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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

滝と阿弥陀と東南アジアの娘たち

2010-09-26 01:20:59 | よしなしごと
 雑誌の取材の案内というか、お供というか、はたまた足手まといというかで、阿弥陀ヶ滝というところへ行ってきた。
 この滝を訪れるのははじめてではない。家族連れやそのほかで、確かこれで四度目である。そのうち一度は、この滝の下から釣り登り、かなりのイワナを釣り上げたことがある。もう何十年も前のことだ。
 
 今回の訪問も、前回から十年以上の歳月が経っている。
 この滝であるが、岐阜県の白鳥町から石徹白(いとしろ)へ向かう桧峠への途中、長良川の源流の一つ前谷にある。落差は約六十メートル、幅は約七メートルで、均整がとれた美しい滝である。

        

 写真の案内にあるように、「日本の滝百選」にも名を連ねている。阿弥陀ヶ滝という名称は例によって信仰や修行との関連があるのだが詳細は省略する。
 別名、長滝とも呼ばれるこの滝の名は、この前谷の下流の地区の地名にもなっている。

        
 
 滝への道のりは、車止めからおよそ三百メートルほど、少し勾配のある道を登らねばならない。私たちが登って行くと、上から賑やかな話し声がして数人の若い女性が降りてきた。はしゃいでいた言葉がよく聞き取れなかったのも道理で、彼女たちはやや浅黒い肌をした東南アジア系のひとたちであった。
 「こんにちは」と挨拶をすると、口々に「コンニチハ」「コニチハ」などと元気な返事があった。「まだ滝までは遠いですか」と尋ねてみると、「トオクナイヨ」、「タキキレイ、ガンバッテネ」などとそんなにたどたどしくない返事が口々に。私の年齢を見て、道のりに不安を感じているのではと思ったのか、盛んに激励してくれる。「ありがとう」と礼をいって別れた。

     
      滝の周りの岸壁 若いときはこのえぐれの中に踏み入ったこともある

 すれ違った彼女たちの声が賑やかに下って行く。きっといま会った私たちのことを話題にしているのだろう。途中、渓に並行している道のすぐ横の淵で二十センチ超のイワナがのんびり回遊しているのを見かけた。「しめた」とカメラを出してセットをしている間に、さすがは野生、ただならぬ気配を察したのか近くの岩に潜り込んだままもう出てこない。
 滝は予想していたよりスリムだったが、それはそれで美しい。滝壺の、待ち構える水と落ちてくる水とが交わる辺りが好きだ。「えっ、なんで?」と急な落差に驚きながら落ちてくる水に、先輩の水たちが「どうだ、ここのバンジージャンプは?」と問いかけ、やがてそれらが渾然一体になる。それが延々と続き、それを凝視していると引き込まれそうになる。

     
              引き込まれそうな滝壺

 滝壺の傍らには、この滝の名称ともなっている阿弥陀如来像が鎮座ましましている。先ほどの東南アジア系の女性やなどの訪問を受けるにつれ、「ほほう、これがグローバリズムというものか」と感じているに違いない。

     
                左上方に阿弥陀像が
 
 写真などを撮り終えて帰途につく。先ほどのイワナを見かけた淵には、やはり彼(彼女?)がいたが、今回は、私たちの気配を察して早々と岩陰へ非難してしまった。なお、前にイワナを釣り登ったといったが、現在は滝からかなり下流までが禁漁区になっている。
 
 水と岩と緑、竿を収めてからかなりの年月が経つが、やはり、こんな場所に来ると心躍るものがある。
 

コメント (3)
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