イスラーム勉強会ブログ

主に勉強会で扱った内容をアップしています。

預言者伝50

2013年08月29日 | 預言者伝関連
152.少しの行いと多くの報奨:
  ハイバルの民の中から、エチオピア人の肌の黒い奴隷について。主人の羊の面倒をみていた彼は、ハイバルの民が武器を手にしているのを見て尋ねました:何をしようとしているのですか?人々は答えて言いました:自分が預言者だと主張しているあいつをやっつけるのだ。この時、この奴隷の心の中に、「預言者」の名前が印象に残ったので、羊たちを連れて、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)を訪ねていきました。奴隷は彼に質問をしました:あなたはどのようなことを主張しているのですか?何に私たちを誘っているのですか?彼は言われました:私は、イスラームとアッラーの他に神はおらず私がアッラーの使徒であると私たちが証言すること、アッラー以外を崇めないことへ誘います。奴隷は言いました:私が証言し、至高偉大なるアッラーを信仰したら、私は何を得ますか?彼は言われました:≪その状態であなたが死んだら、天国が与えられます≫。

  奴隷はイスラームに帰依して言いました:アッラーの御使い様!この羊たちは私に預けられた信託物です。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は言われました:羊たちを手放して、小石を投げつけなさい。アッラーがあなたの代わりに信託物を持ち主に返還し給うでしょう。奴隷は言われた通りに行うと、確かに羊たちは持ち主のところへ帰っていきました。その時、奴隷の主であるユダヤ人の男は、奴隷がイスラームに帰依したことを知りました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は人々の中にお立ちになり、彼らを訓戒し、ジハードへの参加を鼓舞しました。そして信徒たちとユダヤ人たちが顔を合わせた時、この奴隷は殺されてしまいました。信徒たちは彼を軍営地に運び込み、テントの中に安置しました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)がその様子をお知りになって、教友たちの前に現れて言われました:≪アッラーはこの奴隷に寛大に接し給い、彼を善き道に導き給いました。私は彼の頭のところに二人の天女がいるのを確かに見ました。この男は一度もアッラーにサジダ(跪拝)したことはなかったのです。≫

153.それのためにあなたに従ったのではありません:
  また、田舎からある男が預言者(祝福と平安あれ)のところに現れて、彼を信仰し、彼を追従しました。あなた様と一緒に移住します、と言ったので、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は数人の教友にこの男のことを任せました。そしてハイバルの戦が起こって、戦利品を手に入れたアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は彼のためにいくらばかりか取り分を定めました。この男は人々の乗り物(ラクダや馬)の面倒をみていたのですが、彼が来た時に、かの取り分を彼に与えました。これは何ですか?と彼が言うと、人々は、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)があなたのために分けてくださったものです、と言いました。それを受け取った男は預言者(祝福と平安あれ)のところに行って言いました:アッラーの使徒様、これは一体何ですか?私があなたに分けたものです、と彼は言われました。男はまた言いました:それのためにあなたに従ったのではありません、ここ-首を指して-を矢でさされ、死んで天国に入るためです。彼は言われました:あなたがアッラーに対して真面目に向かえば、アッラーもそんなあなたを受け入れ給います。
  人々は敵との戦いのために立ち上がりました。そして殺された状態のかの男がアッラーの使徒(祝福と平安あれ)のもとに運ばれてきました。あの男ですか?と彼がお尋ねると、人々は、そうです。と言いました。彼はアッラーに対して真面目に向かったために、アッラーは彼を受け入れ給うたのです、と言われました。預言者(祝福と平安あれ)は彼をご自身の上着でお包みになり、祈りを捧げられました。彼のための祈りの中の言葉:アッラーよ、あなたのしもべであるこの男はあなたの道のために移住しました。そして殉教者として殺されましたが、私はその証言者です。

154.ハイバルに残る条件:
  ハイバルの数々ある砦は次々と開かれました。そして戦いの日々が過ぎていくと、ハイバルの民側がアッラーの使徒(祝福と平安あれ)に和解を求めてきました。しかしアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は彼らをこの町から追放することをお望みでいたところ、彼らは訴えました:ムハンマドよ!私たちにこの土地の管理をお任せください。私たちはあなたたちよりここに関して詳しい、と。確かにアッラーの使徒(祝福と平安あれ)にも教友たちにもハイバルの農地を世話できる召使などおらず、自分たち自身も土地の世話に費やせる余裕などもありませんでした。そこでアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は、ユダヤ人たちにハイバルの土地を条件付きで使えるようにしました。その条件とは、農作物の半分を差し出すというものです。それでもアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は彼らを認めることはありませんでした。ハイバルの民のもとへアッラーの使徒(祝福と平安あれ)に派遣されたアブドゥッラー・イブン・ラワーハはハイバルの作物を確認し、それを半分に分けて、土地の人々に好きな方を取るようにさせていました。そんなアブドゥッラーに対してハイバルの民は:この公正さに基づいて諸天と大地は創られたのだ、と言いました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P315~317)
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72章解説【1】

2013年08月15日 | ジュズ・タバーラカ解説
72章【1】
1.言え。「私に啓示された。幽精(ジン)の一団が(私のクルアーンの読誦を)聞いて言った、『まことに、われらは驚くべきクルアーンを聞いた』」。
2.『それ(クルアーン)は正導に導く。それでわれらはそれを信じ、われらはわれらの主になにものをも同位に配さない』。

 この章は、ジンの世界にまつわる多くの先入観を正し、目に見えないこの被造物の本当の姿を解明しています。預言者の時代にクルアーンが呼びかけの対象としていたアラブ人は、ジンを得体の知れない神々の一つと捉えており、人とアッラーの間に親戚関係があると考えました。クルアーンはそのことについて言っています:「また、彼らはアッラーに幽精の同意者たちをなす」(家畜章100節)また、ジンは不可視界を知っていて、尋ねられたその情報を魔術師や占い師に伝えているとも信じていました。これは、クルアーンがこの章で突き止めたことです。預言者(祝福と平安あれ)はその事実をお嫌いになり、魔術や占いを信じることを次のように言いながら禁じました:《魔術師や占い師のところに来て、彼らの言うことを信じた者は、ムハンマドに啓示されたものを背信した者である。》

 さらに、ジンには地上において権力があると思われてもいたので、荒涼とした谷で一夜を明かさなければならない時は、他人に襲われないよう、大きなジンに加護を求めました。

 ジンに対するこういった形の信仰は、いろいろな人間社会に広まっていました。そして今日になってもまだ、この種の伝説や思い込みは多くの地域に残っています。

 「ジン」という名前は、隠れること(イジュティナーン)から派生しています。彼らは隠れており、目に見えません。クルアーンは彼らの身体の特徴について知らせています:「ジャーンヌ(ジンのこととも、ジンの太祖イブリースのこととも言われる)を火の炎から創った。」(慈悲あまねき御方章15節)マーリジュ(炎)とは、煙が邪魔しない、純粋な火を指します。

 また、ジンの存在を根本的に否定する人もいます。彼らは、目に見えない存在にまつわるいかなる話もすべて神話だと言います。

 そこでイスラームは、いないと信じている人たちと信じている人たちの意見の相違の元になっているこの話題に終止符を打つ言葉を齎しました。また、真実を決定し、ジンの存在を立証し、彼らの真実を解明し、彼らに関する間違った理解を正し、彼らの見えない力に対する怯えや恐れを払拭しました。クルアーンの別の箇所では、スライマーンがジンを諸事に就かせていたことをアッラーが教え給うています。

 現在の科学は、私たちの手や感覚の下にあるものを否定出来ません。かつては不可視状態にあった自然の力が、開発された機械によって五感に代わって感知されるようになりましたが、現代の科学は自らが使ったすべての力を見ることが出来ないのに、どうして自らが解明したり到達出来ない物事を否定することができるというのでしょうか。

 そこで尊いクルアーンは、丸ごと一つの章を使って、ジンの行動を隠し覆っていた布を剥ぎ取りました。今回はこのことを私たちは勉強していきます。章の冒頭は次のように始まります:

 「言え。「私に啓示された。幽精(ジン)の一団が(私のクルアーンの読誦を)聞いて言った、『まことに、われらは驚くべきクルアーンを聞いた』」。」

 預言者(祝福と平安あれ)に向けられた呼びかけです。アッラーから彼への啓示は、彼に伝授したい宗教上の教えを投げかけることであり、アッラーが彼に啓示したものの一つがこの章です。「幽精(ジン)の一団」は、3~10から成る集団です。彼らジンはクルアーンを聞いた後、自分の仲間たちのところに帰って言いました:「まことに、われらは驚くべきクルアーンを聞いた」つまり、不思議かつ驚きに値する感慨深いクルアーンを聞いた、と。それは、素晴らしい裁定、意味の深い訓戒において、他の諸典とのはっきりとした違いを持っていると。

 この章が啓示された経緯としてイブン・アッバースの言葉が伝承されています。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はジンたちを見ることなく彼らにお読みになった。つまり彼らの存在に気付かないままジンたちは預言者(祝福と平安あれ)の読誦を聞いたということです。当時預言者(祝福と平安あれ)は数名の教友たちと市場に向かっているところでした。するとジンと天の情報の間が、彼らに対する流星の襲撃で隔たれてしまいます。その折にジンが言いました:何か起きたに違いない。皆、この事件の原因を知るために東と西の隅々に向かえ。彼らは出発すると、ワーディー・ナハラで教友たちとファジュルの礼拝をしている預言者(祝福と平安あれ)に遭遇しました。彼がその時に読んでいたクルアーンを聞いたジンたちは言いました:これこそが、われわれと天の情報の間を隔てたもの。その後彼らは自分の仲間の元に帰って、見て来たことを話しました。このジンたちはクルアーンを次のように描写しました:

 「それ(クルアーン)は正導に導く。それでわれらはそれを信じ、われらはわれらの主になにものをも同位に配さない」

 このクルアーンは真実と正しい道に導きます。この導きの自然な結果は、それがクルアーンであるとの信仰です。そのためもあって、彼らは「われらはそれを信じ」と言ったのです。クルアーンに対する信仰は、何ものも配さず、ただおひとりのみの御方アッラーを純粋に信仰することを伴います。そのため、彼らは「われらはわれらの主になにものをも同位に配さない」と言ったのです。

参考文献:ルーフ・アル=クルアーン タフスィール ジュズ タバーラカ/アフィーフ・アブドゥ=アル=ファッターフ・タッバーラ薯/ダール・アル=イルム リルマラーイーンP91~93)
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預言者伝49

2013年08月08日 | 預言者伝関連

150.ハイバルの城壁に向かうイスラーム軍:
  信徒たちは、戦いを始める前の最後の夜をハイバルの近くで過ごしました。ユダヤ人たちは、まだそのことに気付いていませんでした。預言者(祝福と平安あれ)は、目的地に暗くなってから到着した場合、朝になるまでそこに近付かないのが習慣でした。そのため朝になって礼拝を捧げた後に、信徒たちと出発しました。代わってハイバルの住人は農具を持って作業のために外出したところで、まだ何も気付いていませんでした。それでも軍勢を見つけたときには、「ムハンマドだ!なんてことだ、ムハンマドと軍がいるじゃないか!」と叫び、一目散に自分たちの家に逃げ帰りました。そんな様子を見た預言者(祝福と平安あれ)は、「アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)!ハイバルは滅びる、アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)!われわれが彼らの土地に攻め入ったとなると、警告を受けた者達の朝の目覚めは悪いものとなることだろう」と言われました。

  預言者(祝福と平安あれ)はご自身の陣営に小屋をお造りになりました。そこにハバーブ・イブン・アル=ムンズィルが来て、言いました:「アッラーの使徒さま、これはアッラーがあなたさまに準備し給うたものですか、それとも戦における戦略ですか?」彼(祝福と平安あれ)は言われました:「いや、戦略です」ハバーブは続けて言いました:「アッラーの使徒さま、ここは敵の砦(とりで)に近すぎます。あの砦の中には、ハイバルの戦士全員が潜んでいるのです。彼らはこちらの様子を全て把握していますが、私たちは彼らのことが分かりません。その上、彼らの弓はこちらにすぐ届いてしまうのに、私たちの弓はあちらには届かないのです…そういったことからも、陣営の場として、危険のない場所をお命じください。」預言者(祝福と平安あれ)は言われました:「ではそれを採択しよう」そして違う場所へ移動することになりました。

  ハイバルに近づいた瞬間、「止まりなさい」と彼(祝福と平安あれ)が言うと、兵士たちは歩みを止めました。そして言われました:「アッラーよ、七つの天とそれらが覆う全てのものの主よ。七つの大地とそれらが持ちあげる全てのものの主よ。悪魔たちと彼らが迷わせる全てのものの主よ。私たちはこの村の善きもの、村人の善きもの、そこにあるあらゆる善きものをあなたに求めます。そしてこの村の悪、村人の悪、そこにあるあらゆる悪からの御加護をあなたに求めます。さあ、皆、アッラーの御名前のもと、進みなさい。」

151.勝利を与えられた指揮官:
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はハイバルの砦(とりで)を一つ一つ開いて行きました。まず一つ目に開いたのはナーイムの砦でした。

アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はハイバルの戦の際に言われました:《アッラーがその者の手によって勝利をもたらしたまい、アッラーとその使徒を愛し、またアッラーとその使徒も彼を愛する者に明日、旗を渡そう。》

人々は朝起きると、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)のもとに向かいました。それぞれ皆、旗を望んでいたのです。そこでアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は言われました:《アリー・イブン・アビーターリブはどこにいる?》皆が言いました:アッラーの使徒さま、彼は目が痛いと訴えています。彼(祝福と平安あれ)は言われました:《彼に使いを送りなさい。》そしてアリーが連れて来られました-ムスリムの伝承には次のようにあります-:サラマ曰く:アッラーの使徒さま(祝福と平安あれ)は私をアリーにお送りになったので、目の調子の悪いアリーを彼(祝福と平安あれ)のもとにお連れしました。アッラーの使徒さま(祝福と平安あれ)は彼の両眼に唾を吹きかけられました。すると、まるで痛みなどなかったかのように治りました…」そしてアッラーの使徒(祝福と平安あれ)はアリーに旗をお渡しになったのでした。アリーは、「彼らが私たちのようになるまで、私は彼らと戦い続ける」と言いました。

  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はアリーに忠言しました:「落ち着いて、彼らのもとへ向かいなさい。そして彼らをイスラームに誘い、至高なるアッラーに対する彼らの義務について知らせなさい。アッラーに誓って、アッラーがあなたを介して一人の人間を導くことは、あなたが赤ラクダを所有することよりも良いことなのだ。」

アリーは信徒たちと共にナーイムの砦に向かい、まずユダヤ人たちをイスラームに誘いました。しかし彼らは呼びかけを拒否したので、彼らの王であるムラッハブとの一騎打ちでアリーは彼を倒しました。次に、ヤースィルというムラッハブの兄弟が現れ、アッ=ズバイルはわしと戦うか?と挑戦してきました。アッ=ズバイルの母親であるサフィーヤが「アッラーの使徒さま、彼は私の息子を殺すのでしょうか?」と心配して言いましたが、「いや、あなたの息子があの男を殺すのです」と言われました。するとその通り、アッ=ズバイルが敵を殺しました。

  このナーイムの砦における戦は苦しいものになりました。ユダヤ人側で数名の死者が出たため、敵側は信徒たちの攻撃を防げなくなりました。この戦いは数日間続いたとも言われています。信徒側も苦しみましたが、ユダヤ人たちはムスリム軍には勝てないと希望を失って、アッ=サアブの砦に移動したため、ムスリム軍はナーイムの砦を開くことができました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P313~314
②「封印された美酒」サフィーユッラフマーン・アルムバーラクフーリー著、ダール・アルフィクル出版、P259~262)

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