ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

武満徹 フォリオス

2012-12-31 | CDの試聴記
今年も、あと12時間あまりになった。
今、帰郷の新幹線の車中で、一向に言うことを聞いてくれないiPhoneを使って記事を書いている。
2012年は、東日本大震災の爪痕も十分に癒えない中、山中教授のノーベル賞受賞等の明るい話題はあったものの、我が国全体としては非常に厳しい試練の年だったと思う。
しかし、ボクシングと同じで、相手のパンチを怖がって目を瞑った瞬間に負けが決まる。苦しくても必死にガードを固めて相手の動きを見ないことには勝機はない。
常に考え抜くこと、次を読もうと懸命に努力すること、どんなに小さなことでもチャンスだと思えば果敢に攻めること、これしかないように思う。
その為には、感性を研ぎ澄ますことも非常に大切かもしれない。

偉そうなことを書いたが、ついつい怠慢と怯懦に負けてしまう自分に向けた叱咤激励のつもりです。

さて、年末最後にエントリーする音楽は、武満徹のフォリオス。
ご存じない方も多いかもしれないけど、このフォリオスは、武満さんが最初に手掛けたギターの為の作品で、1974年にギタリストの荘村清志のために書かれている。
フォリオとは二つ折りの紙くらいの意味で、フォリオスは3つのフォリオからできている。

音楽全体は、決してわかりやすいものではないが、不思議な魅力を備えている。
不協和音が支配する中、独特の色彩感と間合いが、私を虜にする。
楽譜も買い、自分でも一生懸命さらってみるのだけど、残念ながらアマチュアのギター弾きには到底手に負えない。
でも、諦めて目を瞑ってしまったらそれまでなので、いつの日か、この曲を人前で弾けるように夢を持ち続けていきたい。
ところで、フォリオ3の最後には、マタイ受難曲の受難のコラールがほんの一瞬登場する。
全体が混沌とした響きの中で突然登場するだけに、そのインパクトは非常に大きい。
武満徹という偉大な作曲家が、ギターという楽器を愛してくれたこと、そして珠玉のような作品を遺してくれたことに、私は心から感謝したい。

このフォリオスには、10種類以上の名手たちの録音があるが、私が最も好きなのは佐々木忠さんの演奏。
佐々木さんは長くドイツで教授活動をされていた方で、このフォリオスに対する深い愛情が感じられる。
20年以上前の録音だけど、その透明で温かい質感に満ちた演奏は、今も色褪せることはない。

自分を厳しく律しつつ、媚びることなく自分の思いをしっかり表現し、しかもその背後に知性と愛情が感じられる。
佐々木忠さんの音楽は、まさにそんな感じだ。
来年は、私も佐々木さんを見習って、少しでもそんな生き方ができるように努力していきたい。

皆様、よいお年を。

<曲目>
■バリオス:
バルカローレ,ワルツOp.8-4,アイレ・デ・サンバ,マシーシェ
■トゥリーナ:
ファンダンギーリョ,セビリャーナ(ファンタシア)
■佐々木 忠:
日本民謡による印象(会津磐梯山,山寺の和尚さん,八木節)
■バーチ:遭遇
■武満 徹:フォリオス

<演奏>佐々木忠(ギター) 
<録音>1989年

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4 コメント

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今年もよろしくお願いします (おさかな♪)
2013-01-01 17:25:28
Romaniさん
あけまして おめでとう ございます♪
今年もよろしくお願いします^^☆

Romaniさんご一家にとって
健康で楽しい1年になりますよう!

コンサートの記事、いつも楽しく読ませて
いただいています
返信する
>おさかな♪さま (romani)
2013-01-03 21:54:23
新年おめでとうございます。
帰省していたため、ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ありません。
思いがけず穏やかな天候に恵まれたお正月でしたよね。
このお正月の和やかな雰囲気が、ひょとしたら難題をみんな吹き飛ばしてくれるような気もしてきました。
今年も、どうぞ宜しくお願い致します。
返信する
Unknown (リベラ33)
2013-01-04 09:26:55
あけましておめでとうございます。
投稿を拝見して私もNMLで聴いてみました。なんとも言えない不思議な魅力がありますね。ル・コルビュジェの建築に通じる洗練された感覚に魅力されてしまいました。この休みの間に何度繰り返し聴いたかわかりません。久しぶりに音楽を楽しむことができてうれしかったです。
返信する
>リベラ33さま (romani)
2013-01-04 14:44:26
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
フォリオス、早速聴いてくださって嬉しいです。
何とも不思議な魅力を備えた曲でしょ?

他の大作曲家からは、愛されこそすれ、なかなか作品を書いてもらえなかったギターという楽器にとって、武満さんはまさに神様のような存在です。
ただ、どの曲も弾くのは本当に難しい(泣)
たとえばビートルズの洒落たアレンジもあるのですが、耳で聴くと極めて心地よく響く一方で、これが弾く段になるととんでもなく難物なんです。
そのハードルを軽やかにクリアできた奏者だけが、武満ワールドを再現できる名手の資格を得ることができるんです。
もし、フォリオスが気に入っていただけたのであれば、「すべては薄明の中で」という曲をぜひ聴いていただきたいと思います。
また違った魅力を感じられることと思います。
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