TVドラマのサウンドトラックCDも、ジャケットが主要キャストが顔を揃えた番宣ポスターほぼまんまの場合と、OP映像やタイトルロゴにイラストなどでアレンジした“カオナシ”タイプの場合があります。
アイドルドラマだから顔出しとか、大人のおしゃれな、あるいは知的なドラマだからイメージとかいう区別は、特にないみたい。CD店頭の視聴コーナーなどで探すときにはおなじみ出演者の顔が目印になって見つけやすい、売る側からすれば買ってもらいやすいという利点はありますが、レジへ持っていくときタイトルと顔ぶれによっては若干恥ずかしいこともあります。
←←左柱の月河愛聴シリーズのうち、『美しい罠』『愛のソレア』『金色の翼』は昼ドラのサントラですが、やっぱり『美罠』『金翼』はあからさまに甘い主役男女の2ショットで若干恥ずかしいものはあります(綺麗な合成ですけどね)。恥ずかしい恥ずかしくない以前に、ドラマ自体がベタなメロじゃなく、人間の尊厳とか“かけがえのないものとは何か?”など痛切な問いかけを謎解きのコロモにくるんだ“文芸”に近い作風だったので、番宣ポスターからもうひとひねりアレンジあってもよかったんじゃないかな。
『愛ソレ』のピカソ風な、表現主義風な黒地に赤×青×紫の女性の顔のイラストは、ドラマ本編やOP映像からはかけはなれていますが、逆に店頭で見つけたときのインパクトはありました。
99年の『ラビリンス』は全曲アストル・ピアソラで、フィーチャーされている楽器バンドネオンのアップに、本編のキイワードともなった“パピヨン”=モルフォ蝶のイメージショットで、色調が暗いのですが、ケース裏にはしっかり主役お2人(渡部篤郎さん桜井幸子さん)の顔アップが載っていて、店頭での識別しやすさとイメージ・主知性とを両立させた変化球デザイン。
映像はアップできませんでしたが、95年の『沙粧妙子 最後の事件』サントラも、ドラマのテーマのひとつである“プロファイリング”をイメージし、案件タイトル風のロゴを捺した図柄になっていて、浅野温子さん以下主役3人は、IDカードを模したシルエットのみの“顔出し”。これも技ありです。
そして最近入手したのが03年『共犯者』のサントラ。思いっきり顔アップ。しかもモノクロ画面にそこだけ天然色で血しぶきつき(怯)。三上博史さんも浅野温子さんも役柄に合わせてかなりテンパった目つきでカメラ目線で、これまたちょっとレジに持っていくのに勇気が要るかも。
内容は、『沙粧』や『ラビリンス』同様、“サスペンス・ホラー調ドラマのサントラ曲は単体で聴くとむしろ静かで癒し寄り”の公式に漏れず、夜、家族が寝静まった後のデスクワークのお供に、あるいは就眠前のスリープモード再生にぴったり。
ドラマで浅野さん扮する、殺人の時効を密かに待つ女・美咲と、三上さん扮する謎の男・マサトが、互いにある意味探り合いながら心の暗部を開襟して行く、ミステリ仕立てのダーク・ファンタジーとも言える展開にお似合いの曲調が揃いながら、なぜか恐怖や不安より“鎮静”や“癒し”を感じてしまうのは、描かれた暗部と聴く月河の暗部が音を通して“地続き”になっていくからかもしれない。
全20曲のセンターに位置する10.Sunny Afternoon の解放感、疲れた日の身体を受け止めるリクライニング・チェアーのような柔らかい揺らぎ感が、この曲をこの曲順に入れたセレクトとともに格別です。
初っ端から死体また死体、殺される人物のアタマ数の多いドラマだったけど、不思議に『沙粧』以上に陰惨さが少なかった。決して結ばれることのない、美咲とマサトのイビツながら純粋なラブストーリーとも読み解き得たからでしょう。
…ただ、夜、ひとりでデスクスタンドだけ点けた部屋でふとジャケに目が行くと……やっぱりちょっと怖いか(脆)。