写真は、心ないものによって為されたブロンズ像の破壊の痕跡です。加藤邸の焼け跡とも重なる野蛮で粗野な行為の痕跡です。(名古屋の街角にて 8月下旬撮す)
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小泉様 私は8月16日付をもって、あなたへの最後のラブレターを書き終えたと思っていました。現実にあなたの政治生命は既に終了し、政財界の安倍詣でが雪崩を打って進行しているからです。
しかし、今ひとつ、お伝えすべきことが残されていましたので、未練がましくも筆を執った次第です。
問題は、例の加藤邸への放火事件と、それへのあなたの関与についてです。
もちろん私は、あなたが直接、加藤邸へ火を放つのを見たわけではありません。しかし、心象風景としてはどうしてもあなたが火を付けたように思えて仕方がないのです。
靖国正当化のアジテーターとしてのあなたの言動が、かの狂信者を焚きつけたという厳然たる事実は否定できないのですが、さらに詳細を見るならば、それを越えて、あなたが直接、火を放ったに等しい共通点を見いだすことが出来ます。
その一つは、あなたの問答無用という態度です。あなたの参拝以前の世論調査では、60%を越える人達が参拝に反対していました。あなたはその声に耳を傾けようとしなかったばかりか、それとの対話さえ拒み、その信念とやらを強行されました。この問答無用という態度こそ、かの狂信者の行動とパターンを同じくするものであることはいうまでもありません。
さらには、もうひとつ、あなたは、参拝の動機を「心の問題」だと強弁されます。「心の問題」なら何をしても構わないかといわんばかりにです。
あなたはその個人としての内面性を持っているかも知れまません。しかしそれは、内外の情勢を踏まえ、それに反対する国民の声や、近隣諸国への今後の外交上の諸問題などなどへの総理としての公の責任ある立場に優先させるべきものではありません。
あなたのかつての盟友、加藤氏も、きわめて常識的なその事実を指摘したに過ぎません。しかしあなたと、あなたと思いを同じくするかの狂信者は、「心の問題」を犯されたと考え、自らの「心の問題」を満たすべく、凶行に及んだのです。
もうひとつ、あなたが「心の問題」を強調される際、あなた以外の他者の「心の問題」はどうなるのでしょう。
あなたと、あなたと思いを同じくするかの狂信者は、参拝や放火によって自分の「心の問題」を満たされました。しかし、近隣諸国の人達の「心の問題」、それに苦々しい思いをしている国民の「心の問題」、家を焼かれた加藤氏の「心の問題」はどうなるのでしょう。
「心の問題」のためなら何ごとも許されるというあなたの強弁は、同時に、かの狂信者の凶行の動機でもあります。
さらにあなたには、ある種の状況証拠があります。
既に、8月16日の日記において、私は
>>これから出されるであろう貴殿のコメントが、既にしてよく分かります。
「どんな事情にしろ、言論を暴力で封じるのはよくない」という一般的で白々しいものでしょう。
と述べておきました。
あなたのコメントは、私の予測とほとんど一言一句変わらぬものでした。その意味では的中したのですが、問題はその時期です。
私はおそらく、瞬時にしてそうしたコメントが出されるものと信じていました。しかし実際には、それは事件から二週間も経過した後、しかも、記者からの質問に答えるという形でやっと為されたのでした。
この事実は、あなたがこの問題を実際には大したものとは考えていないこと、いや、そのコメントとは裏腹に、加藤邸は焼かれて然るべきだったと考えていらっしゃったことを示してはいないでしょうか。
「テロとの戦い」では、ブッシュとあんなに歩調を揃えていらっしゃるあなたが、足下のそれには全く無関心であり、今なお、そうしたテロへの適切な対応を何ら指示していないということは、あなた自身が、ある種のテロルには密かに荷担していらっしゃると考えざるを得ません。
以上のような状況証拠から、あなたはかの狂信者と同罪であること、あるいは少なくとも、かの狂信者の行為をとがめる立場にはないし、また実際に、とがめることを全くなさってこなかったことが明らかだと思います。
テロルに支えられ、テロルを容認した総理として、私はあなたのことを記憶致します。
*なお、あなたの同志のかの狂信者が、加藤氏の母上が留守である時を見計らって火を放ったのは「立派であった」という盗人たけだけしいとしかいいようのない言説すらあるようですが、それはあなたの賢明な指示のせいでしょうか。それとも事後的にそうした言説を流布させ、事態がたいしたことがないことを印象づけようとなさる作為なのでしょうか。