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続)ムスリムの子ども教育-28-番外編

2020年09月29日 | 預言者の教育方法

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

 

続)ムスリムの子ども教育-28-番外編~Q&A

 

ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)TV番組「私たちの人生21」(0:00~12:16)@エジプト

https://www.youtube.com/watch?v=XLDazBp8QbA

 

前回の復習:子どもを持つことの「目的」を明確にすること、このことによって、今後お話する多くの子育てに関する事柄が変わって来ます。すでにお子さんが大きくなっている方も、今からでも、子育ての正しいニーヤ(意思)、「アッラーのご満足を求めて、子どもを育てます。」というニーヤ(意思)をしておきましょう。

 

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これまでの多くの難しい問題を抱えた親子間の質問からわかることは、私たちのウンマ(イスラーム共同体)がまだ「生きている」という事実です。もし、既に死んでいたら、痛みは感じません。これらの多くの痛みを伴う質問が出て来る、ということは、まだ私たちのウンマが健在で、死んでしまっていないことを証拠付けています。もちろん、今の状態がウンマのあるべき最善の状態という訳ではありません。それでも、まだ私たちのウンマは息をしています。多くの問題に対して解決しようともがき苦しんでいます。そのこと自体が、これからのウンマを強くしていく良い兆しとも言えるでしょう。インシャーアッラー、私たちがこれらの問題を解決し、それを後世の人達に伝え、同じ問題が起らないように予防するために役立てることができるでしょう。

 

視聴者からの電話相談:「私の息子は、アメリカに留学に行ってから、タバコやお酒、またドラッグにまで手を染めてしまったことがわかりました。私は、息子をイスラーム的な環境で育てて、彼はイスラームの講義も受けて来ました。私の心は壊れそうです。アッラーに、息子が悔悟をしてくれることをドゥアーしています。

私は、こんな状態の息子に対し、どう接したらいいのかわかりません。真実を知っていることを息子に告げるべきでしょうか?でももし私が知っていることを告げても、息子は白を切るかもしれません。それとも、何も知らないふりをすべきでしょうか?」

 

回答:まず、偉大なる玉座の主アッラーの美名によって、アッラーの偉大な性質によって、アッラーがこの息子さんの心と、すべてのムスリムと子ども達の心をご覧くださり、見事にアッラーの元に帰らせてくださることを祈願します。また、このお母様の心に、安堵とサキーナ(平安)をお与えくださるようアッラーに祈願します。

 

まず、このお母様にお願いしたいことは、息子さんに対し、アッラーの導きをドゥアーすることで心を悩みから解放してください、ということです。彼女は息子さんをイスラーム的な教育の元で育てたのに、どうしたらいいのか、と迷っておられますが、このように、息子さんの悪い事実を知ってしまった時に、ほとんどの場合において、それを知っていることを息子さんに告げるべきではありません。アッラーがまだ隠しておいてくださる残りの事実を暴いて破壊してしまわないために。イマームガザーリー師(アッラーの慈悲あれ)に、こういった場面において有効な言葉があります。ガザーリー師(アッラーの慈悲あれ)はこう言っています。

 

「子どもに、性格的な美点、褒められる行動が現れた時には必ず、それを褒め、彼が喜ぶ物でご褒美を与え、人々の前で彼のことを褒めます。また、その逆の場合には、一回目は気付かないふりをし、アッラーが隠しておいてくださることを暴いてしまったり、彼がわざとそれをしたのだと決めつけたりしないように注意すべきです。特に、本人がそれを隠している場合、一生懸命親にばれないように努力している場合に、それを暴露することで、その間違いを強化し、親にばれてしまったならもう隠すことはない、と子どもがもっと大胆な行動に出ることを奨励してしまうからです。」

 

この息子さんの場合、お酒を飲んでいることをお母様に隠しています。また彼は留学中で、家に一緒にいない状態なので、多くの場合、彼に自分が知っていることを告げない方がいいでしょう。反対に、知らないふりをして、その上で、お母様がおっしゃるように、小さい頃からアッラーのご命令に従うことを植え付けて来た息子さんの根幹を思い出せるような話をしてあげてください。どんなに今は、その根幹が埃をかぶり、アッラーのことを忘れてしまい、悪い友達に悪影響を受けて悪い方向に傾いているとしても、今はちょっと居眠りしてしまっているような状態だと思って、元々のイスラーム的な価値観を思い出させて、目覚めさせてあげてください。アッラーに彼のことをドゥアーすることと合わせて、そういったことを思い出させてあげましょう。

 

しかし、ここで一点、注意すべき点があります。それは、イスラーム的な教育とは何か、という点です。イスラーム教育の目的というのは、ただ、一日に五回の義務の礼拝をすること、や、女の子がヒジャーブをすること、もちろん、これらは義務で必ずしなければならないことですが、ただこれらのことだけに限定されるものではなく、ただ子どもがどれだけクルアーンを暗記したか、そういったことだけに限定されるものではない、という点です。イスラームの義務行為の根幹は、礼拝の根幹につながります。つまり、【本当に礼拝は、(人を)醜行と悪事から遠ざける。】(クルアーン 蜘蛛章45)、アッラーは、私たちに、礼拝には成果があり、その成果は、醜い行いと悪事から遠ざかることだと教えてくださっています。ということは、一日5回の礼拝をしているのに、悪いことを止められない子どもは、本当の礼拝をしていない、ただ習慣になっている礼拝をした、義務をこなしただけだ、ということです。イスラームにおける義務は、ただ一日5回礼拝をすることだけではなく、義務を行うということがどういうことなのか、きちんと理解することが大切です。

 

イスラーム教育の根幹は、良い性格です。小さい頃から、嘘をつくことは、宗教に反することを教えなければなりません。信頼を裏切り、良い性格と正反対の性質であることを教えなければなりません。人に見られたくないと思うようなことをすべきではないことを教え、アッラーが自分のことをいつもご覧になっていることを教えなければなりません。それはイフサーン(善行)と呼ばれるものです。

 

「それは貴方がまじまじとアッラーを見るように彼を敬い崇めることです。

貴方が眼にしていなくとも、アッラーは貴方を見ておられるのですから。」

 

このことは、子どもの心の中に深く根付くように育てて行くことが重要です。なぜならば、これこそが、どんな風が吹いた時にも子ども達を守る抑制機能になるからです。子どもが、間違いを犯したり、悪い環境に影響されて弱くなったりした時でも、これが、子どもをアッラーの元へと引き戻すことになります。

 

このお母様に対してのアドバイスは、ドゥアーをすることに加え、息子さんの心に植え付けて来たものを思い出させるような話をすることです。そして、もうひとつのアドバイスとしては、息子さんと電話で話す時や長期休暇で家に戻った時に、息子さんに、自分が置かれている環境の周りの人達に対して、アッラーの導きを伝えることを思い出させてください。こんなことを言うと驚かれるかもしれません。今は、自分の息子をどうやったら救えるかを考えているのに、息子が他の人達を救うことを考えるのですか?と。どうか息子さんに、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のことを思い出させてあげましょう。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の関心事、ダアワを思い出させてあげてください。息子さんが、その国にイスラームを伝える親善大使であること、その国の人達にとっては、息子さんが、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の代理として遣わされたイスラームの使者であることを伝えてあげてください。そして現代のいくつかの逸話を話してあげてください。

 

あるノンムスリムの人が、ムスリムに会い、彼が人の物を盗んだり、嘘をついたり、酒に酔っ払ったりしているのを見ていましたが、ある時、そのムスリムの男と話していて、預言者ムハンマド様(彼の上にアッラーのご満悦あれ)のことを悪く言うと、男が激怒して、

「私たちの預言者のことを悪く言うなんてけしからん!ムハンマド様(彼にアッラーの祝福と平安あれ)は我々人類すべてにとっての真の預言者だ!」と言うと、ノンムスリムの人が、

「彼のことを信じているのですか?」と尋ね、

「もちろんだ!」

「彼が真実の善い教えを伝えたと信じているのですか?」

「もちろんだ!」

「でもその善い教えは、あなたの振舞いのどこに現れているのか?私はそれを、あなたの中に見たことがない。私は、あなた達の預言者のことを、あなた達を通してしか知りません。」

 

こういった話をし、息子さんが犯している間違いを知っていると告げることなく、アッラーのことを、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のことを思い出させてあげてください。

 

また、今、息子さんには、お母様の愛情がとても必要です。もし息子さんが、自分のした悪行を自分であなたに告げることがあれば、それに対しては、しっかり忠告を与えてあげます。その時にも、愛情深く、彼のことが心配なことを伝え、二度としないでほしいと伝えます。しかし、これは最後の段階です。息子さんが隠している限り、知らないふりをして、良い話を伝え続けます。知っていることを告げてからする忠告に対し、もし息子さんが応えなければ、それは、告げる前よりももっと難しい状態になります。ですから、告げるのは急がないでください。

 

息子さんと私たちにアッラーのお導きがありますように。

 



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