ETUDE

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シューベルト ピアノソナタ第13番 イ長調op120

2005-11-12 | CDの試聴記
今日ご紹介する1枚は、シューベルトのピアノソナタ第13番です。
私が社会人になって間もない頃、上司から外勤帰りに「シューベルトのピアノソナタでとても美しい曲があるけど、聴いたことある?」と突然聞かれたことがありました。
私はてっきり後期のソナタのことかと想像していたら、音楽好きの上司が紹介してくれたのは13番のソナタでした。当時、私は後期のソナタや即興曲集、さすらい人幻想曲といったピアノ曲が好きでよく聴いていましたが、この13番のソナタはまったく聴いたことがありませんでした。
そこで早速買ってきて聴いてみると、本当に抱きしめたくなるような美しい曲でした。

第1楽章冒頭のメロディのなんと柔らかくて爽やかなこと。まさに春のそよ風といった風情で、聴いた瞬間に心の中がほんのり温かくなってきます。シューベルトにしか絶対書けないメロディ。私の上司は、きっとこのフレーズを聴かせたかったんですね。
つづいて現われる第2主題も実にチャーミングで、このソナタの魅力はこの楽章で既に決まりという印象です。
第2楽章はアンダンテですが、ここでも口ずさみたくなるようなメロディが次々に現われ、聴く人を魅了します。
第3楽章は、一転して軽やかな舞曲を想わせるロンド風のソナタ。
人に幸せを与えてくれる素晴らしい曲だと思います。
こんな魅力的な曲を教えてくれた上司には、今も感謝しています。

そのとき聴いたのがこのリヒテル盤でした。(もちろん、そのときはLPです)

<曲目>
シューベルト
■ピアノソナタ 第13番イ長調 op120
■ピアノソナタ 第14番イ短調 op143
<演奏>
スヴャトスラフ リヒテル(ピアノ)
<録音>
1979年2月 東京におけるライブ録音

リヒテルの演奏は、ひとことで言うと誠実そのもの。
第1楽章冒頭の素敵なフレーズでも、大切に大切に音を作っていきます。
あの「テンペスト」や「さすらい人幻想曲」でみせたデモーニッシュな雰囲気は、まったくありません。
名演の誉れ高いバッハの平均律で聴かせてくれた雰囲気に、どこか似ている気がします。
第2楽章も、ほんとに美しく叙情的な演奏。また第3楽章では、これ以外ないという絶妙のテンポと軽やかなタッチに思わず聞き入ってしまいます。
少しこもった録音が残念ですが、演奏を楽しむうえで不足はありません。
この素敵な演奏が、日本公演で実現したということに感謝すべきでしょう。

 
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2 コメント

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シューベルとリヒテル (calaf)
2005-11-13 21:57:24
こんばんは。作品120(D664)ですが第2楽章はソナチネアルバムにも掲載されているのですが、リヒテルの演奏は非常に深いものがあります。



EMIのLPを聴いたのですが(さすらい人幻想曲がカップリング)少なくとも楽譜からはリヒテルの音は想像できません。



この曲は他のピアニストも多く聴いておりますが、これらは楽譜から想像できます。聴きようによってはルバートを多用したリヒテルの演奏は特殊に聞こえるかもしれませんが、それを意識させることなく、聴衆を深く音楽に引き込みます。



この点から、リヒテルは私にとって偉大なピアニストではなく、偉大な音楽家なのです。
リヒテルのこと (romani)
2005-11-13 23:35:38
calafさま

こんばんは。

素晴らしいコメントをいただき、ありがとうございます。リヒテルの場合ルバートは多分意識しないで行っているような気がします。ものすごい集中力で誠実に曲と向かい合っていく中で、普通のピアニストでは行わないような表現(それがともすればデモーニッシュにもなる)になるのではないでしょうか。

>リヒテルは私にとって偉大なピアニストではなく、偉大な音楽家なのです。

全く同感です。

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