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『タイム』の「今年の顔』とマス・メディアの黄昏

2010-12-28 17:24:24 | 社会評論
 しばらく前からいわゆるマスメディアの黄昏や凋落のようなことについて書いてきましたが、それを象徴するような出来事がありました。ただし、日本ではなくアメリカでのことです。

 アメリカに「タイム」という週刊誌があり、年末にその年にもっとも注目された人を選び、その表紙にも載せるということが恒例化されていることをご存じの方は多いと思います。いわゆる「今年の人 Person of the Year」です。
 そしてそれには、掲載に先立ち、読者によると投票もおこなわれることになっています。

 今年の読者による投票でだんとつの一位は例のウィキリークスの創設者、ジュリアン・アサンジ氏でした。私もこれは当然の結果だろうと思います。
 ですから、全般的に今年はもうそれで決まりという雰囲気が濃厚でした。

             
                ジュリアン・アサンジ氏
 
 ところがです。ふたを開けてみたら結果は全く違うものでした。
 選ばれたのは、アメリカ最大のSNS(ソーシャルネットシステム 日本でいったらMixiのようなものに相当)、Facebookの創業者で、若干26歳のザッカーバーク氏でした。
 アメリカのネット事情に詳しい人はご存じかも知れませんが、おそらく多くの人には、Who ? といったところではないでしょうか。

 このひと、例によってアメリカンドリームの具現者として選ばれたようなのですが、先に述べた読者による投票順位では10位にしか過ぎませんでした。
 これには周辺でもブーイングが起きたようですが、編集部は「アサンジ氏の可能性もあったが、いろいろ論議の対象になりそうで・・・」という苦しい言い訳をしているとのことです。

 ようするに、国家の上層部と繋がり、大手企業から広告を貰っている週刊誌「タイム」というメディアにとっては、内部告発専門のウィキリークスのアサンジ氏を承認するわけにはゆかなかったというのが実情なのでしょう。

                
            「タイム」の表紙を飾ったザッカーバーク氏

 この事実は同時に、彼らマスメディアの限界を自ら告白しているにふさわしいといえます。ようするに国家や大手企業の不利益になる情報の隠蔽には荷担し、お許しの出たもののみを報道するというその姿勢です。
 マスメディアの黄昏と衰退を象徴する出来事という所以です。

 しかし、この結果には皮肉な面もあります。
 慎重にウィキリークスのアサンジ氏を避けたにもかかわらず、やはりネット関連を選ばざるを得なかったということです。ここにも既存のメディアの凋落を見ることが出来ます。
 
 もっとも、今回の受賞を揶揄した動画の中で、その作者はアサンジ氏の言葉としてこんなことをしゃべらせています。
 「僕は企業のプライベートな情報をみんなに無料で提供する悪者。ザッカーバーグはみんなのプライベートな情報を企業に有料で提供する、パーソン・オブ・ザ・イヤーだ」
 これも考えて見る必要のある言葉ですね。







 

コメント (4)
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