ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

リュブカ・コレッサの芸術

2006-10-29 | CDの試聴記
リュブカ・コレッサという女流ピアニストをご存知でしょうか。

昔購入したベームの10枚組の激安アルバムの中で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番のソリストとして彼女の名前を知っていたという以外は、私もまったく未知のピアニストでした。
ところが、先日、山野楽器のワゴンセールで山積みになっているディスクを一枚ずつ手にとっていくうちに、このコレッサの3枚組のアルバムを偶然見つけたのです。
その時、なぜか「あっ、このディスク聴きたい」と不思議な予感がしました。
長年の経験から、こういう場合は即ゲットの一手です。
そんな経緯で、このディスクが我が家にやってきました。

        

リュブカ・コレッサは1902年にウクライナに生まれ、4歳の時に家族でウィーンへ移り,帝国音楽院でエミール・フォン・ザウアーなどに師事。
20代~30代にかけては、フルトヴェングラーやワルター、カラヤン、E.クライバー、メンゲルベルグ等の大指揮者ともたびたび共演。
その後、1940年代にはカナダに移り、1950年代以降は主にピアノ教師として活躍したそうです。

聴いてみて、やっぱり予感は正しかった。
とくに感銘を覚えたのは、モーツァルトの24番のピアノコンチェルト。
一見端正にみえる演奏ながら、ハートがあるというのでしょうか、淡々と弾いているようで聴き手にぐっと迫ってくるものを感じます。
とくに第2楽章の美しさは、特筆ものです。
決して良好とはいえない録音の中から、きらきらと光る音楽。
フレーズのひとつひとつがこんなに大切に弾かれた演奏は、今まであまり聴いたことがありません。
最後の1分間は、まさにコレッサの独壇場です。

2枚目は音があまりよくないのですが、シュルツ=エヴレル編による「美しく青きドナウの主題によるアラベスク」がとっても面白い。

3枚目は、カナダ移住後の録音で音が随分良くなっています。
特にブラームスのインテルメッツォOp.117-1 & 3が、胸にしみるような秀演なのですが、ところどころオリジナルテープが延びきったような箇所があり、それだけが残念。

何度か聴いているうちに、また新たな発見があり、私の大切なディスクになりそうです。


リュブカ・コレッサの芸術
<1枚目>
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番(*)
■フンメル:ロンドOp.11
■モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番(**)

<2枚目>
■D.スカルラッティ:ソナタK.159 & 551
■モーツァルト:
 グルックの主題による10の変奏曲K.455
 ロマンスK.Anh.205
■ショパン:
 ワルツ第1番/第5番&第11番
 マズルカ第5番&第22番
 練習曲第13番/第14番&第21番
■リスト:ハンガリー狂詩曲第12番
■J・シュトラウス~シュルツ=エヴレル編:
  美しく青きドナウの主題によるアラベスク

<3枚目>
■シューマン:交響的練習曲/トッカータ
■ブラームス:
 ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ
 インテルメッツォOp.117-1 & 3

<演奏>
■リュブカ・コレッサ(P)
■カール・ベーム指揮
 ザクセン国立o.(*)
■マックス・フィードラー指揮
 ベルリン放送so.(**)
コメント

クレンペラーのメンデルスゾーン:劇音楽『真夏の夜の夢』

2006-10-28 | CDの試聴記
今日は久しぶりの快晴!
午後から、職場の後輩の結婚式に出席しました。
本当に素晴らしい結婚式だった・・・。

最近流行の「媒酌人をおかない披露宴」で、今日は主賓で招待されていましたので、スピーチはまさにトップバッターです。
アルコールのサポートを受けられない時間帯のスピーチなので、さすがの私もいささか緊張気味。
しかし、司会者から紹介されたあとは、「えいっままよ」と深呼吸をひとつしてスピーチを始めました。不思議なことに、新郎新婦の幸せそうな顔を見ていると、言葉が自然に出てきて、なんとか無事に終了。
こうなると、後はむしろ楽です。
ゆったりした気分で、美味しい食事にワインを堪能しながら、じっくり楽しませていただきました。

私が最も信頼する部下の結婚式ということもありますが、これほど嬉しい披露宴も初めて。
この日の感動を忘れずに、これから素敵な家庭を築いてくれたらと願うばかりです。

さて、披露宴の余韻に浸りながら、帰宅後聴いているのはもちろんこの曲です。
メンデルスゾーンの劇音楽『真夏の夜の夢』。
私のベストは、このクレンペラーのライブ盤。
まさに決定盤です。

クレンペラーは、1960年にスタジオ録音でフィルハーモニア管弦楽団とも録音していて、これも名演の誉れ高いものです。
この1969年のクレンペラーのライブ盤を聴くまでは、1960年のスタジオ録音盤が、クーベリック&バイエルン放送響の抜粋盤、プレヴィン&ウィーンフィル盤と並んで名演トリオだと考えていました。
しかし、このライブ盤は、それらの上を行く大変な名演!
クレンペラーのすべての録音の中でも、ベストを争う演奏だと信じています。

「序曲」は遅い。でも鈍い遅さではなく、深い森を思わせるような巨視的な雰囲気を感じさせる遅さです。
「妖精の歌」では、マティスとファスベンダーがまさに理想的な歌を聴かせてくれます。この曲がフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」の一節だといわれたらそのまま信じてしまいそうなくらい。
でも時折表舞台に登場する弦楽器の表情の隈取りの濃さは、やはりクレンペラーならではのもの。ティンパニの合いの手も絶妙!
「夜想曲」では深いホルンの音がとにかく印象的。また、それに寄り添う弦楽器の呼吸と表情が、これまた何とも魅力的なんです。

しかし、このライブ盤の真骨頂は、やっぱり「結婚行進曲」。
とにかく音楽の奥行きが凄い。しかも現代建築の豪華な奥行き感ではなく、何気なく入り口のドアを開けて中を覘いてみると、意外なくらいの立派な家だった、まさにそんな感じなのです。
まったく力みがないのに、音楽は比類ないくらいの偉容を示しています。
本当に素晴らしい演奏です。

そしてこのライブ盤で驚かされるのが、終曲の前に置かれた「間奏曲」。
スタジオ盤にはなかったわずか1分強の短い曲ですが、結婚行進曲の残影をメインに、いままでの曲のテーマを名残惜しそうに振り返っていきます。
そして休みなしに終曲へ。
「終曲」もロマンティックな雰囲気を漂わせつつ、とにかく幻想的でスケールが大きい。
こんなに充実した音楽だったんですね。
ひょっとすると、当のメンデルゾーンですら想像していなかったレベルかもしれません。

また、このCDは録音が素晴らしいことも特筆されます。
輸入盤でしか手に入らないようですが、メンデルスゾーンの音楽が好きな人は絶対聴くべきディスクだと思います。



         

<曲目>
■メンデルスゾーン:劇音楽『真夏の夜の夢』
■メンデルスゾーン:演奏会用序曲『フィンガルの洞窟』
<演奏>
■エディト・マティス(S)
■ブリギッテ・ファスベンダー(Ms)
■バイエルン放送合唱団
■バイエルン放送交響楽団
■オットー・クレンペラー(指揮)
<録音>
■1969年5月23日
■ミュンヘン、ヘルクレスザールにおけるステレオ録音(ライヴ)
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モーツァルト コンサート用アリア「私はあなた様に明かしたい」K. 418

2006-10-25 | CDの試聴記
今日は会社の行事で、竹芝桟橋からヴァンテアン号で東京湾クルーズへ行ってきました。
奇しくも昨年12月に妻と行ったディナータイムクルーズと同じ船・コースになります。

普通は途中で宴会を入れたりするのですが、今夜に限っては「大人の素晴らしき夜を」というテーマで幹事が企画してくれたこともあり、ゲームとか芸は一切なし。
ワイングラスを片手にテーブルで同僚達と語り合うもよし、デッキに出て夜景を楽しむもまた良し。
昨日の大荒れの天候が嘘のような、絶好のナイトクルージング日和だったこともあり、素晴らしいひとときを過ごすことができました。

素敵なクルージングでワインを堪能したあとは、やはりいい音楽を聴きたい。
今聴いているのは、グルベローヴァが歌うモーツァルトのコンサートアリアK.418です。

先日、口もきけなくなるほど感動した、あのアバドのマーラー6番。
その伝説のマーラーの前に、ハルニッシュが聴かせてくれた曲です。

弦のピチカートに乗せて歌うオーボエの何という美しさ!
その後、透明感溢れるグルベローヴァの歌が始まった後も、弦の優しいピチカートとオーボエの柔らかな表情が、三位一体で絶妙の音楽を奏でます。
もともと、私の大好きなアリアだったわけですが、ほんとに素晴らしい。
モーツァルトの書いた最も魅力的な歌曲のひとつだと思います。
短い曲ではありますが、至福の時間を与えてくれました。

このディスク、選曲が大変魅力的であること、ライブでありながらグルベローヴァの完璧な歌唱が聴けること、アーノンクールの明確な意図を持った伴奏が聴けることで、発売当時から大変評価の高いディスクです。

その評価にいささかの異論もないのですが、正直に言うと、私にはグルベローヴァの特に高音が少しきつく感じるときがあります。
だからこの演奏の素晴らしさを認めながらも、できればもう少し柔らかい声の演奏も聴きたい。
できることなら、ナタリー・デッセイあたりが歌ってくれないかなぁ。
酔った勢いで、夢のようなことを書いてしまいました。

           

<曲目>
モーツァルト作曲
■レチタティーヴォとロンド「我がいとしの希望よ!・・・ああ,お前にはどんな苦しみか分るまい」K.416
■アリア「あなたは忠実な心をお持ちです」K.217
■アリア「いえ,いえ,あなたにはご無理です」K.419
■レチタティーヴォとアリア「だが何をしたのだ,運命の星よ・・・私は岸辺が近いと思い」K.368
■レチタティーヴォとアリア「哀れな私は,どこにいるの・・・ああ,口をきいているのは私でなく」K.369
■レチタティーヴォとロンド「この胸に,さあ,おいで下さい・・・天があなたを私にお返し下さった今」K.374
■アリア「私はあなた様に明かしたい」K.418
■アリア「ああ,情け深い星々よ,もし天に」K.538
<演奏>
■ソプラノ:エディタ・グルベローヴァ
■指 揮: ニコラウス・アーノンクール
■管弦楽: ヨーロッパ室内管弦楽団
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ポリーニ&アバド/ルツェルン祝祭管弦楽団 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番他(その2)

2006-10-21 | コンサートの感想
後半は、ブルックナーのロマンティックです。

       

1stヴァイオリンのメンバーのひとりが少し遅れて入場すると、コンマスの入場と勘違いして拍手が起きました。くだんのヴァイオリニストは恥ずかしそうに聴衆に頭を下げていましたが、その光景がまた微笑ましくって、みんなリラックスできたのではないでしょうか。

マエストロが登場して、いよいよブルックナーが始まりました。
原始霧といわれる弦のトレモロに導かれて現われる冒頭のホルン。
アルプスの山に思いをはせながら、目を瞑って聴いていたのですが、何と裏返ってしまいました。
名手ブルーノ・シュナイダーにしては本当に珍しい。
野球に例えれば、まさに出会いがしらの先頭打者ホームランを打たれてしまったというところ。
しかし、ここからがこのオケの真骨頂。
「なーに、こんなのすぐに取り返してやるよ」といわんばかりに、オーボエ・クラリネット・フルートが完璧にリカバリーしてくれました。その後は、ホルンもパーフェクト。
素晴らしいチームワークいやアンサンブルで、第1楽章が終わりました。

第2楽章は、感動的な音楽でした。
全員がアバドの音楽を心から感じて、しかも初めてこの曲を演奏するかのように懸命に弾いている。この名手たちがですよ。
それをみるだけでも、胸が熱くなります。
弦も木管も最高の演奏でした。

第3楽章は少し早めのテンポ。しかもアバドは、かなり細かめにデュナーミクを付けていくので、演奏する側は大変だと思います。しかし、名人達はまったく苦にしません。爽快さと豪快さを併せ持った表現でした。

そしてフィナーレ。
全員がこのフェスティバルの最後の音楽であることを意識している。アバドと一緒に演奏できるのも、この音楽が最後だと知っている。そして、ホールを埋め尽くした聴衆もそのことを知っている。
もう、サントリーホールの全員がひとつになった瞬間でした。
ブラスも木管も弦も、アバドのために持てる力を全て出し切り、最高の演奏で応えてくれました。
コーダでは、名残惜しそうに今まで登場したテーマを振り返ったあと、こみ上げてくる感動をかみ締めながら力強く登り詰めてエンディング。

完全に音が消えても、アバドはタクトを構えたままです。
しかし、重力に従うかのように、ゆっくり本当にゆっくりとタクトが下がっていき、ついに静止しました。
その間、ホールからは何の音も聴こえません。拍手も起きません。
拍手がこの素晴らしい音楽の余韻を消すのを怖れているかのようです。
何秒経ったでしょうか。
自然発生的に拍手が起こり始めました。
興奮して手を叩くのとは全く違います。感謝の気持ちが、自然に拍手という形になったのです。
感動的な音楽でした。
そして、この素晴らしい瞬間を共有できた素晴らしい聴衆にも大ブラヴォーです。
13日に聴いたマーラーのときは、感動で口も利けないくらいの放心状態になってしまいましたが、この日のブラームスやブルックナーのように、じわーっとこみ上げてくる感動も、これまた素晴らしいものですね。

終演後、yukochanさんと落ち合って、アバドファンの集いに参加させていただきました。
みんな、とにかく熱かった。
でも、私も皆さんの気持ち、思いっきりよく分かります。
「大病を克服した後のアバドは、ライブで聴くべし」、それが今回の最大の印象でした。
とにかく何かが起こります。
「ルツェルンが来日するのは初めで最後」という声も当初ありましたが、来年もきっと来てくれる予感が・・・。
いや、必ず来てくださいね。
待っていますよ、マエストロ。



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ポリーニ&アバド/ルツェルン祝祭管弦楽団 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番他(その1)

2006-10-20 | コンサートの感想
アバド&ルツェルン祝祭管弦楽団の来日公演、3つめにして最後のコンサートに行ってきました。
2回に分けて書きます。

<日時>2006年10月19日(木) 
<会場>サントリーホール 大ホール
<曲目>
■ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調
■ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」
<演奏>
■ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
■指 揮:クラウディオ・アバド
■管弦楽:ルツェルン祝祭管弦楽団

     

前半は、ブラームスの大曲、ピアノ協奏曲第2番。
ピアノソロはもちろんポリーニ。
室内楽の時も感じたのですが、初めて見るポリーニは少しだけ背中が曲がっているような・・・
やはり彼もそれなりに齢をとったということでしょうか。
今年73歳になる9歳年長の盟友アバドの方が、ずっと若々しく見えました。

さて冒頭のホルン、相当緊張しているはずですが、さすがにばっちり!
オーケストラの力強いトゥッティを導くという重要なミッションをおびたポリーニのピアノは、力一杯弾いてくれてはいるのですが、私には心なしか空回りしているように感じられました。
また、2階席の3列目にしては、音が思ったほどこちらに飛び込んでこない!
そんなこともあってか、かつてウィーンフィルを相手にアバドとポリーニが繰り広げた、燦々とふりそそぐ太陽のような明るさ・伸びやかさは感じられなかった。
うーん!期待があまりに大きかったので、少し戸惑っております。

スケルツォは第一楽章から続いてアタッカで始まりました。
第1楽章と比べると、ピアノもオケも音楽が活き活きとしている!
とてもいい感じになってきました。
ポリーニが、立ち上がらんばかりにしながら、渾身の力を込めて弾いている姿を見るだけでも感動ものです。
しかし、もしこの楽章までで終わったとしたら、私の印象は「オケもピアノも全力で頑張っていたよ!」で終わっていたかもしれません。

劇的に変わったのは、第3楽章。
独奏チェロが静かに弾きはじめます。
何という美しさ!
ブラームス屈指の名旋律を、ブルネロはこれ以上ないくらい美しく歌い上げます。
バックハウス&ベームVPO盤のチェロを超えているかも・・・
バトンを受けた弦と木管(弦にぴったり寄り添うファゴットがとくに印象的)の表情が、これまた絶妙です。
凄い演奏を聴ける予感に、鳥肌がたってきました。
そして、ゆっくり・静かに登場するポリーニのピアノ。
あの硬質なイメージはありません。しかし、美しい音!
個々の音というよりも、フレーズとしてとらえたときの音の美しさが、私の胸に染みます。
この楽章の後半で再び冒頭のテーマをブルネロが弾きはじめると、うるうるしちゃって、もうだめです。最後までその状態が続いてしまいました。
齢のせいか涙腺が弱くなってきたなあ。
やはり第2楽章までは、少し無理をしていたのではないでしょうか。

第4楽章、まず何といっても冒頭のポリーニの表情が最高。
付点音符を軽やかに、しかも活き活きと表現していきます。
こんな素敵な第4楽章の出だしをかつて聴いたことがあったかしら。
これでこそ、グラツィオーソ!
オケ(とくに木管)とピアノの、それこそため息がでるようなやりとりを夢うつつで聴いているうちにエンディング。
3楽章以降は、まさに私の理想の演奏でした。

そして後半はいよいよブルックナーだったのですが、こちらは明日書くつもりでおります。


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ポリーニ、マイヤーの室内楽(ルツェルン祝祭チェンバー・フェストⅡ)

2006-10-17 | コンサートの感想
アバド・マジックの余韻も十分醒めやらぬ中、日曜日に聴いた室内楽コンサートの感想を。

       

《ルツェルン祝祭チェンバー・フェストII≫
<日時> 2006年10月15日(日)17:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目と演奏者>
■モーツァルト: クラリネット五重奏曲 イ長調 K. 581
 クラリネット: ザビーネ・マイヤー
 ヴァイオリン: アントン・バラコフスキー、グレゴリー・アース
 ヴィオラ: ディムート・ポッペン
 チェロ: ヴァレンティン・エルベン 
(アンコール)ウェーバー:クラリネット五重奏曲より第3楽章
 
■ブラームス: ピアノ五重奏曲 ヘ短調 op. 34
 ピアノ: マウリツィオ・ポリーニ
 ヴァイオリン: コーリャ・ブラッハー、アントン・バラコフスキー
 ヴィオラ: ヴォルフラム・クリスト
 チェロ: マリオ・ブルネロ
(アンコール)ブラームス:ピアノ五重奏曲 op.34 より 第3楽章

席は、奇しくもマーラーの6番を聴いた時と同じP席5列目中央です。
(もちろん、まったくの偶然!)
2日前にあのマーラーをきいたのと同じ場所なんて、偶然にしては出来すぎてますよね。

さて、前半はモーツァルト晩年の名品、クラリネット五重奏曲。
ザビーネ・マイヤーを先頭にして、5人のアーティストが登場してきました。
マイヤーは、噂にたがわず、長身で笑顔の大変チャーミングな美人。
マイヤーは中央ではなく、舞台上手側に座りました。

モーツァルトの最初のフレーズが流れた時、一瞬にしてホール全体が柔らかな春の雰囲気に包まれました。
また、この冒頭のテーマがリピートされたときの、表情の自然さがたまらなく魅力的。
色で言うと、明らかに暖色系の音です。
ベージュを基調にして、強調する時はすこし茶系を加えてみたり、逆に白を加えて淡い色にしてみたりするのですが、メリハリをつけるためにどぎつい色を使ったりは決してしません。
そのセンスの良さが、この曲本来の魅力をいやがうえにも高めてくれます。
第3楽章では、フレーズの一体感を大切にしようとしずぎるあまり、少し呼吸が乱れる箇所もありましたが、全員がモーツァルトの宝物のような美しいフレーズを大切に扱う姿勢に、私は心打たれました。
トリオで、ごく単純な3拍子を、見事な躍動感をもって表現してくれた時には、おもわずにんまり。
マイヤーのアウフタクトの表現が、とにかく秀逸。
フィナーレは、各バリエーションの対比を含めた絶妙のテンポ感が印象に残りました。
マイヤーの即興的な装飾音も、ますます自在性を増した感じで、もう見事のひとこと。
やっぱり、この人は、世界最高のクラリネット奏者の一人ですね。
あらためて実感しました。
樹衣子様の仰るとおり、「できる女は、かっこいいのだ!」

アンコールのウェーバーも、メインプロで聴きたかったくらいの出来栄えでした。

そして、後半はポリーニを中心にしたブラームスのピアノ五重奏曲。
ヴァイオリンのバラコフスキー以外は、メンバーがすべて交代しました。
私の座っている席からは、ポリーニの手の動きや表情が全て完全に見えました。
ピアノを勉強している人ような人にとっては、垂涎のロケーションだったかもしれません。

前半の暖色系の音色と比較して、こちらは寒色系。
青を基調に、群青色にも水色にもエメラルド色にもなる感じでしょうか。
弦楽器奏者の腕前は、こちらのほうがさらに一枚上です。
とくに第3楽章が凄かった。
回転数を何回かに分けながら、がっがっと全員でテンションをあげてくる時のエネルギーの凄いこと!
まさにベルリンフィルのそれです。
そして、その直後に訪れる心憎いばかりのロマン。
「あー、ブラームス」と思わずつぶやきそうになりました。

感じたとおりにかくと、ブラッハーは必殺仕事人、クリストはお茶の水博士、ブルネロはマフィアみたい。
そして、ブラッハーもクリストもほんとに凄いプレーヤーだけど、この日一番印象に残ったのは、チェロのマフィアことブルネロでした。(ファンの方ごめんなさい)
彼の表現力は凄いのひとこと。圧倒的な存在感でした。

さて、肝心のポリーニ。
ブラームスの室内楽として、おそらく理想に近いピアノだったように思います。
しかし、かつてLPやCDで聴いてきた、あのやや硬質でクリスタルのような輝きをもった音は聴けませんでした。
やっぱりP席の限界なんでしょうね。

こうなると、やっぱり客席側のいい場所でポリーニの音を聴きたい!
しかし、もう11日にソロのコンサートは終わっている。
ということは・・・。

もうひとつのオーケストラ・プログラムに含まれている、ブラームスのピアノ協奏曲第2番を聴くしかないじゃないですか。
そう閃いた瞬間、私の横には例の悪魔がきて、嬉しそうな顔をして大きく何度も頷いています。
そして、悪魔さんの囁きに負けて血まなこになって探したところ、奇跡的に、出張の谷間である19日(最終日)のチケットを確保できたのであります。
しかもラッキーなことに、2階席の素晴らしい席にもかかわらず、随分安く譲っていただきました。

あとは、ただただ素敵なコンサートになるように祈るばかりです。


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アバド&ルツェルン祝祭管弦楽団 マーラー:交響曲第6番他(その3)

2006-10-16 | コンサートの感想
マーラーの6番。

マエストロ アバドのマーラーを初めて実演で聴くことができる!
そう考えただけで、実は休憩時間からそわそわしていました。
チャイムが鳴り、よく見かける著名な顔ぶれが続々とステージに集まってきました。

        

この日の私の席はP席のほぼ中央で、まさにマエストロと対面のロケーションだったのですが、私の一番近いところに、首席トランペットのラインホルト・フリードリヒが来ました。
聴衆の大きな拍手に応えて、とびきりの笑顔で応えてくれます。
「この人なら、きっとやってくれる!」そんな期待を抱きました。

そして、他は?と見渡すと、ホルンのアレグリーニ、トロンボーンのテンプルトン、ティンパニのカーフス、いずれ劣らぬ名人たちが、すぐ近くに陣取っています。
次に木管は?とみてみると、前半のモーツァルトで絶妙の表現を聴かせてくれたオーボエのフレムゲン、フルートのズーン、そして何といっても貫禄があるのはクラリネットのザビーネ・マイヤー。
弦楽器は、さらに強力な布陣です。ベルリンフィルでもコンマスを務めたブラッハーをはじめ、ヴィオラのクリスト、チェロのクレメンス・ハーゲン、コントラバスのボッシュといった錚々たる面々。
このオケの第一バイオリンなんかは、オーケストラでコンサートマスターの経験のない人は一人もいないそうです。凄すぎる・・・。
そして忘れてはならないのは、ハープ。我らが吉野直子さんがリーダー格で入っています。
実は休憩前にはハープは2台しか用意されてなかったのです。ところがこの日のハーピストは3人。休憩時間に何やらステージマネージャーと相談して、もう一台のハープが運ばれてきました。
このあたりのやり取りを目の当たりにできるところが、実演の面白さ。

さて、大きな拍手に迎えられてマエストロが登場しました。
コンサートマスターのブラッハーと笑顔でがっちり握手し、オケのメンバーをリラックスさせます。
そして、その直後、このシンフォニーのイメージどおりの厳しい表情に変わり、全員に緊張感がみなぎったのを確認して、やおらタクトを振り上げます。

冒頭のコントラバスの強烈なアクセントに、はやくも戦慄が走ります。
P席できく低弦やブラスは、とにかく迫力がありますね。
これはすごいことになりそう!
その後、アバド特有の軽いタクトさばきによって、まさに変幻自在に音楽がうねっていきます
そして、聴き進むうちに、私の感覚も、まるで無重力空間に放り出されたようになってしまいました。
「どんな形にも、どんな大きさにも、アバドの思いのままに変形させられてしまう」、まさにそんな感じなんです。
アバドのイメージしているマーラー像が、そのまま私の五感に投影されていきます。
そして、気がついたら、あの感動的なエンディングを迎えていた。
これこそが、私が「アバド・マジック」と呼んだ所以です。

こんな凄い演奏を前にして、あのフレーズが、あのパッセージが、といってもまったくナンセンスな話です。
基本的な造形は、私が「アバドは変わった」と感じた、あの2004年のベルリンフィルとのライブ盤とほとんど変わりません。
しかし、よりしなやかに、また豊かになったような気がしました。
たとえ、どんなに激しくきつい表情になっても、それは音楽そのものが欲しているのです。
決して音楽から遊離することがないので、きっと表面的な印象を与えないのですね。

とくに印象に残ったのは、第2楽章のアンダンテ・モデラートと終楽章でしょうか。
アンダンテ・モデラートで歌われる旋律の美しいこと!
5番のアダージェットと美しさでは双璧だと思いますが、5番がガラス細工のようなデリケートな音楽だとしたら、6番のアンダンテ・モデラートのほうは、たっぷり歌う古典的な美しさを感じさせてくれます。
肌の温もりを感じさせる表情が、私にはことのほか心地よかった。
そして、最後に大きく主題が再現される部分では、涙がでるというよりも、全身が痺れるような感覚に襲われて、身動きができませんでした。

終楽章では、2回登場するハンマーがやっぱり衝撃的。
ハンマーを打ち込む直前からその瞬間までを、今回つぶさに見ることができて、とても新鮮でした。
そして、あの心湧きたつような第二主題が短く再現された後、もうエンディングかなと思わせた後が長いんですよね、この曲は・・・。
しかし、今回の演奏に限っては、「もっと聴かせてくれ。終わらないで欲しい」と聴きながら祈っていました。
それくらい素晴らしい演奏だったのです。

いろいろ書いてきましたが、こんな伝説になろうかという名演奏を、言葉にしようとすることが、そもそも間違っているのかもしれません。
2006年10月13日、サントリーホールで、この素晴らしい瞬間に居合わすことができた幸運に、ただただ感謝です。
マエストロ アバド、ありがとう。
そしてルツェルン祝祭管弦楽団のすべてのメンバーに対しても、ありがとう。

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アバド&ルツェルン祝祭管弦楽団 マーラー:交響曲第6番他(その2)

2006-10-15 | コンサートの感想
昨日続きを書こうと思ったのですが、あの日の余韻が強すぎて何もする気が起きませんでした。
今日になって、ようやく少し落ち着いたので、感想の続きを。

実は今回のルツェルンのコンサートは、随分迷ったあげく、あえてチケットを買わなかったのです。
これは、ひとえにプライス。
器楽のコンサートで、最高席が50,000円は少しばかり異常。
アーティストやプログラムには大いに惹かれるけど、この点で諦めていました。

しかし、転機が訪れました。
それは、前にも一度書きましたが、トイレに掛かっているグラモフォンのカレンダー。
10月はアバドだったんです。
ふと、考えました。
「アバドは大病を克服してから、音楽が変わった。明らかに豊かに温かくなった。
そんなアバドの指揮姿、音楽をこれから何回体験できるんだろう。
今観ておかないと、きっと後悔する。大丈夫か?」
まさに神の啓示、いや悪魔の囁きでした。

そうだ、何としても聴かなきゃ。

次は演目です。
今回の演目は2種類。どちらにするか。
ポリーニとのブラームスの2番も聴きたい。絶対聴きたい。
しかし、私が「アバドは変わった!」と実感させてくれたマーラーの6番に、結局方針を決めました。
そして、公演のなんと2日前にチケットを手に入れました。
席は、もちろんP席。
そして、13日を迎えたのです。

       

当日のプログラムは2本立てでした。
前半が、モーツァルトのコンサートアリアを3曲。
後半が、メインのマーラーの第6番。

<日時>2006年10月13日(金)19:00
<会場>サントリーホール 大ホール
<曲目>
■モーツァルト: コンサート・アリア
 「わが憧れの希望よ!…ああ、お前は知らないのだ、その苦しみがどんなものか」K. 416
■モーツァルト: コンサート・アリア
 「私はあなた様に明かしたい」K. 418
■モーツァルト: コンサート・アリア
  「わが感謝を受けたまえ、やさしい保護者よ」K. 383
■マーラー:交響曲第6番 イ短調「悲劇的」
<出演>
■ソプラノ: ラヘル・ハルニッシュ
■指 揮:クラウディオ・アバド
■管弦楽:ルツェルン祝祭管弦楽団


前半のソリストは、若きソプラノのラヘル・ハルニッシュ。
ハルニッシュを初めて聴いた(観た)のは、1999年7月にザルツブルクで行われたカラヤン没後10周年のレクイエムです。もちろん実際に現地で聴いたのではなく、BSの衛星中継で観たのですが、ハルニッシュはレクイエムの前に演奏された「聖墓の音楽K42」と「ラウダーテ・ドミヌムK339」のソリストだったのです。
そのときのハルニッシュからは、「若いけど、声質が透明で、歌そのものが非常に安定している」という印象を受けていました。
そして、そのとき指揮をしていたのがアバド。
やはりマエストロのお気に入りのソプラノなんですね。

さて、この日ステージに登場した彼女は、とにかく細い!そしてキュート。
まことに残念なことに、P席の私には、歌っている間中、ほとんど背中しか見えないわけですが、演奏が終わって挨拶をする仕草もほんとにキュートでした。
スイス生まれのキュートなソプラノというと、私の永遠のアイドルであるエディト・マティスを思い浮かべますが、彼女も近い将来、きっと大ブレイクすることでしょう。

演奏もとても素敵でした。
聴いていて、とても安心感のある歌手です。
サプライズもいいけど、モーツァルトには、この感覚が重要だと思います。
何より私の大好きなK418が聴けたので、それだけでも大満足。
そして、オーボエの表情が何とも見事で、私には夢見るようなひとときでした。
その絶妙のオーボエを吹いてたのは、バンベルク響のカイ・フレムゲン。
後ろから見ると、吹いている表情・仕草が、あのアルブレヒト・マイヤーにそっくり。最後まで、ずっと錯覚を覚えながら聴いていました。
後半のマーラーとの対比という意味でも、前半のモーツァルトは大正解だったと思います。

さて後半は、あのマーラー。
(時間切れになってしまいました。これからポリーニ・マイヤーたちの室内楽を聴きに行きます。続きは(その3)で書きます)


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アバド&ルツェルン祝祭管弦楽団 マーラー:交響曲第6番他(その1)

2006-10-13 | コンサートの感想
アバド・マジック!
そう呼びたくなるようなコンサートでした。
もう、あまりに素晴らしいマーラーだったので、ずっとこの余韻に浸っていたい。
まさにそんな気持ちです。
サントリーホールを埋めた、多くの人が同じ印象を持っておられるのではないでしょうか。

だから、今日はほんのさわりだけ書きます。

          

マーラーの交響曲第6番「悲劇的」。
それが、今日のメインプログラムでした。
一時間半を超えようかという大曲です。
しかし、あっという間の一時間半でした。
マエストロ・アバドは、幸い体調も良さそうで、以前テレビで観たときよりも若々しい感じがします。

さて、終楽章も、2回目のハンマーの一撃が終わり、いよいよラストに近づいています。
そして、名残惜しげに一瞬爆発的に盛り上がって、消えゆくようにエンディングを迎えました。

マエストロの指揮棒は、すでに胸の近くで止まっています。
聴衆は、息を潜めてステージを見つめています。誰も拍手しません。
完全な沈黙!
10秒が経ち、20秒が経ちました。
そして、マエストロのタクトが徐々に静かに下に移動し、再び静止。
そのあとわずかに脱力の仕草。

そのときです。
聴衆の一人から低い声で「ブラーヴォ」の声がしました。
と同時にホールを埋めた聴衆から拍手の嵐が・・・。
こんなラストを私は聴いたことがありません。
マエストロもオケも、そして聴衆も、素晴らしい集中力でした。
このマーラーがどれだけ素晴らしかったか、何となくお分かりいただけるでしょうか。

続きは、明日書きます。







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飯守泰次郎&東京シティフィル:モーツァルト「レクイエム」他

2006-10-12 | コンサートの感想
昨日、東京シティフィルの定期演奏会に行ってきました。
この日のプログラムは、モーツァルトの晩年の傑作2作品。
澄み切った抒情が美しい交響曲第39番と、最後の作品となったレクイエムです。

          
       

<日時>2006年10月11日(水)午後7時開演
<会場>東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>モーツァルト作曲 
■交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
■レクイエム K.626
<演奏>
■指 揮:飯守泰次郎
■管弦楽:東京シティフィル 
■ソプラノ:星川美保子
■アルト:手嶋眞佐子
■テノール:望月哲也
■バリトン:成田博之
■合 唱:東京シティ・フィル・コーア
■合唱指揮:藤丸崇浩

今回の席はX席。
ずばり1000円の最安席で、3階席のサイドの一番後ろの席でした。
座席に座ってまず驚いたのは、ステージが半分しか見えないこと。前屈みになっても6割程度しか見えません。
ステージの全体を見ようとすると、危うく2階席に転落しそうになりました。(笑)
まあ、お値段もお値段なのでやむをえないか。

しかし、最初の変ホ長調の和音を聴いてびっくり。
音がとても素晴らしいのです。一階席の端で聴いたときよりもいいくらい。
2m横の正面を向いた席はA席なんですから、そう考えると納得ですね。
見難さは、徐々に気にならなくなりました。

さて、飯森さんの指揮もシティフィルの演奏も実演で聴くのは初めてでしたが、なかなか素敵なモーツァルトです。
テンポもきびきびしているし、デュナーミクも自然。颯爽とした演奏を聴かせてくれました。
ただ、第3楽章のトリオは、もう少しエレガントな感じがでれば最高です。
それと、正直に告白します。
アーノンクールの鮮烈な演奏をCDできいてしまったせいか、第3楽章のテンポの変化や、フィナーレの独特のアーティキュレーションがないと、何となく気が抜けた気がしてしまうのです。
これは危険な兆候!

後半は、レクイエム。
大好きな曲なのに、実演で聴くのは初めてです。
飯森さんのタクトが静かに上がり、あの偉大なレクイエムが始まりました。
やや暗めの色調がいいですねぇ。
素晴らしい響き、素晴らしい音楽です。

聴き進むにつれて、「霊妙なるラッパ」の後半あたりから、私はレクイエムを聴きながら、「魔笛」を聴いているような気分に・・・。
まるで悲しみに沈むパミーナが歌っているみたい。
ソプラノの星川さんの声が、透明感溢れる美しさをもっていたからかもしれません。
その後も、この魔笛のイメージは最後まで続きました。
いや、正確に言うと、魔笛だと思っていたら、またレクイエムに戻る。
交互に2つの作品が交錯していきます。
なんとも不思議な感覚。こんな経験は初めてです。

個々の曲では、やはりラクリモーザが最も感動的でした。
音楽の流れが自然で、しらずしらずの間に身体に染み渡ってきます。飯守さんの音楽作りの上手さなんでしょうね。
ソリストも総じて好調。
合唱も力を感じさせてくれました。
高音にややピーク感が感じられたことと、最初のほうの強奏部分で音が団子状態になってしまったこと、この点を除いては素晴らしいコーラスといって差し支えありません。
とくに弱音分の美しさと、男声が印象に残りました。

それから、いつも楽しいコメントをくださるemiさんが7月の室内コンサートで共演されていた安藤貴子さんが、この日はコンマスの隣で弾いておられました。
お目にかかったこともないのですが、何かこのオーケストラがとても身近に感じられました。(笑)

ただ、終演後の大きなブラヴォーは、この曲の場合いかがなものかと・・・。
素敵な演奏でしたから、気持ちはよく分かるのですが、やはり、「心静かに、感動を胸に秘めたまま、コンサート会場を後にする」べき音楽ではないでしょうか。
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ロジェストヴェンスキー父子&読響 オール・ショスタコーヴィチプログラム

2006-10-11 | コンサートの感想
少し遅くなりましたが、8日(日)の読響マチネーの感想を。
今回はロジェストヴェンスキー父子によるオール・ショスタコーヴィチプログラムです。

<日時>2006年10月8日(日) 14:00~
<会場>東京芸術劇場
<曲目>
■ショスタコーヴィチ:交響曲第1番
■ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
■ショスタコーヴィチ:バレエ音楽「ボルト」から
 「間奏曲」「官僚の踊り」「御者の踊り」
<演奏>
■ヴァイオリン:アレクサンドル・ロジェストヴェンスキー
■指 揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
■管弦楽:読売日本交響楽団

9月にも都響でオール・ショスタコーヴィチプロを聴きましたが、このときはとくに趙静さんをソリストに迎えてのチェロ協奏曲が素晴らしかった。
今でも鮮烈に記憶しています。
今回は、演目は異なっていますが、シンフォニーとコンチェルトが1曲ずつ含まれているという点では同じような構成です。

おなじみロジェヴェンことロジェストヴェンスキーは、小柄ながら指揮台を使わずに指揮をします。
音楽の楽しさをダイレクトに聴き手に与えるという点に関しては、現役のマエストロの中でも稀有の存在でしょう。
その小柄な身体に秘めたエネルギーとエンターテイナーぶりは、この日も音楽を本当に身近に感じさせてくれました。

前半の交響曲第1番は、ショスタコーヴィチ19才のときの作品ですが、第2楽章の軽妙さと第3楽章レントの痺れるような美しさが印象的。
各パートのソロが多く登場する曲ですが、読響の名人芸が光りました。

後半は、子息のアレクサンドル・ロジェストヴェンスキーをソリストに迎えての、難曲ヴァイオリン協奏曲第1番。
正直に言うと、親の七光りで来日したヴァイオリニストかなと思っていたのですが、どうしてなかなかの腕前です。
楽譜をみながらの演奏ではありましたが、非常に逞しいし、ガルネリ・デルジェス「ハドック」も素晴らしい音がしていました。
前から3列目で聴くぶんには、ストラディバリウスよりも艶やかに聴こえるかもしれませんね。

とくに、第3楽章パッサカリアの集中力は大したもの。
聴衆が固唾を呑んで聴き入る中、徐々にテンションをあげて見事に弾ききってくれました。
その高いテンションを、続くブルレスクもずっと維持したままエンディング。
ラスト近くで第1ヴァイオリンがしばらく休む箇所があるのですが、アレクサンドルのソロを聴きながら、ずっと奏者たちが弾むように身体でリズムをとっていたのが印象に残りました。
お隣の年配のご夫婦が、「上手い!あの若さでこれだけ弾けたら申し分ないね」と
終演後何度も会話されていたのも、まったく同感。
ウィーンで聴いたレーピンのソロにはさすがに叶わないものの、今後きっと大きく成長する人だと、強く感じました。

プログラムの最後は、バレエ音楽「ボルト」から3曲。
これぞロジェヴェン・マジックと呼びたくなるような圧倒的な演奏。
1曲目の間奏曲で、チューバが「ぶー」ってやる箇所では、オケや聴衆のほうを振り返って、「誰?」と見渡す仕草をします。
もちろん場内は大爆笑!
オケのメンバーもすっかりリラックスして、爽快このうえない音楽を聴かせてくれました。
ユーモアって大事ですね。
みんな、大満足で家路についたことでしょう。

また次回を楽しみにしていますよ、ロジェヴェンさん。



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デムスのフランク作品集

2006-10-08 | CDの試聴記
イェルク・デムスのフランク、初めて聴きました。
いやー、素晴らしかった。4回も続けて聴いてしまいました。

デムスというと、私の場合、どうしても室内楽の名演奏が思い浮かんでしまいます。なかでも、シューマンのピアノ四重奏曲やピアノ五重奏曲は、永遠の名盤でしょう。コレギウムアウレウム合奏団と組んだモーツァルトのコンチェルト(ピアノではなく、ハンマークリューゲルで演奏)なんかも好きでした。
でも、彼のソロはほとんど聴いたことがありませんでした。
そんなときに、あるCDショップの特売品として置かれた中に、デムスの自主制作盤と題された何組かのディスクを見つけました。
試しに購入した2組のディスクのうちの1枚が、このディスクです。

<曲目>
フランク作曲
 ■前奏曲、フーガと変奏曲
 ■前奏曲、コラールとフーガ
 ■18曲の小前奏曲集
 ■前奏曲、アリアと終曲
<演奏>イェルク・デムス
<録音>2004年、1993年

      

私が、フランクの作品、とくに「プレリュード フーガと変奏曲」が大好きだということは以前書きましたが、このディスクには、比較的規模の大きな(有名な)3曲と18曲の小品が収録されています。
また、この録音の大きな特長は、それぞれの曲が異なる歴史的ピアノで演奏されていることです。
最初聴いた時は、普段モダン楽器を聴きなれているせいか、少しこもったような印象を受けましたが、聴き進むにつれて、徐々にその暖かい音色に惹かれるようになりました。
オルガンという楽器をこよなく愛したフランクの音楽を再現するには、音量も大きく華麗な音色を持つ現代のピアノよりも、むしろこちらのほうがふさわしいように感じます。

とくに今回は「前奏曲、コラールとフーガ」が良かった。
ひとことで言うと、自分に語りかけるような演奏。
「自分に問いかけ、一瞬眼を閉じて考え、そしてじっくり回答を出す」そんな印象です。
人にいい格好を見せようなんて、まったく考えていません。
その「一瞬眼を閉じて考えている」箇所が、いわゆる「間」になるわけですが、私は完全にデムスの呼吸に共感できました。
コラールの高貴なまでの美しさは、たとえようもありません。
この曲の魅力をあらためて気づかせてくれました。

唯一残念だったのは、小前奏曲集で使用したピアノの調律がほんの少し狂っているように感じたことです。
たとえば、トラック番号でいうと12曲目のニ長調の前奏曲、とても質素な魅力をたたえた佳曲なんですが、オクターブで音の濁りが感じられるのです。
でも全体的にみれば、些細なこと。
とても素敵なアルバムでした。

P.S
このディスクは、長い間絶版だったのですが、今回新たにリリースされたようです。
また、ジャケット・解説書がとても充実していて、とても美しいです。
ご紹介した写真は、「前奏曲、フーガと変奏曲」を演奏した、エラール社1899年製作のものです。

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若杉弘&東京フィル ワーグナー 序曲集他

2006-10-06 | コンサートの感想
昨日は、仕事を少し早めに切り上げて、東京フィルの定期演奏会を聴きに行きました。
指揮は若杉弘さんです。

席は、9月にN響の定期で「英雄」を聴いて以来、すっかり味をしめたP席。
(注:ティンパニの後方、パイプオルガンの前の席のことです)
P席は、指揮者の表情が100%見えるし、音楽を能動的に楽しみたい私のような人間にはまさに最高の席です。
おまけに一番安い!
コンサートの新しい楽しみ方を知りました。しばらく、はまりそうです。

<日時>2006年10月5日(木) 19:00
<会場>サントリーホール
<曲目>
■ イサン・ユン/交響曲第4番
 (リンザーの「暗黒のなかで歌う-」をテーマとする2楽章のシンフォニー)
■ ワーグナー/歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
■ ワーグナー/歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
■ ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲
■ ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲
■ ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
<演奏>
■若杉弘 指揮
■東京フィルハーモニー管弦楽団

       


前半は韓国を代表する作曲家イサン・ユンの第4シンフォニー。
この手の曲は、正直あまり得意じゃないんですが、実際に若杉さんの指揮を目の当たりにしながら聴くと、とっても面白かった。
とくに第2楽章がよかったなあ。
冒頭、オーボエが篳篥のような表情で歌うところからスタートするのですが、静けさを支配する部分と高揚する部分が交錯した後、最後には再びオーボエのテーマが戻ってきます。
想像通りではあるんですが、やっぱり懐かしさを感じてジーンと来ました。
もし、音だけでこの曲を聴いたとしたら、私なんかはきっと退屈してしまうでしょうね。
やっぱり、現代曲は、コンサートで指揮者や奏者の表情を見ながら聴くに限ります。

それから、第2楽章で若杉さんの表情をずっと追いかけていると、どういうわけか故岩城宏之さんの表情がダブってきました。
このコンサートは、もともと岩城さんが振る予定になっていたのです。
しかも、この曲の初演者も岩城さん。その事実を知っていたからかもしれませんが、この日の若杉さんの指揮ぶり、指示の仕方が、どこか岩城さんの面影を残していたのでしょうね。
不思議な経験でした。

後半は、ワーグナーの序曲集。
若杉さんの指揮は、決して過度の演出をしません。
むしろ表情は、ワーグナーにしては控えめと言ってもいいでしょう。
しかし、ツボは絶対外さない。やはり、ゼンパーオペラのシェフをされていただけのことはありますね。
それから、この日とくに強く感じたのは、フレージングの明快さ。
若杉さんは、フレーズをブツブツ切らずに、出来る限り長めに響かせます。それでいて、もたれることがないのは、ひとえに明瞭この上ないフレージングの賜物でしょう。
オーケストラのメンバーも、とても弾きやすそうでした。

個別の曲では、ローエングリンの第三幕への前奏曲が印象に残りました。
豪快にして繊細。ここで終わらないで「婚礼の合唱」まで続けて聴きたくなるような素敵な演奏でした。
ひとつだけ不満があるとしたら、トリスタン前奏曲の演奏順でしょうか。
この曲は、やっぱり最初か最後にやってほしかったなぁ。
ただし、演奏は素晴らしかった。若杉さんの精緻な指揮を見ていて、この曲の構造があらためて理解できたような気がします。
この日はイゾルデの「愛の死」へ続けるのではなく、若杉スペシャル?でエンディング。なかなか面白かったです。

若杉さんの音楽は昔から大好きだったのですが、実際に聴くのはこの日が初めて。
しかし、コンサート全体を通して、「音楽に語らせる、音楽と誠実に向き合う」とはどんなことか、身を持って教えてもらったような気がしました。


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杉谷昭子 ピアノリサイタル (ベートーヴェン「告別」ほか)

2006-10-01 | コンサートの感想
どんよりした曇り空から、午後にはとうとう雨が降り出しました。
そんな中、今日は杉谷昭子さんのピアノリサイタルに行ってきました。
例によって半額チケットが手に入ったことと、大好きな「テレーゼ」を聴けるというので、雨もなんのその、いそいそと出かけました。

☆杉谷昭子:ベートーヴェン・ピアノソナタ全集vol.8
 CD発売記念リサイタル
<日時>2006年10月1日(日)16:00開演
<会場>東京・浜離宮朝日ホール  
<曲目>
ベートーヴェン作曲
■ピアノソナタ 第24番 op.78《テレーゼ》
■ピアノソナタ 第25番 op.79《かっこう》
■ピアノソナタ 第27番 op.90
■ピアノソナタ 第26番 op.81a《告別》
<演奏>杉谷昭子

        

杉谷さんの名前を初めて知ったのは、ブリリアントレーベルからリリースされていたベートーヴェンのピアノ協奏曲全集でした。
女流ピアニストの弾くベートーヴェン(=デリケート、ニュアンスに富んだ美しいタッチ、でもスケール感は小さめ)という漠然としたイメージを持って聴き始めたのですが、イメージはすぐに砕け散ってしまいました。
骨格のしっかりした、中身のぎゅっとつまったベートーヴェンだったからです。
でも、決してごつごつした感じはしなかった。
それどころか、響きが大変豊かで、その充実した中低音に乗って歌われるメロディがとても心地よかったのです。
特に、今でもとくによく聴くのが、「ヴァイオリン協奏曲」をピアノ用に編曲した演奏。
とくに第1楽章から第2楽章は、ピアノならではの魅力に溢れ、飽きることがありません。

こんなことを考えながら、座っていると開演のベルが・・・。
いや、正確に言うと、浜離宮朝日ホールのそれは、グラスハーモニカの得もいわれぬ妙音なんです。
そのグラスハーモニカの余韻を感じながら、第1曲「テレーゼ」が始まります。
冒頭アダージョ・カンタービレの和音は、先ほどのグラスハーモニカの響きと見事なまでにオーバーラップします。素晴らしい効果!
しかし、その後の主部がやや硬い!そして、続く装飾音符がうまくいきません。
この曲、美しく優しそうな外観に似合わず、装飾音符もやたら多いし、コンサートの冒頭で弾くのはやはり大変なことだと感じました。
結局、テレーゼは、最後まで装飾音符に苦しめられた印象が強かった。

2曲目の「かっこう」。
落ち着いたテンポで始まりましたが、まだ硬いかなあ。ピアノが十分に鳴りきっていないように感じました。
それでも、第1楽章の終わり近くでバスがテーマを奏でるあたりの表現は、力感溢れる演奏で、杉谷さんの面目躍如といったところでしょうか。
第2楽章の美しい表現も印象に残りました。

休憩をはさんで、後半は第27番から始まります。
冒頭のアウフタクトのフォルテから、何という充実した響きだろう。
前半とはあきらかに違います。私がCDのピアノ協奏曲を聴いて唸った、あの「強く豊かな響き」です。
ひとつひとつの音に力があって、意味深さを感じます。
要所で登場する下降スケールも、とても力強いけど、単にそれだけではなく意志の強さを感じました。
第2楽章では、一転して優しさにあふれた表情を聴かせてくれました。旋律線が豊かなハーモニーを伴って実にうまく横に流れるので、私は思わず眼を閉じて最後まで聴き惚れてしまいました。

最後を飾ったのは「告別」。
27番ですっかり調子を取り戻した杉谷さんは、この曲でも見事としか言いようのない演奏を聴かせてくれました。
この曲は、いくつかの描写的な場面・フレーズでできていますが、あざとさを全く感じさせずに杉谷さんは自然に表現してくれました。
とくに印象に残ったのは、クレッシェンドして音楽が高揚していく場面では、必ずと言っていいほど、少し前からバスの動きを強調し、低音部から盛り上がっていくような表現をとっていたことです。だから、ごく自然に高揚感が生まれるんですね。
力強さ、逞しさ、心に沁みるような優しい歌、それらを豊かな響きが支える、そんな演奏でした。

アンコールは、バッハ:前奏曲ロ短調≪BWV855≫のシロティ編曲版。
これも、本当に美しい曲ですね。感動しました。

終演後、記念に「ワルトシュタイン」「熱情」「テレーゼ」の入ったCDを購入し、杉谷さんにサインしていただきましたが、本当に気さくで温かいお人柄とお見受けしました。
次は、いよいよハンマークラーヴィアだそうです。
今から、楽しみです。
杉谷さんは、ホームページも開設されていますので、関心のある方はこちらをご覧下さい。
杉谷昭子さんのHP


P.S
今、サインをしてもらったCDを聴きながら記事を書いています。
このCDに入っている「テレーゼ」、こちらは本当に見事な演奏でした。
瑞々しく、憧れの感情に溢れています。
私の大切なコレクションになりそうです。

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