ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

エレーヌ・グリモー ピアノ・リサイタル (1/17) @サントリーホール

2011-01-19 | コンサートの感想
思いがけないことは、本当に突然やってくるものだ。
今日一日、出張先でどんな話をしたか、あまり良く覚えていない。
今は詳しく書けないけど、このことについては、いつかまた機会をみて書かせていただきたいと思う。

さて、一昨日は大好きなグリモーのコンサートをサントリーホールで聴いた。
プログラムは、前回ご紹介させていただいたCDと全く同じ曲目・同じ順番。

☆エレーヌ・グリモー ピアノ・リサイタル
<日時>2011年1月17日(月)19:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目>
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K.310
■ベルク:ピアノ・ソナタ op.1
■リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
■バルトーク:ルーマニア民族舞曲
(アンコール)
■グルック:精霊の踊り
■ショパン:3つの新しい練習曲 ヘ短調

全体の演奏スタイルは、(予想されたことではあるが)CDとまったく同じ。
しかし、この日グリモーと同じ空間・時間を共有することで、彼女の意図するところが一層鮮烈なメッセージとして伝わってきた。
ひとことで印象を書いてしまうと、彼女は他のどんなピアニストにも似ていない。
「一流ピアニストは、皆そうだ」と言われたら返す言葉もないが、グリモーの歩んでいる道には先人がいない。
そんな思いを、強く印象付けられたコンサートだった。

モーツァルトは、やっぱり草書体。
しかし、グリモーの草書は、軽く柔らかなタッチのそれとは対極にある。
嵐が吹き荒れるような力と、火傷しそうな熱さをもった草書だ。
CDでは可憐なロンドのように聴こえた第3楽章も、この日の演奏では激情のロンドだった。
こんなK.310は聴いたことがない。
グリモーの眼は、モーツァルトではなく、明らかにベートーヴェン(あるいはそれ以降)を見据えていたと思う。
私の想い描くK.310とはまるで違うが、ここまで己の信ずるところを見せつけられると、やはり納得するしかない。

続くベルクはCDでも文句なしの名演だったが、この日の演奏はさらに一段上をいっていた。
こんな魅力的なベルクを弾ける人は、本当に少ないのではないかしら。
この曲だけグリモーは譜面を見て演奏していたが、なんら違和感を感じさせることはなかった。
ブラーヴォ!

休憩をはさんで聴かせてくれたリストのソナタが、この日のクライマックス。
最初の音がやや乾いた音で、どちらかというと無機的に響く。
それが、曲が進み演奏に熱を帯びてくると、どんどん生々しい響きに変わっていく。
とくに後半は、息を継ぐ間もないほど強烈なインパクトを持った演奏だった。
こんな演奏を聴かされたら、聴き手はたまらない。
このリストでコンサートが終わっていたら、私はしばらく客席から立ち上がれなかったかもしれない。
次のバルトークの闊達な音楽のおかげで、かろうじて精神の均衡を回復できたように思う。

それにしても凄い演奏だった。
前回来日時にパーヴォ・ヤルヴィと組んで聴かせてくれた「皇帝」も本当に素晴らしかったけど、今回の演奏は、またまた大きく変貌をとげていた。
今後、エレーヌさまは、どんな道を開拓するんだろう。
ただひとつ確信できることは、中途半端なことは絶対しないであろうということ。
「妥協」だとか「中庸」なんて言葉は、おそらく彼女の辞書にないはず。
次回のコンサートが、今から本当に楽しみだ。

それから、この日はホールで何人かの音楽仲間にお目にかかることができた。
そして、終演後にプチ新年会?で遅くまでお付き合いいただいたminamina様やだもん様には、心から感謝いたします。
あっという間に焼酎のボトルが空になってしまいましたが、無事にお帰りになられたでしょうか。
新年の最初の月からこんな衝撃的なコンサートに出会えて、今年はおみくじ通り「大吉」かも。
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エレーヌ・グリモー:レゾナンス

2011-01-16 | CDの試聴記
最近何となく右目に疲れを感じるようになってきたと思ったら、突然真っ赤になった。
症状がなかなか治まらないので、先日かかりつけの眼科で診てもらったところ、単なる結膜下出血で、ひとまず心配はいらないらしい。
ただ、こんな症状がたびたび起こるようなら内臓疾患の可能性もあるので、気をつけなさいとも言われた。
もう少しつっこんで質問すると、睡眠時間と食生活、ストレス、それからお酒の飲み過ぎに注意しなさいと。
「はいっ」と優等生のごとく返事はしたものの、先生のご指導内容は、どれもこれも簡単そうでなかなか難しいぞ。
でも、自分の体は自分で守るしかないので、できるだけ摂生につとめよう。

さて、明日は大好きなグリモーのコンサートの日だ。
予習ではないけど、コンサートの曲をほぼ網羅している彼女のディスクを改めて聴いてみた。

<曲目>
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番イ短調 K.310
■ベルク:ピアノ・ソナタ Op.1
■リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
■バルトーク:ルーマニア民俗舞曲 Sz.56
<演奏>エレーヌ・グリモー(ピアノ)
<録音>2010年8月,ベルリン

最初はモーツァルト。
この曲だけ、実は3回続けて聴いた。
どうしても、しっくりこなかったからだ。
でも、何回聴いても、やはり違和感を感じる。
草書体のモーツァルト、よくいうとそんな感じの演奏。
しかし、第1楽章冒頭からして、どうしてこんなに崩さないといけないのか。
これでは、この音楽の孤高の哀しさが浮かび上がってこない。
第2楽章の再現部で聴かせてくれた繊細な美しさや、終曲ロンドの見事さは、まさに私のイメージ通りのグリモーなんだけど・・・。

一方、ベルクのソナタは、本当に素晴らしい演奏。
しっかりとした骨格を持ちながら、ベルク特有の抒情性がこれほど鮮やかに描かれることは、そう多くないと思う。
また、リストは、とくに後半が秀逸だった。
ダイナミックでかつ繊細というのは、グリモーの面目躍如たるところか。

あまり聴き過ぎると感動が薄れるので、モーツァルト以外は1回しか聴かなかった。
ただ、実演ではグリモーと同じ時間・空間を共有することになるので、ひょっとすると、まるで違う印象を持つかもしれない。
それが、また生演奏の醍醐味でもある。
明日のサントリーホールが楽しみだ。
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「小澤征爾 オペラへの情熱」(BS hi)

2011-01-09 | BS、CS、DVDの視聴記
2011年の最初の週がようやく終わった。
テンションがあまり上がらないのに、やることだけがやたら多くて、結構疲れました。
画像は、7日の金曜日に外勤の合間を見つけて、芝の増上寺にお参りした時のもの。
平日の午前中ということもあって、参拝客もちらほら。
ゆったりとした気持ちで、お参りさせていただくことが出来た。
ふと見上げると、増上寺の隣に、東京タワーが凛々しくそびえたっている。
ビッグツリーもいいけど、東京タワーの上品な佇まいは、やはり捨てがたいなぁ。

さて、12月に沢山録り溜めた番組を、暇を見つけて少しずつ見始めている。
この小澤さんのドキュメンタリー番組は、もともと平成13年にオンエアされたもので、
ラヴェルの「スペインの時」を題材に、若者達を教えながらみんなでオペラを作り上げていく過程を描いたもの。
全編興味深い話ばかりだけど、特に印象に残ったのが次のシーン。

指揮を見ないで演じようとした男子学生に、小澤さんは注意する。
「指揮者を見てないと、オーケストラの音の海の中でおぼれるぞ」
指揮者を見るというのはあまりに当たり前の話だけど、何か別の意味があるのだろうか。
謎はすぐに解けた。

小澤さんがインタビュアーに向かって説明を始める。
「カラオケというのがありますよね。
カラオケは、音がまず鳴ってて、それを聴いて歌いはじめます。
それは、正確に言うと、音より少し遅れて歌っていることになるんです。」
小澤さんは、さらに続ける。
「子音を、オケの音のほんのちょっとだけ前に発音すると、歌詞が明瞭に聴こえるんです。
一流の歌手は、みんなそうやってます。
『声が通る』と言いますが、それは子音がはっきり聴こえるからです。決して声がでかいからじゃないんです。
それを実現するためには、オケの音が出てからでは遅いので、指揮者を利用すること、つまり指揮者を見て歌いだすことが大切なんです。」

この小澤さんのコメントは、私にとって目から鱗だった。
声楽を専門的に学ばれた方にとっては常識かもしれないけど、私は目の前の霧がさっと晴れる思いがした。
聞くところによると、小澤さんは、近々持病の腰の手術に踏み切られるとか。
偉大なマエストロの一日も早い回復を願っています。
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ニーノ・ロータ:ピアノ協奏曲 ホ短調 「小さな古代世界」

2011-01-04 | CDの試聴記
今日は、会社のメンバーたちと神田明神へ初詣に出かけた。
お茶の水の駅から神社の方へ歩いて行くと、警察官が何か大きな声で叫んでいる。
耳を澄ますと、「お茶の水方面からは入場規制をしているので入れません。参拝される方は、秋葉原方向から2列に並んでお進みください」というような内容だ。
遠回りさせられた上に、また1時間超のコースになるのかと思うと憂鬱になったが、意外にスムーズに流れてくれたので、結局30分ほどでお参りすることができた。
うん、これはツイてるかも。
その勢いで、おみくじを引いてみる。
「大吉」だ。

早速、大吉の内容を詳しくみてみると、
・「病気」:早く医者にかかれ
 ⇒おっと、そうきたか。大吉なんだから、「必ず治る」とかじゃないの?
・「願望」:身をつつしめば、必ず叶う
 ⇒身をつつしむことが、絶対条件なんだ・・・
・「縁談」:男はひくてあまた。迷うべからず。
 ⇒今頃引く手あまたと言われても・・・
等々、直球の「吉」ではなさそうだが、ありがたいお告げだと信じて一年間過ごすことにしよう。

さて、今日聴いた音楽は、ニーノ・ロータのピアノ協奏曲。
中でも私のお気に入りは、ホ短調のコンチェルトだ。
(ディスクのライナーノートにはE-durと書かれているが、どう聴いても私には短調に聴こえます!)
第1楽章冒頭から、ピアノの旋律が実に美しい。
サン=サーンスやラフマニノフの雰囲気が随所に感じられる。
そして、最後の方では、チャイコフスキーのピアノ協奏曲の旋律も登場して、思わずにっこり。
第2楽章の濃厚なロマンティシズムも、いかにも私好みだ。
フィナーレで、初めて長調に転じる。
しかし、この転じたはずの長調、すべてを吹っ切った明るさというよりも、軽快だけどどこかアイロニーを感じさせる。
これがまた面白い。
ロマンティックなピアノ協奏曲で、知る人ぞ知る名曲を探しておられる方には、絶対のお勧めです。

ところで、ニーノ・ロータは1911年生まれ。
そう、今年が生誕100年のメモリアルイヤーにあたるのです。
今のところリストやマーラーばかりが脚光を浴びているようだけど、ニーノ・ロータの曲を聴く機会も増えるのだろうか。
ロータファンとしては、秘かに期待している。

ニーノ・ロータ
<曲目>
■ピアノ協奏曲 ハ長調
■ピアノ協奏曲 ホ短調「小さな古代世界」
<演奏>
■ジョルジア・トマッシ(ピアノ)
■リッカルド・ムーティ(指揮)
■スカラ座管弦楽団
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初詣・お酒・・・

2011-01-03 | シャンパン・ワイン・焼酎
今年の初詣は、いつもと同じ氷川神社へ。
比較的暖かかったことと、例年ほど混雑しなかったことが、ありがたかった。
今回は願い事が多すぎて、きっと神様も顔をしかめておられるだろうなぁ(汗)。
すみませーん。
でも、すべて切実なものなので、何卒よろしく願いします。

さて、お正月といえば、いつものことだけど、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートを聴き、箱根駅伝を見ているうちに、あっという間に3日間が過ぎてしまう。
運動もせずに、食べて、飲んで、テレビを見て、音楽を聴いて、そしてまた飲んで・・・という繰り返しだから、メタボの神様に必ずや目をつけられるだろうなぁ。
3日間のことだと思って、どうか大目にみてやってください。

お酒もよく飲んだなぁ。
当然のように、ほとんどすべての種類を飲んだけど、とくに美味しかったのが、友人にいただいた純米大吟醸の「にごり酒」と、ワインセラーでずっと出番を待ってくれていたジャック・セロス。
大吟醸のにごり酒は、酵母が生きているので何と微発泡だ。
よく冷やして慎重に開栓。上品な香りがたまらない。
そして口に含むと、独特のフルーティな味わいと、きりっと引き締まった端正な佇まいに思わず頬がゆるむ。
まさしく、日本酒のシャンパンだと思った。


そして、本家フランスのシャンパンのほうは、この日のためにセラーでずっと寝かしていた「ジャック・セロス」。
ウィーンフィルのニューイヤーコンサートを聴きながら飲んだが、こちらも凄い。
この力強さと風格は、ほかのシャンパンからは、なかなか味わえない。
白ワインそのものの質が違うんだろうなぁ。
さすがに、大好きなアンリ・ジローも、普段飲んでいるクラスではいささか分が悪いか。

こんな贅沢をさせてもらった3日間も終わり、明日からはまた仕事だ。
さあ、今年も頑張ろう。
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ブルッフ:スコットランド幻想曲 by ハイフェッツ(Vn)

2011-01-01 | CDの試聴記
新年おめでとうございます。

昨年末、とても嬉しいことがあった。
浜松に住んでいる息子が、彼女と一緒に帰省してきて、今秋結婚したいと正式に紹介してくれたのだ。
彼女は聡明で素敵な女性だし、親として、これほど嬉しいことはない。
本当におめでとう。
これから、いろいろなことがあると思うけど、仲良く力を合わせて乗り越えていってください。
末永くお幸せに。

さて、新年最初に聴いた曲は、ブルッフのスコットランド幻想曲。
眩いばかりの光と躍動感を持ったメンデルスゾーンの「イタリア」にしようかと随分迷ったのだけど、霧が徐々に晴れて、最後に清々しい空気に包まれるような感覚を味わえるブルッフに決めた。
選んだディスクはハイフェッツ盤。
私は決してハイフェッツの信者ではないが、この演奏に聴くハイフェッツは本当に素晴らしい。
男のロマンのようなものを感じさせてくれる。
聴きながら、私は何か大きな勇気をもらったような気がした。

この演奏にあやかって、今年一年が、素晴らしい年になりますように。

■ブルッフ:スコットランド幻想曲Op.46
<演奏>
■ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
■マルコム・サージェント(指揮)
■ロンドン新交響楽団
<録音>:1961年6月15日&22日
コメント (24)
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