pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

首切り王子と愚かな女@PARCO劇場F列センター

2021-06-23 21:55:37 | 観劇/コンサート

作・演出
蓬莱竜太

出演
井上芳雄 伊藤沙莉/
高橋 努 入山法子 太田緑ロランス 石田佳央 和田琢磨
小磯聡一朗 柴田美波 林 大貴 BOW 益田恭平 吉田萌美
/若村麻由美

【STORY】
雪深い暗い王国ルーブ。
英雄であり人格者であった先王バルが早くに没して20年。女王デンは「永久女王」としてルーブを統治していたが、溺愛していた第一王子ナルが病に倒れてからは国のことを見なくなり、魔法使いを城に招き入れ、閉じこもるようになった。ルーブ国は統治者を失った国になっていた。国は呪われ、民は貧しさに疲弊し、反乱の気運が高まっていく。
そこで城に呼ばれたのが第二王子トルであった。トルは幼い頃から「呪われた子」とされ城から遠ざけられていたが、反乱分子を鎮圧するために再び城に戻される。使命に燃えたトルは、反乱分子の首を次々に落とし「首切り王子」として恐れられるようになる。
リンデンの谷に住む娘、ヴィリは死ぬことにした。これ以上、生きる理由が見当たらなかったからだ。最果ての崖にたどり着いたヴィリが目にしたものは白い空と黒い海と首切りの処刑であった。
首切り王子トルは死を恐れないヴィリに興味を持ち、召使いとして自分に仕えるように命令する。
城に連れられていくヴィリが耳にしたのは王子の歌であった。美しくも悲しい歌。ヴィリはトルに深く暗い孤独を見る。
こうしてヴィリは召使いとして首切り王子に仕える日々を送り始める。
そこに見たのは野心や愛憎、陰謀が渦巻く人間たちの姿であった。


小さい頃から王子様やお姫様のお話が大好物でした。プログラムによれば、この舞台は作者の蓬莱氏が、子どもがマントをまとって遊ぶような、ごっこ遊びのあの感覚を大事にこのファンタジーを作り上げたとのことでした。

私も今はそういうのが観たい!ましてプリンスがあの方なら、なおのこと

と、いうような単純な動機でチケットとりましたが、無欲の勝利か、まさかのF列。しかもセンターは最前列を潰してしたので実質5列目でした。中止にならなくてよかった!

ストーリーはまあ、ファンタジーなんで

舞台装置は斬新そのもの。稽古場のような空間なれど、イメージの中でちゃんと崖がみえたりそこが城の中であるかのようにみえるからすごいです。

不幸な生まれ方をし、呪われた王子と呼ばれ隠されて育つトルの深い孤独が痛いほど。ようやく母と対面できても、母の心はいつも第一王子ナルのもとにあるという切なさ。この母、若村さん素晴らしいまるでシェイクスピアの舞台に出てくる王妃様のよう。気高く美しく、愚かで残忍な女王様。。

結局、首切り王子トルは伊藤沙莉ちゃん演じるヴィリとしか心を通わせることができず、それも束の間、破滅に向かってしまうわけですが、その孤独からくる人間不信、母への思い、正しい分別や価値観を知らずにきた生い立ちなどから、思い通にならないともう滅茶苦茶、無茶苦茶なことばっかりやってわめきちらし、暴れ、ほんと小学生みたい。変に権力持たされてるから始末におえない。

なんか、そんな自分にあんまりなさそうなキャラを演じる井上くんが楽しそう。伊藤沙莉ちゃんは、まるであてがきのようにはまって自由自在です。この人の安定感すごい。そして正義感に燃える姉、太田緑ロランスさん、かっこいい!オスカルのよう。

暴虐王子トルが唯一心を開くヴィリとのシーン。もしかして、相手がとても好きだとか愛してるとか、そういうことだけでなく、人が誰かと共にいて心地がいい、安心できる、ということは生きていく上でとても大事なことなんだと、ふと思いました。相手は人間じゃなくても、動物でも、そばにいてくれるだけでいいっていう、そんな存在。

大臣役の石田さんも蜷川作品でよくお見かけする役者さん。女王や王子の滅茶苦茶ぶりを見ながらもなんとか政治を立て直さなくてはという誠実さを感じます。最初はおいしい汁をいただこうとする悪い大臣というような設定だったらしいとどこかで読んだ気がしますが、蓬莱氏が書いていたようにみんなでアイデアを出して作っていく過程で変わっていったのかもしれませんね。芝居は生き物ってことですね。

最後、黒魔術の結果、トル王子がどうなったのか、気になってなりません。

。。。