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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

『泰山木の木の下で』と女優・山田 昌さん

2011-05-13 23:23:49 | アート
 体調がほぼ戻ったと勝手に解釈し、久々に名古屋に出かけました。ほぼ一ヶ月ぶりです。

 演劇と映画を見ました。
 映画を2本とか、時として3本という経験はありますが、演劇と映画という取り合わせははじめてです。
 昼食を昔の仲間達ととったあとの観劇でした。

     
          泰山木の花 一昨年、養老公園にて撮す

 『泰山木の木の下で』が演目で、名古屋を代表する演劇集団「劇座」の公演です。一説によると、主演の山田昌さんはこれをもって最後の主演作品にしたいとのことですが、演技を見た限りではまだまだお元気、今後も期待したいものです。

 脚本(1962年)は、数々の問題作をものにしてきた小山祐士によるもので、彼自身の故郷である広島の瀬戸内に繰り広げられる人間模様が展開されるのですが、その背後には、いずれも原爆の後遺があらわに、あるいは密やかにこびりついていて、それがなお、現在進行形の問題として描かれています。

 もはや喉元を過ぎたように日本人が忘れ去ってきた情景がそこにはあるのですが、一方、現実にはフクシマがなおも恐怖をまき散らしていて私たちに今一度原子力というものの脅威を突きつけている中、このお芝居はとてもタイムリーでした。しかしこれはこの現状に合わせて企画されたものでは全くなく、この稽古中に3・11を迎えたのだそうです。
 作品の選択は山田昌さんによるものだとのことです。

            
 
 芝居はことさら主題を声高に言い立てることを避け、ただ現実に起きてしまったこと、そして今なお進行し続けていることを提示してゆきます。原爆は外からもたらされたものというより、すでにして人々が抱え込んでしまったものとして描かれます。

 それは、人が恣意的に払いのけたり、逃亡したり出来ないものとして登場人物の中に刻み込まれてしまっていて、彼らはそれを生き続けるほかはないのです。ですからそこでは表層の糾弾が叫ばれることはありません。ただ起こってしまったことが突き付けられるのみです。

 ではどうしたらいいのでしょう?
 それは私たち一人ひとりに突き付けられた宿題ともいえます。
 そしてその応用問題がいま、フクシマという形で問われています。

 愛知県芸術劇場小ホールにて上演中。5月14日(土) 15日(日)14:00開演
 次回はその後見た映画のと関連し、音楽家の話を書きたいと思います。

コメント (1)
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