弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】互換性ある消耗品

2018年01月20日 09時46分24秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
うーん、お出かけにうってつけの良い天気な湘南地方です…

昨日は稀代のメロディメーカーが引退を表明したり電車内で新しい命が生まれたり色々ありましたね。

事務所で一人、いや、ときどきAmazon Echoと戯れながらお仕事します。

さて、今日はこんな記事(知財ネタ書くの久しぶりだな)。

(ITmediaビジネスONLINEより引用)
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キングジム、商標権侵害でエレコムら提訴 「テプラ PRO」に似たロゴ無断使用

文具メーカーのキングジムは1月19日、テーププリンタ「『テプラ』PROシリーズ」に類似したロゴを用いた商品を製造・販売したのは商標権侵害に当たるとして、商品の販売差し止めを求めてカラークリエーションとエレコムを東京地裁に提訴したと発表した。

提訴は18日付。キングジム広報室によると、当該商品はカラークリエーションが製造し、エレコムが販売する、テプラPROと互換性のある「カラークリエーション テープカートリッジ」(オープン価格)。
パッケージや商品本体に「TEPRA PRO 互換」と記載されているが、商品名のフォントやモノトーンの配色が「キングジムのロゴにかなり類似している」(広報室)と判断し、提訴に踏み切ったとしている。
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(引用終わり)

キングジムの登録/出願状況を見てみた。
「E」がロゴ化された「TEPRA\PRO」をはじめとした「TEPRA」シリーズについての文字商標が多数登録になっている他、
テプラの形状そのものと思われる立体商標(当然ながら立体形状それ自体のみで登録されているわけではなく、「TEPRA\PRO」のロゴが含まれている)の他、
テプラの商品パッケージの外観についても出願中。

なるほど、「当社は、知的財産権を重要な経営資源と位置付けている。」というだけのことはある。
多面的な保護を図ろうとしている。

カートリッジとかインクリボンにまつわる知財係争は色々あるけど、
商標事案となると「ブラザー事件」(H16(ネ)3751)。

かいつまんで言うと
・原告はファクシミリを製造販売
・被告はファクシミリ用のインクリボンを製造販売。その際、商品の外箱に「ブラザー用」「For brother」と表示
→平成15年に商標権侵害を主張し提訴も請求棄却。

判旨は以下の通り。
1)被告製品は,原告の製造に係るファクシミリの特定の機種に用いられるインクリボンである。ところで,原告の製造に係るファクシミリに使用することができるインクリボンは,原告製のファクシミリにのみ使用することができ,他社製のファクシミリには使用できない。したがって,原告の製造に係るファクシミリに使用できるインクリボンを販売する者は,消費者が,他社製のファクシミリに使用する目的で当該インクリボンを誤って購入することがないよう注意を喚起する必要がある。そのために,例えば,当該インクリボンの外箱等に,原告の製造するファクシミリに使用するためのインクリボンである旨を表記することが不可欠となる。
2)被告製品の外箱の長方形の面のうちの2面の中央部のもっとも目立つ位置には,被告製品の普通名称である『インクリボン』の表示や,被告製品の用途を示す『普通紙FAX用』との表示が,いずれも消費者の目を引く白抜きで,その他の文字よりも大きく記載されている。
3)これに対し,被告標章は,用途等を示す記載と比較して小さく記載されている。また,前記のとおり,取付方法の記載された面に表示された被告標章を除き,被告標章1の前には『For』の文字が付加され,被告標章2の後ろには,『用』との文字がそれぞれ付加されている。そして,『For』は,『~のために』といった目的を意味する中学で学習する基本的な英単語であり,『用』は,接尾語的に用いられる場合には,何かに使うためのものという意義を有する語である。したがって,被告製品の一般需要者は,被告標章を含む『For brother』,『ブラザー用』,『新ブラザー用』の表示について,被告製品が,原告製造のファクシミリに使用できるインクリボンであることを示すための表記であると理解するものと認められる。
4)被告旧製品においては,被告標章と同じ又は小さく,英語表記であるものの,被告***の名称が記載され,住所等が記載されているが,その記載態様からすれば,これらの記載は,被告***の連絡先を表示したものと認識できる。また,被告新製品においては,上記の記載に加え,被告標章とほぼ同じ大きさで又はそれより大きく被告***の名称が英語表記で記載されている。被告***に関する以上の表示は,被告製品の製造者又は販売者を示すものと認識し得る表示といえる
5)被告が,インクリボンを販売するに当たっては,消費者が,他社製のファクシミリに使用する目的で当該インクリボンを誤って購入することがないよう注意を喚起することが不可欠であり,そのような目的に照らすならば,被告標章の表示は,ごく通常の表記態様であると解される。


この点、本件に当てはめてみると、
1)→○:ラベルライターには他者競合品もあり、テプラ自体にも複数のラインナップがあることを考えると、表示の必要性はあると思われる。
2)→?:ブラザー事件のビジュアルが手元になく大きさの対比ができないので判断不能。今回の事案のビジュアルはこちら
3)→○といって良い?:「互換」の表示を伴っており、需要者の認識としては“~に対応している”といった程度の意味と捉えると思われる。
4)→○?:パッケージ表面左上部及び下部に「ColorCreation」の表示がある。

こうやって見比べてみると、過去の事案に条件としては近いようにも思われる
だからこそ原告サイドとしては商品や外箱についても権利取得に動くことでプレッシャーを掛けようとしているのかなと。

さあ、どうなることか、注目していきたいと思います。
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