兄が住んでいた縁で5歳の時初めて訪れたロンドン。そこに素晴らしい歴史的な絵やデジタルアートなどの幅広い芸術作品の数々を展示する美術館や博物館、リスなどの動物や多くの鳥が住むほどに大きな公園が、あの大都市ロンドンにいくつもあることに子供ながらも感動した。それ以来、何度もロンドンを訪れるようになった。そして大学生になった今、ロンドンの文化や自然になぜここまで強く自分を惹きつける理由があるのかに気付いた。住民たちの街との関わりかただ。美術館のワークショップには子供から大人までが参加し、路上のアーティストのパフォーマンスには常に人だかり、大きな公園では年齢に関係なくスポーツを楽しみ、自転車で通勤する人と街を散歩する人たちが挨拶を交わし、昼食を食べながら様々な議論をかわしている。これらの光景は誰もが自分が住む街をいかに愛し、いかに有意義に活用し、この環境をいかに子供たちへ伝えていくかという意識、つまり自分たちこそが街づくりの担い手であるという精神が自然と根付いているからだ。これこそが、私がロンドンという町に惹かれ何度も何度もアプローチするなかでたどり着いた、理想の街づくりの根底を成す理論である。その理論の実践の必要性を感じた私は、少しでも当事者意識を持った街づくりに関わろうと地元の文化祭への参加を決意した。毎回絵画や生け花が出品されることを利用し、気に入った作品の出展者にワークショップの開催を持ちかけ、実際に作品を購入するオークションなども計画して、より多くの住民たちにアートに触れる機会を作ろうとした。残念ながらコロナウイルスの影響で実行には至らなかったが、院を卒業するまでにこの計画をさらにブラッシュアップして改めて実行し、自分のアイデアを生かした街づくりを実際に行うことで、より多くの人々が自分の街を自然に楽しめる、精神的な意味でのインフラを構築したいと考えている。