弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【商標】マックですか、それともマクドですか…? trademark bullying(商標いじめ)の話

2017年04月18日 08時37分51秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
朝のうちに嵐は去り、今は少し青空まで見える湘南地方です。
…はい、土砂降りの中出勤しましたよ。。。

さて、今日はこんなニュース
ここんとこヨーロッパかぶれ(笑)

(財経新聞より引用)
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アイルランドのファーストフード、「Big Mac」の商標取り消し求める

アイルランドのファーストフードチェーン Supermac'sがEU知的財産庁(EUIPO)に対し、米McDonald'sがEUで登録している商標「Big Mac」の取り消しを求めているそうだ。

昨年、Supermac'sがアイルランド以外でもチェーン展開するため、欧州共同体商標意匠庁(OHIM、現EUIPO)に商標を出願したところ、混乱を招くとするMcDonald'sの異議申し立てにより却下されたことが発端となっているようだ。
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(引用終わり)

上記記事(リンクご参照)の元であるThe Irish Timesの記事も読んでみた。
trademark bullying (商標による“いじめ”)なんていう概念があるのかね…。

Sumermac'sのPat McDonagh氏の主張は以下の通り。
・マクドナルドは、他社の参入防止のために、自社とは関係のない"Mc"が頭につく商標(例えばMcKids,McHome,McWallet,McInternet, McNoodle, McMor)をことごとく登録している。
・それらの登録は実際に事業を行っていない範囲まで及んでいる。
・あまつさえ"McWorld"なる語まで登録している。Mcが付いたら全部自分たちのものにしようとしている。

この辺り、昨日のヴィクトリアベッカムの記事とも多少関連するけど、
使用主義と登録主義の狭間問題だよなぁ、と思います。

やわらかく言えば、
使用の事実自体を捉えて保護する、使用してなければ登録=保護しない、というのが使用主義
今んとこ使用してなくても先に登録=保護を与える、というのが登録主義
商標の保護対象が使用により生じた「業務上の信用」である、という原則に則れば、
使用主義を貫徹するのが道理。
しかし実際のビジネスでは、マークを決めて、プロモーションを打って、その後商品/サービスを提供する。
恙なく事業を進めるために前もって登録をしたいというニーズもある。
だから登録主義にも実際的な合理性がある。

つまりそれぞれに「理」はあって、制度としては二者択一ではなく、
国や地域によってそれぞれが混ぜ合わさりつつ、各々のウエイトが異なっている。

日本は登録主義を基調にしつつ使用主義的な修正を図る、という建付け。
アメリカはベースに使用主義があって登録は交通整理というか現状追認的な位置づけ。
はてヨーロッパってどっち寄りだっけ…?と思って調べてみるも判然としない。
そもそも無審査登録な国(フランスとか。絶対的登録要件しか見ない。)もあったりなので、
登録があることそれ自体に強い意味があるようには思われないけどなぁ。。

個人的には、登録主義はいわば“ビジネスの便宜”のためのものなので、
制度の活用のレベルを超えた“濫用”にあたるのならば修正が図られるべきではないかとは思う。
本件でいけば、マクドナルドが種々の"Mc"商標を実際に使用しているならばべつに「いじめ」でもなんでもなく正当な使用だし、
実際には使用していないのならば不使用取消で粛々と対処すればよい話ではないか、と。

本筋論としては、異議認容された自社商標の事案で正面から争うべきなのでは?
と思ったりするわけです。



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