ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

大阪よもやま

2005-09-30 | その他
今週は、火曜日の夜から大阪です。
日ごろからお世話になっているリベラ33さんと、梅田のクラシック音楽バーであるアインザッツではじめてお会いすることができ、本当に楽しいひとときを過ごすことができました。また深い音楽の造詣を持っておられるMICKEYさんや、シェリングのファンでバイオリンを弾かれるTさんも来ておられて、随分話が盛り上がりました。このような機会を設けていただいて、リベラさん本当にありがとうございました。
また、アインザッツのマスターには、名物のカクテル「レオノーレ第3番」を作ってもらいましたが、これがまたとても美味しい。
お酒と音楽という私の二大テーマが一度に実現するわけですから、是非また来なくては・・・。

それと昨日は、私の愛するタイガースがついに優勝しました。
2年前のような熱狂はなかったように思いますが、やっぱり優勝は格別です。
とくに大好きな藤川球児が、この日当番回数の日本新記録を打ち立てての優勝ですから、こんなに嬉しいことはありませんでした。
私が見に行くと負け続けた今年のタイガース。「俺は疫病神か」となかばやけになりつつ、9月15日の東京ドームではじめて目の前で勝ってくれたときの嬉しかったこと!そのとき登板した藤川のものすごい球をはじめて目の当りにして、彼の今までの苦労を思い出しながら、試合中涙が止まりませんでした。昨日も球児は打者3人を見事にきっちり抑えて、優勝に花を添えてくれました。
ほかにも、圧倒的な存在感でチームを引っ張ってきた金本、こんなに勝負強い男だったかと惚れ直したニューリーダー今岡、シーズン中2回も頭にデッドボールを受けながら決して負けなかった日本一の女房役矢野、小さい体で常に全力プレーでチームを引っ張ってくれた快速赤星、みんな本当にありがとう。
そして岡田監督、素晴らしいチームを作ってくれて、ただただ感謝です。
先週の広島3連戦の前に、裏方さんを集めてお店を借り切って労をねぎらったと聞きました。また昨日の優勝インタビューでも、地味な仕事人中村豊のホームランのことをとりあげて、もっとも印象的だったとコメントしてくれました。こういう、さりげない気配りが優勝をもたらしてくれたんですね。

もう一度言わせて下さい。
「阪神ターガース、優勝おめでとう。そしてありがとう!」
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新国立劇場 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

2005-09-24 | オペラの感想
昨日、新国立劇場のマイスタージンガーを観てきました。

<日時>2005年9月23日(金)
<場所>新国立劇場
<曲目>ワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』
<演奏、歌手>
ザックス : ペーター・ウェーバー
ポーグナー : ハンス・チャマー
ヴァルター : リチャード・ブルナー
ベックメッサー : マーティン・ガントナー
ダーヴィット : 吉田浩之
エーファ : アニヤ・ハルテロス
マグダレーネ : 小山由美
夜警 : 志村文彦

シュテファン・アントン・レック 指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団

<演出> ベルント・ヴァイクル


ワーグナーのオペラを観るのは、今回のマイスタージンガーで3回目です。
バレンボイム&ベルリン国立歌劇場の「ワルキューレ」、ティーレマン&ベルリンドイツオペラの「タンホイザー」、そして今回の新国立劇場の「マイスタージンガー」ということになります。
結論から言います。素晴らしかった。ほんと素晴らしかった。
一部で酷評されていたので若干の不安を感じながら新国立劇場へ行ったのですが、まったく長さを感じさせない素晴らしいできばえ。これだけの舞台を見せてもらえば私は大変満足です。

第1幕の有名な前奏曲が少し速めのテンポで始まりました。またこの曲の最後は少しテンポを落として壮大な雰囲気にすることが多いのですが、逆に少しテンポをあげてエンディング。その効果もあって、次の礼拝堂のシーンにとてもスムーズに繫がっていました。
第1幕で感心したのは、ダーヴィット役の吉田さん。この人上手いですねぇ。ヴァルターに歌の規則を教えるところなんか本当に見事。また、ポーグナー役のハンス・チャマーも深いバスで、マイスターのまたエーファの父親としての威厳を感じさせてくれました。

第2幕は、まず、ザックスのモノローグがとても素晴らしかった。また今回ピットに入っている東フィルの音がとても柔らかくて、ぴったりザックスに寄り添っていました。その後のベックペッサーとザックスの掛け合いは、お腹をかかえて笑わせてくれます。このときベックペッサーの邪魔をするザックスの「靴屋の歌」がとても素敵。私の大好きな歌です。それから、ベックメッサー役のガントナーは本当に芸達者ですね。歌も上手いけどオペラグラスからみる表情がもう素晴らしい。2幕終了直前の大騒動で、ひとり傷だらけになってとぼとぼ歩く姿なんか、笑いの中に涙ありみたいな感じで感銘深かったです。

第3幕は、神秘感に満たされた素晴らしい前奏曲で始まりました。先にも書きましたが、昨日の東京フィルの弦は本当に素敵。その後はなんと言ってもザックスです。レヴァイン指揮のメトで演じたモリスも素晴らしいザックスでしたが、今回のウェーバーのザックスも実に良かった。
ヨハネ祭前日のことを回想するシーン、ヴァルターに真摯にアドバイスするシーン、いずれも感動的な歌唱でしたが、その後エーファが登場ししばらくやり取りした後一瞬珍しく激昂する場面がでてきますが、その直後トリスタンのフレーズが現われ「私はマルケ王じゃない(=いくら愛していても、イゾルデのような年の離れた妻はもらわないの意)」といいながら、自分の気持ちに懸命に区切りをつけようとするところに、私はもっとも感動しました。
最近、歳のせいかめっきり涙腺が弱くなってしまい、第3幕の途中ザックスの独白あたりからずっと目が潤んできて、ほんとひと苦労。だめですねぇ。

そのほかの歌手では、まずエーファ役のハルテロス。彼女は美人で持ち前の強い声を活かし一途な女性を演じてくれました。ただ私のエーファ像からいうと、もう少し柔らかで透明感のある声の歌手でも良かったかなぁ。また、急にピンチヒッターで登場したヴァルターも、まずは無難な歌を聴かせてくれました。(このヴァルターでは、カラヤンの全曲盤で歌っているルネ・コロがあまりに素晴らしかったので、私にとってちょっと別の意味でトラウマになっています)
それから、マグダレーナ役の小山さんも常に安定した歌唱でしたし、登場場面は少なかったけど、夜警役の志村さんが素晴らしくいい声だったのでびっくりしました。

ということで、予想以上に水準の高い舞台で、大変満足した一日でした。
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ブラームス ピアノ協奏曲第2番

2005-09-21 | CDの試聴記
9月も残すところ9日。あっという間に期末です。
ほんと早いなあ。
そういえば、最近少し涼しくなってきたような気がします。
秋が近いということですね。
秋に最もふさわしい作曲家といえば、私の中ではなんと言ってもブラームスとシューマン。
ブラームスのヴァイオリンソナタやチェロソナタ、クラリネット五重奏曲なんかは、しみじみと聴く秋の名曲だと思います。
一方、同じブラームスでも交響曲第2番やピアノ協奏曲第2番あたりは、むしろ春から夏の名曲ではないでしょうか。

このピアノ協奏曲第2番は、ブラームスが憧れの地であるイタリアへ旅行したときの想い出をもとに作曲されました。
第1楽章や第3楽章の冒頭は、まさに太陽の国イタリアのもつ明るさを感じさせてくれます。大変シンフォニックで重量感たっぷりのピアノ協奏曲中の名品ですが、私はこの明るさにこだわりたい。
そう考えると、やっぱりこのポリーニ、アバド&ウィーンフィル盤です。

<曲目>
■ブラームス ピアノ協奏曲第2番
<演奏>
ポリーニ(ピアノ)
アバド指揮
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
(1976年録音)

ポリーニとアバドは、その後オケをベルリンフィルに替えて再録音しており、そちらも素晴らしい名演ですが、私はこのウィーンフィル盤により惹かれます。
冒頭のホルンを聴いてください。なんという伸びやかさ。澄み切ったイタリアの青空がかいま見えてくるようです。ピアノの合いの手も見事。その後テーマに向かっていくピアノの毅然とした美しさ。凄い気迫ですが決して構えたところはありません。さすがポリーニ。
ウィーンフィルの柔らかで官能的な音色と、少し硬質でクリスタルのようなポリーニの音色が、予想以上に上手く溶け合っています。
第2楽章もテンポが絶妙で、ポリーニの透明感の強い音が印象に残ります。ともすればごつごつしがちのこの楽章を、爽快に弾ききっています。
第3楽章は、うっとりするような素晴らしいソロ・チェロで始まります。バックハウス盤以来じゃないでしょうか。この楽章では、ウィーンフィルのすばらしさと、絶妙としかいいようのないアバドの天才的なカンタービレが満喫できます。
フィナーレでは、これまた素晴らしいテンポ。色彩豊かで理想的なロンドを聴かせてくれます。

全曲を通して感じられるのは、テンポの良さ、色彩感、絶妙のカンタービレ。
それが相乗効果として、イタリアの明るさを十全に描き出しているような気がします。
それにしても、ここで聴かせてくれるポリーニのピアノの凄さはなんと形容したらいいんだろう。好き嫌いを越えて次元が違う感じがします。
またポリーニとアバドの相性の良さも随処に感じることができました。
(このコンビの最高の名演はバルトークのピアノ協奏曲だと思います。この感想記はまた別の機会に・・・)
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「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(BS)

2005-09-20 | BS、CS、DVDの視聴記
今週23日に新国立劇場の『ニュルンベルクのマイスタージンガー』を観に行くので、ちょっと焦りながら今日は予習をしました。
恥ずかしながら、大変長いオペラなので、通して聴いたことがありませんでした。
こんなときは映像の方が分かりやすいと思って、以前BSでやっていたものをDVDに録画していたので、それを観ることにしました。
結果的にとても面白かったし、勉強になりました。
(このBSで放送したものはDVDとして市販されているようです。何と1万円以上するようですが・・)

<曲目>
ワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』

<演奏、歌手>
ザックス:ジェイムズ・モリス
ヴァルター:ベン・ヘプナー
ベックメッサー:トマス・アレン
ダヴィッド:マシュー・ポレンザーニ
エヴァ:カリタ・マッティラ
マグダレーネ:ジル・グローヴ
ポーグナー:ルネ・パーペ

ジェイムズ・レヴァイン指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団
メトロポリタン歌劇場合唱団

演出:オットー・シェンク
(2001年12月8日、メトロポリタン歌劇場)

「トリスタンとイゾルデ」の対極のようなオペラです。
とにかく全体に明るい。和声も分かりやすいし、観ていてドキドキするような愛憎劇もない。当然、トリスタンのような麻薬的な毒(=ワーグナーの毒)はありません。
ただ、やっぱり長いですね。第3幕だけで2時間をゆうに超えるんですから。
でも、冒頭書いたように、時間を忘れるくらい面白かった。
この映像で、最も重要な役柄であるザックスを演じているのはモリスです。
私は素晴らしいザックスだと思いました。私がとくに感動したのは、第3幕のはじめのほうで、子供の頃から可愛がってきたエヴァのことを異性としても気にしながら、彼女の幸せのために迷いを吹っ切るところ。彼はエヴァと恋仲の若きヴァルターに向かって言います。
「人生は春ばかりじゃない。人生に苦労し秋も冬も来る。そんなときにも美しい心で歌が歌える人のことをマイスターと呼ぶんだ」
この部分のモリスの歌は、心に深くしみわたります。真の伝統とはどのようなものかを、モリスはザックスの役を借りて語っているように感じました。
このオペラの唯一の敵役であるベックメッサーはトマス・アレンが演じていますが、この人圧倒的な芸達者です。彼が演じると、ベックメッサーは決して憎まれ役というようより、どこにでもいるような普通の愛すべき人物像をイメージしてしまいます。第1幕から第3幕の歌合戦のところまで、歌の上手さもさることながら、表情が実に多彩で見事なベックメッサーを演じています。
他にも、マッティラのエヴァは初々しいし、パーぺのポーグナーはその声の素晴らしさに圧倒されます。ヘプナーのヴァルターはちょっと太めだけど、声は見事。
シェンクの演出はオーソドックスでとても分かりやすいものでした。
予習するには、最高の映像だったかもしれません。
これで、23日が安心して迎えられそうです。

ただ、いつも妻に言われるのですが、あまりオペラやコンサートの前にいい演奏を観たり聴いたりしてしまうとがっかりするかもしれないから、ほどほどにしておいたほうがいいんじゃないのと。
確かにその通りなんですが、せっかく行くからにはこちらの準備は十分したうえで聴きたいんです。だって、生の演奏は一期一会。その緊張感を味わいたくて行くんですから。
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ロジェストヴェンスキー&読響 チャイコフスキー:「マンフレッド」交響曲他

2005-09-18 | コンサートの感想
2ヶ月ぶりの読売日響のマチネーコンサートです。
今日のマエストロは名誉指揮者のロジェストヴェンスキー、コンチェルトのソリストは夫人のポストニコーワです。

<日時>9月18日(日)
<場所>東京芸術劇場
<曲目>
■チャイコフスキー: 〈マンフレッド〉交響曲 op.58 
■リムスキー=コルサコフ : ピアノ協奏曲 嬰ハ短調 op.30
■ムソルグスキー: 交響詩〈禿山の一夜〉
<演奏>
指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
ピアノ:ヴィクトリア・ポストニコーワ

まず前半は、チャイコフスキーの「マンフレッド」交響曲。
この曲は、番号のつかない標題シンフォニーとして有名ですが、作曲時期としては第4番と第5番のちょうど間になります。
このコンサートまでは、正直この曲のことあまり好きではありませんでした。
しかし、しかしです。今日の演奏を聴いて考え方は180度変わりました。
いい曲じゃないですか。
ロジェストヴェンスキーに触発された読売日響が、凄いとしか言いようのない名演を聴かせてくれました。
今シーズンは、ラザレフの4番・5番、広上の6番といずれも記憶に残るチャイコフスキーを聴かせてくれましたが、今日のマンフレッドも実に感動的な演奏。
最近の読売日響の好調さ・充実ぶりは大変なものですね。アンサンブルの密度は濃いし、ソロは上手いし、馬力もある。いよいよ海外の一流オケと肩を並べるところへ来たように思います。
第1楽章冒頭から、死による救済を求めて彷徨うマンフレッドのテーマが実に印象的に奏でられます。この曲では弦楽器が非常に重要な役割を果たしていますが、藤原浜雄さん率いるヴァイオリン・毛利さん率いるチェロ等、ときに美しくときに朗々と見事なアンサンブルを聴かせてくれました。
単に揃っているというレベルではなく、歌わせ方に何やら男の色気のような魅力が出てきたように感じました。(変な意味ではありません。優秀な女性奏者が多くいらっしゃることは十分承知しています)
終楽章では、ゼネラルパウゼのあとハープが出てくるあたりの間の素晴らしさ、最後にマンフレッドの救済が暗示される場面で登場するオルガンの意味深さ等、見事としか言いようがありません。
こんな演奏をはじめから聴いていたら、もっと早くこの曲を好きになっていたのに・・・。
余談ですが、この曲で高らかにうたう部分を聴いていると、なにやらシベリウスの初期のシンフォニーを想像させてくれますね。

後半は、「リムスキー=コルサコフのピアノ協奏曲」と「禿山の一夜」。
リムスキー=コルサコフのピアノ協奏曲は、さすがに初めて聴く曲です。
15分程度の短いコンチェルトですが、旋律も美しいし、ピアノの華麗な見せ場も有ってなかなか素敵な曲でした。
大きく3部に分かれますが、楽章としては単一楽章です。
ロシアの民謡から採ったといわれる旋律が魅力的ですが、私にはパガニーニのカプリス№24のテーマに似ているように感じました。
ポストニコーワもこんな感じの曲を弾かせたらほんと上手いです。もちろんご主人のロジェヴェンさんとの息もぴったり。
また聴いてみたい曲です。こんな秘曲をさらっとマチネーコンサートにも入れてくるあたりが憎いですね。
「禿山の一夜」は、曲が曲ですから普通に演奏しても十分ドラマティックになるんですが、期待に違わない情熱的な演奏でした。

ロジェストヴェンスキーの演奏を聴くのは今日で2回目ですが、決して分析的な演奏ではないのに、オケから自由自在に音を引き出し音楽の構造を浮かび上がらせてしまうあたり、さすがに名指揮者ですね。
10月には、読響とはまったくタイプの異なる官能的な表現が特長のウィーンフィルの来日公演に行く予定なので、その比較が今から楽しみです。
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シューマン 「女の愛と生涯」op42

2005-09-17 | CDの試聴記
昨夜は、10時過ぎに何とか仕事の区切りがついたので、久しぶりに取引先の人と食事に行きました。
とても美味しいお鮨屋さんで、会話も弾み楽しいひとときを過ごせましたが、いささか飲みすぎました。寝不足も重なり、ちょっと冴えない一日です。

さて、今週はちょっと多忙な一週間でしたが、通勤時や移動時間にipodでよく聴いたのがシューマンの「女の愛と生涯」でした。
シューマンがこの曲を作曲したのは1840年。ようやくクララとの結婚が認められ、「リーダークライス」や「詩人の恋」という一連の素晴らしい歌曲集が続いて生まれた年です。
「女の愛と生涯」はドイツの詩人シャミッソーの詩にもとづく8曲からなる連作歌曲集で、ある女性が恋に落ちてやがて婚約、そして結婚。その後愛する夫との間に子供も生まれ大きな幸せを味わうが、そんな矢先突然の夫の死で未亡人になってしまうという内容です。
シャミッソーのテクストそのものには、女性の役割の描かれ方が気に入らないという意見もあるようですが、シューマンの曲は愛情に満ちた素晴らしい作品だと思います。
この曲は昔から好きで、いろいろな演奏を聴いてきました。
その中でも私のベストチョイスは、エディット・マティスが歌った演奏です。

<曲目>
シューマン
■「女と愛と生涯」
■「ミルテの花」(抜粋)
■「ヴィルヘルム・マイスター」からの歌曲集(抜粋)
■「子供のための歌のアルバム」

<演奏>
エディット・マティス(s)
エッシェンバッハ(p)

マティスの歌は、少し控えめで聡明な女性像を感じさせます。どの歌も凛とした表情が印象的。とくに第2曲「彼は誰よりも素晴らしい人」の憧れに満ちた歌に、心奪われます。少しはにかんでいるような表情が、聴き手に初々しさを感じさせてくれます。声の美しさはもとより発音も見事で、装飾音符の扱いもきわめて上手い。さすがマティスです。
また終曲では、夫の突然の死に対し、じっと悲しみを堪え、けなげに向き合う若き妻を見事に演じています。加えて、終曲の後半では、第1曲の出会いの音楽がピアノだけで再現されますが、ここで聴かせるエッシェンバッハのピアノの真摯さ。もう言葉はありません。素晴らしく感動的な演奏です。

この曲は、数多くの名演奏に恵まれていますが、マティス以外では、白井光子の妖しいまでに美しい声、ルチア・ポップの瑞々しさが特に印象に残っています。
また、人気メゾのキルヒシュラーガーがメルヴィン・タンと組んだ2001年パリ・シャトレ劇場のライブ映像(BS放送)も、とても素敵な演奏でした。とくにタンのピアノが絶品でした。

明日は、2ヶ月ぶりの読売日響のマチネーコンサート。ロジェストヴェンスキーおじさんと一年ぶりの対面です。
楽しみだなぁ。
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のだめカンタービレ№13

2005-09-14 | 書籍の感想
最近また仕事が忙しくなってきました。
なかなかその日中に帰宅できないことも多いのですが、ipodのおかげで気分転換できるのが救いです。
明日も300人くらいのオープンセミナーがあってゲストで呼ばれているのですが、準備がまだ十分出来ていません。さすがにちょいとばかりあせってきました。
にもかかわらず、帰りに「のだめカンタービレ№13」を買ってしまいました。
なんという自制心のなさ・・・。

漫画を読むのは本当に久しぶりです。ところが、8月の終わりに休みをとったときに気まぐれで読み始めたのが運のつき!
単行本になっている全12巻を、あっという間に読みきってしまいました。
これは面白いです。ほんと面白いです。
しばらく続編は出ないと安心していた(?)ところ、最新号が出てしまいました。
買うしかないですよね。たとえお尻に火がついていても・・・。

少しネタバレになりますが、今回の号ではプーランクの「ピアノ、オーボエ、ファゴットのためのトリオ」なんていう、ちょっとばかりマニアックな曲も紹介されています。この曲、「マニアックな・・・」と言ってしまいましたが、パリのエスプリに溢れたとても魅力的な曲です。私のお気に入りは、ルルやパユといった若き名手達が瑞々しい演奏を聴かせてくれる「プーランクの室内楽全集」ですが、広く聴いていただきたい素敵な演奏ですよ。

さあ、これから明日の準備をしなくっちゃ・・・。
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ヴェデルニコフのベートーベン:ピアノソナタ第30番ホ長調op109

2005-09-09 | CDの試聴記
先週夏休みをとった影響でしょうか、今週はさすがに毎日目が回るような忙しさです。ブログをほとんど見ることもできませんでした。
そんな状況にもかかわらず、今日打ち合わせをしていたら突然ベートーベンのピアノソナタ第30番のアンダンテのメロディが浮かんできて、おかげでそれ以後ずーっと頭の中はアンダンテ状態。
一度こんな状態になったらもうダメですね。本当の音で聴きたーい!

こんなときに便利なのは、愛用のipod+B&Oのイヤホンです。
大好きなヴェデルニコフの演奏を、しっかり移動時間中に聴くことが出来ました。

<曲目>
ベートーベン
■ピアノソナタ第30番 ホ長調 op109
■ピアノソナタ第31番 変イ長調op110
■ピアノソナタ第32番 ハ短調 op111

<演奏>
アナトリー・ヴェデルニコフ

ベートーベンの30番のソナタは、傑作といわれる最後の3部作の中の最初のソナタです。
第1楽章はヴィヴァーチェ。冒頭のフレーズは3度上昇4度下降というシンプルなモティーフを組み合わせただけなのに、ヴェデルニコフの手にかかると、いつの間に始まったのか分からないくらい自然な雰囲気で、本当に爽やかな音楽が展開されます。テンポの異なる第二主題のアダージョとの対比も見事。
第2楽章はプレスッティシモ。2分あまりの短い楽章でスケルツォ風にあっという間に過ぎ去ります。私は中間部でほんの一瞬訪れる静寂の部分が、ヨーロッパの寺院のようなイメージを感じさせてくれて好きです。
さて、今日一日頭の中で鳴り続けた第3楽章のアンダンテ。ベートーベンは何とこのソナタの終曲に変奏曲を持ってきましたが、この祈りに満ちた美しいテーマは何度聴いても感動します。13番から15番といった後期の弦楽四重奏曲の緩徐楽章と相通ずるものがありますね。各変奏の性格描写も、フーガの部分を含めてまさに完璧。

ヴェデルニコフのピアノは何と言っても音がきれいです。ひとつひとつの音ももちろん美しいのですが、フレーズとして歌わせるときの音が飛び切り美しくて暖かいです。また、ヴェデルニコフの演奏で聴くと、音楽の内声部の動きが実に良く分かります。これも彼の音楽の特徴のひとつでしょう。そのため、この曲の第3楽章などは音楽の素晴らしさがストレートに聴き手に伝わってきます。
そして、この楽章の終わりにはあの美しいアンダンテのテーマが戻ってきますが、テーマが戻ってきたときの感動という点では、バッハのゴールドベルク変奏曲以来じゃないでしょうか。
私にとって、この曲のベストチョイスです。

ヴェデルニコフは中国のハルビンで生まれ、ネイガウス門下の名ピアニストとして有名でしたが、58年ぶりの来日公演直前に病に倒れ1993年7月に亡くなってしまったことはかえすがえすも残念でなりません。




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フリッチャイのベートーベン交響曲第5番「運命」

2005-09-04 | CDの試聴記
遅めの夏休みも今日で終わり。
この1週間は、久しぶりにゆっくりした時間を過ごすことができました。
ふと外を見ると、にわかに雷の音とともに雨がぽつりぽつり。

さて、休み中に聴いた数多くのアルバムの中で、何を採りあげようか迷いました。クレンペラーのウィーンフィルボックスに収録されていた「運命」が凄い名演だったのでそれにしようかと考えていたところ、何気なく久しぶりに取り出したフリッチャイがあまりに素晴らしかったので、とりあえずフリッチャイの「運命」にしました。
クレンペラー&ウィーンフィルの「運命」は後日書くことにします。

<曲目>
ベートーベン
■交響曲第5番「運命」(1961年9月録音)
■交響曲第7番(1960年10月録音)
<演奏>
フリッチャイ指揮
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

冒頭の運命の動機からして、なんと言う遅さ。
半端な遅さではありません。しかも、その歩みは、あたかも大地に根をはやしたかのような確固たるものなのです。
この第1楽章、たしかにテンポだけとればアレグロ・コン・ブリオではないかもしれません。しかし、テンポそのものは遅いけど、音楽が推進していくエネルギーは本当に巨大で、コン・ブリオの精神は見事に具体化されているのではないでしょうか。フリッチャイが聴かせるこの雄渾さ・壮大さは、きら星のごとくならぶこの曲の他の名演と比べても稀有のものだと思います。
第2楽章以降も基本的に全く同じ印象ですが、フレーズはごつごつ切らないで力強く長めに歌われます。
フィナーレ直前は、ティンパニーに一瞬リタルダンドをかけさせて、全軍でフィナーレに突入します。この豪快なこと!まさに圧倒的です。管楽器の上手さ、ブラスの輝かしさ、弦楽器とくに低音楽器のうなりをあげて襲い掛かるような力感、それに加えて要所で楔をうちこむティンパニの存在感など、ベルリンフィルも最高の演奏でフリッチャイに応えています。
聴き終えた後、誰もが「凄い音楽をきいた」と感じるのではないでしょうか。

ちなみに、この演奏はフリッチャイ47歳の時の録音です。
フリッチャイは、この2年前と3年前に受けた大手術を克服して再び活動を始めたばかりでしたが、この「運命」のレコーディングのあと12月には再び病状が悪化したため指揮活動を断念しなければなりませんでした。
そして、翌62年には手術を受け一時回復の兆しをみせたものの、1963年2月にガンのため亡くなりました。享年48歳でした。
もし存命であれば、今年91歳ということになりますが、年輪を重ねるほどに音楽が深くなるのが指揮者の常ですから、本当に早世が惜しまれます。

ところで、フリッチャイといえば、1940年代後半にザルツブルクで見事な成功をおさめたあと世界的な指揮者になっていくわけですが、病魔に冒され大手術を余儀なくされた1958年前後で音楽のスタイルが激変しています。よく言われることですが、それまではどちらかというとスタイリッシュなスタイルだったものが、手術後はこの「運命」のように、「テンポは遅くかつスケールはきわめて大きく」といういわば晩年のフルトベングラーのスタイルに近くなっていますね。
確かにジャケットの風貌もフルトベングラーに似てきたような気が・・・。
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諸井三郎 交響曲第3番

2005-09-02 | CDの試聴記
アメリカ中を震撼させた超大型ハリケーン「カトリーヌ」の被害は、想像以上に甚大なようです。ニューオリンズの町の大半が冠水するなんて、およそ信じられません。一日も早い復興をお祈りするとともに、あの明るいニューオリンズ・ジャズのメッカとしての活気を取り戻してほしいものです。

今日は、諸井三郎の交響曲を聴きました。

<曲目>
諸井三郎 作曲
■こどものための小交響曲 変ロ調 作品24(1943)
■交響的二楽章 作品22(1942)
■交響曲第三番 作品25(1944)
<演奏>
湯浅卓雄(指揮)
アイルランド国立交響楽団 

諸井三郎さんが高名な作曲家であり、また同じく作曲家である諸井誠さんのお父さまであることは知っていたのですが、実際に曲を聴くのは今日が初めてです。

まさにドイツ風の作風ですね。いずれの曲も、正攻法でかつ誠実に書かれた曲だと思いました。特に素晴らしかったのは、交響曲第三番です。
太平洋戦争末期の1944年に作曲されたこのシンフォニーは3つの楽章からできていますが、それぞれ、「静かなる序曲~精神の誕生とその発展」「諧謔について」「死についての諸観念」といったサブタイトルが付けられています。
第1楽章は、主部に入る前のオスティナートが大変印象に残りました。
第2楽章は、短いスケルツォ。最後はブラスと打楽器で豪快に終わります。
さて、この曲の中で最も感動したのが終楽章です。実はここまで、コーヒーを飲みながら本を片手に聴いていたのですが、この楽章の冒頭部分を聴いた瞬間、思わず本を閉じ背筋を伸ばしてスピーカーのほうを見つめてしまいました。
何と素晴らしい音楽。
アダージョ・トランクィロの指定ですが、本当に静かにゆっくり開始され、徐々に高揚していきます。オルガンが実に効果的。その後7分50秒くらいに弦楽器とオルガンで奏でられるテーマの美しいこと。柴田南雄さんが「人類の祈りの歌」と呼んだそうですが、このテーマは、その後トランペットと弦楽器で再現された後、最後のコーダではさらにオルガンも加わって名残惜しげに奏されます。その崇高さに、私は鳥肌がたつほど感動しました。
哀しみを深く胸に刻みながらも、何かそれを超越した境地にたったとしか考えられない不思議な静けさをもったこの音楽は、やはり戦争の末期であり、死と直面していた時代背景と切り離して考えられないと思います。

素晴らしい音楽を聴きました。
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