らいちゃんの家庭菜園日記

家庭菜園、家庭果樹栽培及び雑学日記

ネジバナと百人一首 

2023-04-26 | 雑学

「ネジバナ」という野草があります。
東アジア原産の多年草で、日本では北海道〜九州にかけて広く分布しています。
日当たりの良い平地を好み、ラン科の植物としては珍しく市街地でも見かけることができます。

名前の由来は、螺旋状に花を咲かせることからその名前が付けられました。
学名ではスピランテス(=螺旋の花)、英語ではscrew flower(=螺旋の花)とそれぞれ表記され、いずれも螺旋状の花を意味しており、その認識は世界共通のようです。

この花は別名を「モジズリ」といいますが、この名前は平安時代の陸奥信夫(みちのくしのぶ)地方(現:福島県中通り地方)で作られていた「山繭を紬いで織り、天然染料で後染めをする絹織物」に由来しています。
この捩(も)じり模様を詠んだ有名な和歌が百人一首にあるのでご紹介します。

・螺旋状に咲いているネジバナです。


「百人一首」
平安時代の歌人、河原左大臣・源融(みなもとのとおる)が詠んだ次の和歌が百人一首 第14番に撰ばれています。

 「陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり 誰(たれ)ゆゑに 乱れそめにし われならなくに」(河原左大臣)

・現代語訳:
 陸奥で織られる「しのぶもじずり」の摺り衣(すりごろも)の模様のように、乱れる私の心。いったい誰のせいでしょう。私のせいではないのに(あなたのせいですよ)。

・「評」
この歌は心に秘めた片思い、「忍ぶ恋」を詠んだ平安時代の恋の歌です。
恋しても叶うはずのない高貴な人や他人の妻への慕情に心を乱す男のことを歌った哀しい歌です。

・百人一首第14番、河原左大臣・源融の和歌です。


「河原左大臣(かわらのさだいじん--822~895)」
河原左大臣とは、嵯峨天皇の皇子、源融(みなもとのとおる)のことです。
成長して後、臣籍(しんせき=家臣となること)に下って源氏の姓を受け、左大臣従一位となりました。
後に荒れさびて歌の舞台となる京都・賀茂川の河原院を邸宅としていた人物です。

植物のネジバナは平安時代には既に和歌に詠まれていることから、古くから親しまれている花のようです。
恋に乱れた我が心を、そのネジバナに例えて詠むなど、平安時代の貴族は教養がありますね。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする