ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ベーム&ウィーンフィルの『フィガロの結婚』(ザルツブルク音楽祭のライブ)

2007-01-14 | BS、CS、DVDの視聴記
早いもので、もう1月も半分が過ぎようとしています。
今週、来週と出張が続くので、自宅でじっくり音楽を聴けるのは今日だけかもしれないと思い、朝から、たまりに溜まったディスクの整理をしながら、いろいろな音楽を聴きました。

なかでも、時間を忘れて聴いた(観た)のが、ベームが1966年にザルツブルク音楽祭で上演したフィガロ。
こんな映像がよく残っていたものです。

ベームのフィガロのディスクは、1963年の来日ライブ盤を含めて私は3組持っていますが、いずれも、とびっきり魅力的な演奏です。
そもそも、私が初めて『フィガロの結婚』に接したのも、大学2年のときに教育テレビで放映していたベームの映像でした。
フィッシャー=ディスカウやヘルマン・プライ、キリ・テ・カナワ、フレーニといった芸達者の歌手達が、実に生き生きとしたモーツァルトを聴かせてくれました。
「何て楽しい世界!モーツァルトのオペラって、こんなに素敵なんだ」と、私にフィガロの魅力を教えてくれたのは、まさにベームなんです。

このDVDは、1966年のザルツブルク音楽祭のライブです。
白黒、モノラル録音ではありますが、鑑賞するうえで何ら支障はありません。
もう何もいうことはないくらい素晴らしいフィガロでした。
今から40年以上前に、こんなに素晴らしい上演がザルツブルクで行われていたんですね。

何といっても、私の永遠のアイドルであるマティスがケルビーノを歌っている・・・。
もうそれだけでも嬉しいのに、この日のマティスは、最高に魅力的なケルビーノを演じてくれています。
そして、ヴィクセル、ベリー、ワトスン、グリストといった主役たちが、いずれもまったく隙のない素晴らしい歌を聴かせてくれています。
とくに、伯爵夫人を歌ったワトスンは、恥ずかしながらほとんど知らない歌手だったのですが、気高くそして少し憂いをもった歌唱で、すっかり私を虜にしました。
容姿も含めて、まさに私の理想の伯爵夫人といっても過言ではありません。

そしてベームの作り出す音楽が、晩年のそれとは違い、とにかく躍動感に溢れています。
そのことが、このフィガロというオペラにおいて、どれだけ重要なことか・・・。
進行に合わせて、歌手にそっと寄り添い、またあるときは歌手をリードしながら、聴衆をどんどん核心に引き込んでいくその指揮ぶりは、最良の意味での「職人」です。
また、ウィーンフィルも、随所でその妙技を聴かせてくれます。
まったくこれ見よがしの表現はとらないのに、ベームの棒を信じて生み出されるその表情は、「あー、やっぱりウィーンフィル!」と実感させてくれます。

このDVDを堪能しながら、ふと昨年4月にウィーンで観たムーティのフィガロを思い出しました。
このときのムーティのフィガロが、私が今までみた中で最高のオペラ体験だったことは、以前ブログでも書いたとおりですが、実は、このDVDでみるベームのフィガロと印象が実によく似ているのです。
最大の共通点は、オーソドックスだけど音楽そのものが躍動感に溢れていること。そして、歌手にまったく穴がないこと。
第二幕のフィナーレ手前から音楽がどんどん勢いを増していくあたりの表情は、まさにムーティのときに感じたものと同じでした。

誤解を怖れずにいわせていただくと、多くの指揮者の中でも、ウィーンフィルが伝統を受け継ぐタイプのマエストロとして、最も信頼を寄せているのはムーティなのではないかしら。
なにか、そんな気がしてきました。

      


モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』全曲
<配役>
■アルマヴィーヴァ伯爵:イングヴァール・ヴィクセル
■伯爵夫人:クレア・ワトスン
■スザンナ:レリ・グリスト
■フィガロ:ヴァルター・ベリー
■ケルビーノ:エディト・マティス
ほか
<演奏>
カール・ベーム指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
<演出>
ギュンター・レンネルト
<録音>
1966年8月11日、ザルツブルク祝祭劇場小ホール「ライブ」

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2 コメント

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同感です (よし)
2007-01-15 08:20:38
FM放送で同じ演奏会だったのか定かでないのですが「恋とはどんなものかしら」を歌い終わった直後にものすごい拍手があったのを覚えています。確かに私も聞き惚れていました。マティスはすばらしいですね。
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>よし様 (romani)
2007-01-16 00:56:35
いつもありがとうございます。
マティスのこと、共感いただいて本当にうれしいです。
このDVDのケルビーノでも、すっかり聴衆を虜にしてしまったようで、盛大な拍手を受けていました。
こんなにズボン役が似合ったなんて・・・。
その後のマティスからは想像できません。
しかし、彼女は不世出のモーツァルト歌いだと、あらためて確信したしだいです。
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