弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】羽織模様のその裏で

2020年07月20日 08時49分13秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
今日は暑くなりそうなことを予感させる空模様な、@湘南地方です。

さて、今日はこんな記事

(livedoorNEWSより引用)
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「鬼滅の刃」キャラの羽織柄が商標出願、ファン困惑「伝統的な着物の柄なのに…」

人気作品『鬼滅の刃』のキャラクターが着ている羽織の柄が、商標出願されていたことがわかり、ネット上で困惑が広がっている。
出願されたのは、竈門炭治郎(かまどたんじろう)、竈門禰豆子(かまどねずこ)、我妻善逸(あがつまぜんいつ)、冨岡義勇(とみおかぎゆう)、胡蝶しのぶ(こちょうしのぶ)、煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)ら、6人のキャラクターが着ている羽織の柄だ。
いずれも、版元の集英社が6月24日、商標出願していた。

(以下略)
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(引用終わり)

J-Platpatで検索しても、整理標準化データとしてはまだヒットしません。
なので各商標図柄はこちらのサイトを参照してください。

一大ブームを引き起こした「鬼滅の刃」。
当方もご多分に漏れず、stayhome中にアニメを観てしまいました。
単行本ベースで追いかけているけど、来月で最終巻、なのかな?
かつてのジャンプにありがちな引き延ばしが無く、ストーリーとして奇をてらうところもなく、
読み心地の良い作品。

とまあ、それはさておき。

「商標って『マーク』じゃないの?羽織の柄なんて『マーク』じゃないのに登録になるの?」
と思う向きも少なからずいると思います。

この点、商標法審査基準(第3条第1項第6号=要は“誰の商品/サービスか分からない商標は独占させないよ、という規定”)
では「地模様」について以下の通り規定されています。

7.地模様からなる商標について
商標が、模様的に連続反復する図形等により構成されているため、単なる地模様として認識される場合には、本号に該当すると判断する。
ただし、地模様と認識される場合であっても、その構成において特徴的な形態が見いだされる等の事情があれば、本号の判断において考慮する。


「本号に該当する」=登録を受けることができない、ということ。
つまり“単なる”地模様だと、登録を受けることができない。

その一方で、以下のような登録例もあります。

①登録第6014007号

②登録第5515006号

③登録第5394671号

つまり一見「地模様」と思しき外観であっても、
特徴的な図形と認識される場合
(=①。“T型形状をモチーフとした図形を並べて『長方形』を構成した特徴的図形”と認定。この認定で登録された場合に、第三者が「地模様」として使用している場合に効力が及ぶのかは疑問)や、
特定の出所(伊勢丹とかポールスチュアートとか)に係る商品/サービスであると認識される場合(②、③)は
「“単なる”地模様」でなく登録される余地があると言えます。
もっとも、上記はいずれも拒絶査定不服審判を経て登録に至っているものです。
原則的な判断としてはやはり「地模様」は独占性がない、というところからスタートするとみてよいです。

そうとすると、今回の羽織模様の出願も炭治郎、禰豆子、善逸(←個人的に善逸のキャラクターは大好き。どうでもよいけど)の柄は
登録を受けるのは厳しそう。
集英社自身の出所表示として広く認識されているわけでもないですしね。
冨岡さん、しのぶさん、煉獄さんの柄は、地模様というよりは全体で一つの図形、マークと認識されると思われるので登録の可能性がありそう。

ちなみに。
「鬼滅の刃」文字商標については既に登録済(登録第6260437号)。
鬼滅関連の語として「柱」が出願中(出願日:6/16、商願2020-74366)。
今のところ「呼吸」とか「鬼殺隊」とかは出願されていないようです。
顧客吸引力の高いコンテンツですもんね。秋には新作映画も予定されているし。
第三者による登録可能性を排除するための出願、という意味もあり、自然な出願行動ではないかな、と思います。

コメント
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