ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ル・ジュルナル・ド・パリ(9/18)~室内楽編

2010-09-25 | コンサートの感想
あっという間に秋が近づいてきた。
それも、ディミヌエンドではなく、まさしくスビート・ピアノの感覚で。
あまりに突然すぎて、体がついていかない。
今年の天候の特徴が「異常○○」「ゲリラ○○」「突然の○○」だったので、ある程度は覚悟していたが・・・。
でも、スーツが普通に着れる気候になったことは、わたし的にはウェルカムだ。

さて、前回に続いてル・ジュルナル・ド・パリの室内楽編の感想を。
この日は、開演前にも「仕事上の神経戦」をやっていたため、その複雑な心理状態を引きずったまま、第1部最初の演目であるフランクのピアノ五重奏曲を聴くことになった。
きっと私は、室内楽を愉しむには凡そ相応しくないような険しい表情をしていたに違いない。
定刻になり、奏者たちがステージに登場し、冒頭の悲劇的な和音がホールに響きわたる。
上記のような私の心理状態もあって、普段聴いているフランクのこの音楽よりも、ずっとインパクトが強い。
しかし、そんな悲劇的な響きを聴いても、まったく気持ちが沈みこむことはなかった。
むしろ何とも言えない心地よい感覚に浸っている自分を発見して、いささか驚いている。
ただ、五感は相当鋭敏になっていたのだろう。
ちょっとしたニュアンスの変化にも、体がヴィヴィッドに反応していた。

音楽は、ルゲの意思の強いピアノにモディリアーニ弦楽四重奏団が激しく絡み、大きなうねりの中に濃密な雰囲気を醸し出しながら進んでいった。
第1楽章を聴きながら、早くも「ああ、フランク!」と胸がいっぱいになる。
そして、静かに且つ熱いやりとりが延々と続く第2楽章が、やはり感動的だった。
美貌の弟子であったオーギュスタン・オルメスとのエピソードを持ち出すまでもなく、この一種独特の恍惚とした表情は何とも魅力的だ。
プログラムのライナーノートを書かれたオヤマダ・アツシさんの「甘さを控えた濃厚なチーズケーキ」という表現に、全面的に賛同する。
このフランクのクインテットを聴き終えた頃には、私の心も、ようやくいつもと同じ状態になっていた。

第2部は、フォーレのエレジー。
演奏者が予定されていたルゲからケフェレックに替わっていた。
ルゲとケフェレックは、同じフランスの女流ピアニストでありながら、その演奏スタイルがまるで違うことに改めて驚く。
このフォーレではケフェレックの凛としたピアノに支えられて、モディリアーニSQのチェロ奏者であるキエフェルがノスタルジックに歌いあげていた。

第3部のルクーの瞑想曲は、滅多に実演で聴けない曲。
夭折の天才ルクーの17歳のときの作品だ。
冒頭チェロが奏でる2度音程の音型が、最後まで印象に残った。
同じ17歳の時にルクーが書いた「弦楽四重奏のためのモルト・アダージョ」に似て、本当に美しい。
ただ、この曲では、少し音程が気になったのが残念。

第4部は、ドビュッシーの弦楽四重奏曲。
これは、素晴らしかった。
第2楽章のピツィカートは実演で聴くと、視覚的なイメージもあって一層印象的。
そして、何と言っても続く第3楽章の深い表情が絶品だった。
終楽章では、「ため息」のような弦の表情もよかったし、緊密に練り上げられたアンサンブルが見事。
モディリアーニ弦楽四重奏団の面目躍如たる演奏だったと思う。
弦楽四重奏曲の傑作として、ドビュッシーの作品はラヴェルのそれとともに語られることが多いが、この日聴いてみて、ドビュッシーの方が現実的というか、より音楽として完結した世界を持っていると思った。
一方のラヴェルの弦楽四重奏曲は、比較すると、現実からさらに未来へ一歩足を踏み出しているように感じる。

普段どちらかというとフランス音楽を聴く機会が少ない私にとって、今回の一連のコンサートは貴重だった。
また、ちょうど「曲線の美しさ」に癒されたかった時期だけに、この日のコンサートは特別の想い出になった。
来年も、このイベントは是非聴いてみたい。

<日時>2010年9月18日(土) 14:00開演
<会場>東京オペラシティ コンサートホール
<曲目&演奏者>
■フランク:ピアノ五重奏曲 ヘ短調
(C-M.ルゲ/モディリアーニ弦楽四重奏団)
■フォーレ:チェロとピアノのためのエレジー ハ短調 op.24
(F.キエフェル/A.ケフェレック)
■ルクー:弦楽四重奏のための瞑想曲 ト短調
(モディリアーニ弦楽四重奏団)
■ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 op.10
(モディリアーニ弦楽四重奏団)
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ル・ジュルナル・ド・パリ(9/18)~ピアノソロ編

2010-09-20 | コンサートの感想
ル・ジュルナル・ド・パリの初日4公演の感想を。
フランス音楽(とくにピアノと室内楽)をこれだけ集中的に聴く機会は滅多にないので、その意味でも得難い経験だった。
1つの公演が約1時間と短いので、コンサート単位ではなく、ピアノソロと室内楽に分けて書きます。
第一弾としてピアノソロから。

18日の初日に出演したピアニストは3人。
まず、若手女流ピアニストのクレール=マリ・ルゲ。
第一部冒頭のフランクの五重奏曲が鮮烈な印象だったが、それは次回に。
18時からの第三部で、ルゲは同じフランクの「前奏曲、コラールとフーガ ロ短調」を聴かせてくれた。
ゆったりとした柔和な雰囲気で登場した彼女だが、いったんピアノを弾き出すと一変する。
鬼の形相とは言わないが、もの凄い集中力だ。
その研ぎ澄まされた集中力から生み出される強い意思を持った音が、明瞭な輪郭を描きながらフランクを形作っていく。
曖昧な音は、一音たりとも出さないと心に決めているかのようだ。
フランクを聴きながらこれほど緊張を強いられたことはあまりなかったが、コラールからフーガにかけての見事な出来栄えを考えると、彼女の意図だったのかもしれない。
ドビュッシーのアラベスクは、速めのテンポで表情もずっと柔らかい。
曲によってアプローチを変えてくるのは彼女の聡明さの証だと思うが、温度で言うと、やや冷たい感じがする。
でも、また聴いてみたいピアニストだ。
そして、終演後にお気に入りのCD(リストのアルバム)にサインをしてもらったのだけど、近くでみるルゲさんは本当に美人。
ピアニストではグリモーと双璧かもしれない。
その上、気さくに「アリガトウ ゴザイマシタ」と彼女に言われて、もうすっかりルゲ・ファンになってしまったのは言うまでもありません(笑)

この日、最も出番の多かったのは、御大ペヌティエ。
ラ・フォル・ジュルネ等で何度も彼の演奏を聴いてきたが、この日のフォーレはダントツの出来栄え。
本気になったペヌティエが、いかに凄いかを思い知らされた。
彼の、横の流れを大切にするピアノは、フォーレの音楽にあまりにもぴったり。
「変幻自在」とは、まさにこのような演奏をいうのだろう。
もう途中から、ふわりと空中に放り上げられて、ペヌティエの成すがままといった状態になってしまった。
とりわけ、「ヴァルス・カプリス 第1番」と「夜想曲 第6番」が素晴らしかったなぁ。
できることなら、是非もう一度聴いてみたい。


私がいま最も敬愛するケフェレックは、この日のソロは2曲だけ。
しかし、サティの中世風の独特の味わい、ラヴェルの色彩豊かな美しさは、やはりケフェレックの独壇場だ。
とくにラヴェルのパバーヌは数年前にラ・フォル・ジュルネでも聴かせてもらったが、冒頭の伴奏音型をスタッカート気味に弾きはじめ、音楽が進むにつれて幻想的な雰囲気を醸し出すのは、まさしくケフェレック流。
それから、ガラコンサートの感想でも書いたとおり、ケフェレックの音色はやはり格別だ。
そして、ケフェレックさんにも終演後CDにサインしてもらったが、相変わらずチャーミング。
彼女のように齢を重ねることができたら幸せだろうなぁ。

そんなこんなで、14時に始まり21時に終わった全4部構成のコンサート、すっかり満喫させてもらった。
残念だったのは、この日の聴衆が少なかったこと。
平均すると、3分の1くらいしか入っていなかったのではないかしら。
その分、ゆったりと聴けてよかったといえばよかったのだけど・・・。
次回は、室内楽の感想を書きます。

<日時>2010年9月18日(土)14:00~
<会場>東京オペラシティ
<曲目&演奏者>
■クレール=マリ・ルゲ (ピアノ)
・フランク:前奏曲、コラールとフーガ ロ短調
・ドビュッシー:アラベスク

■ジャン=クロード・ペヌティエ (ピアノ)
・フォーレ:夜想曲 第2番ロ長調 op.33-2
・フォーレ:即興曲 第2番ヘ短調 op.31
・フォーレ:ヴァルス・カプリス 第1番イ長調 op.30
・フォーレ:即興曲 第3番変イ長調op.34
・フォーレ:ヴァルス・カプリス 第2番 変ニ長調 op.38
・フォーレ:舟歌 第3番 変ト長調 op.42
・フォーレ:舟歌 第5番 嬰ヘ短調 op.66
・フォーレ:夜想曲 第6番 変ニ長調op.63
・フォーレ:夜想曲 第7番 嬰ハ短調 op.74

■アンヌ・ケフェレック (ピアノ)
・サティ:グノシェンヌ第1、3、5番
・ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ


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ル・ジュルナル・ド・パリ ガラコンサート(9/17) @東京オペラシティ

2010-09-18 | コンサートの感想
また長い間ブログの更新をさぼってしまった。
書きたいことも、いっぱいあったのに・・・。
仕事が多忙になったことが最大の理由なのですが、また少しずつ書いていきたいと思います。

仕事にボリュームとクオリティを同時に求められることは至極当然な話で、たとえ2倍・3倍の負荷がかかる話であっても少々のことには驚かなくなっている。
しかし、先月くらいから絶対落とせない重要案件が立て続けに発生し、加えてそのいずれも「神経戦」の様相を呈してきたこともあって、さすがに少々疲れ気味だ。
そんな中、癒してくれるのは、私の場合やっぱり音楽。
昨日は、半ば強引に仕事をうち切って、新宿オペラシティへ直行。
ル・ジュルナル・ド・パリ」という、春のラ・フォル・ジュルネの姉妹版のようなイベントのガラコンサートを聴いた。
イベントの性格かもしれないが外国人の聴衆も多く、俳優の石丸幹二さんの軽妙な司会もあって和やかな感じでコンサートは進められた。
私はどちらかというとゲルマン派なんだけれど、昨夜はフランス音楽特有の色彩感と曲線が何とも心地よい。
疲れ切った頭と体に、これ以上ないくらいの癒しを与えてもらった。
感謝感謝です。

この日のコンサートで、とくに印象に残ったのは、やはりケフェレック。
サティの小品を聴かせてくれたが、複数のピアニストの演奏を続けて聴いて改めて感じたのは、彼女の音色の美しさ。
芯のある明晰な音なのに、冷たさがない。
まるで真珠のような輝きを放っていた。
この人、本当に何を弾かせても素晴らしいです。

それからもう一人、ペレスのアルベニスを聴けたのもこの日の収穫の一つ。
大変な才能だと噂では聞いていたが、実演を聴いたのはこの日が初めて。
色彩豊かに「トゥリアーナ」を描いた後、迫力満点の「アストゥリアス」を聴かせてくれた。
アストゥリアスは大変速いテンポで始まったが、クライマックスの築き方がとても素晴らしい。
中間部は、やはりスペインの血を感じさせる表現で、心に強く残った。
聴衆から大変大きな拍手をもらっていたが、当然だと思う。
でも、曲線の多いお洒落なフランス音楽の小品の中に、突然アルベニスを持ってきたのだから、ちょっと反則?(笑)

コンサートの最後を飾ったフォーレのピアノ四重奏曲も、情感豊かな素晴らしい演奏だったが、弦の音程がいささか気になった。
ペネティエのピアノは文句なく良かったのだけど。

さあ、今日はこれから本公演。
4演目すべて聴く予定だ。
否応なしに、5月のラ・フォル・ジュルネのノリだなぁ。
どうなりますことやら・・・。

<日時>2010年9月17日(金)19:00開演
<会場>東京オペラシティ コンサートホール
<曲目&演奏者>
■フォーレ:夜想曲 第2番ロ長調 op.33-2
(J-C.ペヌティエ)
■サティ:3つのジムノペディ
■サティ:ピカデリー
(A.ケフェレック)
■ショーソン:いくつかの舞曲 op.26より 「献呈」
■ショーソン:いくつかの舞曲 op.26より 「パヴァーヌ」
(C-M.ルゲ)
■サティ:「ジュ・トゥ・ヴー」
(歌:石丸幹二/ピアノ:児玉桃)
■アルベニス:「イベリア」よりトゥリアーナ
■アルベニス:アストゥリアス
(L.F.ペレス)
■フォーレ:ピアノ四重奏曲 第1番ハ短調 op.15
(J-C.ペヌティエ/モディリアーニ弦楽四重奏団)

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