弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【デジタル】改正著作権法 part8【アーカイブ化?】

2012年10月10日 23時08分50秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
さてさて、懲りずに著作権法改正の話題。

色々問題提起してきた今回の改正だけれど、
悪いことばかりじゃない(そりゃ改「正」なんだから、良い方に向かうのが当然あるべき姿なわけで)。

今日は、「図書館における複製」の話。


国会図書館って行ったこと、あります?
私はちょこちょこ活用していた。
どれだけインターネットが便利な時代だといっても、「時点」の証明をするのは不向き。

例えば、とある技術Xが1995年4月頃には公知になっていた、
ということを示す「非特許文献」を検索する場合、とか
(※こっちはあまり少ない。基本的に公報検索の方が有益な結果をもたらす場合が多い。
  あるとすると、当時の専門誌のピックアップとか、「公知」というよりは「周知」の資料積み重ね
  を目的とした場合が多いかな。)

或いは、他人の登録商標の無効理由ロジックを構築するために、
当該商標の出願日前に登録商標にあたる言葉が品質表示的に使用されていた事実を示す刊行物の検索、とか。
或いは逆に、商標の周知性を裏付けるための使用実績の集積、とか。
(※こっちの方が多いかも。)

なにせ世の中の刊行物はここに集本されるわけで。
閲覧するのにやや手間がかかるけど、それに見合った結果も得られる。


そんな国会図書館が、著作権法上許されている“作業”に関する規定が、下記。
(下線部が今回改正箇所)

第31条(図書館等における複製
(第1項省略)

2  前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷若しくは汚損を避けるために当該原本に代えて公衆の利用に供するため、又は絶版等資料に係る著作物を次項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項において同じ。)に用いるため、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。
 
3 国立国会図書館は、絶版等資料に係る著作物について、図書館等において公衆に提示することを目的とする場合には、前項の規定により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができる。この場合において、当該図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し、当該複製物を一人につき一部提供することができる。



改正前から、紙媒体のデジタル化が認められていたところ、今回さらに「絶版等資料に係る著作物」については、図書館間ネットワークでのデータ授受のためにデジタル化が認められ、かつ当該デジタルデータを受けた図書館は、利用者に対し複製物を提供できることとなった。

もちろん、電子書籍事業者の民業圧迫にならないよう考慮はされているものの、
あえて大げさに言えば、人類の英知のデジタルアーカイブ化、とでもいうべきものだろうか。
これは、文化の発展への貢献度合いでいえば、重要な改正、といっていいんじゃなかろうか?
コメント
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