イスラーム勉強会ブログ

主に勉強会で扱った内容をアップしています。

預言者伝64

2014年04月17日 | 預言者伝関連
201.信仰の弱い者の動揺を見てほくそ笑む敵たち:
  アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)と共にいた、マッカの民の中でも心が頑な者たちやその心にまだ信仰心が入らないでいる者たちがこの負けぶりを目の当たりにすると、彼らの一人の男が自分たちの内心で抱いている嫌悪感を露わにして、他の者も次のように言いました:あいつらは、海に辿り着くまで負け続けるだろう、ありゃ、今日で魔法は解けてしまったのか?と。

202.勝利と静けさ:
  戦闘員の多さに自惚れてしまっていた信徒たちに対する、アッラーが御望み給うた調教が完了すると、彼らの信仰心が強くなるようにと、勝利の甘美さの後に惨敗の苦さを彼らに味わわせ給いました。そうすることで勝つことに騙されることも、負けることに失望することもなくなるでしょう。アッラーは敵に止めを刺し、その使徒(アッラーの祝福と平安あれ)と信徒たちに静けさをもたらし給いました。その時アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)はご自分の位置に留まっておられ、恐れも憂いもなく彼の白色のラクダに乗っておられました。またムハージリーンとアンサールの数名、そして彼の親族が彼と共にいました。アル=アッバース・イブン・アブドゥ=ル=ムッタリブは自分のラクダの綱を引いていました。

  多神教徒たちの軍勢がアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)に顔を合わせると、彼(アッラーの祝福と平安あれ)は土を一掴みして、敵たちの目に吹っかけました。

  アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は敵たちが土であたふたしているのを確認して、言われました:アッバース!次のように叫べ!:アンサールの衆!と。アッバースがそのように叫ぶと、信徒たちは、参りましたと言いながら集まってきました。アッバースはとても大きな声の持ち主だったのです。その叫び声を聞いた男たちは逆方向を向いて進んでいたラクダから下りて、剣と楯を持ってアッラーの使徒の方へやってきました。ある程度の人数が集まると、多神教徒の敵たちに向かって行き、戦いました。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)はご自分の集団の先頭に来て、人々が交戦しているのを見て、言われました:《本当の戦いは今始まったのだ》。そしてアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は石を拾ってそれを不信仰者たちの顔めがけて投げだしました。アッバースは次のように言っています:敵たちの力が弱く、彼らの負けが見えていた。

  人々が激しく戦い合っていたとき、アッラーは勝利のために天使を送り給いました。戦場の谷は彼らで埋め尽くされ、ハワーズィンの負けで戦いは終わりました。これに関する聖句は以下のとおりです:「アッラーは多くの場において、おまえたちを確かに援け給うた。そして、フナインの日も、その時、おまえたちの数の多さがおまえたちを得意にさせたが、それはなにほどにもおまえたちの足しにはならず、大地は広かったにもかかわらずおまえたちに対して狭くなり、おまえたちは背を向けて退却した。(9:25)その後、アッラーは、彼の静謐(せいひつ)を彼の使徒と信仰者たちの上に下し、またおまえたちには見えない軍勢(天使)を下して信仰を拒んだ者たちを罰し給うた。そしてそれが不信仰者たちの報いである。(9:26)」(悔悟章25~26節)

203.イスラームと信徒たちに対する最後の戦:
  フナインの戦によってアラブの中に点いていた火は消えました。力も武器も使い果たし、屈辱を受け、そして最終的にはイスラームに入るために心が開かれました。

204.アウタースにて:
  ハワーズィンの負けが確定すると、リーダーであるマーリク・イブン・アウフを含んだある一団はターイフに逃げ隠れました。他にもアウタースに留まりました。アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は教友から成るアブーアーミル・アル=アシュアリーをリーダーとした軍隊を彼らに送りました。交戦では信徒側が勝利しました。

  アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)のもとに、フナインで発生した捕虜と戦利品が集められました。それらは一旦、ジャアラーナ(マッカからターイフ方面へ20km以上進んだところ)に保管されました。

  捕虜の総数は6000人、ラクダは24000頭、羊は40000頭以上、4000オンスの銀。信徒たちが得てきたなかで最も多い戦利品でした。

  またアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)はフナインの戦の日には子ども、女性、雇われ人、雇われ奴隷を殺すことを禁じましたが、フナインである女性が殺されたことを残念がりました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P349~352)
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69章解説【2】

2014年04月11日 | ジュズ・タバーラカ解説
9.また、フィルアウンと彼以前の者、そして転覆した諸都市は罪過をもたらした(犯した)。
10.また、彼らは彼らの主の使徒に背き、それゆえ、彼(アッラー)はいや増す捕獲で彼らを捕らえ給うた。
11.まことにわれは、水が溢れた時、おまえたち(の祖先)を船で運んだ。
12.われらがそれをおまえたちへの教訓とし、注意深い耳がそれを覚えるために。
13.それで角笛が一吹き吹かれた時、
14.そして大地と山々が持ち運ばれ、両者が一打で粉砕された(時)。
15.それでその日、かの出来事は起こり、
16.そして天は裂けた。それその日、脆いのである。
17.そして、天使(たち)はその(天の)端々の上にいる。そして彼ら(天使たち)の上にあるおまえの主の玉座を、その日、8(天使)が支える。
18.その日、おまえたちは晒され、おまえたちの(たった)一つの隠し事すら隠れることはない。

「また、フィルアウンと彼以前の者、そして転覆した諸都市は罪過をもたらした(犯した)。また、彼らは彼らの主の使徒に背き、それゆえ、彼(アッラー)はいや増す捕獲で彼らを捕らえ給うた。」

 フィルアウンとは、古代エジプトにおけるエジプトの王座に就く王の称号ですが、この章で言われるフィルアウンは、ムーサー(平安あれ)の時代に存在した王です。「彼以前の者」つまり彼の前に存在した不信の民、「転覆した諸都市」つまり転覆した諸都市は、ルートの民が住んでいたその地面と空が逆さまになった諸都市です。転覆され、そこに住む人たちが滅ぼされた理由は、彼らが「罪過を」犯したためです。その罪とは、男色行為でした。「また、彼らは彼らの主の使徒に背き」アッラーから送られて来た使徒に背いたということです。「それゆえ、彼(アッラー)はいや増す捕獲で彼らを捕らえ給うた」つまりその時アッラーは激しさにおいて度を越した捕らえ方で彼らを捕らえ給うた、ということです。

 続いて簡素にクルアーンは、ヌーフの民に起きた洪水や船について、祖先を救われたことをありがたくアラブが思うよう示唆するかたちで述べていきます:

「まことにわれは、水が溢れた時、おまえたち(の祖先)を船で運んだ。われらがそれをおまえたちへの教訓とし、注意深い耳がそれを覚えるために。」

 「水が溢れた」とはつまり一線を越えて上昇したという意味で、洪水を指します。「おまえたち(の祖先)を船で運んだ」つまりおまえたちの祖先をヌーフの船に乗せたということです。アッラーが祖先を救助し給うたということは、彼らの子孫を救助し給うたことになります。またヌーフの船がアル=ジャーリヤ(走るもの、という意味)と呼ばれたのは、水の上を走るからです。「われらがそれを」つまりアッラーが信仰者たちを船で救い、不信仰者たちを溺れさせ給うたことを。「おまえたちへの教訓とし」つまり見本、説教、アッラーの御力とのその英知の根拠として。「注意深い耳がそれを覚えるために」この話を聞いて益を得る、教訓を覚え理解する耳。そのような耳も持ち主はアッラーに罰せられないよう、アッラーに背く行為に注意します。

 至高なるアッラーが述べ給うた、沈没や洪水といった自分たちの預言者たちを嘘つき呼ばわりした過去の共同体が迎えた結末は、次のようにアッラーが描写し給う審判の日の恐ろしさに比べるとあまり重要でなさそうに見えます:

「それで角笛が一吹き吹かれた時、そして大地と山々が持ち運ばれ、両者が一打で粉砕された(時)。それでその日、かの出来事は起こり」

 角笛への一吹きは、審判の日と世界の滅亡到来の徴候です。山々と大地の表面は元の位置から上昇して、お互いにぶつかりあい、粉々になり、すべてが平たくなります。これが起こって、何を待つというのでしょう。アーヤは答えます:「それでその日、かの出来事は起こり」つまりその時にこそ、審判が起こるということです。

 審判の発生は、天が裂けることも引き起こします:「そして天は裂けた。それその日、脆いのである。」亀裂が入るということは、精密に創られた作りの構造が壊れることです。かつてしっかりしていた天は裂け、脆くなります。

 恐ろしい光景の後、クルアーンはアッラーの威厳とこの地球を支配している彼の強大さを描写します:
「そして、天使(たち)はその(天の)端々の上にいる。そして彼ら(天使たち)の上にあるおまえの主の玉座を、その日、8(天使)が支える。」

 天使はこの天の端々に、そしてアッラーの玉座を8の天使または8列の天使が担ぎます。玉座という言葉は権力、王権を指しており、人類はその名前でしかアッラーの玉座の真実を知ることが出来ません。そして人々はこの日、現世で成してきた行為の清算のためにアッラーに晒されますが、その一つであってもアッラーから隠されることはありません。「その日、おまえたちは晒され、おまえたちの(たった)一つの隠し事すら隠れることはない」

参考文献:ルーフ・アル=クルアーン タフスィール ジュズ タバーラカ/アフィーフ・アブドゥ=アル=ファッターフ・タッバーラ薯/ダール・アル=イルム リルマラーイーンP49~51)
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預言者伝63

2014年04月04日 | 預言者伝関連
フナインの戦
ヒジュラ暦8年シャウワール月

197.アッラーの御光を消す試み:
  イスラーム勢力によるマッカ征服が叶い、人々が群れを成してイスラームに帰依するようになると、アラブは最後の弓をイスラームと信徒たちに解き放つのですが、アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)とアラブ半島におけるイスラームの広がりに対する戦いはむなしい結果に終わります。

198.ハワーズィンの集合:
  ハワーズィンはクライシュの次に強大な力を持つ部族で、クライシュの競争相手でした。彼らはクライシュが屈服したもの(イスラーム)に屈服せず、イスラーム根絶における名声を得られたらと考えました。「ハワーズィンはクライシュが出来なかったことを成し遂げた」、と言われるようになれたら、と。

  ハワーズィンのリーダー、マーリク・イブン・アウフ・アン=ナスリーは立ち上がり、戦に人を呼びかけました。するとハワーズィンにサキーフ、ナスル、ジャシュム、サアド・イブン・バクルが集まり、カアブとキラーブはハワーズィンに反しました。マーリクはアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)に向けて出発しました。家族と尊厳を庇えるよう、財産や女性、子どもも一緒に連れて行きました。

  ハワーズィンの男、高齢で戦の経験も豊富でアイディアと英知を持つドゥライドゥ・イブン・アッ=スンマも戦に参加しました。彼らはアウタースという地に落ち着きます。そこではラクダもロバも羊も子どもも泣き叫ぶ慌ただしい状況となりました。マーリクは人々に言いました:ムスリムを見かけたら、おまえたちの剣のさやを壊すのだ。そして一人の男であるかのように一体となるのだ」

  アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)はマッカの2000人の住人と出発しました。彼らの中にはイスラームに帰依して間もない者、まだ帰依していない者がいました。そして10000人のマディーナから一緒に来ていた教友たちも。信徒たちの数は、今までの戦の時にはいなかったほどになりました。今回は数の少なさで負けることはない!と信徒たちの一人が言うほどでした。

  またアッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は、多神教徒であったサフワーン・イブン・ウマイヤから鎧と武器を借りて、ハワーズィンと対面するために進みました。

199.偶像崇拝へ帰ることはない:
  アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)と共にフナインへ、無明時代から抜けて間もない人が同行していました。かつてある部族には大きく緑色に茂る、ザート・アヌワートと呼ばれる木があり、彼らはそれを毎年訪れて、そこに武器をひっかけて、その下で動物を屠り、一日中そこで身をかがめていました。

  アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)に同行していた彼らにかの木が視界に入ると、もう放棄したはずのかつての儀式や長い時間が過ぎたあの光景が懐かしく感じられたのです。彼らは思わず言ってしまいます:アッラーの使徒さま!私たちにも、彼らのザート・アヌワートのようなザート・アヌワートを設けてください!アッラーの使徒(アッラーの祝福と平安あれ)は答えて言われました:アッラーフアクバル!ムハンマドの魂をその御手の中にされる御方に誓って、おまえたちはムーサーの民がムーサーに言ったような事を言った:「「ムーサーよ、われらに彼らの神々のような神を作ってくれ」。彼は言った。「まことにおまえたちは者を知らない民である」」(高壁章138節)おまえたちは先代の慣行をそのまま行うのである。

200.フナインの谷にて:
  信徒たちがフナインの谷に到着したのは、ヒジュラ暦8年シャッワール月10日でした。先に到着していたハワーズィンは、谷の細かいところで待ち伏せていたので、信徒たちは不意に弓を浴びせられてしまいます。容赦なく剣にも襲われ、弓術に長けていたハワーズィンは一人の大男のように一体となって迫って来たのです。

  信徒たちは戻る他に術はなく、とどめを刺されそうになっていました。その様子はちょうど、ウフドの戦の際に預言者(アッラーの祝福と平安あれ)が亡くなったとの嘘の知らせを聞いて信徒たちが後退してしまった時と同じでした。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P347~349)
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