イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝53

2013年10月17日 | 預言者伝関連
ムウタの戦
ヒジュラ暦8年
162.ムスリム信徒の使者殺害と、それに対する罰:
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はアル=ハーリス・イブン・ウマイル・アル=アズディーを彼の書簡と共に、ローマ帝国を治めるカイサルが所有するブスラーの統治者、シャルハビール・イブン・アムル・アル=ガッサーニーに使者として送りしました。シャルハビールはアル=ハーリスを縄で縛りあげ、次に彼の首を切り落としてしまいました。当時から各国で使者や使節の殺害が普段から起きることではありませんでした。両者の間に激しい相違があったり、使者たちが携えていたメッセージが嫌われたとしてもです。これは軽視するわけにはいかない事件であり、使者や使節にとって大きな危険をはらんでおり、また送り主と送られたメッセージに対する激しい侮辱であるため、事件を起こした人物は罰せられるべきであり、事件が起きたことに対して怒りを露わにすることで、使節の生命が守られるよう、二度とこのような悲劇が起こらないようにしなければなりません。

163.ローマの領地内における初の軍:
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)にアル=ハーリスが殺害されたとの知らせが届くと、ブスラーに人々を送ろうとしました。ヒジュラ暦8年のジュマーダー・アル=ウーラー月に起きたことです。3000人の信徒が出発の準備に取り掛かりました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は、彼の召使でもあるザイド・イブン・ハーリサを軍の指揮官としました。軍は、先代のムハージルーンとアンサールで構成されていました。彼(祝福と平安あれ)は人々に言われました:《ザイドが倒れたら、ジャアファル・イブン・アブーターリブが指揮を執ること。もしジャアファルが倒れたら、アブドゥッラー・イブン・ラワーハが指揮を執ること》。人々の出発の時間がくると、町に残った人たちはアッラーの使徒(祝福と平安あれ)の軍を見送りました。彼らには長くて厳しい旅と、当時最大の王国の庇護を受けていた強硬な敵が待ち構えていました。

  イスラーム軍は歩み進み、マアーンという場所に到着しました。そこでムスリムたちはヒラクルがバルカーゥにてローマから100000人を連れてきていること、そしてアラブの諸部族の多くが彼らと合流していることを知りました。ムスリムたちはマアーンに二晩滞在し、様子を伺いました。そして:アッラーの使徒(祝福と平安あれ)に手紙を送って、敵の数を知らせよう。助っ人が送られてくるかもしれないし、他の命令が来たらそれに従うことにしよう、と言いました。

164.われわれは数や力を理由にして戦うことはない:
  アブドゥッラー・イブン・ラワーハは人々を鼓舞して言いました:皆!アッラーに誓って、君たちが嫌いつつも求めてやってきたもの、それは殉教だ。われわれは兵士の数や力や大勢さを理由にして戦うことはないし、アッラーが気前よくわれわれに与え給うたこの宗教においてでしか戦わないのだ。だからこそ、出発するのだ。結果は2つの善のどちらかだ。勝利か、殉教か。この言葉の後、人々は進んでいきました。

165.必死の戦いと、獅子たちの強さ:
  人々がバルカーゥの境目に着くと、ローマとアラブの諸部族がバルカーゥにある小さな村のひとつであるマシャーリフで彼らに出くわしました。近付いて来る敵からムスリムたちはムウタという名の村に寄り、そこで両者の間で戦いが繰り広げられました。

  ザイド・イブン・ハーリサはアッラーの使徒(祝福と平安あれ)の旗を手にして殉教するまで戦いました。彼の体の全ての場所を多くの弓が付き刺していました。つづいてジャアファルが旗を取り、戦い続けました。戦いが激しくなると、彼は己の馬に傷を付け、戦い続けました。右腕が切り落とされると、左手で旗を取り、左腕が切り落とされると、殺されるときまで両二の腕で旗を抱え続けました。彼は33歳でした。ムスリムたちはジャアファルの胸と肩の間と体の前面に90の傷があるのを見つけました。剣で受けた一撃も弓で受けた傷もすべて体の前面にありました。ジャアファルは楽園に思いを馳せていて、そこでの恩恵を歌い、敵と彼らの数と配備と現世の儚さを嘲笑していました。

  ジャアファルが殺されると、アブドゥッラー・イブン・ラワーハが旗を取って前に進みました。彼が馬から降りたとき、彼のいとこが近付いて、骨付き肉を彼に渡して言いました:これで力を付けるんだ。こんなに厳しい日々を送っているのだから。アブドゥッラーは肉を受け取って、少し齧ってから、放り投げて、剣を手にして突き進み、殺されるまで戦い続けました。

参考文献:「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P323~325

72章解説【4】

2013年10月04日 | ジュズ・タバーラカ解説
23.「ただし、アッラーからの伝達と彼の使信だけは別である(私はそれらのみを有する)。そしてアッラーと彼の使徒に背く者がいれば、まことに彼には火獄の火があり、彼らはそこにいつまでも永遠に(留まる)」。
24.やがて、ついに彼らが自分たちに約束されたもの(懲罰)を見た時、彼らは、誰が援助者に関してより弱く、数に関してより少ないかを知るであろう。
25.言え、「私には分からない、おまえたちに約束されたものが近いのか、それともわが主がそれに(猶予)期間をもうけ給うのか」。
26.(アッラーは)隠されたものを知り給う御方。それで彼は御自身の隠されたものを誰にも明かし給わない。
27.ただし、彼(アッラー)が使徒として満悦(選出)し給うた者は別である(そのような使徒には明かし給う)。彼(アッラー)は彼(使徒)の前にも後ろにも見張り(天使)を伴わせ給う。
28.彼(アッラーもしくは預言者)が、彼ら(使徒たち)が彼らの主の使信を確かに伝えたことを知り給うためである。そして、彼(アッラーもしくは預言者)は彼ら(使徒たち)の許にあるものを取り囲み、あらゆるものの数を計算し給うた。

 「ただし、アッラーからの伝達と彼の使信だけは別である(私はそれらのみを有する)。そしてアッラーと彼の使徒に背く者がいれば、まことに彼には火獄の火があり、彼らはそこにいつまでも永遠に(留まる)」。
24.やがて、ついに彼らが自分たちに約束されたもの(懲罰)を見た時、彼らは、誰が援助者に関してより弱く、数に関してより少ないかを知るであろう。」

 アッラーはその預言者(祝福と平安あれ)に、彼の民に次のように言うように命じ給います:至高なるアッラーが遂行するよう命じ給うたアッラーの使命を述べ伝えることだけが己を救うのだ、ということです。アッラーと彼の使徒に背く者には、火獄の炎があり、彼は来世でそこに永遠に留まるのです。罪人たちが-主が彼らに約束し給うている-罰を目の当たりにするとき、彼らの弱さの本当の姿が現われます。その日、彼らの援助者は何の役にも立ちませんし、それどころかその日彼らは少数で、アッラーの数え切れない群衆の前では存在しないに等しくなります。

 そして至高なるアッラーはその預言者(祝福と平安あれ)に、彼の民に自分は不可視界について知らないこと、その一つは最後の日についてのことであることを知らせるよう命じ給います:

 「言え、「私には分からない、お前たちに約束されたものが近いのか、それともわが主がそれに(猶予)期間をもうけ給うのか。(アッラーは)隠されたものを知り給う御方。それで彼は御自身の隠されたものを誰にも明かし給わない。ただし、彼(アッラー)が使徒として満悦(選出)し給うた者は別である(そのような使徒には明かし給う)。彼(アッラー)は彼(使徒)の前にも後ろにも見張り(天使)を伴わせ給う。」

 「私には分からない、おまえたちに約束されたものが近いのか」の意味:おまえたちに約束された現世における罰もしくは来世における罰が近いのか、それとも私の主がそれに「期間」:つまり長い期間、を設け給うのか分からない。つまりアッラーのみが不可視の情報と審判の起きる最後の日について知り給うということです。しかし不可視について一つだけアッラーは例外を述べ給うています:「ただし、彼(アッラー)が使徒として満悦(選出)し給うた者は別である」つまり、アッラーがその使命と預言者性のために選らび給うた者は別で、その者には彼が御好みの不可視界の情報を与え給うということです。やがて情報を与えられた者は不可視界の情報を語ることでその預言者性が証明され、また奇跡にもなります。至高なるアッラーは使徒たちを天使の護衛で囲み、彼らを守らせ給います。

 次の御言葉でこの章は締めくくられます:
 「彼(アッラーもしくは預言者)が、彼ら(使徒たち)が彼らの主の使信を確かに伝えたことを知り給うためである。そして、彼(アッラーもしくは預言者)は彼ら(使徒たち)の許にあるものを取り囲み、あらゆるものの数を計算し給うた。」

 【この本の解説】アッラーの使徒ムハンマド(祝福と平安あれ)が、過去の預言者たちがアッラーによって述べ伝えるよう命ぜられた聖法を自分たちの民に確実に述べ伝えことと、アッラーがその知識によって使徒たちの許にあるものを取り囲んだことを知るためである。また至高なるアッラーは御自身が創造し給うたものを数え給い、被造物で数えられないものはなく、アッラーに隠されるものもない、という意味です。
 (文頭の代名詞「彼」がアッラーに帰るという解説も他にあります。)

参考文献:ルーフ・アル=クルアーン タフスィール ジュズ タバーラカ/アフィーフ・アブドゥ=アル=ファッターフ・タッバーラ薯/ダール・アル=イルム リルマラーイーンP102~103)