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続)ムスリムの子ども教育-18-イスラームにおける思春期の子ども達とのかかわり方(9)視聴者からの質問2

2020年02月17日 | 預言者の教育方法

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

 

続)ムスリムの子ども教育-18-

 

ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)TV番組「私たちの人生17」(最初~24:45)

https://www.youtube.com/watch?v=b13M2hUECcU   

前回の復習:子どもを持つことの「目的」を明確にすること、このことによって、今後お話する多くの子育てに関する事柄が変わって来ます。すでにお子さんが大きくなっている方も、今からでも、子育ての正しいニーヤ(意思)、「アッラーのご満足を求めて、子どもを育てます。」というニーヤ(意思)をしておきましょう。

 

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イスラームにおける思春期※の子ども達とのかかわり方(9)視聴者からの質問2

 

※思春期:

医学的には「第二次性徴の発現の始まりから成長の終わりまで」と定義。(ウィキペディア)

イスラーム的には「10歳からブルーグ※までの時期」

※ブルーグとは?:ムカッラフ(イスラーム法学上の義務行為を行う義務が課せられる者)になること。男の子は精通、女の子は初潮が来ると「ムカッラフ」となる。ブルーグに達した子どもたちは、すでに思春期を卒業し、「ムカッラフ」として、アッラーの元でイスラーム的な義務を負う「成人」の状態になる。

 

番組に寄せられた親からの質問:「成長し成人となった娘との家での会話がまったくありません。娘はプライベートなことに口出ししないで、と言い、母親が娘の生活を知ろうとしても、拒絶されます。私たちの育て方が間違っていたのだと思いますが、娘のこの状態で放っておいていいのでしょうか。」

 

回答:こういった問題は多く寄せられています。現代では、成人に達した娘や息子が、自分のことは何でも100%自分で決める自由がある、と主張し、プライベートなことを親に話さなくなり、自分の生活は自分だけに関するプライバシーで、親には関係ない、と考える傾向があるためです。この問題は、ひとつの問題だけではなく、いくつかの問題が複雑に絡まっています。

 

まず一つ目の問題は、子どもがイスラームにおける、母親、両親の重要性を明確に理解していないこと、

二つ目は、これまでに母親が十分に子どもに対して、感情的にも理性的にも良い関係を築いて来なかったこと、

三つ目は、この子だけの問題ではなく、今の時代の共通の問題であること、つまり、ネットやテレビを通して、18歳になった子どもは独立すべき、というような西洋的な考え方が浸透していること、です。この西洋的な親子関係では、子どもは18歳になるまでは、親の責任下に置かれ、好きなことはできないが、18歳になった途端、そこから解放され、自由を謳歌できる、という親子関係です。しかし、イスラーム的な親子関係はそれとは異なります。母親と娘の関係、父親と息子の関係、すべてが西洋的な価値観とはまったく違います。

 

これらの点を踏まえて、この相談者の方に、まずお願いしたいことは、娘さんとの愛情に基づいた親子関係を修復する努力をしてください、ということです。現代は、母親が若いときとは時代が違っていて、子どもは、お母さんの時代とは違うんだから、お母さんにはわからない、と言うかもしれませんが、時代と共に変わることもあれば、時代が変わっても変わらないこともあります。母親の娘への愛情は、変わりません。どんな時代でも子どもを愛する母親の気持ちは同じです。人徳も、良い振舞いも、時代によって変わるものではありません。ムスリムとして、母親や両親への振舞いや親孝行の大切さが、時代によって変わるべきということもありません。

 

 

質問:子ども達は、現代の誘惑の多い環境の中で、どうやって自分を守って行けばいいでしょうか。娘が学校に行けば、異性の男の子達が話しかけて来る、息子が大学に行けば、女の子たちがきれいにお化粧をしてファッショナブルな服を着て歩き回っています。そんな中で、ムスリムの子ども達へのアドバイスをお願いします。

 

回答:学校に行き知識を求める、というすばらしい崇拝行為をしているムスリムの女の子達に送る言葉は、どうか自分のしていることの目的を自分の中で明確にしてください、ということです。何のために学校や大学に行くのか、知識を求めるために学校に行く、という目的を明確にし、その目的を果たすために必要なことを優先して行うことが大切です。目的意識をしっかり持つこと、ニーヤ(意思)をすることによって、大学のカフェテリアで毎日何時間も自分にかかわりのない映画や芸能人のことについておしゃべりをして時間を無駄にしたり、校内の中庭でただ人間ウオッチングをして過ごすようなことはなくなるでしょう。

 

また、学校で誘惑の多い環境を作っている原因は、女の子達だけに責任があるわけではありません。男の子達に対してのアドバイスは、クルアーンにある通りです。

 

【男の信者たちに言ってやるがいい。「(自分の係累以外の婦人に対しては)かれらの視線を低くし、貞潔を守れ。」それはかれらのために一段と清廉である。アッラーはかれらの行うことを熟知なされる。】クルアーン24-30

 

どんなに周りにきれいな女の子がいても、自分の視線を低くし落とすことで、誘惑は確実に少なくなります。男の子達も、女の子達同様、自分が学校に行く目的を明確にし、知識を求めるというすばらしい行為をニーヤ(意思)することで、女の子達の容姿や髪形を比べたり、服のチェックをすることはなくなります。若い男の子達がよく、「視線を低くすることは、もちろん、知っていますよ!でも自分には無理です!」と言うのを聞きますが、すでに、クルアーンでアッラーが、私たちに命令しています。「無理」なことを、アッラーは私たちに求めません。アッラーが命じていることは、私たちが必ず「できること」だけです。

 

【アッラーは誰にも、その能力以上のものを負わせられない。】クルアーン雌牛章2-286

 

男の子達にそれを命じられている、ということは、つまり、彼らにはそれができる、ということです。

 

実際に多くの大学生の若者達が、異性の誘惑を避け、学問を真摯に修めて卒業しています。彼らは、知識を求めるという崇高な目的を持ち、アッラーに近づく崇拝行為をしている時に、左右の異性に目を奪われることはありません。イスラーム学でなくとも、ウンマにとって役に立つ知識を求めることは崇拝行為になり得ます。それによって、社会を改善し、ウンマにとって善いことを望んで学ぶことで、アッラーからのご褒美が沢山あります。自分の目的を明確にして、視線を伏せることで、自分を取り巻く誘惑は、大きく減らすことができます。

 

女の子と男の子両方へのアドバイスは、知識を求めるという目的意識を持った善い友達を選ぶことの大切さです。自分の周りに、異性の彼氏や彼女のことばかり話したり、遊びの話題ばかりの友達を集めるのではなく、本来の大学の目的である学ぶことを楽しんでいる友達を見つけて、そういう人達と付き合うことで、異性の誘惑は、大きく減少させることができます。

 

ただ周りの環境を嘆いて、誘惑を前にして弱くなってしまうことは、シャイターンに負けているということです。私たちはムスリムです。環境がどうあっても、誘惑に対して強く自分を守ることができるように、努力することが大切です。

 

 

質問:子ども達へのアドバイスはわかりました。では、今、思春期の子どもを育てている親御さん達へのアドバイスはありますか。

 

回答:親の世代の方たちにお願いしたいことは、現代は、自分が育った環境や時代と全く違う環境に子ども達が置かれている、子ども達は自分達と全く違う価値観を持っている、と決めつけて、子ども達のことを理解するのをあきらめてしまわないことです。親子の間の信頼関係は、時代が変わっても、変わることはありません。どんなに子ども達が、自分とは違う考え方をしていると感じても、あきらめずに、子どもの話を聞くこと、理解しようとする努力が大切です。

 

現代の親の側の問題は、自分たちの価値観とは違う西洋的な価値観が押し寄せていることや、子ども達を取り巻く環境が誘惑に満ちていることに恐怖を抱き過ぎるあまり、子ども達をまったく信頼せずに、子どもの話も聞かずに、ただ力で押さえつけたり、抑圧したり、一方的に言うことを聞かせようとして、高圧的な態度に出てしまうことです。信頼関係は一方的に命令するだけでは築かれません。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、若者たちの間違った考え方を正す際、実際どうされていたでしょうか。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の時代に、アブドッラー・ビン・アムル様(アッラーのご満悦あれ)という若者がいました。彼は、イスラームで定められたこと以上に、崇拝行為を行い、自分を痛めつけていました。そのことが預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の耳に届いた時、彼の間違いを正すために、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がなさったことは、まず、彼のところにご自分で出向き、彼を訪問し、彼と話をすることでした。

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、子どもを呼び出すのではなく、ご自分で彼のところに出向かれ、彼の自尊心を満たし、彼に、自分は重要な存在なのだ、と感じさせました。親御さん達、子どもと意見の食い違いがあったり、喧嘩をした時、自分から子ども達の部屋を訪れたり、自ら子ども達のところに行き、あなたと話をしたい、と言って、彼らを訪ねているでしょうか。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、そうなさっていました。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が訪問すると、アブドッラー様(アッラーのご満悦あれ)は、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)に、部屋にひとつしかなかったクッションを勧めますが、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はその上に座ることをお断りになりました。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、自分だけがクッションの上に座り、アブドゥッラー様(アッラーのご満悦あれ)が、自分よりも低い位置になることで、彼に対して高圧的になることをよしとなさらなかったのです。

 

その状態で、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、彼(アッラーのご満悦あれ)と会話を始めますが、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、いきなり、彼(アッラーのご満悦あれ)の間違いを指摘することはなさいませんでした。本当に少しづつ、彼(アッラーのご満悦あれ)にとって妥協案となる案を提案していくところから始められました。毎日断食し続ける彼(アッラーのご満悦あれ)に対し、最初は、一ヶ月に3日断食しては、と薦めます。彼(アッラーのご満悦あれ)が、それを拒むと、次に、一ヶ月に5日、次に一週間、と少しづつ妥協点を探すように提案していきます。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、決して、一方的にこうしなさい、と命令し、選択肢を示さない、という形にはなさいませんでした。その時のことが以下のハディース(ムスリム伝承)にあります。

 

アブー・キラーバはアブー・マリーフが(次のように)告げたと伝えている。:

《私はあなたの父君と御一緒にアブドッラー・ビン・アムルの所に行った。彼はわれわれに(次のような)話をした。

アッラーのみ使いは私の断食についてお耳にされた。するとその御方は私の所に御出でになった。私はその御方になつめ椰子の繊維の入った皮のクッションをおすすめしたが、その御方は大地にお座りになった。クッションは私とその御方の間に置かれたままであった。

み使いは私に「一ヵ月に三日間の断食では満足ではないのか」と申された。

私は「アッラーのみ使いよ、(それでは満足ではありません)」と言った。

み使いは「五日では」と申された。

私は「いいえ、アッラーのみ使いよ、(それでも満足ではありません)」と言った。

み使いは「一週間」と申された。

私は「いいえ、アッラーのみ使いよ」と言った。

み使いは「九日では」と申された。

私は「いいえ、アッラーのみ使いよ」と言った。

み使いは「11日では」と申された。

それでも私は「いいえ、アッラーのみ使いよ」と申し上げると預言者は「ダビデが行われた一日置きの断食、つまり半生の断食より優れたそれはない」と申された。》ムスリム伝承

 

《彼(アブドッラー・ビン・アムル)は(老いてから)「ああ、み使いの特許を受け入れておけばよかった」とよく口にしていた。》ムスリム伝承

 

親が一方的に命令するのではなく、子ども達の気持ちを汲んで、妥協できる案を提案して行くという、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の振舞いは、時代を超えて、すべての親と子の対話の見本となるものです。

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