イスラーム勉強会ブログ

主に勉強会で扱った内容をアップしています。

預言者伝67

2014年05月29日 | 預言者伝関連
212.ハワーズィンへの捕虜の返還:
  14名から成るハワーズィンの代表団がアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)のもとにやって来て、捕虜となってしまった自分たちの仲間を返してもらえるよう、アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)に懇願しました。彼は言われました:おまえたちが見ているとおり、わたしには共にいる人たちがいる。わたしがもっとも好む言葉とはもっとも真実を帯びたものである。そこで、おまえたちはおまえたちの子どもたち・女たちをより好むのか、それともおまえたちの財産を好むのか?

  ハワーズィンの代表団は言いました:わたしたちは他の何かを子どもたちと女たちと同等に扱ったことはありません。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は言われました:ではわたしが朝(黎明と日昇の間)の礼拝を済ませたら、次のように言いなさい:まことにわたしたちは人々が執り成してくれるようアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)に懇願します、またアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)がわたしたちに捕虜を返してくださるよう、人々に懇願します、と。実際に彼(アッラーの祝福と平安あれ)が朝の礼拝を済ませると彼らは立ち上がって、先ほどのように言いました。そこでアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は言われました:わたしとアブドゥ=ル=ムッタリブ(彼の祖父)の子孫に属するものはおまえたちのものである。おまえたちのために人々に尋ねてやろう。そこでムハージルーン(マッカからマディーナに移住した人たち)とアンサール(ムハージルーンを迎えたマディーナの人たち)は口をそろえて:わたしたちに属するものはすべてアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)のものです、と言いました。

  しかしムスリムの中のタミーム家、ファザーラ家、サリーム家だけは自分たちが得た捕虜の返還を拒みました。そこでアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は言われました:まことにかの人々(ハワーズィンの代表団)はイスラームに帰依してこちらにやって来た。わたしは彼らの到来を待っていたのだ。わたしは彼らに選択させたが、彼らは他の何かを子どもたちと女たちと同等とみなさなかったのである。そこでおまえたちのところにこの捕虜に該当するものがいて、その返還に同意してくれる者はそうしてほしい。己の権利にしがみ付きたい者も彼らに返還してくれるよう。そうする者にはアッラーがわれわれに戦利品を与え給う際に一配当につき6つの配当を与えよう。

  人々は言いました:わたしたちはアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)に同意いたします。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は言われました:わたしはおまえたちのうちの誰が満足し、また誰が満足しなかったのかはわからないが、おまえたちの長者たちがおまえたちの事柄を決めるまで戻っていなさい。人々はハワーズィンの代表団に女たちと子供の捕虜を返還し、誰一人として反対する者はいませんでした。そしてアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は捕虜一人ひとりに服を着せました。

213.繊細さと寛大さ:
  アッ=シャイマーゥ・ビント・ハリーマ・アッ=サアディーヤがアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)の乳姉妹であると人々が知らないまま荒々しく彼のところに連れてこられました。彼女は信徒たちに訴えました:あなたたちは私があなたたちのリーダーの乳姉妹であることを知らないのですか。しかし人々は彼女を信じることができなかったためアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)のところに連れて行ったのでした。ア=シャイマーゥがアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)のもとに到着すると彼に言いました:アッラーの使徒様!まことにわたしはあなた様の乳姉妹です。彼は言われました:ではそのしるしとは何だろう?彼女は言いました:私の背中に、あなた様を背負っていた時にあなた様が噛んだ跡があります。そのしるしを知ったアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は、ご自身の上着を彼女のために広げ、その上に彼女を座らせました。そして次のように言われました:わたしのところでの滞在を望むなら、歓迎しよう。もしあなたを喜ばせ、その後に自分の家族に帰ることを望むならそうするのも良い。アッ=シャイマーゥは言いました:いいえ、わたしを喜ばせ、わたしを家族に返してくださることを望みます。

  アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)が彼女を喜ばせると、彼女はイスラームに帰依しました。するとアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は彼女に3人の男奴隷と一人の女奴隷、ラクダ、羊を贈りました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P356~357)

預言者伝66

2014年05月22日 | 預言者伝関連
210.フナインの捕虜と戦利品:

  そしてアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は一緒にいた人たちと共にアル=ジャアラーナに到着し、ハワーズィンがムスリムとなって彼の許にやってくるのを十数夜の間、待ちました。次に、戦利品をまず心が傾いている人たちに分け、アブースフヤーンとその息子たちのヤズィードとムアーウィヤに大目に与えました。またクライシュの大物であるハキーム・イブン・フザーム、アン=ナドル・イブン・アル=ハーリス、アル=アラーゥ・イブン・アル=ハーリサなどにも分配しました。そして残りを人々に分け与えました。



211.アンサールへの愛:

  アンサールの若者たちは、アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)がクライシュの大物たちと信仰に心が傾いている人たちに定めた最も多い分け前について、アンサールにはわずかな分け前しかないことについて話し合いました。

  そこでアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は彼らに集まるよう命じました。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)による心を響かせる素晴らしい説教は、彼らの瞳からは涙が流させ、心から愛情を溢れさせました。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は説教の中で次のようにおっしゃいました:わたしは迷っていたおまえたちのところに現れてアッラーがわたしを通じておまえたちを導いたのではなかったのか?また貧しかったおまえたちをアッラーがわたしを通じて豊かにしたのではなかったか?また敵同士でいたおまえたちだというのにアッラーがおまえたちの心を親しいものとし給うたのではなかったか?



  アンサール一同は、アッラーとその使徒こそもっとも恩多く、もっとも徳があります、と言いました。



  彼らが黙ったところで彼は言われました:さあ、アンサールの衆、わたしに応じてくれないのか?



  アンサールは言いました:アッラーの使徒様、どう応ずればよいのでしょう!アッラーとその使徒にこそ恩と徳は属します。



  彼は言われました:アッラーに誓うが、おまえたちが望めばおまえたちは次のように言ったことだろうし、その言うことは真実であろうし、わたしはおまえたちを信じるだろう:あなた様は嘘つき呼ばわりされていたけれどもわたしたちはあなた様を信じ、落胆していたあなた様を援助し、逃げていたあなた様を保護し、貧しかったあなた様を慰めました、と。



  つづいてアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)が信頼、公正、戦利品分配における分け前の違いという英知について語った言葉が彼らの心に突き刺さりました:アンサールの衆よ、ある人たちをイスラームに帰依させるような現世の儚き美しさ(ここでは彼らに与えられた大量の分け前)のために不満に思っているのか。わたしはおまえたちのイスラームにおまえたちを託したというのに。



  アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)がさらに続けておっしゃった言葉にアンサールの衆の心から信仰と愛情があふれてくるのでした:



  アンサールの衆、おまえたちは人々が羊とラクダを連れて出かけて行ってしまうが、おまえたちはアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)と共にキャラバンに戻ってくることを満足しないのか。ムハンマドの魂をその御手の中にされる御方に誓って、おまえたちの行く末のほうが彼らの行く末にも勝っているのだ。ヒジュラがなかったとしたら、わたしはアンサールの一人であることを望んだだろうし、人々がある道と谷を選んでアンサールが別の道と谷を選んだら、わたしはアンサールの道と谷を選ぶだろう。アンサールは肌着であり、一般の人々は上着である。アッラーよ、アンサールに慈悲を。そしてアンサールの子孫に。そしてアンサールの子孫の子孫に。



  人々はひげが濡れてしまうほど大いに泣いて、言いました:わたしたちはアッラーの使徒がお定めになった分け前に満足します。



(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P354~356)


預言者伝65

2014年05月08日 | 預言者伝関連
ターイフの戦
ヒジュラ歴8年シャウワール月

205.サキーフの残党:
  サキーフの残党はターイフ逃げ、町の扉を閉じて、砦に一年は必要とするだろう物品を持ち込んで戦いに備えました。そしてアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は彼らを追ってターイフに向かいました。。ヒジュラ歴8年のシャウワール月のことでした。ターイフの近くまで来たのですが、扉が閉じていたので、中に入ることができません。サキーフは上方から信徒たちに向かって激しく弓を飛ばしてきました。彼らは弓の扱いに長けていたのです。

206.ターイフの包囲:
  アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は陣営を違う場所に移し、サキーフを20数夜に渡って包囲し、激しく交戦しました。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)はマンジャニークと呼ばれる投石機をこの戦において初めて採用しました。包囲は厳しくなり、信徒側の戦闘兵が弓で殺されました。

208.戦闘の間に訪れた慈悲:
  包囲期間が長引くにつれ、戦いも長引きました。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)はサキーフが所有しているブドウの木の切断を命じました。彼らはこのブドウで生計を立てていたのです。実際に人々はブドウの木を伐り始めたのですが、アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ) にそれをアッラーのために、親戚のために切らずに置いておくことを懇願しました。そしてアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は言われました:まことにわたしはアッラーと親族のために(ブドウの木の切断を)やめよう。

  そしてアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)の呼びかけ人が、砦からこちら側に出てきた者は自由の身であると通達すると、10数名の男が出てきました。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は彼らを自由の身とし、また残りの男たちの面倒を信徒たちに任せました。以上の出来事はターイフの住人には深刻な出来事となりました。

209.包囲の解除:
  この戦でターイフの陥落がアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)許可されることはありませんでした。そのためウマル・イブン・アル=ハッターブに人を連れて出発するよう命じました。すると人々は不満の声を上げて言いました:ターイフを陥落させずに出発するのですか?アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は答えて言いました:では戦いなさい。人々は戦いに行くと、信徒側にけが人が出ました。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は再び言われました:われわれは明日、アッラーが御望みであれば、ここを出発する。人々はその言葉に従って、準備を整え、出発しました。そんな様子を見てアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は笑っていました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P353~354)

69章解説【3】

2014年05月01日 | ジュズ・タバーラカ解説
19.そこで、己の記録簿を右手に渡される者については、彼(その者)は言う、「さあ、あなたたち、私の帳簿を読んでくれ」。
20.「まことに、私は己の清算に出会うと考えていた」。
21.それで彼は満悦の生活にある。
22.高い楽園の中で。
23.その果物は手近にある。
24.「喜んで食べ、飲むがよい。過ぎ去った日々におまえたちが前もってなしたことゆえに」。
25.だが、己の記録簿を左手に渡される者については、彼(その者)は言う、「ああ、私の帳簿が私に渡されなければ良かったのに」、
26.「そして、私の清算がどんなものかを知らなければ(良かったのに)」。
27.「ああ、それ(現世での死)が終結であったなら良かったのに」。
28.「私の財産は私に役立たなかった」。
29.「私から私の権威は消滅した」。

審判の日になると、人々は2集団に分かれます:無罪な人たちと、有罪な人たち。クルアーンはまず無罪な人たちに起こることについて言及します:
「そこで、己の記録簿を右手に渡される者については、彼(その者)は言う、「さあ、あなたたち、私の帳簿を読んでくれ」。「まことに、私は己の清算に出会うと考えていた」。」
信仰者は己の帳簿―つまり己の行いが記されたもの―を右手で受け取ります。この帳簿こそが彼が楽園に入るのを相応しくする『証明書』なのです。そのため受け取る者は喜びでいっぱいになるので、思わず回りにいる人たちに、「さあ、あなたたち、私の帳簿を読んでくれ」と言います。つまり、主の御満足に適った私の行いが記録されたこの帳簿を読んでくれ、ということです。「まことに、私は己の清算に出会うと考えていた」現世にいたときにアッラーが来世で私を清算し給うことを確信していた、という意味です。

続いてクルアーンはこの信仰者の来世がどのようなものかを描写します:

「それで彼は満悦の生活にある。高い楽園の中で。その果物は手近にある。「喜んで食べ、飲むがよい。過ぎ去った日々におまえたちが前もってなしたことゆえに」。」
信仰者はアッラーから報奨を得る楽園での生活に満足します。また彼は、「高い楽園の中で」す。つまり視覚的にそれは高い場所にあり、抽象的にも位の高いものだと言えます。「その果物は手近にある」楽園内の果物はそれをもぎ取ろうとする人の手から近い場所にあります。そこで彼らに声が掛けられます:「喜んで食べ、飲むがよい」と。「過ぎ去った日々におまえたちが前もってなしたことゆえに」アッラーからおまえたちへの報奨として。そしておまえたちが己の来世のために現世で成してきた行いに対する褒美として。

続いて、クルアーンは来世では不幸者となる人たちの生活を解明します:
「だが、己の記録簿を左手に渡される者については、彼(その者)は言う、「ああ、私の帳簿が私に渡されなければ良かったのに」、「そして、私の清算がどんなものかを知らなければ(良かったのに)」。「ああ、それ(現世での死)が終結であったなら良かったのに」。「私の財産は私に役立たなかった」。「私から私の権威は消滅した」。」

不幸者は己の行いが記録された帳簿を左手で受け取ります。それこそは災難と悪い結末の知らせです。その瞬間、清算を不利にする醜い行いが記された帳簿が渡されなければ良かったのにと熱望します。「ああ、それ(現世での死)が終結であったなら良かったのに」つまり現世で経験した死が己にとって最終の結末であれば良かったのに、そうであれば生きて甦らされることなんてなかったのにと熱望します。「私の財産は私に役立たなかった」つまり彼の財産は何も彼を罰から守ってくれなかった。「私から私の権威は消滅した」つまり来世に清算なんてないんだという彼の現世での主張、または他人に対して持っていた権力は消え、もう彼には力となる人も援助者もいないということです。