イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

視聴者の夢は昼ひらく

2006-11-19 14:44:37 | テレビ番組

『美しい罠』の完全版DVDリリースが17日に正式に発表されました。第一部・第二部各前・後編、本編ディスク13枚に特典1枚で51,870円ナリ(レジの音チーン!)という、完全に耐久消費財レベルのお値段、デジタル時代の映像ソフト1タイトルとしてコレ普通なの?法外なの?という考察は次の機会に譲るとして、近来稀に見る良作連続ドラマ、もう一度観る機会、未見の人にも知ってもらうきっかけができたことをまずは喜んでおきましょう。

こうなると夢よもう一度ではありませんが、昨年4~6月に同枠で放送された『危険な関係』の同時(ズレたっていいんですこの際)DVD化を訴えないわけにはいきません。放送時期が『美しい罠』に先んじること一年三ヶ月、製作スタッフはほぼ同じで、同作の母胎作、プロトタイプとも言える作品です。

経済的苦境にあるヒロインがふとしたことから富豪に見そめられセレブ夫人に…という古今東西婦女子憧れのシンデレラ物語を話の一方の軸にしつつ、相愛の男女がみずから敵対の道を選ぶ緊張感と、ゲームの名のもとに知略で競うスリル、互いに本心を見せそうで見せない、あるいは見せることができない屈折したすれ違いの切迫感で全65話のテンションを保たせ切り、“健気なヒロインに次々不幸が襲いかかる”式の暗鬱で古色蒼然なドロドロドラマが多かった同枠のイメージを一新させて、翌年の『美しい罠』へのレールを引きました。

主人公を従来型のまじめな努力家優等生ではなく、通常作ならカタキ役やいじめ役がやるような、人を陥れたり誘惑したりの背徳の男女に設定したことなど、制作側もどこまで視聴者に受け容れられるか半信半疑の滑り出しだったようですが、リアルタイムの視聴率より、放送終盤~最終回後の反響が尻上がりで、、終了後一ヵ月半を経た8月中旬になって、プロデューサーから公式サイトに異例の「DVD化実現へ力が足りずすみません」メッセージが掲載されたほど。

『危険な~』では話の大前提が、初恋の両想いカップルであるという点で『美罠』と大きく異なるほかは、ヒロインが“手に職”の苦労人であるのに対し恋敵は乳母日傘のお嬢さまなこと、主人公男女と対照的な“頭脳なし本能系”若いカップルの恋愛がからむこと、浮き世離れした風情の年上女性がヒロインの助言者役になること、富豪のヒロインへの思いは意外に純愛であることなど、結末も含め明らかなストーリー・構成上の類似点が両作品にはいくつもありますが、いまにして思えば『危険な~』の反響を踏まえ、人気をかち得た点をさらにパワーアップさせた上で、冒険作だったがゆえの反省点、消化不良点をも忌憚なく挙げつらい、「ここはこうした方がもっと良かった」と一つ一つ潰していったからこその『美罠』のヒット、と思えるふしも多々あります。

「ヒロインの相手役は上半身脱ぎサービスショットに耐えるガタイは不可欠として、極端には好悪の分かれない無難系美男子がいいね」「演技力も無いよりあるに越したことはないしね」「ワケ知り年上女性のポジションには色恋からめないほうがいいかな」「男には興味ない、むしろ同性が好きくらいでちょうどいいかも」「前作はヒロインがフラワーデザイナーだったけど、看護師じゃお仕事場面のヴィジュアルがナース服ぐらいしかないし地味だな」「その分年上女性の衣装とヘアで盛り返しましょ」「相手役に見映えのする趣味持たせるとか」「前作花なら、今度は星でどう?」「いいねそれ!」…こんなやりとりが企画会議で飛び交ったかもしれません。

まあ冗談はおいといて、以前にも書いたように、『美しい罠』は、制作側の計算ずくでは出ないなと思える味、巧まざる細部や空気感が魅力になったドラマではあります。

しかし、作る前に計算し、予測し、考えに考え抜いた末でなければ、いいモノは絶対に作れないし誕生もしません。BS、ハイビジョン、地デジ、ワンセグと、放送技術だけはまっしぐらに先に進んでいるのに、肝心のコンテンツたるドラマのネタ切れ、不作が指摘される昨今だからこそ、視聴者に愛され記憶に残るドラマはどうやって作るのか?という成功例の、決して平坦でも安直でもない道程を形に残すために、『危険な関係』も『美しい罠』と合わせて再視聴できるよう、姉妹DVDに!ともう一度声を大にしてみたいところです。

コメント (2)
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