ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

アンリ・ジロー:エスプリ・ ド・ ジロー  with メサイア

2008-08-31 | シャンパン・ワイン・焼酎
凄まじいまでのゲリラ豪雨があったかと思うと、一転して夏の暑さが戻ってきたりで、夏の疲れがちょうど出てくるこの時期としては結構体に堪えますね。
そんな体を癒してくれるのが、最近私の場合はなんと言ってもシャンパンです。
今日ご紹介するのは。アンリ・ジローの「エスプリ・ ド・ ジロー」。

アンリ・ジロー
何か親近感をもつ名前ですね。
そういえば、前回ご紹介した「エグリ・ウーリエ」も、ウをユに変えるとれっきとした日本人女性の名前になります。
だからと言うわけではありませんが、シャンパンは私にとって身近な存在です。
さて、このアンリ・ジローは、ルイ13世統治下の1625年の創業といいますから、まさに由緒正しきメゾンなのですが、つい最近まで日本ではほとんど目にすることができない幻のシャンパンでした。
それは、英国王室やモナコなどの王室、そしてほんの一部の選ばれたセレブ専用になってしまっていて、市場に出回らなかったからです。
アンリ・ジローといえば、なんと言ってもプレスティージの「フェ・ド・シェンヌ」が有名ですが、ちょっと高価なので、ベーシックなシャンパンである「エスプリ・ ド・ ジロー」をいただきました。

芳醇。そして実に柔らかい。
はちみつのような香りと、ひとくち口に含んだときの豊かな感触は、いままで経験したことがありません。
この味、私は大好きです。
オーディオでいうと、マッキントッシュのアンプの持っている音と雰囲気に似ているかなぁ。
前回のエグリ・ウーリエもそうでしたが、芳醇なシャンパンを飲めてほんと幸せ!


こんな美味しいアンリ・ジローに相応しい音楽は何だろう。
英国王朝御用達、豊かさ、自然に湧き出る喜び、ということを考えて、私はヘンデルのメサイアを選びました。
中でも、第1部12番のコーラス「ひとりの嬰児が我々のために生まれた」あたりが、私のイメージにぴったりです。

選んだディスクは、トレヴァー・ピノック&イングリッシュコンソートの演奏。
以前とりあげた「アーノンクールの新盤」と並んで私が最も好きな演奏です。
オジェー、フォン・オッター、トムリンソンといった歌手陣のレベルも高いし、もはや古楽器だとかモダン楽器だとかいう議論を超える名演奏。
「アンリ・ジローとピノックのメサイア」、なかなか素敵なマリアージュだと思います。

ヘンデル:オラトリオ『メサイア』 HWV.56
<演奏>
■アーリーン・オジェー(S)
■アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(M)
■マイケル・チャンス(C-T)
■ハワード・クルック(T)
■ジョン・トムリンソン(B)

■トレヴァー・ピノック(指揮,cemb)
■イングリッシュ・コンサート&コーラス
<録音>1988年1月



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アンサンブル・ウィーン=ベルリン in 草津

2008-08-26 | コンサートの感想
少し遅い夏休みをもらって、草津へ行ってきました。
お目当ては、温泉&音楽祭。
温泉も勿論素晴らしかったけど、まずはコンサートの感想から。

草津では毎年夏にアカデミーが開催され、さらにアカデミーの教授たちをメインとするコンサートも毎日行なわれています。
正式には「草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル」というのですが、もう今年で29回目になるそうです。
今年のテーマは、「18世紀の音楽~バロックからクラシックへ」

まず驚くのが、アカデミーの教授たちの顔ぶれ。
いずれも錚々たる超一流音楽家です。
ベーレンス、クラウセの声楽陣。
弦楽は、ヒンク、ガブリロフ、ベッチャー、パノハカルテット。
管楽器はさらに豪華で、シュルツ、シェレンベルガー、インデアミューレ、トイブル、トュルコヴィッチ、ドール。
そしてピアノは、ボーグナー。
もう、夢のようなメンバーでしょ。
草津の名湯に癒されながら、世界の超一流音楽家の教えを受け、さらに彼らの至芸を心行くまで楽しめる。
こんな音楽祭が日本で毎年行なわれていたのですね。

さて、私が聴いたのはアンサンブル・ウィーン=ベルリンのコンサートです。

<日時>2008年8月23日(土)16:00開演
<会場>草津音楽の森国際コンサートホール
<曲目>
■モーツァルト:ハーモニー・ムジーク 歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」より
■リゲッティ:管楽五重奏のための6つのバガデル 
■ヒンデミット:5つの管楽器のための小室内音楽 作品24-2
■ベートーヴェン :ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 作品16
(アンコール)
■プーランク:ピアノ六重奏曲から第2楽章
■モーツァルト:歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」より
<演奏>アンサンブル・ウィーン=ベルリン
W.シュルツ(Fl),H.シェレンベルガー(Ob),N.トイブル(Cl)
M.トルコヴィッチ(Fg),S.ドール(Hr),F.ボーグナー(Pf)

冒頭のモーツァルト。
歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」から6曲を選んで、管楽五重奏用にアレンジされたものです。
最初の音を聴いた瞬間から、もうそこは紛れもないモーツァルトの世界。
難しい理屈なんて必要ありません。
ひたすらハーモニー・ムジークの楽しさを堪能させてもらいました。

続くリゲティ。
実はこの曲、初めて聴きました。
面白い!
現代曲はあまり得意でない私ですが、これは気に入りました。
とにかく全体に生気に満ちているんです。
原曲はピアノ曲で、祖国の先輩であるバルトークの影響を受けていた時代の作品のようですが、確かに途中、バルトークのオケコン風のフレーズが聞こえてきたりします。
その他ベートーヴェンの第九冒頭を想わせる音の跳躍やストラビンスキー風の響きも感じられ、とても楽しく聴かせてもらいました。

後半は、ヒンデミットの「5つの管楽器のための小室内音楽」を経て、メインはベートーヴェンのピアノクインテット。
このベートーヴェンは本当に良かった。
とくに、第2楽章はこの日の白眉。
モーツァルトのピアノソナタの緩徐楽章を想わせる素朴なピアノの語りかけで曲は始まりますが、ひとつめのエピソードでシェレンベルガーの哀愁に満ちたオーボエが入ってくると、のどかな雰囲気が一変します。
こんな切ない表情を聴かされたら、もうたまりません。
この雰囲気はすぐにファゴットに引き継がれますが、名手トゥルコヴィッチの後半で聴かせる弱音の美しさも特筆もの。
そのあと、トイブルの柔らかなクラリネットが加わって紡がれる音楽は、もう涙が出るほどの美しさでした。
そして、再び安らぎに満ちた冒頭の雰囲気を味わったあと、2番目のエピソードを奏でるホルンのドールがこれまた秀逸。
ホルンでこれだけ陰影に富んだ表情を出すことは、並大抵ではないでしょう。
それから、忘れてはならないのが、ピアノのボーグナー。
この曲では、ピアノは管楽器との対話そしてつなぎ役に徹するわけですが、その点でベーゼンドルファーの深く豊かな響きも相まって、ボーグナーのピアノは見事としか言いようがありません。
聴衆の熱心な拍手に応えて、アンコールでは、プーランクの六重奏曲から第2楽章と、冒頭のコジから1曲聞かせてくれました。

東京や大阪でも、彼らは必ずや印象に残る名演奏を聴かせてくれることでしょう。
しかし、草津という素晴らしい町がはぐくむリラックスした雰囲気は、この名人たちに、一層自由な羽ばたきと輝きを与えました。
それが、この日のような音楽でどれだけ大切であるかは、言うまでもありません。

普段着の名人たちが心から楽しみながら奏でる室内楽は、かくも素晴らしいのです。



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エグリ・ウーリエ ブリュット トラディション with フォーレ

2008-08-17 | シャンパン・ワイン・焼酎
北京オリンピックももう後半戦。
先週は、北島選手の前人未到の偉業に、そして、女子レスリングの吉田選手の表彰台の涙に、目頭が熱くなりました。
日本の代表としてオリンピックチャンピオンになってくれたことも、もちろん嬉しい。
しかし、神に選ばれた天性の素質を持った彼らでも、途中大きな挫折を味わいます。そこで真剣に悩み、人の何倍も何倍も努力し、最後は自分を信じることで、ようやく運命の女神に微笑んでもらったわけです。
その間、きっと周りの人のありがたさを肌で感じたことでしょう。怖さも知ったことでしょう。そして最後に自分を、自分のやってきたことを信じることの大切さを知ったことでしょう。
そんな生きざまに、私は心から感動しました。

さて、北京や甲子園で熱戦が続いているせいか、この夏は本当に暑い日が続きました。
暑い日は、やっぱり発泡系のものに限りますよね。
発泡系といえばビール。ビールと言えば、何と言ってもプレミアム・モルツ!
私は掛け値なしに世界最高のビールだと思っていますが、そんなプレミアム・モルツを差し置いて、今年はなぜかシャンパンを開けることが多いです。
もともと、シャンパン大好き人間の私は、一時シャンパンに凝ったことがありました。
手が出る範囲でいろいろ飲んできましたが、「死ぬまでに飲みたい30本のシャンパン」という本を読んで、改めてシャンパンの奥深さを教えられたような気がします。
シャンパンを選んで買うのは大いなる楽しみなわけですが、大切に育てられた花嫁であるシャンパンを暑い部屋においておくわけには参りません。
早速、小型のワインセラーも購入しました。
これから、少しずつですが、楽しんでいこうと思っています。

さて、昨日開けたのは、エグリ・ウーリエのブリュット トラディション。
エグリ・ウーリエは、大手メゾンではなく、RM(レコルタン・マニピュラン・・・自分の畑で栽培したぶどうだけでシャンパンを造る小規模生産者)のシャンパンです。
このブリュット トラディションを飲むのは2回目になりますが、このシャンパンは本当に美味しいです。
とにかく芳醇。決してドライな印象を与えません。
ピノ・ノワール70%,シャルドネ30%という比率で作られていますが、ピノ・ノワールの名人の誉れ高いエグリの面目躍如というところでしょうか。
ブラン・ド・ブラン(シャルドネ100%で造られたシャンパン)好きの私ですが、
このふくよかさには、目じりが下がります。
決して値段的に安いシャンパンではありませんが、今後、我が家の食卓を頻繁に飾ることでしょう。

エグリを堪能しながら聴いた音楽は、やはりフランス音楽。
大好きなフォーレのピアノ五重奏曲第1番ニ短調です。
とくに第1楽章モルト・モデラートの冒頭の繊細な美しさ、第2楽章の祈りに満ちた静かな美しさは、本当に魅力的。
エグリ・ウーリエとまさにベストマッチングです。
<演奏>
ジャン・ユボー(ピアノ)
ヴィア・ノヴァ四重奏団
(1970年)





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シューマン 「謝肉祭」op.9(その2:アンダ,内田光子ほか)

2008-08-08 | CDの試聴記
シューマンの「謝肉祭」の続きです。

まず、内田光子さん(1994年)のディスク。
一聴して感じるのが、絶妙の呼吸感。それはもう、ため息が出るほど・・・。
そんな呼吸感の素晴らしさは、例の「再会」でも際立っていますが、中間部のレガートな箇所との対比の妙も相まって、ひときわ印象に残ります。
内田さんの「謝肉祭」は個々の曲をとっても文句のつけようがないくらいの出来栄えですが、常に全体の流れを意識して演奏していることに改めて感銘を受けます。
とくに終曲に向けての設計は見事の一言。
ただ、あまりに、そのデッサン力が表に出すぎているような気がしないでもないのですが・・・。
私の考えすぎかなぁ。
あっ、それからこのディスクには、さらりと「スフィンクス」も収録されていますよ。

次に、ゲザ・アンダ(1955年)の演奏。
結論から言います。
これは、私にとって、デムスの演奏と並んでかけがえのない演奏です。
「聴き手は冒頭から忽ちにしてアンダの世界に引き込まれ、緊張と弛緩を繰り返しつつ展開される迫真のドラマに手に汗にぎり、ふと我に帰るとエンディングを迎えている」、まさにそんなイメージなのです。
聴き終えた後の感動と言う点では、ベストかもしれません。
ただこのディスク、裏表紙には1955年録音としか書かれていません。
もう少し細かな情報を知りたいのになぁ。
因みにこのディスクに収録されている曲目(謝肉祭、交響的練習曲、クライスレリアーナ)は、1956年のザルツブルク・ライヴ(オルフェオ)とまったく同じなので、ひょっとすると同じ演奏かもしれませんね。

その他にも、「謝肉祭」には素敵なディスクが数多く存在します。
例えばガブリーロフ(1987年)。
圧倒的なテクニックを駆使して、これほど豪快に弾ききった演奏は稀でしょう。
聴き手に四の五の言わさないだけの力強さと色彩感が、彼の演奏にはあります。
まさに直球勝負のピッチャーを観ているようで、ある種の爽快感が何とも言えず魅力的。
また、内田さんと同様に「スフィンクス」が弾かれていますが、こちらはまるで巨大なピラミッドの中に足を踏み入れたかのような、ひんやりとした空気感が感じられ、そのあたりも興味深いところです。

それからミケランジェリ。
1975年にEMIに再録音していますが、私は旧盤である1957年に録音したDG盤のほうが好きです。
きらきら輝くようなミケランジェリ特有の感性の閃きは、旧盤のほうにより強く感じられるからです。

落ち着いた中に気品を感じさせてくれるのは、ルビンシュタイン。
私が聴いたのは1963年にステレオ録音されたディスクですが、この不思議な安心感は、いつ聴いても貴重です。
彼はモノラル時代にもこの曲を録音しているようですが、そちらのほうは残念ながら未聴です。

また、コンサート終演後にサインをもらったエリック・ル・サージュ(1996年)や伊藤恵さん(1990年)の「謝肉祭」も、それぞれに魅力を持った演奏でした。

最後に、叶うことなら何としても聴きたかったのがホロヴィッツ。
「クライスレリアーナ」や「花の歌」の名演奏から想像しても、きっと素晴らしい「謝肉祭」を聴かせてくれたはずです。
残念ながら正式には録音しなかったようですが、あの日本公演でも弾いた大切なレパートリーだったはずなので、きっといつかライブ録音がリリースされると信じています。
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シューマン 「謝肉祭」op.9(その1:イェルク・デムス)

2008-08-02 | CDの試聴記
いろいろあって、7月はとうとう一度も更新できずに終わってしまいました。
こらぁ、いかん・・・。
月も変わって8月になりました。
気分一新、頑張ろう!

昨日、シューマンの「謝肉祭」の一節が、どういうわけか一日中頭から離れませんでした。
一節とは、「再会」と題されたあのフレーズです。
帰宅後、気になったので、久しぶりに全曲をじっくり聴きなおしてみました。
うーん、やっぱりいい曲。そして実に面白い!
というわけで、小休止のあとのブログ再開第一弾は「謝肉祭」に決めました。

ディスクは、イェルク・デムスの演奏。
私に多くのことを教えてくれた大切なディスクです。

<シューマン ピアノ全集vol.2>
■謝肉祭op.9
■アルバムの綴りop.124
■アレクシスのためのカノン
■アラベスクop.18
<演奏>イェルク・デムス(ピアノ)
<録音>1970年ごろ




ひとことで言うと、ちっとも華麗じゃないけど、実に味わい深い演奏。
決して「老獪なピアノ」だとか「渋い至芸」ということを言っているのではありません。
むしろ逆で、デムスは、シューマンが楽譜に書き込んだ思いを、一切フィルターをかけないでストレートに描いている。
付点のリズムは鮮烈なアクセントを伴って表現されるし、逆にカンタービレは徹底的に歌う。
大胆なデュナーミクもしかり。ときに、ごつごつした感触になることもまったく厭いません。
それでいて、エキセントリックに響かず、シューマンの音楽が持っている「アジタート」という側面を見事に表現しています。
また、全体に金属的な響きがしないのもデムスの特徴のひとつで、撥弦楽器に例えると、リュートのようなほのかな温かさが感じられます。
そんなこんなで、私は「味わい深い」と評した次第。

さて、具体的にみていきましょう。
「前口上」の冒頭、「パ・パーン」でもなく「パン・パーン」でもなく、「パッ・パーン」とデムスは弾き始めます。その後の音型が「パパーン」と素直にくるだけに、この表現はとくに印象的。「さあさあ、始まりだよ」と、勿体をつけて喋る弁士の顔が目に浮かびます。

続く「ピエロ」は、実は少々苦手な曲。多くの演奏ではここで退屈してしまうのですが、そこはデムス。大胆なコントラストによって、等身大のピエロが生き生きと描かれています。

「オイゼビウス」
これぞまさにソット・ヴォーチェ。デムスは、持てる最高の美音でこの7連符を弾いています。暗く憂鬱なオイゼビウスではなく、控えめだけど、はにかみながら時折見せる笑顔がとっても眩しい青年の姿を、私はそこに見ます。ラスト4小節がとりわけ美しい!

「キアリーナ」
キアリーナとはクララ・ヴィークのことですが、この曲では、付点を伴ったリズムが、下から上に向かって執拗に繰り返されます。
まるで「クラーラ」「クラーラ」と、遠くから切ないまでに何度も何度も呼びかけているようです。
当時、シューマンは、秘かにエルネスティーネと婚約していたわけですが、このときロベルトは、既にクララにより強く魅かれていたのではないかしら。
デムスの演奏を聴きながら、そんな思いにかられました。

「エストレッラ」
こちらは当時フィアンセであった、フリッケン男爵令嬢エルネスティーネ。
キアリーナとは異なり、冒頭から情熱的なフォルテシモで、ストレートに気持ちをぶつけてきます。しかし、あっと言う間に終わってしまうのも、何か暗示的?

「再会」
軽やかで、かつ柔らかな表情に、思わず顔がほころびます。
昨日、私の頭の中で鳴っていたのは、まさにこれです。
このフレーズ、この表現が聴きたかったんだ。
やっぱりデムスは素晴らしい。

「告白」の美しい詩情を経て、「散歩」は一見優雅なワルツです。
しかし、デムスの演奏をよく聴くと、意外に右手の表情がきつい。
そして、1拍目がかなり強調されている。
これは、終曲への準備なんですね。

終曲「ダヴィド同盟員の行進」は、ワルツと同じ3拍子の行進曲。
3拍子で行進するのは大変だと思いますが、この終曲の力強さを導くために「散歩」で、わざわざ徐々に緊張感とある種のきつさを感じさせるようなアプローチをしたんじゃないでしょうか。
さすがでございます・・・。

ただ、こんな名曲だから、もちろんデムス以外にもたくさん名演奏があります。
次回は、他のディスクのご紹介を。

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