今日は、今年度最後の読響マチネーの日。
そして、特別の意味を持つコンサートでした。
9年間常任をつとめたアルブレヒトの最後のステージで、曲はマーラーの9番。
9という数字に大きな意味を持たせたわけではないと思いますが、マーラーの最高傑作にして、これほど最後の曲として相応しい音楽はないでしょう。
<日時>2007年3月31日(土) 午後2時開演
<会場>東京芸術劇場(池袋)
<曲目>
■マーラー:交響曲第9番
<演奏>
■ゲルト・アルブレヒト指揮
■読売日本交響楽団

少し横にそれますが、マーラーの9番は、私にとってもかけがえのない大切な音楽です。
この曲の音楽としてのクライマックスは、もちろん最後のアダージョにあるわけですが、アダージョにいたる音楽の流れが、本当に素晴らしいと思うのです。
私の中のイメージはざっと次のようなものです。(正しいかどうかではなく、あくまでも私の感性で理解しているイメージです)
第1楽章は、混沌とした中に、「憧れ」「恐れ」「希望」「美」「別れ」等のフレーズが次々と現われる。最後の部分は天上界への憧れか・・・。
第2楽章は、田舎踊り。テーマは多岐にわたるけど、ここでは迷いはなくひたすら踊りに集中しているように感じます。
第3楽章は、ロンド ブルレスケ。
再び現実の世界の戻り、早い舞曲風の音楽になりますが、徐々にアダージョの影が忍び寄ってくる。
私は、この箇所を聴くと「あー、もうアダージョが近いんだ。」と、早くも胸が締め付けられるような気持ちになります。快活なロンドの中に組み入れられているだけ、一層強烈な印象を残してくれます。
私の大好きな音楽!
そして第4楽章は、あのアダージョ。
もう、この楽章について文章で書けることは、ほとんどありません。
ひたすら浄化された音楽。しかし、浄化にいたる心の葛藤こそこのアダージョの最大の魅力。
さて、話を今日の演奏に戻します。
会場に入った時に、第一列の端っこの席まで埋まっているのをみて、まず驚きました。
マチネー会員の以外の方も、大勢来られたのでしょう。
チューニングが終わり、アルブレヒトがゆっくり指揮台に歩いてきました。
そして、にっこり微笑みながらコンマスの藤原浜雄さんと小森谷さんに握手を求め、何とも穏やかな表情で指揮台に登ります。
「これが常任最後のステージ、曲はマラ9。さあやるぞ・・・」といった気負いや感傷といったものは微塵も感じられません。
アルブレヒトらしいですね。
第1楽章は、お互いのパート間でお見合いをしているような、少し手探りの感じで始まりましたが、最初の強奏部で吹っ切れたようです。
その後は、アルブレヒトの指示する少し早めのテンポの中、見事なまでに音が鳴りきっていました。
途中ティンパニを中心に「ソ―シ――ド―シ」とやる箇所は、とりわけ印象に残りました。さらに最後にヴァイオリンソロが出てくる少し前あたり、鐘をともなってこの音型が再現される箇所では、もう胸がジーンとしてしまいました。
第2楽章は、オケも完全にペースに乗ってきました。アルブレヒトの棒はほとんど大きな振りをしないのに、実に力強く見事なアンサンブルを聴かせてくれました。
第3楽章は、先ほどお話したとおり大好きな楽章なのですが、「アダージョの影」の部分では、もう少し遅いテンポの方が良かったかなぁ。
しかし、音楽としての構成力は抜群でした。
そしていよいよアダージョです。
読響の誇る弦楽器群に導かれて、感動的な音楽が始まりました。
過度に思い入れたっぷりになっていない分だけ、音楽としての訴えかけてくる力がありますね。
コンマスの藤原さんをはじめ、チェロの毛利さん、ホルンの山岸さんといったソロ奏者が凄い演奏をするだけではなく、オーケストラ全員が心をひとつにして、見事な演奏を聴かせてくれたのです。
とくに、弦のトゥッティの人たちの表情を見ていると、こちらまで泣けてきました。
私も5年以上にわたり、ずっと読響の演奏を聴いてきましたが、全員がこんなに懸命に、必死になってヴィブラートをかけている演奏は初めてです。
また、ラストの弦楽器だけで奏でる最弱音の箇所は、最も感動的な音楽なのに(いや、感動的であるがゆえに)、我慢しきれなくなった咳払いや、予期しない物音によるノイズが断続的に発生しやすいところですが、今日はほとんど無事でした。
演奏家だけでなく、聴衆の集中力も大変なものであったことの証左でしょう。
私はというと、ステージで懸命に弾いてくれている奏者の表情を見ていると、つい涙がこぼれそうだったので、目線を少し上げてパイプオルガンを見ていました。
驚いたことに、最後の箇所では、パイプオルガンから音が出ているのかと錯覚するような音色が聴こえてくるではありませんか。
ひとこと、感動的な演奏でした。
最後に、アルブレヒトの残してくれた功績は本当に大きいと思います。
オケのレパートリーの面でも、またオケの合奏力の向上という点においても。
とくにここ数年、弦楽パートのレベルは一段と上がったように感じます。
アンサンブルも、音色も、全ての点において・・・。
ウィーンフィルのようにビロードのような肌触りの音色ではないけど、黒光りするような独特の音色になってきました。
それから、あえて書かなかったのですが、名手ぞろいのソロ奏者のなかで、最も若いソロ=ヴィオラの鈴木 康浩さん、本当に素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
もうひとりのこれまた素晴らしいソロ奏者である生沼 晴嗣さんとは、またタイプの違う名手の誕生です。
終演後、アルブレヒトが満面の笑みで鈴木さんを讃えていたのも頷けます。
アルブレヒトさん、長い間本当にありがとう。
そして、今日、記憶に残る素晴らしいマーラーを聴かせてくれた読響のみなさん、本当にありがとう。
そして、特別の意味を持つコンサートでした。
9年間常任をつとめたアルブレヒトの最後のステージで、曲はマーラーの9番。
9という数字に大きな意味を持たせたわけではないと思いますが、マーラーの最高傑作にして、これほど最後の曲として相応しい音楽はないでしょう。
<日時>2007年3月31日(土) 午後2時開演
<会場>東京芸術劇場(池袋)
<曲目>
■マーラー:交響曲第9番
<演奏>
■ゲルト・アルブレヒト指揮
■読売日本交響楽団

少し横にそれますが、マーラーの9番は、私にとってもかけがえのない大切な音楽です。
この曲の音楽としてのクライマックスは、もちろん最後のアダージョにあるわけですが、アダージョにいたる音楽の流れが、本当に素晴らしいと思うのです。
私の中のイメージはざっと次のようなものです。(正しいかどうかではなく、あくまでも私の感性で理解しているイメージです)
第1楽章は、混沌とした中に、「憧れ」「恐れ」「希望」「美」「別れ」等のフレーズが次々と現われる。最後の部分は天上界への憧れか・・・。
第2楽章は、田舎踊り。テーマは多岐にわたるけど、ここでは迷いはなくひたすら踊りに集中しているように感じます。
第3楽章は、ロンド ブルレスケ。
再び現実の世界の戻り、早い舞曲風の音楽になりますが、徐々にアダージョの影が忍び寄ってくる。
私は、この箇所を聴くと「あー、もうアダージョが近いんだ。」と、早くも胸が締め付けられるような気持ちになります。快活なロンドの中に組み入れられているだけ、一層強烈な印象を残してくれます。
私の大好きな音楽!
そして第4楽章は、あのアダージョ。
もう、この楽章について文章で書けることは、ほとんどありません。
ひたすら浄化された音楽。しかし、浄化にいたる心の葛藤こそこのアダージョの最大の魅力。
さて、話を今日の演奏に戻します。
会場に入った時に、第一列の端っこの席まで埋まっているのをみて、まず驚きました。
マチネー会員の以外の方も、大勢来られたのでしょう。
チューニングが終わり、アルブレヒトがゆっくり指揮台に歩いてきました。
そして、にっこり微笑みながらコンマスの藤原浜雄さんと小森谷さんに握手を求め、何とも穏やかな表情で指揮台に登ります。
「これが常任最後のステージ、曲はマラ9。さあやるぞ・・・」といった気負いや感傷といったものは微塵も感じられません。
アルブレヒトらしいですね。
第1楽章は、お互いのパート間でお見合いをしているような、少し手探りの感じで始まりましたが、最初の強奏部で吹っ切れたようです。
その後は、アルブレヒトの指示する少し早めのテンポの中、見事なまでに音が鳴りきっていました。
途中ティンパニを中心に「ソ―シ――ド―シ」とやる箇所は、とりわけ印象に残りました。さらに最後にヴァイオリンソロが出てくる少し前あたり、鐘をともなってこの音型が再現される箇所では、もう胸がジーンとしてしまいました。
第2楽章は、オケも完全にペースに乗ってきました。アルブレヒトの棒はほとんど大きな振りをしないのに、実に力強く見事なアンサンブルを聴かせてくれました。
第3楽章は、先ほどお話したとおり大好きな楽章なのですが、「アダージョの影」の部分では、もう少し遅いテンポの方が良かったかなぁ。
しかし、音楽としての構成力は抜群でした。
そしていよいよアダージョです。
読響の誇る弦楽器群に導かれて、感動的な音楽が始まりました。
過度に思い入れたっぷりになっていない分だけ、音楽としての訴えかけてくる力がありますね。
コンマスの藤原さんをはじめ、チェロの毛利さん、ホルンの山岸さんといったソロ奏者が凄い演奏をするだけではなく、オーケストラ全員が心をひとつにして、見事な演奏を聴かせてくれたのです。
とくに、弦のトゥッティの人たちの表情を見ていると、こちらまで泣けてきました。
私も5年以上にわたり、ずっと読響の演奏を聴いてきましたが、全員がこんなに懸命に、必死になってヴィブラートをかけている演奏は初めてです。
また、ラストの弦楽器だけで奏でる最弱音の箇所は、最も感動的な音楽なのに(いや、感動的であるがゆえに)、我慢しきれなくなった咳払いや、予期しない物音によるノイズが断続的に発生しやすいところですが、今日はほとんど無事でした。
演奏家だけでなく、聴衆の集中力も大変なものであったことの証左でしょう。
私はというと、ステージで懸命に弾いてくれている奏者の表情を見ていると、つい涙がこぼれそうだったので、目線を少し上げてパイプオルガンを見ていました。
驚いたことに、最後の箇所では、パイプオルガンから音が出ているのかと錯覚するような音色が聴こえてくるではありませんか。
ひとこと、感動的な演奏でした。
最後に、アルブレヒトの残してくれた功績は本当に大きいと思います。
オケのレパートリーの面でも、またオケの合奏力の向上という点においても。
とくにここ数年、弦楽パートのレベルは一段と上がったように感じます。
アンサンブルも、音色も、全ての点において・・・。
ウィーンフィルのようにビロードのような肌触りの音色ではないけど、黒光りするような独特の音色になってきました。
それから、あえて書かなかったのですが、名手ぞろいのソロ奏者のなかで、最も若いソロ=ヴィオラの鈴木 康浩さん、本当に素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
もうひとりのこれまた素晴らしいソロ奏者である生沼 晴嗣さんとは、またタイプの違う名手の誕生です。
終演後、アルブレヒトが満面の笑みで鈴木さんを讃えていたのも頷けます。
アルブレヒトさん、長い間本当にありがとう。
そして、今日、記憶に残る素晴らしいマーラーを聴かせてくれた読響のみなさん、本当にありがとう。