ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ウィスペルウェイ&カリニャーニ 読売日響マチネーコンサート

2006-07-10 | コンサートの感想
昨日の読響マチネは、充実した今シーズンのプロの中でも、私が最も楽しみにしていたもののひとつです。

<日時>2006年7月9日(日) 午後2時開演
<場所>東京芸術劇場
<曲目>
■チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲
■ブルッフ:コル・ニドライ
(アンコール)バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番からサラバンド
■ベルリオーズ:幻想交響曲
(アンコール)ストラビンスキー:サーカス・ポルカ
<演奏>
■チェロ:ピーター・ウィスペルウェイ
■指 揮:パオロ・カリニャーニ
■管弦楽:読売日本交響楽団

  

前半は、オランダのチェロの名手 ウィスペルウェイを迎えての演奏。
最初の曲は、チャイコフスキーのロココ風バリエーションです。
前から3列目のセンターやや左といういつもの座席なので、ちょうど5~6m先の真正面でウィスペルウェイが弾いています。チェロをこんなに近くで聴くのは、ジュルネ・ジャポンの趙静(チョウ・チン)以来。あのときは、ほんとに2mくらい先で演奏してくれたので、思わず「よろしければ、譜めくりをして差し上げましょうか?」という感じでした。(笑)

さて話がそれましたが、このチャイコフスキーのロココ風については、私なりのお約束がありまして、それはどんなに難しい箇所でも顔色ひとつ変えないで、楽々と弾いてほしいということ。
それは、この曲が大変な難曲であることは十分承知しているんですが、この曲の持つ華麗でかつ優雅な雰囲気に浸りたいからなんです。
その点で、この日のウィスペルウェイは、はなまる大合格。
まあ、何と楽しそうに活き活きと弾いているんだろう。テクニックも完璧。
テーマの優雅な表情、華麗な技術に目を見張った各変奏、そして強烈なアクセントに加えて気合のうなり声?が印象的な最終変奏のパ・パ・ゲ・ノ(すみません、私にはこのテーマ、何回聴いても、パパパの二重唱の「パパゲノ」に聴こえるんです!)、いずれも素晴らしい表現力でした。

第2曲のコル・ニドライでは、一転して豊かで息の長いフレージングを聴かせてくれました。とくにハープが入ってからの濃い表情は、ロココ風とは明らかに違うもの。
そして、アンコールで聴かせてくれたバッハは、いつもバッハに使用しているピリオド楽器ではなくモダン楽器での演奏でしたが、師ビルスマ譲りの敬虔な表情が何とも感動的。
様式感の確かさもこの人の持ち味のひとつですね。

後半は、ベルリオーズの幻想交響曲。
カリニャーニの演奏を聴くのは初めてでしたが、この指揮者只者ではないですね。
フランクフルト歌劇場の音楽監督として将来を嘱望されているだけあって、演奏現場の実践的なスキルを持っている上に、決して陳腐な表現をしないところが気に入りました。
誠実そうな人柄も、きっとオケの人たちに愛されているんだろうなぁ。

今回の演奏をひとことで言うと、とても新鮮な「幻想」でした。
第1楽章から対旋律の扱いが巧みで、「え!こんなフレーズあったの?」と何度も驚かせてくれました。
第2楽章では、冒頭チェロの音型の最高音に強いアクセントを入れて、続く優美なワルツとの見事な対比を作っていましたし、第3楽章は、コール・アングレとオーボエの掛け合いが本当に美しかった。
終楽章では、「鐘」を伴って不気味に鳴り響くブラスの「怒りの日」の凄みと、その裏拍に入ってくるチェロ・コンバスの重く強いアクセントに、肺腑をえぐられるような思いがしました。

カリニャーニの演奏の特徴は、「どんなフレーズも流しっぱなしにしない」ということではないでしょうか。特にフレーズの終わりに強く意識がはたらいているので、そのフレーズが次に再現されたときに、もの凄く鮮烈な印象を与えるんですね。
強奏部分でも、単に大きく重い音にはなりません。どちらかというと、マルカート気味の表現が多かったのではないかしら。強い意志を感じさせる音という印象でした。
盛大なブラヴォーに応えて、アンコールはストラビンスキーのサーカス・ポルカ。
これが大変な名演奏で、アンコールでこれだけブラヴォーがくるのも珍しいと思います。

また、楽しみなアーティストにめぐり合うことが出来ました。

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4 コメント

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こんばんは☆ (zauber-ton)
2006-07-11 01:47:22
ステキなコンサートだったみたいで何よりです♪

聴きたかったんですが、romaniさんの感想を拝読して、すっかり聴いた気分にさせて頂きました。(笑

romaniさんにお目にかかれず、それも残念。

この指揮者とチェリスト、要チェックですね?覚えておきます。

私はしばらくはコンサートをお預けにして、自分の練習をしなくては(汗

今回のプロのベルリオーズのCD、HMVで安かったので聴きにいけなかった反動で買っちゃいました♪

この夏はCDと楽譜とお友達になります・・・。
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>Zauber-tonさま ( romani)
2006-07-11 23:56:18
こんばんは。

素敵な演奏でしたよ。

とくにカリニャーニは、近々ウィーンでも振るんじゃないでしょうか。

音楽に一本筋が通っているし、人柄も誠実そうできっとブレイクすると思います。



ところで、体調は大丈夫ですか?

こんなに暑く湿度の高い中で練習するのは大変だと思いますが、がんばってくださいね。

コンサートは、また次の機会に是非ご一緒しましょう。

楽しみにしています。
返信する
こんばんは☆ (zauber-ton)
2006-07-12 21:53:05
ご心配ありがとうございます。

もう完全に復活しました。romaniさんはお体大丈夫ですか?コンサート、またご一緒できる機会を楽しみにしていますね。



ところで今秋はウィーン交響楽団も来日するんですね。

私の友達の義兄がホルンで乗るらしいので、もし時間があったら聴きに行ってみてください。
返信する
>Zauber-tonさま ( romani)
2006-07-12 23:42:21
こんばんは。

ウィーン交響楽団にお知りあいの方が出られるのですか。

確かルイージの指揮ですよね。

プログラムも魅力的だし、何か聴きたくなってきたなあ。

日程調整してみます。

ありがとうございました。
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