ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

小菅優さんのこと

2005-03-26 | コンサートの感想
小菅優さんというピアニストをご存知ですか?

小菅さんは、1983年東京生まれの今年22歳になるまだ若いピアニストですが、
10代の頃からヨーロッパに住み研鑚を積みながら、 次々と演奏活動を重ねてきました。
2年程前に、TBS系列の「情熱大陸」というテレビ番組でも紹介されているようなので、ご存知の方も多いと思います。(残念ながら私はこの番組を見れなかったのです・・・。(泣) 誰か見せてくれる人いないかなあ)

私は、実演では、読売日響のマチネーコンサートで2回協奏曲を聴きました。
曲目は、一昨年はベートーベンの3番、昨年はモーツァルトの21番です。
いずれの協奏曲とも、素晴らしい演奏でした。

こうと決めたら豪快に突き進む思いっきりの良さと、繊細な感性を併せ持ち、それをいとも簡単に実現する高度のテクニックと美しい音色を持っていることが、小菅さんの特長です。
それと、協奏曲では、自分がピアノを弾いているときはもちろん、オーケストラだけの部分であっても、今にも指揮でも始めるんじゃないかと思う位音楽の中に入り込んでしまいます。
そのときの彼女の表情が、また素晴らしい。
この、自然体でスケールの大きな音楽が、小菅さんの最大の魅力でしょう。
今年度のマチネーでは、7月にチャイコフスキーのピアノコンチェルトを聴かせてくれることになっており、今から楽しみです。

また、彼女の演奏したCDも既に6枚ほど発売されていますが、最新作の「ショパンの前奏曲集」を除き、全部聴きました。(この前奏曲集もすぐに聴きたいのはやまやまなのですが、正直に告白すると、7月のコンサートのときにCDを買って、そのときにサインをしてもらおうと目論んでいるのです。)
今まで聴いた小菅さんのCDの中では、弱冠16歳で演奏した「ショパンのエチュードop10&25全曲」のアルバムが一番好きです。
作品10の第1曲から本当に輝かしい演奏で、第2曲以降も圧倒的なテクニックの冴えをみせてくれます。豪快でありながら、デリケートな部分の表現にもまったく不足していない。ドイツの音楽批評誌「フォノ・フォルム」で最高評価の5つ星が与えられたのも当然だと思います。
現在、ショパンのエチュードについては、ポリーニ、伊藤恵さんの演奏と並んで、小菅さんのCDが私にとっての大切な1枚になっています。

P.S
昨日ファンクラブからきたメールで、昨年末に小菅さんのお母さまが亡くなられたことを知りました。
悲しみを乗り越えて、一回り大きな、名実ともに日本を代表するピアニストになっていただきたいと思います。
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モーツァルト ホルン協奏曲 (タックウェル&マリナー) 

2005-03-20 | CDの試聴記
モーツァルトのホルン協奏曲の素晴らしいアルバムに出会いました。

<演奏>
バリー・タックウェル(ホルン)
マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団

1971年の録音で既に定評のあるアルバムですから、何をいまさらと言われる方もいらっしゃると思いますが、たまたまCDショップで見つけて何気なく買いました。
正直なところ、あまり期待せずに買ったといったほうが正しいのですが、第1番の冒頭からもう参ってしまいました。
モーツァルトに限らず、こんなに素敵な始まりはそうそうお目にかかることはできません。
タックウェルのホルンももちろん素晴らしいのですが、何よりマリナーの伴奏が本当に見事です。
あまり使いたくない表現ですが、まさに神業です。
これしか考えられないと思われる自然なテンポ、美しく透明なハーモニー、清潔なリズムとフレージング、それに控えめに加えられたチェンバロ(原曲にはあるのかしら?)等、もう天国的な美しさです。
本当は仕事をしながら聴こうと思ってかけたのですが、姿勢を正して(堅苦しい意味ではありません)一気に最後まで聴いてしまいました。

モーツァルトの協奏曲といえば、むかし吉田秀和さんがアイザック・スターンがソロをつとめるバイオリン協奏曲で、セル&クリーブランド管弦楽団の伴奏の見事さを褒めていたことがありましたが、今回のマリナーの伴奏も勝るとも劣らない見事なものです。
そういえば、マリナーはブレンデルと組んでモーツァルトのピアノ協奏曲で名演を聴かせてくれていましたよね。
でも、ピアノ協奏曲のときよりも、今回のホルン協奏曲のほうが印象が鮮烈です。

伴奏ばかりコメントしてしまいましたが、主役のタックウェルももちろん見事な演奏です。
こちらは、きれいなというよりもしっかり主張のあるホルンで、豊かな表情が印象に残りました。
第2番以降の曲も、いずれもため息がでるくらい美しい演奏です。
特に第3番はもともと大好きな曲で、第21番のピアノ協奏曲(あの美しい第2楽章が有名なハ長調の曲です)の第1楽章で同じフレーズがでてきますが、この主題の処理も本当に見事。
また、このアルバムには、珍しい未完のホルン協奏曲ホ長調K494a、変ホ長調のロンドK371も納められており、いずれも良い曲です。

いままでは、デニス・ブレイン&カラヤン盤、アラン・シビルの2つの演奏(クレンペラー、ケンペ)、バウマン&アーノンクール盤をとくに愛聴してきましたが、今回のタックウェル&マリナー盤が一夜にして特等席に座ることになってしまいそうです。
それにしても、ブレイン、シビル、タックウェルと、どうしてイギリス人のホルンに惹かれるんだろう?私の好みなのかなあ。
でも、昨年チェコ生まれのバボラクの本当に自由闊達な演奏を聴き、これからはこの人の時代だなと感じたので、また印象も変わっていくでしょう。


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アルブレヒト&読売日響 ベートーベン:「田園」、ブラームス:交響曲第2番

2005-03-13 | コンサートの感想
3月の芸劇マチネーコンサートに行ってきました。

<日時>平成17年3月13日(日)
<曲目>
ベートーヴェン: 交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68 「田園」
ブラームス  : 交響曲 第2番 ニ長調 Op.73

指 揮 :ゲルト・アルブレヒト

読響のメイン・シェフであるアルブレヒトを迎えての、久しぶりのマチネーコンサートです。

前半の「田園」は、第一楽章冒頭からとても気持ちのいいテンポで始まりました。この曲の場合、標題音楽(田園)としてとらえるか、交響曲第6番としてとらえるか、大きく二つのアプローチがあると思いますが、アルブレヒトの場合は後者としてとらえているように感じました。
続く2楽章以降も過度の演出を廃した自然な演奏で、私は好感を持ちました。全体的には、まずまずのできばえという印象です。

後半のブラームスは名演でした。これは良かった。
ハーモニーが分厚く歌謡性に富み、かつ迫力のある演奏でした。私のイメージしているブラームス像に非常に近いものと言っても差し支えありません。
特に内声部の処理が見事で、第二バイオリンやビオラ・チェロの細かな動きが、曲全体を立体的にしていました。また、その見事にコントロールされた内声部と読響の特徴である力強いバスに乗っかる形で伸びやかに管楽器が歌ってくれていましたから、これは素晴らしい演奏にならないわけがない。
フィナーレで、ラスト直前ほんの少しスパイスを聞かせつつ圧倒的なクライマックスを作るのは、アルブレヒト流。私も見事にのせられました。
久しぶりに、実演で素晴らしいブラームスを聴いた気がしました。

でも、いつも読響のマチネーコンサートを聴いて感じるのですが、どうして前半に比べて後半の方が出来がいいんだろう。選曲による部分も大きいと思いますが、明らかに演奏にかける熱さ(演奏のエネルギーと言い換えてもかまいません)が違うように思えてなりません。したがって、いつも帰るときは、後半の印象が大きいので大変満足して帰るのですが、前半も同じくらいの出来がキープできたら、もっと鮮烈な記憶となって残るのになあと思ってしまいました。

それから、今日何よりもうれしかったことは、私自身最初から最後まで本当に自然に呼吸ができ、オーケストラの演奏と一体化できたことです。
アチェランドがかかろうと、急にピアノになろうと、テンポが速かろうと遅かろうと、常にアルブレヒトの指揮のもと、私自身、目の前の演奏と一体になって呼吸できました。
演奏の中に自分も入り込んで何とか一体感を味わいたい私のようなタイプの人間にとって、この点は非常に重要なのです。
指揮者のアルブレヒトの音楽つくりの素晴らしさが最大の要因だと思いますが、私なりにもう少し整理して考えてみたいと思います。
以前私のBlogでもコメントしましたが、昨年の第9で危うく呼吸困難(ちょっとオーバーか・・・)になりそうになっただけに、今日は本当にうれしかったです。
(でも、書きながら痛感しているのですが、表現がヘタで、言いたいことの半分も言えていない気がします。ごめんなさい。)

コメント (2)
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フェインベルグの平均律

2005-03-12 | CDの試聴記
サムイル・フェインベルグ(その3)

銀璧亭さんの上記のBlogを拝見して、私も聴いてみました。
とても良かった。感動しました。フェインベルグの演奏を聴くのは全く初めてでしたが、1曲1曲にバッハへの愛情の感じられる演奏です。一言で言うと、ロマンティックでかつ起伏にとんだ演奏といえますが、決して情に流されることなく全体としての見通しが良いんです。このふたつの要素を、演奏という現場で両立させて実現することは、本当に難しいことだと思います。全体を通して聴いたときに、この素晴らしさはとりわけ体感できると思います。
また、バッハの平均律では第1巻の方が好きで、第2巻をきくことはどちらかというと少ないのですが、フェインベルグのアルバムでは第2巻が特に素晴らしかった。
(最後の最後で音がひずむのが本当に残念です。1960年前後の録音ですからやむを得ませんね)

平均律は私の大好きな曲であり、昨年もいろいろ聴いてきました。年末には、リヒテルのインスブルックライブという超ど級の名演にも出会いましたが、フェインベルグのアルバムもこれから大切に聴き続けて行くと思います。
もっと広く知られてほしいピアニストですね。

コメント (1)
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