ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

「六義園」とK466

2005-11-28 | CDの試聴記
もうすぐ師走とは到底思えないような穏やかな日が続いています。
昨日は、ライトアップされた紅葉を見ようと、夕方から妻と六義園へ行ってきました。
六義園は江戸時代の大名庭園跡なんですが、なかなか風情があって素晴らしい紅葉を見ることが出来ました。
しかし、まあ何と人の多いこと!
それも、夕方から時間が経過するにつれてどんどん人が増えてきました。人間の考えることって同じなんですね。
というわけで、私も人並みに携帯で写真を撮ってみました。でも、旧式の携帯(30万画素です)ということもあり、我ながら情けない写真になってしまいましたが、記念に残すことにしました。

紅葉見物の後は、今日の出張に備えて一路大阪へ。(ここしばらくは、大阪と東京がまるで半々のような生活です!)
最近よく利用するホテルに泊まったのですが、昨日アサインされた部屋には正直参りました。
隣室の女性の声が、ほとんど正確に内容が分かるくらいの状態で漏れてくるのです。夜の11時ごろから約2時間くらいの間、ずっと電話で話していたようですが、さすがに気になって寝つけませんでした。
まあ仕方ないから、こんなときは音楽でも聴くかと思いなおし、冷蔵庫の1缶450円もするビールを何本か飲みながら、ふと机に置いた部屋のキーを見ると466号室というタグがついています。
466といえば・・・、おー!モーツァルトのニ短調のピアノコンチェルトじゃないか!27曲あるピアノコンチェルトの中で、たった2曲しかない短調の曲です。
さてと、問題はipodに入れてたかしら。
探すこと10数秒・・・。
ありました、ありました。ブレンデルとマリナーのモーツァルトの協奏曲集の中に入っていました。



<曲目>
■モーツァルト
 ピアノ協奏曲第20番二短調 K466
<演奏>
A・ブレンデル(ピアノ)
N・マリナー指揮 
アカデミー室内管弦楽団

早速聴きました。
第1楽章冒頭、シンコペーションの伴奏音型がとても強いインパクトを与えてくれます。主題が始まると、格調高い悲劇的な雰囲気が楽章全体に漂います。いい感じだなあ。
第2楽章では、つぶやきに似た素朴な曲想が素敵ですが、中間部は一転して激しい展開に。フィナーレは、第1楽章と同様悲劇的な雰囲気の中、快速なテンポで突っ走るロンド。
改めて名曲だと感じ入った次第です。
ただ、この演奏に感動したかといわれると、正直ウーンと唸ってしまいます。
私の大好きなピアニストであるブレンデルが奏でる音は上品で美しいし、マリナーのサポートも万全です。演奏スタイルとしても見事にモーツァルトになっています。
でも、何かが足りない気がします。
ハタと感じたのは、愉悦感が不足しているのです。この協奏曲にそんなものを求めるなという声も聞こえてきそうですが、たとえば第2楽章ロマンスの冒頭、クララ・ハスキルが聴かせてくれたあの微笑んだような何ともいえない魅力的な表情が、残念ながらここにはありませんでした。どうしても、よそよそしい感じがしてしまうのです。
(ちなみにブレンデルがマッケラスと組んだ新盤では、このような不満は感じません。表情がより活き活きとしており、とても魅力的な演奏です!)

でも、今度は同じブレンデルとマリナーのコンビの23番のコンチェルト(K488)を聴いてみました。
ところがどうでしょう。ここには愉悦感がたっぷりありました。第2楽章のあの美しいアダージョも抜群に美しいし、フィナーレの「天馬空を行く」雰囲気も実によく出ていました。
カサドシュ&セルの名盤と並んで大変な名演だと思います。
中期の12番、13番あたりも本当に素晴らしい演奏だったので、旧盤の20番も、ひょっとすると昨日限りの特異な感覚だったのかなあ・・・。
もう一度、日を改めてトライしてみようと思います。
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フォーレ 「小ミサ曲」他

2005-11-26 | CDの試聴記
昨夜2泊3日の出張から帰ってきました。
それにしても最近は出張が多いなあ。今回は予想外に準備に手間どり、内容的にもハードな出張になってしまいましたが、何とか終わりほっとしているところです。
旅先のホテルで、そんなくたびれた頭と身体を慰めてくれたのが、初めて聴くこのフォーレの合唱曲でした。実はこのディスク、安さに惹かれて買ったフォーレの作品集(6枚組)の中の1枚だったのです。

<曲目と演奏者>
ガブリエル フォーレ作曲
■小ミサ曲
ミシェル・ピクマル指揮
ピクマル・ヴォーカル・アンサンブル 

■タントゥム・エルゴ
■アヴェ・ヴェルム・コルプス Op.65-1
■タントゥム・エルゴ Op.65-2
■アヴェ・マリア Op.93
■ヴィレルヴィル漁夫協会のためのミサ(メサジェとの合作)
・キリエ
・グロリア
・サンクトゥス
・オ・サルタリス
・アニュス・デイ
■ラシーヌ賛歌 Op.11
クロード・トンプソン指揮
トリス・リヴィエレ合唱団

大して期待もしないで、例によって愛用のipodで聴き始めました。
ところがどっこい。何という美しさ!これは尋常ではありません。
とくに感動したのが、「ヴィレルヴィル漁夫協会のためのミサ」です。
この曲は、1881年にメサジェとの共作という形で書かれ、ノルマンディ地方にあるヴィレルヴィルの教会で初演されたそうです。
曲は5曲で構成されていますが、メサジェが「キリエ」「オ・サルタリス」を、フォーレが「グロリア」「サンクトゥス」「アニュス・デイ」を担当しています。
メサジェは1853年生まれの作曲家・指揮者で、フォーレやサンサーンスにも師事しています。興味深いことに、フォーレとはピアノ4手のための「バイロイトの思い出」というワーグナー風刺の曲も共作しています。

話が横にそれてしまいました。
メサジェ作とされる冒頭の「キリエ」から、魂が浄化されるような美しさです。
コーラスに絡むヴァイオリンが、チェロが、オーボエが、クラリネットが、ほんとにため息がでるような美しい調べを聴かせてくれます。
続く「グロリア」は東洋的な懐かしい響きを運んでくれるし、「サンクトゥス」、「オ・サルタリス」は清らかな美しさが際立っています。最後の「アニュス・デイ」は高貴なまでの美しさが、まるでチャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレのようです。
とても素敵な曲と出会うことができました。
演奏も決して派手さはないけど、どこまでも暖かく、聴き進むうちに目頭が熱くなってきます。

ちなみに、フォーレはこの曲をベースに、新たに自分で「キリエ」を書き加え、「グロリア」を「ベネディクトゥス」にアレンジし、「小ミサ曲」を作っていますが、それがディスク冒頭の曲です。
一方、このディスクの最後には名作「ラシーヌ賛歌」が収められています。
いつもお世話になっているyurikamomeさんが、亡き本田美奈子さんに捧げると仰っていたあの曲です。
弦楽四重奏(コントラバスも入っている?)をバックに歌われるコーラスの何と純粋で美しいこと!天上の響きといっても差し支えありません。
私が今まで聴いてきたラシーヌ賛歌の中で、最高の演奏でした。
でも、こんなフォーレの音楽を続けて聴いていると、うっかり向こうの世界へ引き込まれそうになるくらいの危うさを感じました。
あぶない、あぶない・・・。

最後に、この6枚組のアルバムには、フォーレ弾きとして名高い女流ピアニストのジェルメーヌ・ティッサン=ヴァランタンのノクターン集(新盤のほうです)や、彼女を中心とした室内楽、エミール・マルタン指揮のレクイエム等隠れた名演が多く収められています。今日その中の何枚かを聴きましたが、いずれも素晴らしい名演ぞろいでした。
値段のことは言いたくないですが、1,490円でこんな素敵な6枚のCDが手に入るんですから恵まれた時代かもしれません。
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ヘンデル : シャコンヌ ト長調 HWV435

2005-11-23 | CDの試聴記
シャコンヌといえば、無伴奏バイオリンパルティータ第2番を締め括るあのバッハの名曲を、誰でも思い浮べると思います。
実は私もブログの名前を決める時に、「シャコンヌ」という名前にしようか随分迷ったくらい、バッハのシャコンヌには強い思い入れがあるんです。
でも今日ご紹介するのは、バッハのそれではなくヘンデルのシャコンヌです。
ヘンデルのシャコンヌは8曲あるチェンバロ組曲のいわば番外編のような曲で、1730年代に作曲されました。
壮麗なテーマに基づく21の変奏で構成されていますが、第9変奏からはト短調に転じその後ふたたびト長調に戻りエンディングを迎えます。バッハのシャコンヌがニ短調⇒ニ長調⇒ニ短調と展開していきますから、ト長調⇒ト短調⇒ト長調と変化するヘンデルのシャコンヌはちょうど逆になっていますね。私にはいかにもヘンデルらしい気がします。

私はペライアのピアノで弾かれた爽快な演奏が好きでよく聴くのですが、ペライア盤と並んで皆様にぜひとも聴いていただきたいのが、今日ご紹介するイダ=プレスティとアレクサンドル=ラゴヤ夫妻によるギター2重奏盤です。
イダ=プレスティは少女時代から天才の誉れ高かった名ギタリストですが、1950年にパリでラゴヤと運命的な出会いをして、ギターデュオを結成することになりました。麻薬的といっても過言でない美音、高い演奏技術、常にウィットに富んだ表現で、いまなお史上最高のデュオと謳われています。
そんな彼らの代表的な名演奏のひとつが、このヘンデルのシャコンヌです。

<曲目>ヘンデル : シャコンヌ ト長調 HWV435(ラゴヤ編)
<演奏>I・プレスティ&A・ラゴヤ(ギター)
<録音>1965年6月

ギターってこんなに多彩な表現があったかと、ただただ驚くばかりです。
ピチカート、ハーモニックス、スル=タスト(柔らかい音)、スル=ポンティチェロ(硬い音)等ギターに用意された音のパレットをすべて使ったかのような素敵な表現。
まるで万華鏡のようです。
この2人の右手のタッチは通常のギタリストとは随分異なり、指の小指寄りを使って弦を弾いていたんですが、このあたりも麻薬的な音色の秘密かもしれません。
加えて、彼らが使用していたロベール・ブーシェ(フランスの稀代の銘工でありかつ画家)作の名器も、このデュオの素晴らしい芸術を後押ししたことは間違いありません。

こんな素晴らしい演奏を聴かせてくれたギターデュオも、イダ=プレスティの突然の死によってあっけなく終わってしまいました。
享年43歳。この録音からわずか2年後のことです。
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ボジョレー・ヌーボーとグラズノフ:交響曲第5番

2005-11-17 | CDの試聴記
今日は、出張で日光まで行ってきました。
「紅葉がきれかったです」と言いたかったのですが、ほとんど紅葉は終わっていました。しかも、せっかく日光まで行ったのに日帰りとは・・・。サラリーマンは辛いですね。
でも、行き帰りの時間が自由に使えたし駅弁もおいしかったし、実はウハウハだったりして・・・。
また、帰りには今日解禁になったばかりの「ボジョレー・ヌーボー」をゲットして、早速家で飲みました。とても美味しかったです。今年はアタリ年かも・・・。

さて、今日車中で聴いたのは、グラズノフの交響曲第5番です。
いい作品を残している割りにはあまり知られていない作曲家の1人ですが、このシンフォニーはほんと素敵な曲ですよ。
何よりもメロディが美しいし、ロシア音楽の素晴らしさを満喫できます。
第1楽章はオケ全体のユニゾンで開始されますが、第2主題がとりわけ魅力的です。フルートから順に管楽器がメロディを受け継いでいく部分なんかは最高!
第2楽章はスケルツォ。メンデルスゾーンの「夏の夜の夢」に登場するスケルツォに近いイメージといえばお分りいただけるでしょうか。
中間部は一層幻想的になり、どこかフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」のような雰囲気を漂わせます。
第3楽章はアンダンテ。これは深い音楽です。ノスタルジックな美しいメロディに私は心を揺さぶられました。
第4楽章は一転して大変活気のあるリズミックな音楽。とくに第2主題のターンタ・ターンタ・タンという332のリズムがとても印象的。最後までこのリズムが支配します。
そしてラストは、ちらっとチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1楽章の最後を思い出させてエンディング。
先日採りあげたヴァイオリン協奏曲も素晴らしい曲ですが、シンフォニーも良いですね。

聴いたCDは、
尾高忠明さんの指揮するBBCウェールズ・ナショナル管弦楽団です。

<曲目>
グラズノフ 
■交響曲第5番 変ロ長調 op55
■交響曲第7番 ヘ長調  op77
<演奏>
尾高忠明指揮
BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団
<録音>
1995年

尾高さんは、やっぱり一流のマエストロですねえ。
初めて日本フィルの定期演奏会で聴いた時から感じていましたが、グラズノフを聴いてそれが確信に変わりました。
何よりもオーケストラから自由自在に音の響きを引き出す力があります。
BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団も、このグラズノフでは、活力と柔軟さの両方を兼ね備えた見事な演奏で尾高さんの指揮に応えています。

また、このディスクには7番のシンフォニーもカップリングされていますが、これがまた素敵な曲なんです。
「田園」という副題を持っているこの佳曲のことについては、また別の機会にコメントを書きたいと思います。











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ウィーン・ヴィルトゥオーゾ 演奏会

2005-11-16 | コンサートの感想
昨日、ウィーン・ヴィルトゥオーゾのコンサートに行ってきました。
ウィーン・ヴィルトゥオーゾはウィーンフィルのメンバーを中心とした室内アンサンブルです。
(でもウィーンの名前を冠したこの手の団体は、一体どれだけあるのかしら・・・)
珍しく会社を早めに退社できたので、いそいそと東京オペラシティへ出かけました。

<日時>2005年11月15日(火)
<場所>東京オペラシティ・コンサートホール
<曲目>
■ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 op.56
■モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ長調 K.218 「軍隊」※ 
■モーツァルト:交響曲 第40番 ト短調 K.550 
■R.シュトラウス:ヴァイオリンのための、ばらの騎士ワルツ op.59 
■ブラームス:ハンガリー舞曲より(1番・5番・6番)
(アンコール)
■クライスラー:美しいロスマリン
<演奏>
※寺沢希美(Vn)
ウィーン・ヴィルトゥオーゾ

この曲目を見てください。いいプログラムだと思いませんか!
ホルンとファゴットは2人ずつですが、弦楽器・クラリネット・フルート・オーボエは各パート1人という計12名の構成。でもウィーンフィルの主席を中心とするだけあって、音楽の楽しさを満喫させてくれるコンサートでした。
ハイドンバリエーションは、最初の曲ということもあって少しかたい感じ。
フィナーレあたりは、フォルテシモでさすがに音量不足を感じてしまいましたが、普段もやもやしがちな第8変奏が見事な表現。
続くモーツァルトのヴァイオリンコンチェルト第4番は、とても清潔な演奏でした。
ソリストの寺沢さんは、少し細身ではあるが透明感の高い美音でモーツァルトを好演。ただ、少し真面目すぎるかなぁ・・・。
ここで休憩です。

後半の最初は何とモーツァルトの40番。
これが素晴らしい名演。とても12人の演奏とは思えない。速めのテンポだけどけっして上滑りしない。第2楽章の深々としたフレージングを聴いているうちに、10月に聴いたあの夢のようなウィーンフィルの演奏とオーバーラップしました。
前半とは明らかに何かが違っています。響きが絶妙の溶け合いを見せはじめたのです。
そのことを最も強く感じさせてくれたのは、次のR・シュトラウスのワルツでした。
まさにコンサートの白眉の出来栄え。ソロはウィーンフィルのコンサートマスターでもあるフォルクハルト・シュトイデでしたが、まあ何と素敵な演奏!
外しそうで外さない、崩れそうで崩れない、優雅という言葉を絵に書いたようなウィンナワルツでした。演奏後の拍手もひときわ大きかったです。
プログラムの最後を飾ったのはハンガリー舞曲。
これも「音楽ってこんなに楽しいんだよ。そう感じませんか」と言われているような素敵な演奏でした。

というわけで、とくに後半が素晴らしく、とても幸せな時間を味わうことができました。
大満足・・・
また、終演後ロビーを歩いていると、モーツァルトのソロを弾いた寺沢希美さんが知人と話をしていましたが、近くでみる彼女は清楚で大変な美人!
すっかりファンになってしまいました。

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マンドリンと二胡のコンサート  「イル ヴェント マンドリーノ第9回定期演奏会」

2005-11-13 | コンサートの感想
絶好の秋日和だった今日は、関西マンドリン連盟の会長でいらっしゃるT氏のご好意により招待券をいただいたので、マンドリンと二胡のコンサートに行ってきました。
プログラムの前半はマンドリンの合奏、後半は二胡のソロを中心としたアンサンブルというメニューです。

「イル ヴェント マンドリーノ第9回定期演奏会」
<日時>平成17年11月13日(日)
<場所>浜離宮朝日ホール
<演奏>
・二胡独奏 劉鋒(リュウ フォン)
・指揮:中田 昌樹
・イル ヴェント マンドリーノ

<曲目>
第1部
■風の軌跡ーマンドリンオーケストラの為の~(小林由直)
■A Basso Poeto Preludio atto 1'      (スピネッリ)
  (歌劇「南の港にて」より第一幕への前奏曲)
■Life Beat                (藤掛廣幸)

第2部 二胡とマンドリンのジョイント
<二胡独奏>
■二泉映月
■空山鳥語
<二胡+マンドリン>
■茉莉花
<二胡独奏>
■荒城の月
■戦馬奔騰
<二胡 + マンドリンオーケストラ)
■チャルダッシュ (モンティ)
■サイマ

第1部はすべて初めて聴く曲でしたが、小林氏の曲は、我々がイメージする「風が持つ爽やかさ」がよくでた佳曲でした。
藤掛さんの「Life Beat」は、彼らしい親しみやすいメロディと美しいハーモニーをもった作品で、途中の変拍子のリズムも斬新。藤掛さんは名作「パストラル・ファンタジー」の作曲家として、マンドリン界では著名な存在ですが、もっと広く知られても良い作曲家だと思います。

第2部は、中国の民族楽器である二胡を中心にしたステージ。
二胡をを聴くのは生れて初めてです。
その名のごとく2本の弦を弓で擦って音を出すのですが、意外に小ぶりで奏者の膝の上に乗せて演奏します。
ヴァイオリン族のように輝くような音はでないのですが、どこか郷愁をそそる懐かしい音がします。今日二胡を聴かせてくれた劉鋒(リュウ フォン)さんが飛び切りの名手だったので、余計にそう感じたのかもしれません。
二泉映月はもっとも有名な二胡の曲だそうですが、中国悠久の歴史を感じさせてくれる素晴らしい曲でした。
聴きながら、大陸的な中国の音楽と島国である日本の音楽の違いを痛感させられましたが、共通点があることにも気がつきました。それは「こぶし」です。こぶしは東洋音楽だけの専売特許ではありませんが、西洋音楽のそれとはやっぱり違いますね。また、ヴィブラートとノンヴィブラートの使い分けも見事でした。
続く空山鳥語やモンティのチャルダッシュでは、一転して超絶技巧を披露してくれました。曲が終わった後の客席のどよめきがその凄さを物語っています。曲名をもじると「空前絶後」というイメージでしょうか。
弦が2本しかないんだから演奏の難しさは素人である私にも分かります。ここまで自在に楽器を操るのは本当に至難なことだと思いますが、劉鋒さんは苦もなく弾いてみせます。
凄いアーティストだとつくづく感じました。
またこの劉鋒さん、演奏後の笑顔がとびきり素敵で本当に魅力的。

また、是非聴いてみたいアーティストです。

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シューベルト ピアノソナタ第13番 イ長調op120

2005-11-12 | CDの試聴記
今日ご紹介する1枚は、シューベルトのピアノソナタ第13番です。
私が社会人になって間もない頃、上司から外勤帰りに「シューベルトのピアノソナタでとても美しい曲があるけど、聴いたことある?」と突然聞かれたことがありました。
私はてっきり後期のソナタのことかと想像していたら、音楽好きの上司が紹介してくれたのは13番のソナタでした。当時、私は後期のソナタや即興曲集、さすらい人幻想曲といったピアノ曲が好きでよく聴いていましたが、この13番のソナタはまったく聴いたことがありませんでした。
そこで早速買ってきて聴いてみると、本当に抱きしめたくなるような美しい曲でした。

第1楽章冒頭のメロディのなんと柔らかくて爽やかなこと。まさに春のそよ風といった風情で、聴いた瞬間に心の中がほんのり温かくなってきます。シューベルトにしか絶対書けないメロディ。私の上司は、きっとこのフレーズを聴かせたかったんですね。
つづいて現われる第2主題も実にチャーミングで、このソナタの魅力はこの楽章で既に決まりという印象です。
第2楽章はアンダンテですが、ここでも口ずさみたくなるようなメロディが次々に現われ、聴く人を魅了します。
第3楽章は、一転して軽やかな舞曲を想わせるロンド風のソナタ。
人に幸せを与えてくれる素晴らしい曲だと思います。
こんな魅力的な曲を教えてくれた上司には、今も感謝しています。

そのとき聴いたのがこのリヒテル盤でした。(もちろん、そのときはLPです)

<曲目>
シューベルト
■ピアノソナタ 第13番イ長調 op120
■ピアノソナタ 第14番イ短調 op143
<演奏>
スヴャトスラフ リヒテル(ピアノ)
<録音>
1979年2月 東京におけるライブ録音

リヒテルの演奏は、ひとことで言うと誠実そのもの。
第1楽章冒頭の素敵なフレーズでも、大切に大切に音を作っていきます。
あの「テンペスト」や「さすらい人幻想曲」でみせたデモーニッシュな雰囲気は、まったくありません。
名演の誉れ高いバッハの平均律で聴かせてくれた雰囲気に、どこか似ている気がします。
第2楽章も、ほんとに美しく叙情的な演奏。また第3楽章では、これ以外ないという絶妙のテンポと軽やかなタッチに思わず聞き入ってしまいます。
少しこもった録音が残念ですが、演奏を楽しむうえで不足はありません。
この素敵な演奏が、日本公演で実現したということに感謝すべきでしょう。

 
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ドボルザーク 交響曲第3番変ホ長調 op10

2005-11-08 | CDの試聴記
2日続けて素晴らしい晴天です。秋にしては少し暖かい気もしますが、ほんと爽やかで気持ちいい一日でした。
こんなときは音楽もやっぱり爽やかで明るいもの、ということでドボルザークの第3シンフォニーを選びました。
「新世界」や8番と比べると知名度は高くありませんが、とても素敵な曲ですよ。

私は、この曲を「亭主関白」シンフォニーと呼んでいます。
それは第1楽章のテーマにあります。何度聴いても、私には「お前を嫁に・・・」と聴こえます。テーマの断片を含めると50回以上出てくるのではないかしら。
幸せな曲ですねぇ。
続く第2楽章は、短い序奏の後「雪の降る町を・・」に良く似たフレーズで始まります。映画音楽かオペラの一幕のように美しい楽章です。とくに中間部のワーグナーを意識したと思われる幻想的な雰囲気が素敵!
終楽章は、一転して快活なアレグロ・ヴィヴァーチェで、若きドボルザークの高揚感がよく伝わってきます。

若干茶化して書きましたが、この曲はドボルザーク32歳の時の曲で、結婚し子供も生まれようとしていたとても幸せな時期に作曲されました。
やはり音楽は正直ですね。
ちなみにこの曲は翌年スメタナの指揮で初演されていますが、ドボルザークの交響曲で初めて公の場で演奏されたものだそうです。
しかしながら、これから何年か後には、長女、次女、そして長男と相次いで子供たちを亡くすという悲劇が待ち受けているのです。それが、結果的に傑作「スターバト・マーテル」へと繋がっていくんですね。

今日聴いたのは、チョン・ミョンフン&ウィーンフィルの演奏です。

<曲目>
ドボルザーク
■交響曲第3番変ホ長調 op10
■交響曲第7番ニ短調 op70
<演奏>
チョン・ミョンフン指揮
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

ウィーンフィルの音色がとても美しいです。またチョン・ミョンフンは、この曲のようなちょっぴりオペラティックな曲を振らせると、ほんと上手いですねぇ。
弦楽器の美しさとティンパニの深い響きが、とりわけ印象に残りました。
そのほかのディスクでは、スィトナーとベルリン・シュタツカペレの演奏が素敵です。まさに伝統の響きに惚れ惚れとします。また第1楽章の関白宣言的な克明さでも、こちらが勝るようです。



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モーツァルト クラリネット協奏曲イ長調 K622

2005-11-06 | CDの試聴記
昨日は、朝の飛行機で大阪へ行き、Aさんの告別式に参列しました。
式場で最初にAさんの遺影をみたときは、さすがに胸がつまりました。でも、導師の読経を聞きながら、私なりに心の中でAさんとじっくり話をさせてもらいました。そして愛用していたギターの横で微笑んでいるAさんを見ているうちに、yurikamomeさんがおっしゃっていたとおり「神様が卒業を認めてくれたんだ」と強く感じました。
そんなこともあって、最後のお別れのときにAさんの顔を見ながら出た言葉は、「さようなら」ではなく「ありがとうございました」でした。
また、告別式では、恩師やアンサンブルのメンバーに久しぶりに会うことが出来ました。中には10年ぶりに再会という人もいましたが、これもきっとAさんが引き合わしてくれたんだなぁと、しみじみ思った次第です。

大阪へ向かう間は、先日ブログでとりあげたブラームスの間奏曲をずっと聴いていました。ただ昨日聴いた演奏は、アファナシェフではなくグールドのピアノでしたが・・・。
淡々と弾かれる変ホ長調のフレーズが、静かな哀愁を感じさせてくれて、私の心を慰めてくれました。
一方、告別式が終わって帰るときにずっと聴いていたのは、モーツァルトのクラリネット協奏曲です。

<曲目>
モーツァルト
■クラリネット協奏曲
■オーボエ協奏曲
■ファゴット協奏曲
<演奏>
カール・ベーム指揮 
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
プリンツ(クラリネット)他

モーツァルトのクラリネット協奏曲は、先日サントリーホールで聴いた、ウィーンフィルの別世界のような名演が今も忘れられませんが、CDではこのプリンツ&ベーム盤が好きです。
この曲を作曲したあと、モーツァルトに残された人生は2ヶ月しかありませんでした。でもこの曲に悲しみの影はありません。すべてを悟り、「澄み切った秋の空に雲ひとつない・・・」という感じが私にはします。
ベーム、プリンツそしてウィーンフィルという最高の名人達が奏でるこの演奏は、まさにそんなイメージを実感させてくれます。ゆったりしたテンポ、優美な音色、どんなときもふくよかにかつニュアンス豊かに奏でられるモーツァルト。まさに天上の音楽だと、改めて感じ入りました。
とくにコメントなんか必要としない名演ですが、やっぱり第2楽章アダージョがことのほか美しい。出だしのオケの雰囲気は、まさにあのアヴェ・ヴェルム・コルプスと同じですね。そのあとの高貴な美しさをもつ主題の歌わせ方、中間部で最初の主題がもどってくる直前の絶妙のディミヌエンド、いずれもプリンツの神業が聴けます。
まさに天上の音楽、天上の調べです。
私の心境にこれほどふさわしい音楽はありませんでした。
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フォーレ レクィエムop48

2005-11-03 | CDの試聴記
悲しい知らせが届きました。
私のギターの恩師を中心とするアンサンブルの幹事長であったA氏が、今朝急逝されたのです。まだ60台半ばという若さでした。
年初にガンの告知を受け、手術後は自宅で闘病生活を続けておられましたが、最近になって放射線治療を始められたと聞いた矢先の出来事だったので、本当にショックです。
Aさんには、私が高校生の頃から随分可愛がってもらいました。
音楽と酒をこよなく愛しておられたAさん。もう、ジョッキーを片手に真面目な顔でジョークを飛ばす姿や、アンサンブルで低音楽器を器用に操り合奏を引き締めてくれていた姿が見れなくなるのかと思うと、胸が詰まります。
心よりご冥福をお祈りします。

訃報を聞いて、いったんバッハのミサとモーツァルトのレクィエムを取り出したのですが、なぜか聴けませんでした。その代わりに引っ張り出してきたのが、フォーレのレクィエム。
選んだのはジュリーニの演奏です。

<曲目>
■フォーレ:レクィエムop48
<演奏>
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮
フィルハーモニア管弦楽団
フィルハーモニア合唱団
キャサリン バトル(ソプラノ)
アンドレアス シュミット(バリトン)
<録音>
1986年3月

第3曲のサンクトゥスはもともと独特の静謐さを持った曲ですが、こんなに心に深く染み入ったことはありません。
また、第5曲アニュス・デイの中間部、オケの強奏に鳥肌がたちました。
最後の「楽園にて」では、大げさな言い方が許されるなら、本当に魂が浄化されるような気持ちになりました。
今日はちょっとこれ以上は書けそうにありません。
ごめんなさい。



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モーツァルト 交響曲第14番イ長調 K114

2005-11-02 | CDの試聴記
今日は静岡出張でした。一連の全国主要都市で開催したセミナー行脚も今日が最終日。帰りの新幹線の中で、もう1人の講師と缶ビールでささやかに乾杯しました。「やっと終わったか・・・」が実感です。

さて、今日の1枚はモーツァルトのシンフォニーから。
モーツァルト15歳の年にザルツブルクで作曲されたこの14番のシンフォニーは、残念ながら知名度があまり高くないようで、モーツァルトの音楽を集めた書籍でも紹介されることはほとんどありません。
でも、地味だけど本当に素敵な曲なんですよ。
とくに絶対のお勧めは、レヴァインが指揮したウィーンフィルの演奏です。

<曲目>
■モーツァルト 交響曲第14番イ長調 K114
(交響曲全集から)
<演奏>
レヴァイン指揮 ウィーンフィルハーモニー
<録音>
1989年6月 ウィーン・ムジークフェライン大ホール

第1楽章冒頭の第一主題、何て素敵なフレーズ! 一度聴いたら誰でも好きになると思います。続く第二主題の弦楽器が絡み合う美しさも実に印象的。この素敵な曲を、レヴァインとウィーンフィルは最高のチャームで奏でてくれます。
これしかないという絶妙のテンポとアンサンブル、自然で柔らかな音色、ウィーンフィルの美質を改めて実感させられます。また両翼配置も素晴らしい効果をあげています。
第2楽章は夢見るようなアンダンテ。ここでもウィーンフィルの音色が美しい。
第3楽章はメヌエットですが、とくに中間部のフィガロの結婚のアリアを想わせる素敵なメロディがたまらなく魅力的。また3連符で奏されるオブリガードも聴き惚れるばかりです。
フィナーレはモルト・アレグロで、4分音符3発のフォルテで開始されますが、決してこのコンビはメリハリを利かせた威嚇するような表情は見せません。うっとりしている間に颯爽と走り抜けていく、そんな感じの演奏です。
何度聴いても、ため息がでるような素晴らしい音楽!

残念なことに、このレヴァインの全集はあまり評判がよろしくないようですが、なぜなんだろう。
私は素敵なモーツァルトだと思います。少なくともこの14番なんかは最高の名演だと自信を持ってお勧めできるんですが・・・。
そのほかでは、ピノックがイングリッシュコンソートと組んで1993年に演奏したディスクが、活き活きとした表現で若々しいモーツァルト像を感じさせてくれます。70年代にホグウッドが残した演奏と比較すると、20年の間に古楽器の演奏がどれだけ柔軟に表現できるようになったか教えてくれます。
この曲には、上記の2枚以外にもアーノンクール盤等優れた演奏がいくつかありますが、私はやっぱりレヴァイン盤だなぁ。
広く聴いていただきたい名盤です。

コメント (2)
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