ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

秋に聴いたコンサート (その2)

2012-12-30 | コンサートの感想
続けて第二弾。

◎マリス・ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団
<日時>2012年11月12日(月)19:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目>ベートーヴェン
■交響曲第4番変ロ長調
■交響曲第3番変ホ長調「エロイカ」
⇒掛け値なしに現在聴ける最高のエロイカ。バイエルン放送響もまさに超一流だった。
そして何と言ってもヤンソンス。このマエストロはやっぱり凄い。
今まで生真面目さが少し気になっていたが、完全に一皮向けた印象。
この日のエロイカは、総じてテンポが速い。特に第1楽章と第2楽章が速い。
しかし、テンポは速いのに間の取り方と呼吸感が抜群だった。
だから、聴きても一緒に呼吸しながら音楽に浸ることができる。3拍子ではなく1拍子で生き生きとフレーズが描かれると言えば、少しわかっていただけるかしら。
第1楽章の最初と最後の音の表情が全く同じであることに、思わずドキっとした。
第2楽章は、フルトヴェングラーのような、慟哭の中を息も絶え絶えになりながら少しでも前に進もうとするような緊迫したドラマ性はない。その代わり、音楽そのもののもつピュアな力は圧倒的だ。これがヤンソンス流。
スケルツォは三連符のリズム感が際立って素晴らしい。トリオのホルンも実に見事。
フィナーレは前に進む推進力よりも、変奏曲であることを大切にした演奏。各バリエーションの描写が本当に上手い。それでいてラストに向けての盛り上げ方も圧倒的で、こんな演奏を聴かされたらたまらない。
エロイカのことばかり書いたが、4番も躍動感溢れる快演。
第1楽章の序奏から主部に入るところの見事さを聴くだけで、レベルの高さが分かる。
ちなみに、この日はどちらの曲も対抗配置。そして、4番のティンパニはベルリンフィルのゼーガースというサプライズ付き。


◎マリス・ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団
<日時>2012年12月1日(土)19:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目>ベートーヴェン
■交響曲第8番ヘ長調
■交響曲第9番ニ短調「合唱付」
<演奏>
■指揮:マリス・ヤンソンス
■クリスティアーネ・カルク(S)
■藤村実穂子(A)
■ミヒャエル・シャーデ(T)
■ミヒャエル・ヴォッレ(Bs)
■バイエルン放送交響楽団
■バイエルン放送合唱団
⇒一音たりとも気持ちのこもらない音はなかった。あれだけぎゅっと中身が詰まっているのに、響きは温かい。
不思議なことに涙は出なかったが、こんなに充実感に満たされた第九は滅多に聴けないと思う。
特に第二楽章のホルンは絶品。オンエアされたら是非聴いて下さい。
独唱者のレベルも非常に高い。とくにアルトの藤村さんの歌唱は最高。
また、たった2回の第九の公演の為だけに来日したバイエルン放送合唱団も素晴らしかった。
ブラーヴォ!ブラーヴォ!


◎ケフェレック ピアノリサイタル
<日時>2012年12月4日(火)19:00開演
<会場>王子ホール
<曲目>
■スカルラッティ:ソナタ より 5曲
  イ短調K54,ヘ短調K481,ニ長調K33,ロ短調K27,ニ長調K96 
■モーツァルト:ピアノソナタ第12番 へ長調 K332
■ラヴェル:鏡
■ドビュッシー:喜びの島
(アンコール)
■セヴラック/古いオルゴールが聞こえるとき
■モーツァルト/トルコ行進曲
■ドビュッシー/月の光
⇒我が最愛のピアニストであるケフェレック。春はラ・フォル・ジュルネ、夏は草津でも聴いたので、今回の王子ホールは3回目。
1年に3回もケフェレックのピアノが聴けるなんて、なんて幸せなことだろう。
前半は、意外なくらいテンペラメントに富んだ演奏だった。スカルラッティはそれが吉と出て、モーツァルトはやや粗く感じられた。
後半は草津と同じ選曲。まさに文句のつけようのない名演だ。
今聴ける最高のラヴェルじゃないだろうか。エレガントでいてかつ大胆、そしてファンタジーに溢れてる。
ドビュッシーの喜びの島も絶品。
毎年ケフェレックの素敵なピアノを、その素敵な笑顔とともに当たり前のように聴かせてもらっているが、この幸運に心から感謝しなければいけないとつくづく思う。


◎ツィメルマン ピアノリサイタル
<日時>2012年12月12日(水)19:00開演
<会場>すみだトリフォニーホール
<曲目>
■ドビュッシー/版画より
1.パゴダ 2.グラナダの夕べ 3.雨の庭
■ドビュッシー/前奏曲集第1巻より
2.帆 12.吟遊詩人 6.雪の上の足跡 8.亜麻色の髪の乙女 10.沈める寺 7.西風の見たもの
■シマノフスキ/3つの前奏曲(「9つの前奏曲 作品1」より)
■ショパン/ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58
⇒実演のツィメルマンの凄さは数年前の横浜のコンサートでよく知っている筈だったけど、この日も驚愕の演奏。
特に後半が凄い!
シマノフスキも彼の手にかかると第一級の音楽になる。
ショパンは第三楽章の後半あたりからフィナーレにかけて涙が止まらなかった。
ショパンのソナタのフィナーレを、これ程ドラマティックに表現したピアニストがいただろうか。
ツィメルマンのピアノは、音の芯が常に明確であるとともに響きが絶対に痩せない。
中低音の豊かさが、音楽の豊かさに結びついていると思う。
私と同学年のツィメルマン。今回も大きな刺激と勇気を私にくれた。
よし、私も頑張るぞ!


◎カンブルラン&読響
<日時>2012年12月22日(土)18:00開演
<会場>東京芸術劇場
<曲目>ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
<演奏>
■指揮:シルヴァン・カンブルラン
■ソプラノ=木下美穂子
■メゾ・ソプラノ=林美智子
■テノール=小原啓楼
■バリトン=与那城敬
■合唱:新国立劇場合唱団
⇒今年最後のコンサート。改修後の芸劇も初めてだし、読響を聴くのも1年半ぶり。
カンブルランの第九はとにかくテンポが速い。特にスケルツォの中間部あたりは記録的な速さだ。アダージョも速めのテンポだったが、音楽が実にいい感じで横に流れるので、とても心地よい。
終楽章は器楽のフガートで空中分解しそうになるが、寸前のところで踏みとどまり合唱へ。この合唱が圧倒的に素晴らしかった。
生命力に溢れた力強い歓喜の歌が、全てを救ってくれた。新国立劇場の合唱団って、こんなに凄かったのか。
「第九は合唱で決まる」とつくづく思い知らされる。
オケの団員が退場した後、合唱団が続いて退場する時に、客席から改めて大きな拍手が起こった。
やはり、この日の聴衆は同じ印象を持っていたんだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 秋に聴いたコンサート (そ... | トップ | 武満徹 フォリオス »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

コンサートの感想」カテゴリの最新記事