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バッハ 「プレリュード、フーガとアレグロ」BWV998 (その1)

2005-08-07 | CDの試聴記
毎日こう暑い日が続くと、何故か無性にリュートやチェンバロといった古楽の音が聴きたくなります。今日ご紹介するのはバッハのリュートのための作品です。

バッハ 「プレリュード、フーガとアレグロ」BWV998

この曲はこんなに素敵な作品なのに、バッハの作品の中でも今ひとつ知られていないところがありますので、2回に分けて採りあげたいと思います。
第1回目は、この曲そのもののこと、およびリュートまたは鍵盤楽器で演奏されたお勧め盤をご紹介したいと思います。
第2回目は、ギターで演奏された数多くの名演奏の中からお勧め盤をご紹介する予定です。

<この曲について>
バッハのリュートのための作品としては一般的に7曲あるといわれており、内訳は組曲が4曲、前奏曲1曲、フーガ1曲、それにこの「プレリュード、フーガとアレグロ」です。
プレリュード、フーガ、アレグロという3つのパーツからなるこの曲、そもそも構成が変わっていますよね。
これには2説あり、組曲として書こうとしていたんだけど何らかの理由で不完全な形で終わったとする説、いまひとつは、もともと3部構成として作曲されたとする説です。
前者の場合は、プレリュード・フーガのあと、サラバンドかブーレが欠落して、アレグロがいわばジーグのような役回りを演じていることになります。
どちらの説が正しいかはよくわかりませんが、曲を聴き進むと何故か「この3曲で十分」と思えてくるから不思議ですね。シューベルトの未完成と同様の感覚かもしれません。
また、バッハの自筆譜には、「リュートまたはチェンバロのための」と添え書きがしてあるそうですが、ラウテン・ヴェルクという当時存在したリュート・チェンバロ(リュートのような音が出るように、スティール弦の替わりにガット弦をはったチェンバロ)を想定して書かれたのではないかといわれています。

曲のイメージをざっとご紹介します。
・プレリュード:しなやかな起伏をもつ美しい前奏曲。いかにも撥弦楽器であるリュートにぴったりの楽想だと思います。(約3分)
・フーガ:A―B―Aの構成をとる3声の雄大なフーガ。特に中間部は美しく幻想的です。ここは特に多くの方に聴いていただきたい部分です。数多いバッハのフーガの中でも名品だと私は確信しています。(約7分)
・アレグロ:対位法的な手法で書かれた2声のジーグ風アレグロ。(約3分)

<お勧め盤>
①リュート編
ホプキンソン・スミス(アストレー)がマイベスト。
指先を通して出てくる音の暖かさがなんとも言えず魅力的で、スケールの大きさをもちつつ幻想的な表現がたまりません。
次いでユングヘーネル(HM)盤がお勧め。奥の深さはスミスと同様ですが、ユングヘーネルにはさらに旺盛な表現意欲が感じられます。ただ惜しむらくは、部分的に荒さを感じることです。
また、数多くの俊英を育てたオイゲン・ミュラー・ドンボア盤(セオン)の確信に満ちた演奏も忘れられません。

②鍵盤楽器編
チェンバロで弾かれた演奏では、レオンハルト盤にとどめをさすでしょう。
演奏の立派さでは、楽器を問わずこのレオンハルト盤に勝る演奏はないように思います。ただ上手く言えないのですが、少々立派過ぎるような気がするんです(特にフーガ)。もう少し手作りの雰囲気があればと。
私が素敵だなぁと思ったのは、リュート・チェンバロで弾かれたロバート・ヒル盤です。はじめてリュート・チェンバロの音を聴きましたが、リュートと同じとは言いませんが、とっても柔らかく私のイメージにとても近い演奏でした。
このヒル盤は、昨秋購入したリリング監修のバッハ大全集(ヘンスラー原盤)の中に含まれていたものです。
余談ですが、やはりこのリリングのバッハ大全集は優れものです。なかなか一度には聴けませんがどれも水準は高いです。百科事典的な重宝さもありますし・・・。

さて、次回はギターで演奏されたお勧め盤を・・・。


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2 コメント

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YIU00045@nifty.ne.jp (桜桃)
2005-08-07 20:46:36
こんばんは^^



TBありがとうござます。



リュートといえば・・・。

私のチェンバロの先生が、チャンバロのほかにも楽器に手を出して^^;リュートのお勉強を始められました。どうも、チャンバロって結構ストイック楽器らしくって。要するにチャンバロ奏者ってのは撥弦楽器なのに直接撥じけないので、直接撥じく楽器を演奏したくなるんですって。こういう心理ってやってる人しかわかりませんよねえ。romaniさまはギターを演奏されるので、また違った感想をお持ちでしょうが・・・。で、先日私もその先生のリュートを触らせていただいたのですが、これがふわっと軽くて、何ともいえない感覚でした。チャンバロにしろ、リュートにしろ、アンチから、楽器が進化して、時代のすみに押しやられていたものが最近、再びクローズアップされるにはやはりわけがあるんだと、感覚として分かった瞬間でしたね。



バッハさんの曲って、とにかくありとあらゆる楽器での演奏に耐えうる作品ばかりということで、やっぱりバッハさんってえらいですねえ^^。
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バッハとリュート (romani)
2005-08-07 21:04:33
桜桃さま

いつもありがとうございます。

チェンバロの先生はリュートも始められたのですね。

リュートって、軽いし華奢で可愛い上に、触るだけでとても素敵な音がするでしょう。でも、バロックリュートは複弦でしかも13コースもあるので、実際弾くと難しいんですよね。

私もギターでバッハを弾く時は、どうしてもリュートの音をイメージしながら弾いています。あの典雅さはなかなか出ないんですが・・・。

>バッハさんの曲って、とにかくありとあらゆる楽器での演奏に耐えうる作品ばかり・・・

まさに仰るとおりですね。懐が深いというか、何よりも普遍性があるんでしょうね。古典派以降の作曲家の作品はこうはいきませんよね。

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