弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【上告らしいので】フランク三浦事件【おさらい】

2016年05月24日 09時11分08秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
今日も真夏日の予想、湘南地方です。
…5月なのに。

さて、今日はこんな記事から。

(朝日新聞デジタルより引用)
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フランク・ミュラー側が上告 「フランク三浦」商標訴訟
2016年5月23日18時50分

スイスの高級時計「フランク・ミュラー」のパロディー商品名「フランク三浦」を
商標登録できるかが争われた訴訟で、フランク・ミュラーの商標権管理会社
(英領マン島)は23日、「三浦」側の勝訴とした知財高裁判決を不服とし、最高裁に上告した。

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(引用終わり)

当事者が在外者なので30日の付加期間があるもんだから、
忘れたころに上訴なのね。。

改めて判決文を読み返してみた。

幾分柔らかくポイント解説すると、以下の通り。

(1)類否判断について
 [規範]
 3要素=外観・称呼・観念 を踏まえつつ取引の実情も踏まえて総合判断。
 ※従来から踏襲されている規範
 [本事案]
 称呼(読み)は類似。でも外観・観念は明らかに異なる。
 そして「取引の実情」として、
 「(本件の)指定商品において、専ら商標の称呼のみによって商標を識別し、
  商品の出所が判別される実情があることを認めるに足りる証拠はない。」
 とし、商標非類似と結論。

(2)「ミュラー」と「三浦」
 “査定時に「フランク・ミュラー」は周知になっていた”との主張について:
  ➡「三浦」という明らかに日本と関連を示す語が用いられている
   外国の高級ブランドとは観念が大きく異なる。
   ★被告(ミュラー側)が自身の業務において「日本人の姓又は地名に関連する語」
    を含む商標を用いたり広告宣伝に使用していたことを裏付ける証拠もない。

(3)本件が「無効審判」つまり登録の妥当性を争う訴訟である点
 “原告(三浦側)は被告商品と外観が酷似した商品を販売していた”との主張について:
  ➡そうした事実はいずれも“登録査定時よりも後の原告商品の形態”であり、
   登録査定時以後の事情。
   ★仮にこの事情を考慮するとしても、
    ・観念・外観で大きく相違
    ・価格帯が全く異なり、混同するとは到底考えられない

(4)模倣する意図と類否について:
  ➡出願時に、模倣する意図があったとしても、そのことが直ちに類否判断に影響を
   及ぼすものではない。

(5)「フリーライド(ただ乗り)」と「ダイリューション(希釈化)」について(15号該当性の判断)
  15号の規定は周知/著名表示へのただ乗り及び当該表示の希釈化を防止し、
  商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、
  需要者の利益を保護することを目的とするものではあるものの、
  ただ乗りと評価されるような商標の登録を“一般的に禁止する”根拠となるものではない。

(6)「パロディ」について:
  “パロディは、真似された側の者が真似をされることについて異論はないという前提
   のもとに成り立っている”ところ、被告は「異論あり」。パロディが成立していない。
   との主張について:
  ➡そもそも15号該当性とパロディ該当性は無関係。
   真似される側の承諾云々なる規範もない。
   抽象的に商標の出所の不鮮明化や希釈化が生じると主張するのみでは
   15号該当の根拠たりえない。

以下所感。

① 類否に関しては特に異存はないところ。
② 規制される「フリーライド」と許される「パロディ」の線引きが明確にされているわけでは、ない。
③ 判決文全体から感じたこととしては、
 ・被告側が各要件該当性についてより緻密に立証していたら、結論変わったかもなぁ
  (15号について)
 ・(5)(6)の裁判所判断は、ちょっと詭弁じゃないかな、と。
  15号の制度目的は認めつつ、一般則ではない、だから本件は15号該当しない、は、
  ステップが一つ飛んでいるように思う。
  15号の存在理由が“類否とは無関係に、著名商標と広義の混同のおそれある商標を登録させない”
  という点にあるのであれば、「抽象的」な混同可能性の立証をもって「おそれ」を認定しても
  よいように思う。


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