イスラーム勉強会ブログ

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73章解説【3】

2013年07月25日 | ジュズ・タバーラカ解説
20.まことに、おまえの主は、おまえが夜の3分の2未満、そして半分、そして3分の1を(礼拝に)立ち、おまえと共にいる者たちのうちの一派もそうであることを知り給う。そしてアッラーは夜と昼を計り(それらの長さを知り)給う。彼は、おまえたちがそれを計算できないことを知り、おまえたちに対して顧み戻り給うた。それゆえ、おまえたちはクルアーンから(おまえたちにとって)易しいものを(夜の礼拝において)読め。彼は、いずれおまえたちの中には病人、また他にもアッラーの御恵みを求めて地を闊歩する者、また他にもアッラーの道において戦う者が出てくるであろうことを知り給うた。それゆえ、そこから易しいものを読め。そしておまえたちは礼拝を遵守し、浄財を払い、アッラーに良い債権を貸し付けよ。そしておまえたちが自分たちのために前もってなしておく良いことがあれば、おまえたちはアッラーの御許でそれが一層良く、一層大きな報奨であるのを見出す。そして、アッラーは赦しを乞え。まことにアッラーはよく赦し給う慈悲深い御方。

 最後にアッラーは、この章の冒頭から一年経って啓示された長い一節でこの章を締めくくり給います。その中でアッラーは、信者たちが崇拝のために夜中祈り立っていることを知り給い、それを彼らより嘉納し給うたこと、そして夜の礼拝を軽減したことを知らせ給うています:

 「まことに、おまえの主は、おまえが夜の3分の2未満、そして半分、そして3分の1を(礼拝に)立ち、おまえと共にいる者たちのうちの一派もそうであることを知り給う。そしてアッラーは夜と昼を計り(それらの長さを知り)給う。彼は、おまえたちがそれを計算できないことを知り、おまえたちに対して顧み戻り給うた。それゆえ、おまえたちはクルアーンから(おまえたちにとって)易しいものを読め…」

 至高なるアッラーは仰せになります:御使いよ、おまえと、おまえと共にいる信者たちが夜の3分の1、そして半分、そして3分の2未満をわれが命じた礼拝のために立っているのを知っている。「そしてアッラーは夜と昼を計り(それらの長さを知り)給う」アッラーは両者の長さを制限し給い、それらの各部分を知り給う。「彼は、おまえたちがそれを計算できないことを知り」おまえたちが夜と昼の細かい計算が出来ないことを知り給う。「おまえたちに対して顧み戻り給うた」夜の礼拝におまえたちが立てなくなったことのために。ここでのタウバは、顧みるという意味で使われます。つまりおまえたちの主は軽減することでおまえたちに対して顧みたという意味です。「それゆえ、おまえたちはクルアーンから(おまえたちにとって)易しいものを読め」礼拝を指すとも言われています。クルアーン読誦は礼拝の重要な構成要素だからです。つまり、おまえたちにとって易しい量の礼拝を成せ、という意味です。または、熟考とともにおまえたちにとって易しいものをクルアーンから読め、という意味とも言えます。

 続いて、夜の礼拝が軽減された原因が述べられます:
 「彼は、いずれおまえたちの中には病人が出てくるであろうことを知り給うた」病や不調のために夜の一部を崇拝のために費やせないことが信者たちに起こる可能性があります。

 「また他にもアッラーの御恵みを求めて地を闊歩する者」アッラーからの恩恵であり至福である糧や儲けを求める商人、旅行者を指します。彼らの旅によってときに夜の崇拝が行われなくなることがあります、

 「また他にもアッラーの道において戦う者」彼らはイスラーム宣教と彼らの任務を妨げる存在との戦いに従事する人たちです。または、自分たちの国を守る人たちです。

 続いてアッラーは仰せになります:「それゆえ、そこから易しいものを読め。そしておまえたちは礼拝を遵守し、浄財を払い」そこから、はクルアーンを指します。礼拝の遵守とは、畏敬の念を持つこと、人間の間に入ってくる様々な罪から純正であることといった礼拝がもつ権利を満たすことを指します。浄財を払うことは、信者たちの財産から定められた額を取りだして、貧しい人たちなど受給するに相応しい人たちに払われることです。

 アッラーは以上に付け加えて仰せになっています:「アッラーに良い債権を貸し付けよ」アッラーの御満足のために喜捨などに財を指しだすよう急きたてる御言葉です。ここではアッラーのためにお金を出すことをアッラーに債権を貸しつけることだとしています。天と地の間のすべてを所有し給うアッラーは何も必要とされない自足し給う御方ですが、善行者に対して何倍にも返して下さるという見返りに人々をひきつけるための表現です。

 章は次の御言葉で締めくくられます:「そしておまえたちが自分たちのために前もってなしておく良いことがあれば、おまえたちはアッラーの御許でそれが一層良く、一層大きな報奨であるのを見出す。そして、アッラーは赦しを乞え。まことにアッラーはよく赦し給う慈悲深い御方」

 至高なるアッラーは、信者たちに現世で成した喜捨、崇拝行為などの善行の報奨を来世に見出すことを知らせ給います。彼らはこの報奨を、現世で行ったものよりも優れた形で見出します。「一層大きな報奨」の意味は:彼らのために来世に取り置かれた報奨は、現世で行った行為と比較すると、より大きくて良いものであるということです。「そして、アッラーは赦しを乞え。まことにアッラーはよく赦し給う慈悲深い御方」自分たちの罪や怠慢の赦しを懇願することです。至高なるアッラーは、彼に罪の赦しを求める者の罪を赦し、彼に悔悟して戻るしもべに慈悲を与え給います。

(参考文献:ルーフ・アル=クルアーン タフスィール ジュズ タバーラカ/アフィーフ・アブドゥ=アル=ファッターフ・タッバーラ薯/ダール・アル=イルム リルマラーイーンP112~114)

預言者伝48

2013年07月18日 | 預言者伝関連

ハイバルの戦
ヒジュラ暦7年

148.アッラーからの報奨:
  まことに至高偉大なるアッラーは、アル=フダイビーヤにおけるリドワーンの誓いの仲間に吉報を与え給いました。彼らはアッラーとその使徒に従い、またアッラーの決まりごとと命令を、自分たちの好むことや理性が選択することよりも優先した人たちでした。吉報とは、近い勝利と多くの戦利品です。アッラーは仰せになりました:
  「かつてアッラーは信仰者たちに、彼らがおまえと木の下で誓約した時に満足し給うた。それで彼は、彼らの心の中にあるものを知り、彼らの上に静謐(せいひつ)を下し、近い勝利を彼らに報い与え給うた。そして、彼らが手に入れる多くの戦利品をも。アッラーは威力比類なく、英明なる御方であらせられた。」(クルアーン勝利章18~19節)

  この勝利と戦利品獲得は、ハイバルの戦で始まります。「ハイバル」はユダヤ人たちが作った数々の要塞(ようさい)や、ユダヤ人のための軍事基地が備わった、豊かな農地と果樹園に恵まれた町でした。また悪意に満ちた策略や戦への挑発を仕掛けるアラブ半島内に存在する彼らの最後の拠点でもありました。ハイバルのユダヤ人こそが、ムスリムたちを襲った連合軍を過去に生み出し、クライザ族にムスリムたちを裏切るよう仕向けた人たちだったことを忘れてはなりません。そんな彼らは自分たちも襲われるのではないかと心配し、ガタファーン族と共にマディーナを襲撃しようと策謀(さくぼう)しました。クライシュとの決着をようやく付けることの出来たアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は、ハイバルのユダヤ人の策謀(さくぼう)に気を揉むことから遠ざかり、また彼らの害を断つことを目指したことが、ハイバルの戦が起きた理由です。

149.預言者率いる信仰者から成る軍:
  アル=フダイビーヤから帰って来た預言者ムハンマド(祝福と平安あれ)は、ズ・ル・ヒッジャ月とムハッラム月(12月と1月)の数日をマディーナで過ごし、ムハッラム月が終わる前にハイバルに向けて出発しました。ヒジュラ暦7年のことでした。

  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は1400人の歩兵と200人の騎兵を連れていました。戦に参加したい者だけが募られ、アル=フダイビーヤの際に戦に出なかった者の参加は認められませんでした。また20人の女性の教友達が、病人やけが人の世話、戦時中の水と食物の供給のために一緒に出陣しました。

  マディーナの偽信者たちはユダヤ人の助けとなる行動に出ました。彼らの頭的存在であるアブドゥッラー・イブン・ウバイはハイバルにいるユダヤ人たちに知らせを送りました:ムハンマドが君たちを狙って出発したので気を付けるように。しかし彼を恐れる必要はない。君たちは大勢で、武器も多いので大丈夫。ムハンマドの衆は一握りの集団にすぎない。彼らは少しの武器しか持っていない。ハイバルの民が以上のことを知ると、キナーナ・イブン・アビーアル=ハキークとハウザ・イブン・カイスをガタファーン族に送り、彼らに援助を求めました。当時、ガタファーン族は、ハイバルのユダヤ人と同盟し、ムスリムに対する対抗に協力していたためです。


  軍が「アッ=ラジーゥ」と呼ばれる谷に到着した頃に、ガタファーン族はユダヤ人援助のためにハイバルに向けて出発していました。道中、背後からムスリムたちが彼らの家族や財産を襲ったのではないかとの気配を感じた彼らは、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)とハイバルを放棄して逃げてしまいました。

  アッラーの使徒は軍の道案内をしていた二人の男を呼び、北方つまりシャーム方面からハイバルに入れるもっとも良い道を示すよう依頼しました。そうすることで、ユダヤ人とガタファーン族を遮断するためと、ユダヤ人と彼らのシャームへの逃げ道を遮断するためです。

  道案内人の一人が:アッラーの使徒様、私が案内いたします、と言いました。分かれ道がいくつかあるところまで行ったところで彼は言いました:アッラーの使徒様、これらの道はどれを選んでも、あなた様が目指しているところと繋がっています。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はそれらの道ひとつひとつの名前を述べるよう命じました。案内人が、これはフズン(悲しみ)です、と言うと、彼(祝福と平安あれ)はそこを通ることを拒みました。これはシャーシュ(包帯)です、と言うと、それも拒みました。これはハーティブ(薪)です、と言うと、それも拒みました。あと一つしか残っていません、と案内人が言うと、ウマルは言いました:何という名前だ?ムラッハブ(歓迎された)です、と彼は言いました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はそこを通ることを選びました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P311~313
②②「封印された美酒」サフィーユッラフマーン・アルムバーラクフーリー著、ダール・アルフィクル出版、P257~259)


73章解説【2】

2013年07月11日 | ジュズ・タバーラカ解説
11.そしておまえはわれを、恩恵の持ち主で(わが使信を)嘘と否定する者たちと共に、構わずにそっとしておくように。わずかばかり彼らを猶予せよ。
12.まことに、われらの許に足枷と焦熱地獄はある。
13.また喉を塞ぐ食べ物と痛苦の懲罰も。
14.大地と山々が振動し、山々が砕け散った砂丘となった日に。
15.まことに、われらはおまえたち(マッカの民)の証人である使徒をおまえたちに遣わした、ちょうどわれらがフィルアウンに使徒を遣わしたように。
16.だがフィルアウンはその使徒(ムーサー)に背き、それでわれらは彼を猛烈な捕獲で捕らえた。
17.それでおまえたちが信仰を拒んだなら、いかにして子供を(恐怖によって)白髪となす(最後の審判の)日を畏れ身を守るのか。
18.天がその(日の恐怖)によって、裂ける(日)。彼(アッラー)約束は成就されるものであった。
19.まことに、これ(クルアーンの威嚇的な諸節)は訓戒である。それゆえ、(救済を)望む者があれば己の主に至る道を取る(が良い)。

 続いて、嘘つき呼ばわりしている者たちへの脅迫の言葉が述べられます:
 「そしておまえはわれを、恩恵の持ち主で(わが使信を)嘘と否定する者たちと共に、構わずにそっとしておくように。わずかばかり彼らを猶予せよ。」

 つまり:われと、現世の欲と娯楽に浸っている輩を構わずに置いておき、彼らのことは気にしないように。また彼らのことなど考えなくてよい。われひとりで彼らには十分であり、彼らの清算はわれが引き受ける。おまえは彼らをほんのしばらくの間だけ猶予しておけばいい。早くとも遅くとも、彼らにはわれの罰が届くのである、という意味です。クルアーンは彼らのような嘘つき呼ばわりする者たちを:「恩恵の持ち主」と名付けています。彼らは、アッラーより与えられたすべての恩恵を優先したがるためにアッラーの教えを拒んだ人たちです。代わってアッラーのメッセージを信じ、それを実践することは、娯楽の一部や、貧しい層といった自分たち以外の人たちの利益のために至福の一部を放棄する必要があります。これこそが、彼らがイスラーム宣教の敵となる立場を取る秘密なのです。

 この嘘つき呼ばわりする者たちには来世では鎖と火と飲み込めない食べ物と痛苦の罰があります:
 「まことに、われらの許に足枷と焦熱地獄はある。また喉を塞ぐ食べ物と痛苦の懲罰も。」

 足枷は重く、焦熱地獄は来世における火の点いた罰の館です。喉を塞ぐ食べ物とは、アッラーがその館に準備し給うた醜い、それを食べる人の喉を詰まらせる食べ物です。そして痛い罰が加わります。

 次にアッラーは、最後の審判の日の恐ろしい光景を描写します:
 「大地と山々が振動し、山々が砕け散った砂丘となった日に。」

 大地と山々は不安定になり、その上に存在しているものたちを揺らします。その結果、山々は砂で出来た丘に変わりますが、最下部が動くと次々に崩れてしまいます。

 続いてアッラーは、その使徒ムハンマド(祝福と平安あれ)が誘おうとしていることを嘘とする者たちに、脅迫と共に語りかけ給います。同時に、フィルアウンとその民が、自分たちに送られた使徒に逆らった報復として起きた出来事にも言及し給います:
 「まことに、われらはおまえたち(マッカの民)の証人である使徒をおまえたちに遣わした、ちょうどわれらがフィルアウンに使徒を遣わしたように。だがフィルアウンはその使徒(ムーサー)に背き、それでわれらは彼を猛烈な捕獲で捕らえた。」

 使徒ムハンマド(祝福と平安あれ)は審判の日に、その民の不信と逆らいを証言します。アッラーはフィルアウンにムーサー(平安あれ)を使徒として送ったように、ムハンマド(祝福と平安あれ)をその民に送りましたが、フィルアウンとその民はムーサーに逆らったためにアッラーは彼らを厳しい罰、つまりフィルアウンとその軍を溺れさせるという罰で懲らしめ給いました。

 またアッラーは、不信仰者たちに審判の日の恐ろしさと彼らが受けようとしている罰を思い起こさせ給います:
 「それでおまえたちが信仰を拒んだなら、いかにして子供を(恐怖によって)白髪となす(最後の審判の)日を畏れ身を守るのか。天がその(日の恐怖)によって、裂ける(日)。彼(アッラー)約束は成就されるものであった。」

 つまり:もし、おまえたちが不信仰状態で居続けるのであれば、どのように自分たちの身を、子供たちの頭が恐ろしさの余りに白髪となってしまう日から守るのか。その日、空は、同じくその恐ろしさのために裂ける、という意味です。アッラーはこれらが確実に起こることを強調し給います。「彼(アッラー)約束は成就されるものであった」つまりアッラーの約束は間違いなく起こり、彼は約束を必ず守る、という意味です。

 続いて、既述された諸節が持つ目的の解明にクルアーンはかえります:
 「まことに、これ(クルアーンの威嚇的な諸節)は訓戒である。それゆえ、(救済を)望む者があれば己の主に至る道を取る(が良い)」

 アッラーは不信仰者を脅かすような内容をもつ既述の諸節を、自戒を望んで主の満足に到達出来る道を歩もうとする者に対する訓戒とし給いました。

(参考文献:ルーフ・アル=クルアーン タフスィール ジュズ タバーラカ/アフィーフ・アブドゥ=アル=ファッターフ・タッバーラ薯/ダール・アル=イルム リルマラーイーンP110~112)

預言者伝47

2013年07月04日 | 預言者伝関連

146.ヘラクルとアブースフヤーンのやり取り(続き):
  ヘラクルは通訳に言いました:次のように彼(アブースフヤーン)に言いなさい:私はあなたに、彼(預言者ムハンマド(平安と祝福あれ))の血統について尋ねたところ、彼は由緒正しい血筋の主だと言った。使徒たちも、民の中の良い血筋の中に遣わされてきた。また、このような言葉を、あなたたちの間から言う人間はいたかとの問いには、いいえ、とあなたは答えた。もし、彼以前に同じことを言ったことのある人間がいたなら、昔言われた言葉で自分を鼓舞(こぶ)しているにすぎないと思ったのだが。また、彼(預言者ムハンマド(平安と祝福あれ))の祖先に王はいたか?との問いに、あなたは、いいえ、と答えた。もし彼の祖先に王の類の人物がいたのなら、彼はきっと祖先の王権を求めているのだろうと思ったのだが。また、彼が今主張している言葉を言う前に、あなた達は彼を嘘つきだと疑ったことはあるか、との問いに、あなたはいいえ、と答えた。私は、彼が人に嘘をつかずにアッラーに嘘をつくことはないと確かに知っている。また、人々のうちの高貴な出の人たちか、それとも立場の弱い人たちが彼に従ったか?との問いに、あなたは、弱い人々が彼に従った、と言った。彼らは使徒たちの追従者たちだ。また彼らの数は増えているのか、それとも減っているのか、との問いに、あなたは増えている、と答えた。信仰の事柄も完結するまで同様である。教えに入って、捨てる者はいるか、との問いに、あなたはいいえと答えた。純粋さが心に混じる時、信仰心も同じである。また、彼は裏切るか、との問いに、あなたはいいえ、と答えた。使徒たちも同じく裏切らない。何をあなた達に命じているか?との問いに、アッラーを崇め、彼に何ものも配せず、多神崇拝を禁じ、礼拝と正直であることと貞操を守ることを命じているとあなたは答えた。あなたが言っていることが真実なら、彼はこの二つある私の足を置いている場所を所有することになろう。私は彼(預言者)の出現を知っていたが、彼があなたたち(アラブ)から現れるとは思わなかった。私が彼に到達できると分かっていたら、彼を見るために赴いたことだろう。もし彼のもとに私がいたら、私は必ずや彼の両足を洗ったことだろう(尊敬の表れとして)…そしてヘラクルは、ローマの強人たちを城に呼び、そのドアを閉じて、言った。ローマの人々よ!あなたたちの権力が保たれ、この預言者に皆で従うことに、成功と正しさはあると思うか?その途端、人々はドアの方へと逃げ出したが、それが閉じていることに気付きました。ヘラクルは彼らが逃げるのを見ると、信仰を諦め、言いました:彼らを私のもとに連れ返しなさい。先ほどの言葉は、あなた達の教えに対する忠誠心を試みたにすぎない。そして私はその結果を見た。すると、人々は彼に跪拝(きはい)し、彼は人々に満足しました。

  このようにして、ヘラクルは導きよりも権力を優先しました。後に、彼とムスリムたちの間に、アブーバクルとウマルのカリフ時代に数々の戦が起り、その中でヘラクルの権力と王権は消えて行きました。

147.アラブ諸太守(しょたいしゅ)への書簡:
  預言者(祝福と平安あれ)は、バハラインの主であるアル=ムンズィル・イブン・サーワーに、オマーンの二人の主であるジャアファル・イブン・アル=ジュランダーとアブドゥ・イブン・アル=ジュランダー・アル=アザディーン、ヤマーマの主で
あるハウザ・イブン・アリー、そしてハーリス・イブン・シャマル・アル=ガッサーニーに書簡を送りました。

  アル=ムンズィル・イブン・サーワージャアファルとアブドゥ・イブン・アル=ジュランダーが帰依しました。ヤマーマの主ハウザ・イブン・アリーはアッラーの使徒(祝福と平安あれ)に何か命じてほしいと申し出たところ、彼は断りました。ハウザはその直後に亡くなりました。

(参考文献:「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P302~303、308~309)