イスラーム勉強会ブログ

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続)ムスリムの子ども教育-19-思春期の子ども達とのかかわり方(10)視聴者からの質問3

2020年03月07日 | 預言者の教育方法

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

 

続)ムスリムの子ども教育-19-

 

ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)TV番組「私たちの人生17」(24:45~34:44)

https://www.youtube.com/watch?v=b13M2hUECcU   

前回の復習:子どもを持つことの「目的」を明確にすること、このことによって、今後お話する多くの子育てに関する事柄が変わって来ます。すでにお子さんが大きくなっている方も、今からでも、子育ての正しいニーヤ(意思)、「アッラーのご満足を求めて、子どもを育てます。」というニーヤ(意思)をしておきましょう。

 

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イスラームにおける思春期※の子ども達とのかかわり方(10)視聴者からの質問3

 

※思春期:

医学的には「第二次性徴の発現の始まりから成長の終わりまで」と定義。(ウィキペディア)

イスラーム的には「10歳からブルーグ※までの時期」

※ブルーグとは?:ムカッラフ(イスラーム法学上の義務行為を行う義務が課せられる者)になること。男の子は精通、女の子は初潮が来ると「ムカッラフ」となる。ブルーグに達した子どもたちは、すでに思春期を卒業し、「ムカッラフ」として、アッラーの元でイスラーム的な義務を負う「成人」の状態になる。

 

番組に寄せられた子どもからの質問:「両親は、自分たちが若い頃の常識で、私の振舞いの良し悪しを決めます。そのせいで問題が起こるのです。自分たちの若い頃と今の時代が違うことをどうしてわかってくれないのか。」

 

先生の回答:まず最初に、この質問者の方に伝えたいことは、親の時代の価値観のすべてが、今の時代において間違っている訳ではない、ということです。価値観の中には、時代と共に変わることもあれば、時代が変わっても変わらないこともあります。また、この子の親に伝えたいことは、自分の若い頃に良かったことが、すべて今の時代でも良いこととは限らない、ということです。時代と共に価値が変わるものもあれば、変わらないものもある、双方が知っておくべきことは、時代が変わっても変わらぬ価値があるものと、時代と共に変わるものの「基準」です。どのように変わらぬ価値観を共有して行き、また、時代と共に変わって行くものをどのように受け入れるのか、その「基準」を持つことが大切です。

 

また、この質問から浮かび上がってくるのは、私達、親が、自分の子ども達と一緒に過ごす時間の少なさ、子どもと十分に話をする時間をきちんと持っていなかったという親の怠慢です。そのせいで、子ども達に、親たちの考え方は自分たちの考え方とは全く違っていて、理解できない、という大きな誤解を抱かせてしまいました。この問題は、子ども達と過ごす時間、話をする時間を多くとればとるほど、解決できる問題です。

 

親御さんたちに伝えたいのは、どうか、子ども達に、あなた方が子ども達の価値観を理解できることを証明してあげてください。子どもに対して、ただ、一方的に命令を出して終わり、という関係ではなく、子どもと対話してください。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はおっしゃいました。

《子どもが自分に親孝行できるよう、子どもを助ける親に、アッラーが慈悲をお与えくださいますように。》イブンハッバーン伝承

 

自分に親孝行するように勧めること、親孝行の子どもに育てることが、親が、アッラーのご満足を得ることにつながります。子ども達の不満は、親たちがこのハディースで言われている親子関係の基本を行っていないことに起因しています。

 

番組に寄せられた子どもからの質問:「親を抹殺してほしい。なぜ私の人生にケチをつける権利があるのか?ただ、「私が、お前を産んだのだ」というだけで。親から、「お前は失敗作だ」と100万回以上聞かされた。もう限界だ。礼拝していても、お前は地獄行きだ、と言われる。いつも親の言葉に傷つけられてきた。親は、自分に一ミリも敬意を示すことはない。早く親を処刑してほしい。」

 

先生の回答:この質問者の方に深く同情します。この手紙は、彼の心の痛みを表現しています。彼の心の奥底からの叫びです。もちろん、彼の要求が間違っていることは言うまでもありませんが、それ以前に、彼が親からの言動によって、どんなに傷つけられているか、を考える必要があります。絶対に、彼の親には、大きな問題があります。息子がどんなに親に不服従であっても、どんなに反抗的であっても、息子が、親の信頼を失わせるような行動ばかり取っていたとしても、です。問題は、親にあります。息子に対して、「お前は失敗作だ。」という言葉を聞かせること自体が、その息子の中に、「失敗」を植え付けます。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、子どもに対して、そんな言葉を使うことは一度もありませんでした。もし預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が、彼の家を訪問し、彼が父親にこう言っているのをご覧になったら、息子に注意する前に、まず、父親を責めるでしょう。息子の父親に対する言葉は、もちろん許されないものですが、それを治すためには、まず、父親の間違いを先に正さなければなりません。息子にここまで言わせてしまう父親の責任は大きいです。

 

また3つ目の問題は、父親と息子以外の問題、彼らを取り巻く現代の社会の問題です。親子関係に対して、間違った考え方が広まっています。それを正さなければ、こういった不幸な親子関係が産まれてしまいます。しかし、このすべての問題の鍵は、父親が握っています。お父さん、どうか預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のスィーラ(伝記)を読んでください。子どもの間違いに対して、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はどのように接しておられたでしょうか。前回お話したように、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の子ども達への接し方は、現代の親が学ぶべきものです。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の元に、若者がやって来て、婚外交渉をすることを許可しろ、という、とんでもない暴言を吐いた時も、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の最初の言葉は、《彼を近くに来させなさい。》、でした。自分に対して、途方もなく失礼な命令をした若者に対し、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の第一声は、「あっちへ行け!」でも、「何とひどいことを言うのだ!」でも、「お前は罪人だ!」、でもありませんでした。

 

《彼を近くに来させなさい。》と預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はおっしゃいました。そして、次に、《あなたは、それを自分の娘に望みますか?》と、順番に尋ねて行きました。つまり、子どもの問題を解決する方法の第一歩は、近くに呼ぶこと、そして、とことん話し合うこと、対話です。

 

お父さん達にどうしても言っておかなければならないことがあります。それは、「仕事が忙しくて、子どもの話を聞く暇なんかない。」、「外での仕事で疲れて帰って来るのに、家で子どもの相手なんかしてられない。」、こういった言い訳は、まったく通じない、ということです。自分の仕事が忙しいこと、仕事で疲れて帰宅すること、それらは、まったく子どもの罪ではありません。それらは、あなた方ご自身の問題であって、子どもには何の責任もないことです。仕事で疲れて帰宅して、子どもについ当たってしまうようなことがあったら、自分自身だけでなく、子どもも破壊してしまいます。どうかそのことをよく理解し、親の責任を軽く考えないでください。

 

ムスリムの親御さんたちに、アッラーのご援助がありますように。