東京に住むお友だちから美しいバースディ・カードを頂いた。ケーキのフレア部分が立体的に立ち上がるようになっていて、面白い。
思い返せばこういうものをいただくのはここ最近のことで、しかも全部彼女からだった。ようするに、私の文化圏には、こうしたもののやり取りがまったくなかったわけである。
彼女とリアルにお目にかかったのは一度しかないが、そのきっかけになった事実には忘れがたいものがある。
思い出すのは、はるばるフィラデルフィアから三日に一度ほどの割合で電話をくれたトーマスさん、正式にいうと、トーマス・グレゴリー・ソン(宋)さんのことだ。彼は、その名に片鱗がみられるように、朝鮮王朝の末裔として、戦中戦後を波乱のうちに生き、命からがらアメリカへたどり着き、フィラデルフィアを終の棲家とした。
そのトーマスさんと最後に言葉を交わしたのが電話ではあったが私だった。彼は2014年12月3日(日本時間)、私との電話中に倒れ、そのまま還らぬ人となったからだ。享年85歳。
その彼と、渡米中にフィラデルフィアで出会い、親交を結んでいたのが今回、バースディ・カードを贈ってくれた彼女であった。そんなこともあって、彼女の提唱でトーマスさんの葬儀に日本の有志からも献花をすることとなり、私がそれに応じることで彼女との友だちの絆が生まれた。
その後、私は当時所属していた同人誌にトーマスさんの小伝のような一文を書いた。いま私は、当時と違う同人誌に朝鮮について書いている。その折、頭に浮かぶのはトーマスさんのことであり、彼の波乱の生涯である。
そうしたこともあって、バースディ・カードを贈ってくれた彼女は私とトーマスさんを結ぶ鎹であるが、しかし、それをも超えて、いまは得がたい友だちだと思っている。
Nさん、ありがとう。今後とも、よろしくお願いいたします。
なお、トーマスさんに関する拙ブログでの記述は以下です。