昨日の続きですが、これのみお読みいただいても結構です。
またこれを先にお読みいただいて昨日のものをお読みいただいても自由です。
時差 六文銭太郎
(承前)
家を出たのは通常の時間だった。
ほんとうは向こうへ着いてから、いつのも仕事の前にしなければならないことがあったので少し早めに出なければならなかったのだが、つい、いつもの時間になったてしまったのだ。
まあ少しとばせばなんとかなるだろうと車を走らせた。
いつもの交差点が前方に見えた。直進の黄色が消え、右折の矢印が出て二、三台の車が右折をし始めたところだった。
「間に合うだろうか」
と自問した。その時、通常の仕事の前にするべきことがったのが頭をかすめた。
「間に合わせよう」
アクセルを踏んで加速し、突っ込んでいった。
交差点の少し手前で信号が黄色になり矢印が消えた。
少しひるんだが
「まだ間に合うはずだ」
という判断が勝り、さらに加速した。
ハンドルを右に切り続けると、タイヤが不気味にきしみ必死に路面を捉えようと甲高い悲鳴を上げた。
「よし、もう少しで曲がりきれる」
と安堵しかかったとき、視界にいち早く飛び出してきた大型トラックが迫ってきた。
「あっ」
とばかりに渾身の力でブレーキを踏んだ。
結果的にはそれが良くなかったのだろう。
車は完全にコントロールを失って、吸い込まれるように大型トラックの前部に接近していった。
「どこかで見た風景だ」
という思いが頭をかすめたが、思い出す間もなく、大型トラックのボディが視界全体に広がり、いままで経験をしたことのない衝撃が全身を貫いた。
一度痛打した頭部が不自然にねじ曲がった。
その時、確かに見たのだ。
大型トラックに遅れて一台の乗用車が止まっていて、その運転席で満面の恐怖と驚愕をたたえて自分のほうを見ているもうひとりの自分を。
そしてそれが最後に見たものであった。
またこれを先にお読みいただいて昨日のものをお読みいただいても自由です。
時差 六文銭太郎
(承前)
家を出たのは通常の時間だった。
ほんとうは向こうへ着いてから、いつのも仕事の前にしなければならないことがあったので少し早めに出なければならなかったのだが、つい、いつもの時間になったてしまったのだ。
まあ少しとばせばなんとかなるだろうと車を走らせた。
いつもの交差点が前方に見えた。直進の黄色が消え、右折の矢印が出て二、三台の車が右折をし始めたところだった。
「間に合うだろうか」
と自問した。その時、通常の仕事の前にするべきことがったのが頭をかすめた。
「間に合わせよう」
アクセルを踏んで加速し、突っ込んでいった。
交差点の少し手前で信号が黄色になり矢印が消えた。
少しひるんだが
「まだ間に合うはずだ」
という判断が勝り、さらに加速した。
ハンドルを右に切り続けると、タイヤが不気味にきしみ必死に路面を捉えようと甲高い悲鳴を上げた。
「よし、もう少しで曲がりきれる」
と安堵しかかったとき、視界にいち早く飛び出してきた大型トラックが迫ってきた。
「あっ」
とばかりに渾身の力でブレーキを踏んだ。
結果的にはそれが良くなかったのだろう。
車は完全にコントロールを失って、吸い込まれるように大型トラックの前部に接近していった。
「どこかで見た風景だ」
という思いが頭をかすめたが、思い出す間もなく、大型トラックのボディが視界全体に広がり、いままで経験をしたことのない衝撃が全身を貫いた。
一度痛打した頭部が不自然にねじ曲がった。
その時、確かに見たのだ。
大型トラックに遅れて一台の乗用車が止まっていて、その運転席で満面の恐怖と驚愕をたたえて自分のほうを見ているもうひとりの自分を。
そしてそれが最後に見たものであった。