲーベル指揮ムジカ・アンティカ・ケルンの演奏ですが、味わい深くかつ颯爽とした、佳曲にして佳演です。

それから、「何故か幸福感を与える和声進行」と書きましたが、そのためかどうかは分かりませんが、ポップスの世界でもこの和声進行はよく使われているようです。
とくに、初めて聴いたときから、「えー?この動き、パッヘルベルのカノンと同じじゃん!」と驚いたのが、岡本真夜さんの「TOMORROW」。
(涙の数だけ強くなれるよ、 アスファルトに咲く花のように、見るものすべてにおびえないで、明日は来るよ君のために・・・というあの名曲です)

この曲をご存知の方は、是非カノンの演奏(CDでも構いません)に合わせて口ずさんでみてください。
どんなに綺麗にハモることか。

  
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モーツァルト レクイエム K622

2006-08-13 | CDの試聴記
昨日予定されていた「さいたま市の花火大会」が、雷雨のため今日に順延されました。そして今、その華麗な花火を窓ガラス越しに見ながらブログを書いています。
自宅がマンションの7階なので、ベランダはまさに特等席。
花火って、ほんといいですねえ。夜空一杯に広がる色鮮やかな「光」と、少し遅れて聴こえるドーンという腹にこたえる「音」のコントラストの妙。
また、その華やかさとは裏腹に、どこかはかなさを感じさせてくれるところも、花火の魅力だと思います。まさに夏の風物詩!



さて、今日は、今秋来日するアーノンクールのモツレクの新盤を聴きました。
アーノンクールにとって22年ぶりの再録音です。
明確な発音と曖昧さを残さないフレージング、そして意志を持ったアクセントといったアーノンクールの刻印はしっかりと押されているわけですが、旧盤のあの少し尖った表現はここにはありません。
テンポは総じてゆったりしており、メサイアの新盤と同様、豊かで人間の温もりというものを感じさせてくれました。

旧盤と同様にバイヤー版をもとにした演奏ですが、普段聞きなれているジュスマイヤー版と構成そのものは変わらないので、違和感はありません。
第4曲のレックス大王の冒頭小節、2拍目の管楽器の合いの手がなくなっていますが、むしろこちらの方が自然に聴こえますね。
私が特に感銘を受けたのは、第6曲の「呪われし者」。
緊張感あふれる弦楽器の反復音型に支えられた男声合唱と、そのあとの女声合唱だけで歌う祈りの歌のコントラストの何と見事なこと。そのあと、弦がどこか不安げな響きを奏でるなか、4部合唱が聴かせる敬虔な祈りの素晴らしさ。アーノルト・シェーンベルク合唱団のまさに神業が聴けます。
続くラクリモーサも、そしてその後の「Domine Jesu」以下も、曖昧なところは皆無。でも、「常にしっかり目を見開いて、温かく見守っている」、そんな印象を持ちました。
発音の見事さ、音楽の構造が手にとるようにわかる構成力の確かさ、という点で非常に優れた演奏だと感じました。

でも、モーツァルトのレクイエムというのは、誤解を恐れずに言うなら「強い音楽」ですね。
実際の葬儀のときに聴くと、きわめて感動的な音楽だと思いますが、ひとりで故人を偲ぶときには、私にはきつくて辛すぎる!
昨年、お世話になった先輩が急逝された折、いったん目の前にモツレクのCDをもってきたにもかかわらず、ついに聴けなかった。
そう、あのときはフォーレを聴きました。
また、ある日突然変わるかもしれませんが・・・。

それから、最後に録音についてひとこと。
このディスクは、ムジークフェラインザールで行われたライヴ・レコーディングですが、絶対SACDのほうが良いです。
最初にCDで聴いた後、SACDで聴いてみましたが、その違いに愕然としました。
音楽そのものの空気感が違う感じです。
やはり、SACDの時代になったのでしょうか・・・。



モーツァルト:レクエイムニ短調K.622(バイヤー版)
<演奏> 
■クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ)
■ベルナルダ・フィンク(アルト)
■クルト・シュトライト(テノール)
■ジェラルド・フィンレイ(バス)
■アルノルト・シェーンベルク合唱団
 [合唱指揮:エルヴィン・オルトナー]
■ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
■指揮:ニコラウス・アーノンクール
<録音>
■2003年11月29日&30日、ウィーン、ムジークフェラインザール

コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ペペ・ロメロ:アランフェス協奏曲他

2006-08-12 | コンサートの感想
ブログの更新が随分滞ってしまいました。
実は、副業でほぼ年一回行っている年金テキストの執筆・改訂作業の校了期限が迫っていたのです。
本業のほうも、重要なイベントをいくつか控えて全く息を抜けない状態だし、こちらのテキストも絶対穴をあけるわけにはいかないし、のんびり屋の私もさすがに焦っておりました。
試験に出そうなポイントをセレクトして、かつ分かりやすい表現で書くのは、想像以上にしんどい作業です。
「こう書いたら、もっと分かりやすいよな」と悪魔が囁きます。
自分自身が最初に勉強したときのことを思い出しつつ、悪魔の言葉に耳を貸して何度も書きぶりを変えたりしていると、どんどん時間が経過していくんです。
「おー、神様 時間を下さい!」

しかし、ようやく本日原稿が完成しました。
「やったー!」
これで、やっと普通の生活に戻れそうです。

そんなわけで、10日ぶりになりましたが、ペペ・ロメロのアランフェスの協奏曲の感想を・・・。

<日時>2006年8月2日(水) 午後7時開演
<場所>東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
■ファリャ:バレエ「三角帽子」より 第2組曲
■ロドリーゴ:アランフェス協奏曲 

 ~ペペ・ロメロ ギターソロ~
■アルベニス:入江のざわめき「旅の思い出」op.71より
■アルベニス:セビーリャ 「スペイン組曲」op.47より
■ペペ・ロメロ:グラナダの夕暮れ
■サビーカス:ファルーカ つま先とかかと
■セレドニオ・ロメロ:サパテアード
■セレドニオ・ロメロ:ファンタジア
(アンコール)
■タレガ:アルハンブラの想い出
■アルベニス:アストゥリアス
 
■ラヴェル:ボレロ

<演奏>
■ギター:ペペ・ロメロ
■指 揮:ペドロ・アルフテル・カーロ
■管弦楽:グラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団


         

ペペ・ロメロのアランフェスが聴きたい一心で、イープラスの半額チケットをゲットしてこのコンサートに行きました。だから、この指揮者もオケも正直まったく知らなかったのです。

まず冒頭のファリャの「三角帽子」、最初のフレーズの強烈なクレッシェンドには少々驚きましたが、光と影で色彩豊かに表現するというよりは、力技の印象が強いです。力強い演奏ではありましたが・・・。
続いてお目当てのぺぺ・ロメロの登場。
彼は何十回いや何百回この曲を弾いてきたんだろう。少し硬い感じもしましたが、実に淡々と最初のラスゲアードをかき鳴らします。でも、一瞬にして空気をつかんでしまうというか、さすがに雰囲気の作り方が抜群に上手いですね。第2楽章も過度の思い入れを廃している分だけ、聴き手にはぐっと来るものがあります。第3楽章は、わずかな綻びはありましたが、全体として見事なアランフェスを聴かせてもらいました。

後半はペペのソロ。
「入江のざわめき」と「セビーリャ」は、いずれも素晴らしい名演。
とくに「入江のざわめき」のきめ細かい描写にはすっかり魅せられました。
その後は、父セレドニオと自作を含むフラメンコ音楽。
もう、ファンタスティックのひとこと!
ここに至って、ホールはまさに「ペペズ ワールド!」と化しました。

いわゆる「スペインもの」をギターで鮮やかに表現するためには、技術的な条件が3つ必要だと私は考えています。
それは、スケール(音階)、トレモロ、ラスゲアード(かき鳴らし)の3つのテクニックの完璧さです。
それに加えて、何よりも「CANTE=歌」。
これらの要素を、ペペ・ロメロは全て持っています。
忘れることの出来ない素晴らしい演奏でした。

熱狂的な拍手に答えて、アンコールは2曲。
アルハンブラの幽玄さ、アストゥリアスの幻想的な表現、アンコールではありますが、実に素敵な演奏でした。
とくにアストゥリアスは、A-B-A-コーダという構成になっているのですが、Aの部分はカンパネラをともなった劇的な箇所。きっとあの見事なラスゲアード技術を駆使して圧倒するんだろうと思いきや、1回目は親指のアルペッジョを使ってきわめて優しく表現し、官能的な中間部のBを経た後、再び戻ってくるAの部分では、一転して圧倒的なラスゲアードでクライマックスを築く!
やられました。見事にやられました。やっぱり凄いギタリストです。

コンサートの最後は、ラベルのボレロ。
前半のファリャ同様、力が勝っているようには感じましたが、こちらは色彩感もあり楽しく聴かせてもらいました。オケの両翼配置のメリットもあるのでしょうか、弦楽器が順番に全休符⇒ピチカート⇒アルコと変わっていくあたりは、視覚的にもとても面白かった。
まだ若いオーケストラですから、これからさらに飛躍する予感がしました。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする