失笑する
今日は文化庁が言葉の本来の意味を解説している「ことば食堂」から「失笑する」についてご紹介します。
「失笑する」とは本来どのような意味でしょうか?
広辞苑では、【失笑】 (笑ってはならないような場面で)おかしさに堪えきれず、ふきだして笑うこと。と説明しています。
このように「失笑する」とは、本来、笑いを抑えることができず、吹き出してしまう様子を言う言葉です。
ところが文化庁が平成23年度の「国語に関する世論調査」で、「彼の行為を見て失笑した。」という例文を挙げて、「失笑する」の意味を尋ねたところ、次のような結果だったそうです。
・(ア)こらえ切れず吹き出して笑う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27.7%
・(イ)笑いも出ないくらいあきれる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60.4%
・分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.2%
全体の調査結果からは、 本来の意味ではない(イ)の「笑いも出ないくらいあきれる」と回答した人の割合が約6割、本来の意味である(ア)の「こらえ切れず吹き出して笑う」と回答した人の割合が27.7%と、本来の意味でない(イ)を選んだ人が約33%上回っています。
では「笑いも出ないくらいあきれる」と回答した人の割合が高くなっているのはなぜでしょうか?
解説では、「失」を「失う」と捉えて、「笑いを失う」様子だと受け取ってしまうということが考えられることや、この言葉が「失笑を買う」という形でよく用いられる点も関係がありそうだと言うことです。
「失笑を買う」は「愚かな言行をして笑われる」という意味ですから、「あきれて笑われる」様子とも言えます。
ほかにも「失笑が広がる」「失笑が漏れる」など、失笑は「あきれる」様子と結びついて使われることが多く、そのために「笑いも出ないくらいあきれる」という意味の方を選んだ人が多くなっているのかもしれません。
「失笑」の「失」には「失う」ではなく、「失言」、「失火」などと同様に中に抑え込んでおくべきものを抑え切れずに、又はうっかりして外へ出してしまうという意味があります。
従って、そのつもりはないのについ笑ってしまったり、笑うべきでない場面で思わず笑ってしまったりすることを「失笑」と言うのです。
例えば、緊張するような状況で周囲の人が真剣な顔つきをしているのがかえっておかしくなり、つい笑ってしまうようなときにも「失笑」を用いることができます。
このように「失笑する」の本来の意味は「こらえ切れず吹き出して笑う」です。
使用する時は間違わないようにしたいですね。