弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】「うどんタクシー」

2020年07月14日 08時30分43秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
梅雨真っ只中なお天気の@湘南地方です。
しとしとしとしと。。。。


さて、今日はこんな記事

(朝日新聞デジタルより引用)※着色は当職
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「うどんタクシー」やめて 商標権侵害でバス会社が提訴

貸し切りタクシーで香川県の讃岐うどん店を案内するサービスで、「うどんタクシー」の名前を使われて商標権を侵害されたとして、同県琴平町の「琴平バス」が高松市の「空港タクシー」を相手取り、商標の使用禁止などを求める訴訟を高松地裁に起こした。

琴平バスは今年1月、うどんタクシーという名前を使わないよう文書で求めたが、空港タクシーは「商標の効力は及ばない」として使用を続ける旨の回答をしたという。空港タクシーは取材に対し「係争中なので答えられない」としている。
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(引用終わり)

<権利>
琴平バスの登録商標の情報はこちら

<使用状況>
琴平バスの「うどんタクシー」【公式】サイトはこちら
空港タクシーの「うどんタクシー案内」サイトはこちら

なるほど、記事にもあるように、琴平バスの「うどんタクシー」は行灯がうどんの形になっている。
うどんの丼のうえにうどんの麺で「うどん」の文字がつづられている(ややこしいな)

サービス内容としては、どちらもベースとしては近いところがあって、
タクシーでうどん巡りをするにあたってドライバーが有名店や隠れた名店を案内する、というもの。
琴平バスの方は、“うどんタクシードライバー”になるための試験がある、という点が違いかな。
筆記・実地・手打ち という3つの難関(…手打ち、必要か??)

さてさて、記事中赤で着色した箇所=「商標の効力は及ばない」との主張。
当然中身は見ていないので推測の範疇だが、下記規定(3号、6号のいずれか)に基づくものと思われる。

(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 略
二 略
三 当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
四 略
五 略
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
(2項以下略)


「うどん」は饂飩だし、「タクシー」は指定役務との関係で普通名称ないし役務の質そのままだから、
「うどんタクシー」全体で(上記<使用状況>で示したような)タクシーでうどん店を巡るサービスを普通に表すもの。
したがって“当該指定役務の質を普通に用いられる方法で表示する”に過ぎない。と。

ただ、「うどんタクシー」の語がそもそも上記サービスを直接的に感得させるというのはちょっと無理があるような。
それにざーっと検索する限り、「うどんタクシー」で検索したらほぼ全て琴平バスのサービスに関する記事ばかりなのだよね。
これが香川県内の各タクシー業者がこぞって同じように「うどんタクシー」を使用していて権利者も看過している状態だったならばまだしも、
どうもそうでもない、ように見える。
別に同様のサービスを『別のサービス名で』提供する限りにおいては何ら問題ないのだから、
ちょっと知恵を絞ってよりよいネーミングを目指せば良いのに、と思います。

はてさて、落着はどうなるのか。
推移を見守るとします。
コメント
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