明日から期末試験の正念場・・・と思いきや、昨日と今日、二日にわたり塾内を突風が吹きまくる。
ある塾生がお腹を押さえて外へ出ていった姿は、生徒を教えていた俺の視界をよぎった。
「だいじょうぶか」
声をかけたが返事はなかった。
それから何人かの生徒の質問がやんだとき、机を見ると荷物がない。
どうやら帰ったようだった。
しばらくしてお母さんから電話、「お腹の痛みを訴える様子が尋常じゃないので救急車で三重中央病院に連れてきたとこなんです」
頭に浮かんだのは盲腸・・・となると入院は一週間ほど。
今週は期末、午後から生徒たちがやって来る。
となると午前中、・・・3時間ほど教えることができるなと皮算用をめぐらす。
なにしろ受験まで60日を切っているのだ。
ところが日付が変わることになり再び連絡。
「もう~、便秘ですって」
今日はとある塾生の姿がふいっと消えた。
ファミマにでも行っているのか。
生徒達の質問が雲霞のごとく押し寄せる。
そんな時に塾生のお母さんから電話、「息子はいるでしょうか」
机を見る・・・いない。
気配はさっきのまま。
それからが大変だった。
なにしろ、コンビニに行ってもすぐに戻ってくるタイプで、塾の近くの体育館で遊ぶという選択肢、その生徒には当てはまらない。
お母さんが駆けつけ、続いてお父さんが駆けつける。
ファミマだけでなく近くのコンビニは皆まわったそうだ。
しかし、いない・・・。
午後4時だ、冬といってもまだ明るい。
まさか・・・でも・・・いろんな思いが交錯する。
遂に警察へ連絡。
当然、犯罪にまきこまれた可能性を踏まえたうえでだ。
とある父兄の話だと、久居界隈でやたらパトカーを見たとのこと。
そりゃそうだろう。
しかし午後5時30分、当の塾生が現れる。
いたって普通、・・・おいおいおい。
「どこへ行ってたんや!」
俺の剣幕にもキョトンとした顔。
「サンバレーまで行ってきました」
サンバレー!・・・往復8kmだ。
汗をかき、疲れた様子で手袋を脱いでいる姿を眺める・・・自転車がない以上は走って往復?
呆れちまい、先ほどまでの怒りはいつしか霧散しちまう。
「それよりは電話だ、すぐ両親に電話しろ!」
そして俺は津南警察へ電話。
平身低頭で謝るものの、電話の向こうから「中山先生ですか」
「ええ」
「いや、お元気そうで」
なんと、ウチの昔の塾生の親父さんだ。
慌しい時間が過ぎ去った後、再び真ん中の部屋で質問のさばきが始まる。
それも一息ついた頃、机の上のピエンローの鍋を見やる。
ピエンローは各自でつくるダシがポイント。
ここ最近出番がなかったナンプラーが冷蔵庫にあったのを思い出す。
器に塩胡椒、さらに七味唐辛子、そしてナンプラー・・・さて、どんな味わいを醸し出すのかと鍋を開ける。
!!! ない、ピエンローがない!
誰が食べた?
新たなる疑惑の誕生である。
虚脱感が抜けないままで真ん中の部屋で籠城。
生徒の質問に対する答え方にいつもの切れ味がない。
とにかく明日から東と南郊中で期末試験が始まる。
クリックのほう、何卒よろしく。
ほんま、よろしく。