志賀直哉 「城の崎にて」の一節を、 授業で習った高校生の頃からずっと心に仕舞っておいた。 話は怪我をした私が養生のため、ひとり但馬の城崎温泉へ出かけ蜂の死骸や傷つけられた鼠や、いもりの命を通して、生と死をみつめる。 動物たちの細やかな描写にも惹かれた。
とくに 大山に昇った彼が眼下に
「米子の灯も見え、遠く夜見ヶ浜の突先にある境港の灯も見えた」とあるのを、 自身の遠い体験のように記憶していた。
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蛙は小学2年の夏、 訳あって母の故郷へ越した。 そこで村の子に教わって残酷なことをくり返したと思う。 まずそれを地面にたたきつけ気絶したところを足の指一本だけ勢いよく裂くのだ。 逆さになったカエルは皮がずるっと一枚、 裏返すように簡単に脱げたというより、剥けた。 これでザリガニを釣るのだ。
最初はこわくて気味悪くて、 そのうち慣れてひとりでもやった。 城崎の私はヤモリに石をぶつけ… さまざま葛藤する。
幼い思い出にかさなった。 あのときの蛙さん ごめんなさい。
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動物の背のような感じがする山だとか… 美保の関の白い灯台など、 まだ見ぬ山陰の風景をこころに思い、描いていた。
ようやく12日、 夜の車窓から麓の方に米子の灯が漆黒のなかチラチラとかがやくのを見たのだ。 朝になってホテルの7階から目のまえの大山も仰いだ。
↓ 小泉八雲旧居(松江)
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